東京弁護士会所属。
交通事故の程度によっては、入院が必要になったり、定期的な通院、精神的にも疾患を負ったり、PTSDとして現れることもあります。
こうした状況の中で、交渉ごとを被害者本人でまとめようとすることは非常に大変です。
弁護士に示談交渉を依頼することで、直接示談交渉をしたり、資料を準備したりする精神的負担が軽減できます。
つらい事故から一日でもはやく立ち直るためにも、示談交渉は弁護士に任せて、治療に専念してください。
目次
交通事故で相手方と自分の双方の過失割合が発生している場合、自己負担となるのは「自分の過失割合」部分だけです。
そしてその自己負担部分については車両保険で補償することができます。
それでは、過失割合はどのように決められるのでしょうか。
過失割合は、事故の当事者が加入している保険会社の担当者が、過去のデータに基づき話合いの中で過失割合を決めていくというのが通常のやり方です。
過去のデータとは裁判所の判例のことで、事故のパターンや類型ごとに概ね決まっています。
事故のケース別に、過失割合の相場を見てみましょう。
歩行者と自動車の事故の場合、横断歩道のある交差点での事故であれば、歩行者が優先されるため、歩行者の過失が認められることはほとんどありません。
横断歩道付近に歩行者がいる場合、自動車のドライバーは、歩行者の通行を妨害しないように注意する義務があります。
歩行者が信号無視をして横断しようとしていたような例外的な場合でなければ、歩行者の過失は認められないでしょう。
一方、駐車場のような空間での事故であれば、ドライバーが歩行者に注意して走行する必要があることは当然ですが、歩行者側も自動車が走行していることはわかっているので、一定程度自動車に注意する必要があります。
そのため、このようなケースでは歩行者にも過失が認められる可能性があります。
自動車同士の事故の場合は、基本的に双方に過失割合が認められます。
例外としては、停車している自動車に衝突したような場合には停車していた側には過失はありません。
よくあるケースは、「出会い頭」での衝突事故です。
見晴らしの悪い場所から道路に出ようとした場合に、別方向から来た自動車と接触・衝突してしまうような場合が典型例です。
ドライバーは見晴らしの悪い道路を走行する際、相当な注意義務が課せられているため、自分の過失がゼロになることはまずないでしょう。
基本的な過失割合としては、走行していた自動車の過失が2割です。
ただし、速度やその他事情によっては過失割合が修正される可能性もあります。
基本的に出会い頭の事故で「まさか車が出てくるとは思わなかった」という言い訳は通用しない、ということを覚えておきましょう。
車両の大きさを比較して自動車の過失が大きくバイクの過失が小さくなると考える方が多いですが、実際は走行ルールにより過失割合が決められることが多いです。
両者の典型的な事故は、右折車と対向車線を直進するバイクとの衝突です。
自動車が右折しようとしたとき、対向車線を走行する別の自動車の物陰から直進してくるバイクが突如視界に入り、ブレーキを踏むも間に合わずに衝突してしまうようなケースです。
このようなケースでは直進するバイクが優先しますので、右折する自動車の過失がより大きくなります。
バイクや原付自転車は、転倒すると運転手が負傷するリスクが高いため、物損だけでなく負傷に対する損害賠償の可能性も増えることになります。
自動車と自転車との事故の場合は、車両同士の事故とはいえ自転車の方が弱い立場になるため、過失割合が修正されて自転車の過失割合が低くなるケースが多いです。
仮に自動車と自転車の両方が信号無視をして交差点に進入し、出会い頭に衝突したようなケースではどうでしょう。
どちらも自動車だった場合は、両者の過失割合は同じくらいになるはずです。
しかし、片方が自転車だった場合、自動車:自転車の過失割合は7:3で自転車の過失割合が小さくなるように修正されていることがわかります。
自転車の過失割合が大きくなるようなケースとしては、夜間ヘッドライトを無点灯で走行していて発見しづらい場合や、スマホを見ながら運転している等の前方不注視の場合、酒気帯び・飲酒運転といった場合が考えられます。
