最終更新日:2024/3/18
会社設立時の登記申請書の書き方|項目別の記入例・見本と必要書類
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
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この記事でわかること
- 会社設立時の登記申請書の書き方が理解できる
- 申請時に必要な添付書類やそれらを準備する手順がわかる
- 会社設立の際に重要となる定款のポイントが理解できる
会社設立に向けて準備を進めている起業家の方の中には、登記申請書の書き方について不安を感じている方がいるかもしれません。
会社を設立して事業を営むには、法務局への登記が必須です。
通常の「人」とは異なる「会社」が権利や義務を行使するには、商業登記の手続きを経て法人格を取得しなければならないからです。
登記申請書の様式や必要書類は厳格に定められており、不備があれば登記完了までの時間がかかってしまいます。
今回は、会社設立する際の登記申請書の書き方について、記載すべき項目や具体的な記入例、必要書類の内容などについて見てきましょう。
目次
登記申請書とは
登記申請書とは、会社などの会社の設立に際して、名称や所在地、事業の目的などを法務局に登記するための申請書類です。
会社が権利や義務を行使するためには、法律上の人格(法人格)を得なければなりません。
会社設立登記をして初めて、事業を営むための権利・義務の主体となることができます。
会社法第49条に「株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する」と定められているとおり、登記申請はいわば会社設立の最終段階の手続きです。
つまり、申請に至るまでの手続きが適切に行われていることが、登記申請の前提といえます。
登記申請書は、設立する会社の本店所在地を管轄する法務局あてに、決められた様式を使って作成します。
書式が厳格に規定されている上、必要な添付書類も多岐に渡ります。
記載内容に不備がある場合や必要書類に不足があった場合には補正が求められ、登記手続きが滞るため、注意が必要です。
登記申請書の書き方・記入例
登記申請書は、記載事項と内容も細かく定められており、不備があると手続きは停滞してしまうため、慎重に作成しなくてはなりません。
また、書面により登記申請する場合で、登記申請書が複数頁になるときには、各頁の綴り目を跨ぐ形で「契印」をしなければなりません。
この際に使用する印鑑は、登記申請書に捺印するものと同一の印鑑です。
まずは法務局のWEBサイトから申請書式をダウンロードし、記入例と対比しながら記載内容を確認していくとよいでしょう。
登記申請書の記載事項
登記申請書の記載内容は会社の種類や組織形態によって異なるものの、基本的な項目を把握していれば対応が可能です。
基本的な記載内容は、以下のとおりです。
- 商号
会社の名称を記載し、上部にフリガナを記載します。
フリガナは法人の種類を除き、カタカナで記載します。 - 所在地
会社の所在地を正しい住居表示を用いて記載します。 - 登記の事由
会社が設立した事実を記します。
「令和○年○月○日発起設立の手続終了」などの記載が一般的です。 - 登記すべき事項
会社法に定められた、会社設立時に登記しなければならない項目です。
設立する会社が株式会社か合同会社かによって内容が異なる他、必ず登記が必要な事項と定めがある場合に「登記が必要な事項」に分けられます。
登記申請書に直接記入するのではなく、「別紙(別添CD-R)に記載のとおり」とした上で、書類もしくはCD-Rなどの記録媒体を別途添付するのが一般的です。
株式会社の設立時に必ず記載すべき事項は、以下のとおりです。
- ・商号
- ・本店所在地+支店
- ・目的
- ・資本金の額
- ・発行可能株式総数
- ・発行済み株式の総数+発行可能種類株式総数+各種種類株式の内容
- ・取締役の氏名
- ・代表取締役の氏名および住所
- ・公告の方法
- 課税標準金額
出資金、いわゆる資本金の額を記載します。 - 登録免許税
資本金の額に応じた登録免許税額を記載します。
登録免許税は150,000円または資本金額 × 0.7%のどちらか高い額です。 - 添付書類
登記申請書に添付する書類を列記します。
設立する会社の組織形態などに応じて異なるため、注意しましょう。 - 申請年月日
法務局に登記申請する年月日を記載します。
ここに記載する日付が「会社設立日」にあたります。 - 本店所在地・商号
- 代表者の住所・氏名
代表者本人が申請する場合には捺印が必要です。
代理人申請の場合は、代表者の捺印は不要で、代理人が捺印します。 - 本店所在地を管轄する法務局
本店所在地を管轄する法務局の名称を記載します。
参考:法務局「商業・法人登記の申請書様式」
登記申請書の記入例
登記申請書には、前述した事項を記載します。
株式会社の発起設立を例に挙げ、登記申請書を確認しておきましょう。
登記申請書の添付書類
会社設立登記には、登記申請書とともに必要書類を添付して申請します。
なお、設立時に複数の取締役がいるか、監査役を設置するかなど、会社の組織形態に応じてこれらの必要書類が異なる点に注意しましょう。
