東京弁護士会所属。
「専門性を持って社会で活躍したい」という学生時代の素朴な思いから弁護士を志望し、現在に至ります。
初心を忘れず、研鑽を積みながら、皆様の問題に真摯に取り組む所存です。
スマートフォンを使いながら車を運転する「ながらスマホ」は交通事故を引き起こす可能性が高く、道路交通法の罰則も厳しくなっています。
ながらスマホのドライバーはノーブレーキで突っ込んでくるケースがあるので、事故の被害も大きくなりやすいでしょう。
ながらスマホが原因で交通事故の被害者になったときは、加害者側の保険会社に損害賠償請求する必要があります。
今回は、ながらスマホによる交通事故を詳しく解説しますので、事故発生後の対応や、損害賠償請求できる費目の参考にしてください。
目次
警察庁の調べによると、令和3年中の携帯電話やカーナビ使用に係る交通事故は1,394件になっており、その内651件が携帯電話の画像目的使用です。
死亡事故の比率は携帯電話等を使用していなかった事故の約1.9倍ですから、ながらスマホによる事故の増加や危険性は明らかでしょう。
また、ながらスマホに該当する運転は以下の2パターンとされています。
ながらスマホは道路交通法第71条で規制されており、自動車だけではなくオートバイや原付バイク、一定の出力を超えた電動キックボードも規制対象です。
参考:やめよう!運転中のスマートフォン・携帯電話等使用(警察庁・交通局)
ながらスマホが原因の交通事故で被害者になったときは、以下のように対処してください。
ケガの治療が終わった後は損害賠償請求が必要になるので、相手の連絡先は必ず控えておきましょう。
ながらスマホの加害者も含め、負傷者がいるときは救護を優先してください。
負傷者を救護しなかったときは道路交通法の救護義務違反となり、自分が被害者であっても5年以下の懲役または50万円以下の罰金になる可能性があります。
ただし、負傷者を動かしてよいか、どのように応急処置してよいかといった判断はかなり難しいため、まず119番へ連絡して救急車を要請しましょう。
ながらスマホが原因で交通事故が発生した場合、車両の損害だけであっても必ず警察へ通報してください。
交通事故の通報も道路交通法で義務付けられており、怠った場合は3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金になる可能性があるので注意しましょう。
また、警察に通報しなかったときは交通事故証明書や実況見分調書が作成されないため、保険金の請求が認められない、または不当な過失割合になる恐れがあります。
物損事故扱いにすると、後でむちうちなどの後遺障害が判明しても治療費を請求できなくなるので、必ず人身事故の扱いにしておきましょう。
交通事故はひき逃げや当て逃げされる可能性もあるので、警察が到着するまでの間に以下の情報を控えておきましょう。
警察が到着するまでに控えておく情報
手書きで記録すると時間と手間がかかるので、すべて写真を撮っておくとよいでしょう。
また、目撃者がいる場合は警察に証言してくれるかどうか確認し、連絡先も教えてもらうようにしてください。
交通事故に遭ったときは、痛みやしびれなどの症状やケガがなくても病院の診察を受けてください。
事故の直後は興奮状態になっているため、ケガを負っていても痛みを自覚していないケースがあり、数時間後や数日後に後遺障害が判明することもあります。
交通事故から何日も経過した日に病院へ行くと、ケガと事故の因果関係を疑われてしまい、治療費や慰謝料などの損害賠償を減額される可能性があるので注意しましょう。
ケガが完治したとき、または症状固定になったときは相手側の保険会社に損害賠償請求しましょう。
後遺障害が残ったときは後遺障害等級の申請を行い、等級が認定された後で逸失利益を請求します。
なお、賠償金の額は保険会社との示談交渉によって決まりますが、不当な過失割合を提示されて慰謝料などを減額されるケースもあります。
途中で治療費の支払いを打ち切られる場合もあるので、保険会社の対応に納得できないときは必ず弁護士に相談しておくことをおすすめします。
交通事故の被害に遭ったときは、事故の原因が「ながらスマホ」かどうかに関わらず、以下の損害賠償を請求できます。
損害賠償の内訳は種類が多く、請求漏れが発生しやすいので注意してください。
交通事故の損害賠償には以下の費目があるので、該当するものは必ず請求しておきましょう。
治療費 | 診察料や投薬代、車いすや装具の費用など |
---|---|
入通院慰謝料 | 入院や通院に伴う精神的苦痛への補償 |
後遺障害慰謝料 | 後遺障害に伴う精神的苦痛への補償 |
死亡慰謝料 | 本人と遺族が受けた精神的苦痛への補償 |
休業損害 | 事故が原因の休業によって生じた損害への補償 |
逸失利益 | 事故がなければ得られたはずの将来的な収入 |
修理費用 | 車両の修理費や代車費用 |
逸失利益は後遺障害が残ったとき、または被害者が死亡したときに請求できます。
ただし、後遺障害逸失利益は後遺障害等級に認定されていなければ請求できないので注意してください。
ドライバーは安全運転に十分な注意を払わなければなりませんが、会社や取引先、家族から連絡があると「ながらスマホ」で運転してしまうケースがあります。
また、スマホはカーナビとしても使えるため、ついスマホを注視してしまう場合もあるでしょう。
スマホの利用者も増加していることから、ながらスマホが原因の交通事故に遭遇する可能性も高くなっています。
被害者になったときは損害賠償請求が認められるので、治療費や慰謝料は必ず相手側の保険会社へ請求してください。
保険会社の提示額や過失割合に納得できない場合は、交通事故に詳しい弁護士へ示談交渉を依頼しましょう。