一般の道路であれば、交差点や信号、横断歩道があり、歩行者の横断もありますが、高速道路にはこれらの危険要素がありません。
その代わり、高速道路で最も事故が起こる頻度が高い場所は、本線と他線との合流地点です。
なぜなら、本線を走行する自動車と合流してくる他線を走行する自動車の速度が異なるため、事故が起きやすいからです。
このようなケースでは、本線を走行していた自動車:合流しようとした自動車の過失割合は3:7となっています。
交通事故には、物損事故と人身事故の2種類があります。
物損事故とは「交通事故が原因で乗っていた自動車やその他の物品が破損した事故」のことを言います。
人身事故とは、「交通事故が原因で被害者が負傷したり死亡したりしてしまった事故」のことを言います。
過失割合を決める際、物損事故なのか人身事故なのかの違いでその判断が変わるのでしょうか。
基本的には、物損事故と人身事故の違いで過失割合が変わることはなく、どちらも同様に過失割合が算定されます。
次に、交通事故に遭った場合、自分の過失割合は賠償金との関係でどのように扱われるのかですが、自分の過失割合分は賠償金から差し引かれて支払われます。
これを過失相殺と言います。
事例
例えば損害賠償額が100万円だった場合、相手:自分の過失割合が8:2なら20%は賠償金額から差し引かれます。
その結果、受け取れる賠償金は80万円となります。
事故当事者間の過失割合が決定した場合の具体的な損害賠償金の計算方法を、具体例を挙げて考えていきたいと思います。
事例
自分の請求できる自動車の賠償金額が100万円で、相手方に支払わなければならない自動車の賠償金額が100万円としましょう。
自分:相手の過失割合が2:8とします。
過失相殺で自分の過失割合は賠償金から差し引かれます。
そこで簡便に決済するために80万円と20万円を相殺し、相手方が自分に60万円(80万円-20万円)支払うことで賠償が完了します。
ここでは、自分の損害と相手方の損害が同額(100万円)と仮定しましたが、相手方の自動車が高級車だった場合は、損害額がおのずと大きくなり同じ過失割合でも今度は賠償金を支払う立場になる可能性があります。
具体的に考えてみましょう。
事例
自分の請求できる自動車の賠償金額が100万円に対し、相手方の自動車が高級車だったことで賠償金額が1,000万円だったとしましょう。
自分:相手方の過失割合も同様に2:8です。
お互いに相殺し、自分が相手方に120万円(200万円ー80万円)支払うことで損害賠償が完了します。
事故の相手の自動車の価値によっては、賠償金を受け取る側になったり支払う側になったりする可能性があることがわかります。
示談交渉は、保険会社を利用してスムーズに行われる場合は問題にはなりません。
しかし、事故の相手方の中にはすんなり賠償に応じない人もいます。
そのような場合でも、損害は保険で補填し、相手との交渉は保険会社に継続して行ってもらうということが可能です。
ただし、これは事故の相手方と自動車が確認できていることが前提になります。
当て逃げされたようなケースで、相手も自動車もわからないという場合は保険は利用できません。
対策としては、事故の相手方が衝突後に不審な行動をとっていたり、逃走を図ろうとしていたりするような気配があれば、取り急ぎ相手の車両とナンバーを控えておくようにしましょう。
写真は有効な証拠になりますので、証拠を残す必要が生じたときはスマートフォン等のカメラで写真を撮影することをお薦めします。
ここまで説明してきたとおり、今回のポイントは以下のものになります。
交通事故で被害者が支払ってもらえる損害賠償金額は、被害者自身の過失割合を差し引いた部分になりますので、まずは加害者と被害者双方の過失割合がどのくらいになるのかを決定しなければなりません。
過失割合については、具体的な事案によって判例をベースに決められています。
ただし、最終的な過失割合は、保険会社の担当者との話し合いで決定します。
そもそも被害者と加害者の双方の過失割合を決定する段階で、被害者の過失割合を低くする法的に重要な事情が隠れている可能性があります。
被害者に有利な事情を主張してより多くの損害賠償金を請求したい場合は、法律の専門家である弁護士に早い段階で依頼するのがおすすめです。