東京弁護士会所属。
交通事故の程度によっては、入院が必要になったり、定期的な通院、精神的にも疾患を負ったり、PTSDとして現れることもあります。
こうした状況の中で、交渉ごとを被害者本人でまとめようとすることは非常に大変です。
弁護士に示談交渉を依頼することで、直接示談交渉をしたり、資料を準備したりする精神的負担が軽減できます。
つらい事故から一日でもはやく立ち直るためにも、示談交渉は弁護士に任せて、治療に専念してください。
目次
交通事故の「過失割合」とは、交通事故の当事者それぞれについて、その事故の結果に対する責任の割合のことをいいます。
全員の過失割合を合わせた場合を10割とすると、当事者が二人であった場合には、一方の過失割合が7割であれば、もう一方の過失割合は3割ということになります。
大抵の方は被害者というと一方的に被害を受けたというイメージがあるかもしれません。
しかし、被害者側にも一定の過失があった場合には、その過失の程度に応じて責任を取らなければならず、過失が相殺されてしまうことによって、損害賠償額を減額されることがあります。
また、交通事故を起こしたときは、基本的には自動車保険に加入している保険会社が事故相手との示談交渉を行うことになります。
しかし、過失割合が相手方:自分方=10:0のときは保険会社が示談交渉を代行してくれません。
この示談交渉代行は、被害者からも相手に賠償金を支払うことが前提となっています。
これは「保険会社も保険金を相手方に支払わなければならないため、示談交渉の窓口となります」という理由で代行しているからです。
被害者の過失割合が0のときは、加害者に賠償金を支払う義務がなく、一方的に賠償金をもらうだけとなります。
この場合の示談交渉代行は、被害者であるという他人の示談交渉を行っていることになり、弁護士法という法律に違反してしまうことになるからです。(弁護士法第72条、第73条)
過失割合は、賠償額に影響を与えるだけでなく、保険会社が示談交渉を代行してくれるかどうかにまで関係してくる非常に重要なものと言えます。
過失割合については、事故後警察により実況見分が行われることもあり、警察が決定していると誤解されることがよくあります。
しかし、警察が過失割合を決定するということはありません。
では、過失割合はどのような方法で求めていくのでしょうか。
通常、過失割合は、加入しているそれぞれの保険会社による話し合いで決定されます。
過失割合の決定は民事上の問題のため、「民事不介入の原則」により警察は介入することはなく、事故現場での状況確認と記録のみを行うことになります。
この過失割合の決定は、過去の裁判例を基準とし、警察が作成した実況見分調書という書類で実際の事故の状況に応じて修正することによって行われます。
過去の裁判例の資料として、裁判所や弁護士会では裁判例を参考にしてまとめた算定基準表を作成し、公表しています。
以下に基準とされている書籍を紹介します。
とはいえ、これらの書籍を購入するべきかというと、無理に購入する必要はないでしょう。
このような専門書はどうしても高価であり、内容も実務家向きに作られているため、一般の方がわざわざ購入する必要はありません。
しかし、知識として仕入れておいて損をすることでありませんので、勉強したいと思う方のために入手方法も記載しておきます。
この書籍は、裁判での判例を参考に交通事故の様々な事例を示し、どういった状況で事故が起こった際に過失割合がどのような割合になるかといった情報が細かく類型化されています。
保険会社の示談交渉の担当者が、過失割合を示す基準としても用いられていますが、当然のことながらすべての事故を類型化しているわけではありません。
そのため、個別具体的な過失については、割合を算定する際に随時修正していく必要があります。
入手方法は、一般の書店に注文をするか、オンラインでも購入することができます。
この書籍は通称「青本」と呼ばれ、交通事故による損害額の算定基準とその解説を中心に、全国の参考となる裁判例をも掲載されており、隔年で改訂版が発行されています。
弁護士基準の損害賠償額を算定するために適した書籍と言えます。
ただし、一般の書店では販売されていませんので、東京都千代田区にある日弁連交通事故相談センター本部窓口で直接購入するか、同センター本部へFAXで注文することで入手できます。
この書籍は通称「赤本」と呼ばれ、東京地裁の実務に基づき賠償額の基準が示されており、参考になる判例が掲載されています。
上巻の基準編、下巻の講演録編のセットとなっており、毎年2月に改訂版が発行されています。
こちらの本は法曹関係者向けの専門書であるため、青本と同じく一般書店では販売されていません。
