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最終更新日:2024/3/30

特定新規設立法人とは?要件や消費税の納税義務免除の特例について

森 健太郎
この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

この記事でわかること

  • 特定新規設立法人の概要
  • 特定新規設立法人の要件
  • 法人設立時に消費税が免除となる方法

新たに法人を設立したときや、個人事業主が法人成りした場合、原則として1期目と2期目は免税事業者になるため、消費税の納税義務がありません。

消費税は2年前の課税売上げが1,000万円を超えたときにかかるので、過去の売上げがない新規設立法人の場合、2期目までは免税される仕組みです。

ただし、法人設立時の資本金が1,000万円以上あると、1期目から課税事業者になります。

また、新規設立法人が「特定新規設立法人」に該当する場合、資本金が1,000万円未満でも課税事業者になるため、1期目から消費税を納めなければなりません。

今回は、特定新規設立法人に該当する要件や、消費税が免除になる方法などをわかりやすく解説します。

特定新規設立法人とは

特定新規設立法人とは、親会社などが50%超の株式を保有し、かつ親会社などの基準期間相当の課税売上高が5億円を超えている法人です。

特定新規設立法人に該当すると、資本金が1,000万円未満でも1期目から消費税の課税事業者になります。

たとえば、基準期間の課税売上高が5億円超の会社が100%出資の子会社を設立し、一部の事業を子会社に移した場合、子会社は特定新規設立法人に該当します。

かつては資本金1,000万円未満の子会社が免税事業者になったため、子会社に事業を移しておけば、親会社に課されていた消費税の一部を納める必要はありませんでした。

そこで、2014年4月1日以降に設立した法人が特定新規設立法人に該当した場合、課税事業者になるように法改正されています。

新設法人と特定新規設立法人の違い

名前が似ている新設法人と新規設立法人には、以下の違いがあります。

新設法人資本金が1,000万円以上で、その事業年度の基準期間がない法人
新規設立法人資本金が1,000万円未満で、その事業年度の基準期間がない法人

新設法人は1期目から消費税の課税事業者ですが、新規設立法人は2期目まで免除されます。

ただし、新設法人が特定新規設立法人に該当したときや、初年度開始日から6カ月間の課税売上げと人件費が1,000万円以上であれば、2期目から課税事業者となります。

なお、課税売上げは「消費税がかかる売上げ」を指すため、土地の譲渡や貸付け、有価証券の譲渡など、非課税取引は含みません。

特定新規設立法人の要件

新規設立法人が以下の特定要件をすべて満たすと、特定新規設立法人となります。

  • 他の者による支配権が特定要件に該当すること
  • 当該他の者の基準期間相当の課税売上高が5億円を超えていること

特定要件の判定には様々なパターンがあるので、具体例をみていきましょう。

他の者による支配権が特定要件に該当すること

特定新規設立法人を判定する特定要件とは、他の者が新規設立法人の株式総数の50%超を保有している、または出資総額が50%を超えている状況です。

「他の者」は親会社や兄弟会社、または個人を指しており、持ち株比率が50%を超えていれば子会社の実質的な支配権を握っているため、特定要件に該当します。

簡単にいうと、親会社が大株主になっていれば、資本金1,000万円未満の子会社を設立しても、免税事業者にはなれないということです。

では次に、特定要件に該当するパターンをいくつか解説します。

個人の株主は親族単位で特定要件を判定する

個人が新規設立法人の株主になる場合、親族単位で特定要件を判定します。

たとえば、個人Aが株式総数の50%超を保有している場合、新たに設立した法人は特定新規設立法人になります。

個人Aとその妻が30%ずつ株式を保有している場合も、家族単位では合計60%になるため、特定要件に該当します。

なお、家族には事実上の婚姻関係にある第三者や、同一生計の第三者も含まれるので注意しましょう。

100%支配している法人は同一グループになる

個人が100%支配している法人は同一グループになるため、それぞれの保有株式を合計して50%超になると、特定要件に該当します。

たとえば、個人Aが100%出資している法人Bがあり、個人Aが40%を出資、法人Bが20%を出資して新たな法人を設立すると、特定新規設立法人になります。

また、個人Aとその妻が50%ずつ出資している法人Cがあり、個人Aと法人Cが30%ずつ出資して法人を設立したときも、新たな法人は特定新規設立法人に該当します。

支配下法人の議決権割合で特定要件を判定する

個人と同一グループの法人が100%出資ではなくても、議決権割合が50%を超えている場合は特定要件に該当します。

たとえば、以下のような種類株式を発行しており、親族の保有割合が50%を超えているケースです。

  • 役員の選任や解任に関する議決権を有する株式
  • 役員報酬などに関する議決権を有する株式
  • 事業の全部または重要部分の解散や譲渡、分割や合併、株式移転などに関する議決権を有する株式
  • 剰余金や利益の配当に関する議決権を有する株式

