東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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目次
交通事故を起こした場合は、刑事責任・民事責任・行政責任の3つの責任が発生します。
それぞれ要件が違うため、1つだけでなく複数の責任を負うこともあります。
刑事責任とは刑罰のことで、罰金刑や禁固刑、懲役刑などが科されます。
刑罰には以下のものがあります。
没収 | 犯罪に関係のある物の所有権を剥奪する・他の刑罰に付加される |
---|---|
科料 | 千円以上1万円未満の支払いを命じる |
罰金 | 1万円以上の支払いを命じる・支払えない場合は労役留置所に留置、日当5,000円程度で労役に服する |
拘留 | 30日未満の身柄拘束・労役なし |
禁錮 | 1〜20年の有期または無期・身柄を拘束・労役なし |
懲役 | 1〜20年の有期または無期・身柄を拘束・労役あり |
死刑 | 犯罪人の命を絶つ刑罰 |
民事責任とは、加害者が被害者に与えた損害をお金で賠償することで、加害者と被害者の当事者同士の問題です。
人身事故の場合は、民法や自動車損害賠償保障法に基づいて責任が発生します。
一方、物損事故の場合は、自動車損害賠償保障法は適用されず、民法に基づく責任のみ発生します。
行政責任とは、資格や許可などを制限されるもので、交通事故の場合は、運転免許の取り消しや免許停止などの処分のことをいいます。
免許の停止や取り消しは、交通違反に所定の点数をつける点数制となっており、一定の点数に達すると処分されます。
交通事故の示談では、以下のような事項が取り決められます。
示談で取り決められる内容
これらの事項の中でも、特に重要なのは③です。
③は「清算条項」といわれるもので、示談をもってその紛争を完全に終わらせることを目的として設けられる条項です。
そのため、示談書に清算条項を設けていないと、その後も、被害者から何らかの金銭を請求される可能性が残ってしまいます。
このほかにも、交通事故に関し、「被害者が加害者を宥恕する(許す)」という条項が定められる場合もあります。
このように示談で取り決めること、特に清算条項は加害者にとってメリットがあるといえます。
示談を成立させるためにはその金額(損害)が確定していることが必要です。
そのため、示談交渉を開始するタイミングは「損害の確定後」になります。
ここで、一つ例を挙げて見ていきたいと思います。
事例
たとえば、交通事故により被害者に「治療・通院・休業」の損害が発生したとしましょう。
このようなケースにおいて、治療が続いている最中に示談交渉を開始しても、治療費が確定していないため、示談することはできません。
そのため、怪我が完治するか、症状が固定するのを待って、示談交渉を開始することになります。
また、この事故により被害者に後遺症が生じた場合には、症状が固定し後遺障害等級認定を正式に受けた後に示談交渉を開始することになります。
このように、示談交渉はすぐに開始できるわけではありません。
示談の前提となる損害が確定するのを待って、示談交渉を開始する点が重要なポイントとなります。
示談交渉を開始して実際に示談金が支払われるまでには、どの程度の時間を要するのでしょうか。
これは、当事者間で争いがあるかどうかによって大きく異なります。
交通事故において、主に争いが生じるのは「過失割合」と「損害額」です。
過失割合は損害賠償額にも大きく影響を及ぼすため、過失割合について争いが生じている場合は、示談交渉が長期化しやすい傾向にあります。
あまりにも示談がまとまらない場合は、交渉による解決を諦めて、裁判による解決を検討することをおすすめします。
損害額について争いが生じた場合、損害に対する評価が双方で異なることが主な原因です。
この場合、双方が主張する額に大きな差がなく、お互いに譲歩できる範囲内であれば、示談交渉の期間は「3ヵ月程度」となるのが一般的でしょう。
反対に、双方が主張する額に大きな差があり、お互いに譲歩できる範囲を超えている場合は、示談交渉の期間は長期化する可能性があります。
「示談」とは、民事上のトラブルを解決するために、当事者間で交わされる裁判外での契約のことをいいます。
交通事故が発生すると、被害者には治療費や入院費、通院交通費などといった損害が発生するため、加害者はこれらの損害を賠償しなければなりません。