東京都千代田区にある日弁連交通事故相談センター東京支部霞が関相談所の窓口で直接購入するか、FAXで注文することで入手できます。
交通事故を起こした場合には、明らかに相手が悪い場合であっても、加害者が過失を認めないことは珍しくありません。
では、このような場合にはどのように対処すればいいのでしょうか。
ここからは相手が過失を認めない場合の3つの対処法をご紹介します。
相手が過失を認めない場合の3つの対処法
それでは1つずつ見ていきましょう。
示談交渉の相手は、基本的に加害者側の保険会社と交渉することになります。
この際に注意しなければならないことがあります。
それは、加害者側の保険会社は加害者の味方であり、中立の立場で対応してくれるわけでないということです。
とはいえ、加害者自身がどう考えても道理に合わない主張をしている場合などには、そうした主張は認められないと加害者本人に説得してくれることもあります。
被害者の主張を根拠づけるために、客観的な証拠を集める必要があります。
ドライブレコーダーや防犯カメラ、目撃者の供述調書などの証拠を保険会社に提示することにより、加害者側の道理に合わない主張に対して反論していくことが大切です。
加害者に請求書を送る際には、内容証明郵便で送りましょう。
文書などの郵便を出したときに、その文書の内容や発送した日、相手が受け取った日付などを郵便局に証明してもらうことができるサービスのことを内容証明郵便といいます。
相手に送付した文書の内容が残りますので、裁判となってしまったときなどに証拠として役立つことがあります。
また、普通郵便で送るよりも証拠として残る内容証明郵便を使うことで心理的に圧迫を与えることができ、今まで交渉を拒否していた相手が急に応じてきたというケースもあります。
相手が過失を認めない場合には、当然に示談交渉も決裂する可能性が高く、訴訟に発展することも視野に入れなくてはなりません。
不安があれば、専門家である弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼すれば、複雑な訴訟手続きなども代行してくれます。
交通事故の過失割合は警察や保険会社が決めるものではなく、当事者同士の話し合いによって決まるものです。
この過失割合ですが、賠償金の金額に多大な影響を与えることもあり、保険会社としてはできる限り賠償金を抑えるため、加害者に有利になるような過失割合を主張することがあります。
このようなときに安易に認めてしまうと、適正な賠償金額を大きく下回る結果になりかねません。
では、保険会社から提示された過失割合に納得できないときには、どのように対処すればよいのでしょうか。
ここからは納得できないときにすべき3つのことをご紹介します。
交通事故の過失割合に納得できないときにすべきこと
それでは1つずつ解説します。
相手が提示してきた過失割合に納得できない場合は、その場ですぐに合意しないことが大切です。
保険会社の担当者にもっともらしい理由を付けて専門用語を並べて説明されると「そういうものか」と渋々受け入れてしまうことがあります。
原則として、一度合意してしまうとその示談内容が確定してしまい、その後で覆すことは困難になりますので、納得できない場合は慌てて合意しないようにしましょう。
保険会社の主張してくる過失割合が、判例に照らし合わせ妥当かどうか確認する必要があります。
保険会社が参考にした判例が、今回の事故の状況において不適当であり、より適当な判例がある可能性もありますので、もし自分のケースと似た判例を見つければ、それを根拠に過失割合を見直すように相談してみましょう。
また、前述したように、ドライブレコーダーなどで加害者である相手方の過失が見つかることがあり、このような証拠を集めることで、自分の主張が適切であることを主張することができます。
被害者自ら過失割合について反論や主張することもできますが、過失割合の判断は複雑で専門知識が必要となりますので、弁護士に相談するとよい結果が得られるかもしれません。
事故の状況を正確に把握するために、警察が記録する実況見分調書を参照することができます。
実況見分調書については、被害者本人が入手することは難しいですが、弁護士であれば検察庁に問い合わせるなどして入手してくれます。
このようにして、弁護士は被害者が有利になるよう示談交渉を進めることができます。
交通事故による損害賠償額において過失割合は重要な要素ですが、他に賠償額の算定に影響を与えるものがいくつかあります。
次に、損害賠償額を増額させるための具体的な方法をみていきましょう。
慰謝料を算定する基準は一つではなく、主に3つの基準があります。
また、それぞれの基準において算定される金額は大きく異なってきます。
