東京弁護士会所属。
交通事故の程度によっては、入院が必要になったり、定期的な通院、精神的にも疾患を負ったり、PTSDとして現れることもあります。
こうした状況の中で、交渉ごとを被害者本人でまとめようとすることは非常に大変です。
弁護士に示談交渉を依頼することで、直接示談交渉をしたり、資料を準備したりする精神的負担が軽減できます。
つらい事故から一日でもはやく立ち直るためにも、示談交渉は弁護士に任せて、治療に専念してください。
目次
労災の後遺障害とは、労災による怪我などで治療を受けた後に障害が残ってしまった状態のことをいいます。
労災とは労働(業務)が原因で怪我や病気をすることを意味しており、例えば労働中に骨折して痛みが残ってしまった場合などは労災の後遺障害にあたります。
労災によって後遺障害が残った場合は、障害補償給付を受け取ることが可能です。
ただし、障害補償給付は自己申告では受け取れず、後遺障害の等級が付与されてはじめて受け取れる可能性があります。
労災の障害補償給付とは、労災において身体に障害が残ったときに給付されるお金です。
労災により怪我などで治療を受け、治療をしても障害が残ってしまった(障害が残った状態で症状固定になった)場合にもらえる可能性があります。
身体に障害が残ると、以前ほど働けなくなることがあります。
たとえば、労災前に一日中倉庫の中で荷物を運ぶ仕事をしていたとして、仕事中の怪我により足に障害が残ってしまうと、同様に働けない可能性が高くなるでしょう。
労災によって後遺障害を抱えると、労災がなかった場合に得られた将来的な収入などの利益も失います。
将来的な収入が減ることを想定し、失われる利益(逸失利益)を補うために障害補償給付金があります。
後遺障害には等級があり、等級によって障害補償給付の内容が変わってきます。
障害等級は全部で14等級あり、後遺障害の程度によって、どの等級に該当するかも変わります。
後遺障害の程度はさまざまで、労災による後遺障害だからといって一律にまとめることはできません。
等級を付与して、それぞれの後遺障害に合った給付をするために等級付けがなされています。
ほぼ同じような後遺障害のある人の給付に明確な金額差が出てしまうと、不平等な結果になってしまいますが、等級による給付を行えば、同じ等級の人には同じ給付が行われ、平等に給付することができます。
障害等級は、1級が一番後遺障害の程度が重い等級になっています。
後遺障害等級1級に該当するのは、両目の失明や両腕を肩から失ったケース、自身では日常生活を送れなくなったケースや植物状態になったケースが該当します。
障害等級の中で最も軽いのが14級で、軽い神経症状が残ったケースなどです。
後遺障害等級1級と14級を比較すると、かなりの差があることがわかります。
労災障害給付では、後遺障害認定1~7級に認定されると、年金形式で障害補償給付金を受け取れます。
後遺障害等級8~14級に該当する場合は、一時金形式で障害補償給付金がもらえる可能性があります。
後遺障害認定1~7級 | 年金形式で障害補償給付金を受け取れる |
---|---|
後遺障害等級8~14級 | 一時金形式で障害補償給付金がもらえる可能性がある |
等級が上がるほど、後遺障害給付金の額が高額になります。
正当な給付金を受け取るためにも、自分の状況に合った後遺障害等級の認定を受けることが重要です。
症状固定で後遺障害が残ったとしても、自動的に後遺障害が認定されるわけではありません。
後遺障害認定と障害補償給付に必要な手続きを見てみましょう。
後遺障害認定と障害補償給付に必要な手続き
どのステップでどのようなことが行われるのか、手続きの流れに沿って解説します。
治療が終わらなければ、障害が残るかどうかわかりません。
労災に遭った際にまずすべきことは、怪我などを症状固定の段階まで治療することです。
症状固定とは「これ以上治療しても改善や変化の見込みがない」という状態を意味します。
症状固定のときの後遺障害の有無によって、労災による後遺障害の認定や障害補償給付の申請をするかどうかが変わってきます。
症状固定の段階で障害が残っていれば、後遺障害の認定や障害補償給付の申請を行います。
症状固定後の後遺障害認定の申請のためには、後遺障害に関する資料が必要になります。
後遺障害の認定に必要な資料は次の通りです。
後遺障害の認定に必要な資料
後遺障害認定のためには、医師の診断書が必要になります。
この診断書は、通常の診断書ではなく、後遺障害に特化した診断書です。
労災認定専用の診断書の書式があるので、医師に労災の後遺障害認定用の診断書が必要である旨を伝えて作ってもらいます。
後遺障害診断書の他には、後遺障害の症状や内容などを示す資料が必要です。
資料とは、後遺障害や症状の検査結果などになります。