このように、交通事故によって発生した損害賠償などの問題について当事者間で解決することを「示談」といいます。
事故の現場で示談を持ちかけるケースが見受けられますが、これは加害者・被害者双方にとって、リスクの高いものです。
交通事故による損害額は、一律で決まっているわけではなく、事故時の過失割合によっても大きく異なります。
また、事故時には現れなかった症状が後日出てくることも想定されます。
そのため、事故現場で示談をしてしまうと、加害者にとっては「不当に高く支払ってしまった」、被害者にとっては「示談後に現れた後遺症が示談額に加味されていない」などといった不満が出る原因ともなります。
事故現場での示談交渉は当事者双方にとってリスクが高いため、絶対にやめておきましょう。
交通事故を起こしてしまった加害者は、その後、検察官によって起訴・不起訴を判断されます。
起訴されるか不起訴となるかは、示談が成立しているかどうかによっても大きく左右され、仮に示談交渉が長期化・決裂してしまうと、不起訴となる可能性が低くなります。
もっとも、示談が成立していても起訴されるケースはありますが、科される刑罰は軽くなる傾向にあります。
このように、示談交渉を長期化・決裂させてしまうと、
というデメリットがあります。
交通事故の加害者となってしまった場合、加害者が任意保険に加入していれば、保険会社が代わって示談交渉を行ってくれます。
そのため、交通事故が発生した段階で、すぐに保険会社にその旨の連絡を入れることが重要です。
このほかにも、加害者においては、以下のような対応が義務づけられています。
加害者に求められる対応
これらの義務は、いずれも道路交通法に定められており、物損事故において②や③を怠ると、最大1年の懲役または最大10万円の罰金のいずれかを科される可能性があります。
人身事故において①や③を怠ると、最大10年の懲役または最大100万円の罰金のいずれかを科される可能性があります。
また、警察への届出を怠ってしまうと、罰則を科せられる可能性があります。
さらに、交通事故証明書を発行してもらえず、保険がおりないという事態にもなりかねません。
「交通事故証明書」とは、交通事故が発生したことを証明するもので、交通事故の当事者が自分の被った損害などの補償をきちんと受けられるように交付されるものです。
なお、この交通事故証明書は、警察署のほか郵便局や自動車安全運転センター事務所の窓口、インターネットなどでも申請が可能なようです。
詳しくは、自動車安全運転センターのホームページをご覧ください。
その他にも、事故の被害者や事故の目撃者などの名前や連絡先などをしっかりと確認しておくことも非常に重要です。
交通事故が発生したことを保険会社(任意保険に限る)に連絡すると、その後は保険会社が代わって被害者と示談交渉を進めてくれます。
保険会社がとってくれる対応を時系列で示すと、以下のようになります。
保険会社の対応
以上のような流れで、保険会社は、示談金の支払いにいたるまでの間、加害者をサポートしてくれます。
任意保険に加入していれば、示談交渉サービスがオプションとしてついていることも少なくないため、何かと安心です。
しかし、以下のような加害者側に極度の落ち度がある場合は、たとえ任意保険に加入していたとしても、保険会社は対応してくれません。
保険会社に対応してもらえるかどうかは、加害者側の落ち度だけが基準となるわけではありませんし、そもそも加害者が保険に加入していなければ、保険会社に対応してもらえません。
このような場合は、以下のような機関で示談交渉のサポートを受けることができます。
交通事故紛争処理センター | 交通事故の損害賠償問題の解決に向けて、中立的に無料でサポートしてくれる機関 |
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法テラス | 国によって設立された法的トラブル解決のため支援センター |
日弁連交通事故相談センター | 弁護士が無料で公正・中立の立場で相談をうける公益財団法人 |
被害者からすれば、加害者に誠意が感じられなければ、示談をする気もなくなってしまいます。
たとえば、被害者との示談交渉を保険会社に任せきりで、加害者本人からは一度も謝罪がないような場合、被害者は気分を悪くして、示談に応じてくれなくなることも考えられます。
交通事故の加害者は、直接被害者を見舞ったり謝罪したりするなど、誠意ある対応を心がけましょう。