持ち株比率が50%以下でも、種類株式の保有割合が50%超であれば、グループ内の法人は完全支配下にあるといえます。

他の者の範囲で特定要件を判定する

新規設立法人が特定要件に該当するかどうか、他の者の範囲も確認しておく必要があります。

仮にA社が100%出資したB社があり、B社が50%超を出資してC社を設立したケースを考えてみましょう。

C社がA社を他の者とした場合、A社が完全支配しているB社も他の者に含めるので、C社は特定要件に該当します。

C社がB社を他の者とする場合でも、B社だけで50%超を出資しているため、C社は特定新規設立法人の要件に該当します。

基準期間相当の課税売上高が5億円を超えていること

他の者や、他の者の特殊関係法人のどちらかが、基準期間相当に5億円超の課税売上げがあると、特定要件に該当します。

消費税は前々事業年度を基準期間としますが、以下の事業年度の課税売上げでも判定します。

  • 新規設立法人の設立日の2年前の日の前日から、1年を経過する日までの間に終了する各事業年度
  • 新規設立法人の設立日の1年前の日の前日から、新設開始日の前日までの間に終了する各事業年度
  • 新規設立法人の設立日の1年前の日の前日から、新設開始日の前日までの間に6カ月の期間の末日が到来する年の6カ月間

なお、特殊関係法人とは、他の者または他の者とその親族が100%出資した法人です。

仮にA社が100%出資したB社があり、A社が新たに50%超を出資してC社を設立した場合、C社からみると、A社が他の者、B社が特殊関係法人です。

法人設立時に消費税が免除となる場合

新たに法人を設立する場合、資本金の増資タイミングや、設立時期によっては消費税の免除期間が長くなります

資本金を2期目に増資する

法人設立後、早めのタイミングで増資したいときは、1期目よりも2期目をおすすめします。

資本金の額は期首に判定するため、新たな法人を資本金1,000万円未満で設立しても、1期目の途中で増資すると2期目には消費税を納めることになります。

増資が2期目の途中であれば、1期と2期は免税事業者になるため、消費税の負担を軽減できるでしょう。

1期目の期間を長くする

法人の設立時に事業年度を決定しますが、設立日から事業年度末までの期間が長くなると、免税事業者の期間も長くなります。

設立日から12ヶ月後の月末までを1期目とすると、おおよそ2年間は消費税が免税される可能性がありますので、1期目はできるだけ12ヶ月に近づけるように設定しましょう。

特定期間の課税売上高や人件費を1,000万円以下にする

1期目のスタートから6カ月間を特定期間といい、課税売上高または人件費のどちらかが、1,000万円以下であれば、2期目までは消費税が免除されます

人件費は従業員の給与や賞与ですが、役員報酬も含まれますので、役員報酬の設定の際に特定期間の規定を考慮することで、前半6カ月間の人件費を1,000万円以下にできるでしょう。

個人事業主は3期目に法人化する

免税事業者の個人事業主が3年目に法人化し、前述した特定期間の要件を回避することで、免税期間が最長4年間になります

ただし、令和5年10月以降、インボイス制度のスタートに伴い、インボイスの発行を必要とする法人は、消費税の納税義務が発生しますので、ご留意ください。

簡易課税制度や2割特例などを利用する

インボイス制度の開始により、免税事業者が課税事業者にならざるを得ないときは、簡易課税制度や2割特例を利用してみましょう。

簡易課税制度を利用すると、基準期間の課税売上げが5,000万円以下の事業者については、消費税の納税額を以下のように計算できます。

簡易課税による納税額:売上税額-(売上税額×みなし仕入率)

みなし仕入率は40~90%に設定されており、業種によって変わります。

本則課税の納税額は「売上税額-仕入税額」で計算されるので、場合によっては、節税になることもあります。

また、適格請求書を発行するために課税事業者になった場合、2割特例を利用できるため、売上税額の2割が消費税額となります。

まとめ

特定新規設立法人は要件がわかりにくいため、課税事業者にも関わらず、免税事業者だと勘違いしているケースがあります。

家族やグループ法人が出資に関わっており、新規設立法人の支配関係が複雑になると、特定要件に該当するかどうかの判定が難しくなるでしょう。

グループ法人の支配権についても、普通株式の比率だけではなく、議決権割合に影響する種類株式も把握しておかなければなりません。

消費税率は今後も引き上げられる可能性があるので、法人の節税方法に迷ったときは、ベンチャーサポートの無料相談を活用してください。

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