後遺障害の認定や可能な限り上の等級で認定してもらうために、医師の意見書や「なぜ後遺障害に該当するのか」という弁護士作成の文書を添付することもあります。
これらの書面が、その他の資料に該当します。
申請の資料を準備したら、労働基準監督署に申請します。
障害補償給付の申請には、申請書の提出も必要です。
申請書は、労働災害と通勤災害の場合で使う様式が異なります。
通勤災害とは、通勤中の怪我などを意味します。
業務中の災害である労災は、様式10号「障害補償給付支給請求書」の書式を使ってください。
なお、通勤災害の場合は様式16号-7の「障害給付支給請求書」を使うことになります。
どちらの書式も厚生労働省のサイトからダウンロード可能です。
参考:主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)|厚生労働省
労災の申請書には、会社が記載すべき欄があります。
会社によっては、担当や会社自体が労災の申請に消極的、または非協力的なケースがあります。
会社が申請書の記載に協力してくれない場合は、会社記入の所定欄に「会社が協力してくれないため、記入不可」と書いて提出しても差し支えありません。
会社が記載すべき欄を空欄にして提出することも可能です。
会社の協力が得られず申請書の記載に難航する場合は、念のために弁護士や労働基準監督署にも「この記載(空欄)で差し支えないか」確認しておくことをおすすめします。
労働基準監督署に申請書など必要な書類一式が提出されると、審査に入ります。
労災の後遺障害認定の審査では、書面や治療にあたった医師や病院への照会だけでなく面談なども行われます。
また、労災による後遺障害の認定を申請した本人が勤める会社への照会なども行います。
照会や面談の結果も、審査の資料として使われます。
審査は3か月程度になることが多いです。
後遺障害認定の審査が行われ、認定基準に合致していること、そして労災による後遺障害であることが確認されれば、認定を受けられます。
単に後遺障害があることだけではなく、その後遺障害が労災と因果関係があることが、認定を受ける際の大きなポイントとなります。
また、認定を受けると同時に、後遺障害の等級も決定されます。
等級の違いによって、その後の給付内容に違いが生じるため、非常に重要な決定となります。
認定の内容に不服がある場合は、再審査を請求することができます。
いったんは認められなかった認定を受けられる場合や、より高い等級が認められることもあるので、再審査を検討する価値があるでしょう。
再審査とは、後遺障害の認定が受けられなかった場合、あるいは認定された後遺障害等級が低かった場合に、再度審査の請求を行い、その決定内容を変更してもらうための手続きです。
再審査を求める場合は、労災保険給付の決定の翌日から3ヶ月以内に、都道府県労働局に対して申請します。
再審査の申請が行われると、再び後遺障害認定の審査が行われ、当初の決定内容が覆されることがあります。
ただし、1回目の申請の際に提示した書類を再度提出しても、結果が変わることはまずありません。
再審査にあたっては、新たな審査の材料となる書類を提示する必要があるので、再審査を行う際は早めに準備をしなければなりません。
後遺障害の認定を申請したからといって、必ず認定されるわけではありません。
認定される人と認定されない人がいます。
後遺障害認定をスムーズに進めるためにも、認定される人とされない人の違いを見てみましょう。
後遺障害認定をされる人とされない人の違いのひとつは、後遺障害の認定基準を理解しているかどうかです。
認定基準を理解している方が、後遺障害認定の可能性はアップします。
後遺障害認定の申請をするとき、認定基準を理解していると、認定のために必要な証明やアピールをしっかり行えます。
後遺障害があることや後遺障害の内容、後遺障害と労災の因果関係など、証明しなければいけないところや、アピールすべき部分を正確にアピールできるかどうかは、後遺障害認定の際に重要になります。
自分で情報収集をする他、後遺障害の認定に詳しい弁護士にサポートしてもらい、的確な立証やアピールを行いましょう。
後遺障害の認定を受けるためには、必要な検査を受けていることが重要です。
特に後遺障害の認定のためには、CTやMRIといった精度の高い医療機器による検査が必要です。
精度の高い医療機器による検査は、審査結果で後遺障害の部位や状況などを確認しやすくなります。
確認しやすいということは、認定の際にその分だけ説得力を持つということです。
反対に精度の低い機器などで検査を受けてしまうと、後遺障害の状況や症状が確認できず、後遺障害を認定してもらえないケースがあります。
神経症状の場合は、CTやMRIなどでは確認できないことがあります。