なお、直接被害者と会う際には、派手な服装は避け、菓子折りなどを持参するといったことも誠意を伝えるために大切です。
被害者の中には、直接加害者と会うことに抵抗のある人もいますが、そのような場合でも、手紙などで謝罪の意思を伝えることは可能です。
手紙の場合は、自分が被害者の立場にたった気持ちで謝罪文を作成することが大切です。
たとえば、被害者に謝罪をするよりも、「許して欲しい」「示談をして欲しい」といったように、自分の事情を前面に押し出したような内容では、被害者に不快な思いをさせ、示談を拒否される原因にもなります。
また、示談金の金額についても、具体的な金額は、過失割合などによって左右されるため、この時点で具体的な金額を提案するようなことは控えるようにしましょう。
被害者が示談を拒否する理由は、加害者に誠意が感じられない、ということだけではありません。
示談の金額が理由で、被害者が示談を拒否することもあります。
加害者が任意保険に加入している場合、基本的には、その保険会社が設けている算定基準(任意保険基準といいます)に従って示談金額が確定され、支払われます。
しかし、示談金額の算定基準には、任意保険基準のほかに「裁判基準(弁護士基準)」と呼ばれるものがあります。
「裁判基準(弁護士基準)」とは、過去の判例を参考に算出したり、弁護士が代理人として示談交渉したりする際に提示される算定基準のことです。
任意保険基準を採用すると、裁判基準よりも示談金額が低くなるため、被害者から示談金が低いと不満を持たれるケースも少なくありません。
このように、被害者の中には示談の金額に不満を抱く人もいるため、加害者は、被害者が希望する金額との着地点を慎重に見極めながら、示談交渉が長期化しないように注意する必要があります。
加害者が任意保険に加入していれば、示談金については、保険会社が直接被害者に支払ってくれます。
しかし、加害者が自賠責保険しか加入していない場合などは、加害者自身が示談金の一部を用意しなければなりません。
示談金は、交通事故によって、被害者が受けた損害を金銭的に評価したものです。
被害者が受ける損害にはさまざまな種類があり、事故によって発生する損害も異なります。
一般的には、治療費や通院交通費などが損害として発生しますが、仮に被害者に後遺障害が残れば、これらの損害に加え、慰謝料や逸失利益も加えられます。
示談金は交通事故によって発生した損害の種類に応じて流動的であるため、示談金に相場のようなものはありません。
ここで、交通事故によって被害者を死亡させてしまった場合について、例を挙げて見ていきましょう。
事例
交通事故で被害者が死亡した場合、示談金の内訳は以下のようになります。
<50歳のサラリーマン(男性・扶養者2名・年収800万円)が死亡した場合>
葬式費用 | 150万円 |
---|---|
逸失利益 | 6,313万円 |
慰謝料 | 7,601万円 |
示談金額 | 1億4,064万円 |
<22歳の大学生(独身・女性・無職)が死亡した場合>
葬式費用 | 150万円 |
---|---|
逸失利益 | 5,573万円 |
慰謝料 | 6,536万円 |
示談金額 | 1億2,259万円 |
このように、扶養している者と扶養されている者とでは、逸失利益や慰謝料において金額が変わってくるようです。
加害者にとって、示談を成立させることは、被害者に与えた損害を賠償するということに加え、不起訴となる可能性を高くする、という意味合いを持ちます。
その観点からも、示談書に、被害者から「宥恕」を得た旨の条項があるに越したことはありません。
また、「宥恕」と類似した条項として、
を条項として、示談書に記載する場合もあります。
これらの条項が示談書に記載されていることにより、被害者の加害者に対する処罰感情が軽度であることを検察官に示すことができ、不起訴となる可能性が高くなります。
交通事故の加害者が被害者と示談交渉をする際には、注意しなければならないポイントが多数あります。
誤った対応をしてしまうと、被害者から示談を拒否され、最悪の場合、検察官から起訴されることにもなります。
もっとも、交渉過程では専門の知識や経験が求められる局面もあり、加害者が一人で対応することには一定のリスクが伴います。
有利に示談交渉を進めるために、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。