基本的に加害者である相手方の保険会社は任意保険基準での金額を提示してきます。
自賠責保険は車を所有する場合に必ず加入しなければならない保険であり、交通事故被害者の損害を最低限補償するためのもので、自賠責基準はこの保険の補償金額を基準としたものです。
そのため、補償金額もすべての基準の中で最も低額に設定されています。
任意保険は所有者などが個々の判断において加入する保険です。
自賠責保険は低額に設定されており、被害者に対して十分な補償ができないこともありますが、任意保険はそのような場合において適切な額に補填するための保険です。
この任意保険基準は、保険会社がそれぞれ独自に定める基準であり、統一された基準ではありませんが、ほとんどの場合は自賠責基準よりも僅かながら高額な基準になっています。
過去の交通事故の裁判例に即して算定する基準であり、自賠責基準や任意保険の基準よりも高額に設定されることが多くなります。
しかし、弁護士を通さずに被害者のみで示談交渉をしたとしても、保険会社が弁護士基準で算定し高額な慰謝料を算出することはまずありません。
つまり、弁護士に交渉を代理してもらうことで、この基準を用いた算定により賠償額の増額が期待できることになります。
後遺障害等級認定を得るための申請手続きを加害者側の任意保険会社に依頼することもできますが、自賠責保険が定める必要最低限の書類だけを集めて提出するということがよくあります。
その結果として、被害者の望むような後遺障害等級が認定されないことがあります。
しかし、被害者が自ら症状の証明に必要な書類を追加して提出し、被害者にとって適切な後遺障害等級が認定されることで、賠償額が増額されることがあります。
逸失利益とは、事故の被害にあったことが原因で、将来に渡って得られるべき利益が少なくなった部分のことをいいます。
しかし、鎖骨に変形障害が残った場合や、顔に傷跡が残っている醜状障害のようなケースでは、「実際に働くことができなくなったわけではない」と保険会社が減額を主張してくることがあります。
逸失利益を適切に計算することで、賠償額を増額できることがあります。
弁護士に交通事故の示談交渉をお願いすると様々なメリットが得られます。
しかし、弁護士なら誰でもいいというわけではありません。
中には、依頼しなければよかったと後悔される方もいらっしゃいます。
では、弁護士をどのように選べばよいのでしょうか。
ここからは示談交渉を相談する弁護士の選び方をご紹介します。
示談交渉を相談する弁護士の選び方
それでは1つずつ見ていきましょう。
昔と違い、インターネットで「弁護士」と検索すれば、山のようにヒットします。
その際に、立派なホームページや口コミなどを見ると依頼したくなることもあるでしょう。
しかし、依頼するかどうかは、必ず一度直接面会してから判断するようにしましょう。
どんなに優秀な弁護士であっても、そこは人と人なので相性というものがあります。
周りの人の評価がどれほど高くても、自分には合わないと感じることがありますので、複数人と面会するなど慌てずにゆっくりと探しましょう。
法律の専門家である弁護士といっても全ての業務に精通しているわけではなく、得意不得意の分野がありますので、交通事故の案件に対する経験豊富な弁護士を探しましょう。
弁護士の選び方として次のようなものが挙げられます。
上記のほか、面会して相談する際に示談や後遺障害のことについて、いろいろと質問してみるといいでしょう。
もちろん、深い内容のことはいくら優秀な弁護士でも調べなければ即答はできませんが、基本的なことをいちいち調べなくては回答できない弁護士は少し注意した方がよいかもしれません。
弁護士の中には、相場をはるかに超えた法外な料金を請求する弁護士も存在します。
もちろん、高いから悪徳弁護士というわけではありませんが、高すぎると受け取ることができる示談金が減ってしまい、ときには「費用倒れ」となって却って損をしてしまうこともあります。
インターネットや書籍などで事前にある程度相場を調べておくとよいでしょう。
この記事で解説したように、加害者である相手が過失を認めないということはあまり珍しいことではありません。
そのような相手に過失を認めさせるためには、客観的に自分の主張が正しいということを証明する必要があります。
しかし、自らの主張の正当性を証明するためには高度な知識と豊富な経験が不可欠です。
弁護士に依頼した場合、個人で行うと大きなストレスとなる示談交渉や必要書類の収集など、面倒なことを代行してもらえ、さらに賠償額が引き上げられることもあります。
交通事故で相手が過失を認めないような場合は、早い段階から弁護士に相談すると良いでしょう。