そのため、筋電図検査など後遺障害を確認できそうな検査を行い、結果を提出することも重要です。
後遺障害認定に必要な検査を受けているかどうかで、認定結果に差が出る可能性があります。
後遺障害が確認できる検査をしっかり受けて、後遺障害認定の資料にしましょう。
後遺障害認定の申請には医師の作成した後遺障害診断書が必要です。
後遺障害診断書の他に、認定の可能性をアップさせるために、医師の意見書なども添付することがあります。
認定のために必要な医証をどれだけそろえられたかが、後遺障害の認定結果に関わってきます。
後遺障害の診断書は、決まった書式に医師が記入します。
このとき、医師に診断書をすべて任せてしまうと、後遺障害の認定を受けにくくなる可能性があるのです。
医師は病気や怪我の専門家ですが、後遺障害によって患者がどのような自覚症状を持っているかまでは分かりません。
後遺障害の自覚症状については、後遺障害認定を受ける側が医者にアピールする必要があります。
医師に丸投げしてしまうと、後遺障害の自覚症状などの記載が不十分で、認定が下りない可能性があるのです。
また、後遺障害の認定の際は診断書を補完するかたちで医師の意見書を添付してもらうと効果的です。
この二つは認定された人とされない人の差が出る部分です。
労災によって怪我をした後に、きちんと病院に通っているかなども後遺障害認定に関わります。
「忙しい」「面倒」このような理由から通院が乏しいと、後遺障害認定時に担当は「きちんと病院に通っていれば完治したのではないか」という心証を持ちます。
通院をさぼらずに適切な治療を受けているかどうかなど、治療に対する態度も見られるポイントで、認定を受けられる人と受けられない人の差が出る部分です。
後遺障害の認定をされるかされないかは、労働基準監督署への対応でも差が出ます。
認定される人は、「意見書なども提出する」「面談対策をしている」の二つをしているのが特徴です。
後遺障害認定の申請自体の際に申請書などを準備するだけでなく、医師の意見書なども合わせて準備すると、後遺障害の認定に効果的だといわれています。
認定される人は、申請書など必要な書類に加えて、医師の意見書なども準備して添付し、後遺障害認定の可能性を高くしているのです。
申請書などを提出した後は、認定を希望する人に対して面談が行われます。
面談で的確な回答ができるかどうかも重要です。
この二つで後遺障害の認定に差が出るので、しっかりとした対策が必要です。
労災の後遺障害認定には、時効が定められているため、手続きは時効までの期間に行わなければなりません。
時効間際になると、資料などの準備を急いで進めなければならないため、入念な準備ができない可能性があります。
障害補償給付の時効は、労災から5年です。
後遺障害認定されている人は、時効を理解して早めかつ入念な準備を行う傾向にあります。
労災の後遺障害認定に不満があれば、審査や再審査、訴訟が可能です。
しかし、審査や再審査を担当する機関も行政ですから、一度決まったことはなかなか覆りません。
一方、訴訟は司法である裁判所が管轄しますので、後遺障害認定を行政側の機関とは違う視点で見て、認定を覆す可能性があります。
後遺障害認定された人とされない人では、審査や再審査、訴訟をどこが司るか理解して使い分けられるかどうかという違いがあります。
労災による損害補償給付を受けても、後遺障害による損害をすべてカバーできるわけではありません。
後遺障害による損害については、会社に対して損害賠償が可能です。
後遺障害の認定を受けている人は「今後どうするか」も考えて動いており、後遺障害の認定を目指しながら、今後のためを考えて損害賠償請求の準備などもはじめることがあります。
会社は、労働者の労働によって利益を得ており、労働者が安全に労働できるように配慮する安全配慮義務があります。
安全配慮義務違反に対しては、損害賠償の請求が可能です。
損害賠償の請求は法的な専門知識が必要なため、今後を見据えて労災の後遺障害の認定手続きと合わせて弁護士に相談すれば、スムーズに損害賠償請求できます。
弁護士に相談することで、損害賠償金を早く受け取り、将来につなげることができるのです。
労災により怪我などをして後遺障害が残ると、障害補償給付を受け取れる可能性があります。
ただし、障害補償給付は後遺障害認定を受け、後遺障害の等級を付与してもらわないと受け取れません。
後遺障害の等級によって受け取れる金額に差も出るため、後遺障害認定と等級は重要です。
後遺障害認定の申請は弁護士に依頼すると、後の損害賠償請求なども視野に資料を準備できるというメリットがあります。
また、弁護士に依頼することで認定に有効な資料をスムーズかつ的確に準備できるというメリットもあるのです。
ぜひ一度、労災問題や後遺障害認定の申請を得意とした弁護士に相談してみることをおすすめします。