一般的な添付書類は、以下のとおりです。
- 定款(謄本)
- 登録免許税
収入印紙を台紙に貼付 - 発起人決定書・発起人会議事録
会社の商号や目的、設立時役員に関する事項など、発起人全員の合意によって決定したことを証明する書類 - 代表取締役の就任承諾書
代表取締役への就任を本人が承諾したと証明する書類 - 取締役の就任承諾書
取締役への就任を本人が承諾したと証明する書類 - 監査役の就任承諾書
監査役への就任を本人が承諾したと証明する書類 - 取締役の印鑑証明書
- 出資金の払込証明書
- 定款に定める資本金が所定の口座に振り込まれていることを証明する書類および通帳のコピーなど
- 登記すべき事項を記載した書面もしくは記録した媒体
登録免許税
登記申請の際に必要となる費用で、収入印紙もしくは領収証書を収入印紙貼付台紙に貼付して納めます。
税額は会社の種類によって異なり、株式会社であれば資本金額の1,000分の7もしくは15万円の高い方の金額、合同会社は資本金額の1,000分の7もしくは6万円の高い方の金額です。
法人登記を申請する流れ・必要書類
登記申請書の書き方がわかったところで、登記までに必要な会社設立の流れを見ていきましょう。
大まかにわけると大きく3つの流れになります。
- 定款の作成
- 資本金の調達
- 取締役などを選任
定款の作成
定款は「会社の憲法」とも呼ばれる、会社の組織体制や活動目的といった基本情報や、事業活動を行う上での基本的な規則などを定めた重要な書類です。
法律によって「必ず記載しなければならない」と定められた絶対的記載事項と、「定款に記載しなければ効力を持たない」とされる相対的記載事項、「法律上の規定はないものの、会社のルールとして定めることができる」とされる任意的記載事項で構成されます。
定款は実態に即して決めること
絶対的記載事項を充足していれば定款として最低限の機能を果たすことができますが、その後の事業運営や資金調達の際には、実態に即した適切な定款を定めていることが必要とされるケースが少なくありません。
たとえば許可や免許が必要な事業を行おうとした場合、定款の定めが具体性に欠けていれば、許可基準を満たさない可能性も生じます。
このため定款を作成する際には、将来的な会社像を見据えて検討することが大切です。
株式会社の定款は認証が必要
設立する会社が株式会社の場合には、作成した定款は公証人の認証を受ける必要があります。
定款認証は、定款の内容に適法性や、発起人全員が同意していることなどを確認する手続きです。
株式会社の設立登記申請の際には、認証を受けた定款を添付しなければなりません。
なお、定款は課税文書にあたるため、紙で定款を作成した場合には4万円の収入印紙を貼付しなければなりません。
これに対し、データとして作成した電子定款の場合は課税文書に該当せず、印紙税が不要であることも知っておきましょう。
資本金の調達
法律上は、たとえ資本金が1円であっても会社の設立は可能です。
しかし現実的には、資本金は会社の信用を計る目安の1つであり、設立当初の初期費用や運転資金が必要となることからも、資本金が1円ということは一般的ではありません。
会社設立の際には、出資予定額をあらかじめ決めた上で、発起人がすべての出資を引き受ける「発起設立」か、不特定多数の出資を募る「募集設立」のいずれかの方法で資本金を調達することになります。
発起設立と募集設立では、設立までの手順に違いがあります。
発起設立の場合には、発起人がすべての出資予定額を支払うため、払込が完了した後にはそのまま後述する取締役の選任に着手することが可能です。
一方の募集設立の場合には、発起人が出資金を払い込んだ後、他の出資者を募ります。
これに応募した引受人が期日までに出資金を払い込み、口座を保有する金融機関から払込金保管証明書の発行を受けなければなりません。
取締役などの選任
会社の所有と経営を分離して考える株式会社では、発起人が会社の経営を行う主体となる人物を選びます。
発起人自身がその会社を経営することももちろんできますが、出資者以外から選任することも可能です。
取締役は発起人の議決権の過半数で決定しますが、定款に記載する方法も認められています。
定款に定めた場合には、発起人の出資が完了した時点で選任されたとみなされます。
選任された設立時取締役は、発起人による出資や募集株式の払い込みが完了していること、設立の手続きが法や定款に則して行われていることなどを調査しなければなりません。
上記のような手続きを経てることで会社の組織や目的が具体的に構成され、問題がなければ会社設立登記の申請が可能となります。
実体が形成された会社が、登記によって法人格を取得することで権利・義務の主体として成立します。
なお、合同会社などの持分会社の場合には、株式会社と違って定款の認証や取締役の選任などの手続きが必要ありません。
出資者と経営者が同一であるため、出資者と出資金額を記載した定款を作成すれば会社の実体が生まれるからです。
ただし合同会社の場合、出資者は株式会社と同様に有限責任社員であるため、全額の出資が求められます。
商業登記の申請方法
法人登記申請書の提出方法は、大きく分けて3通りです。
1つは法務局の窓口に持参する方法、2つ目は申請書の郵送そして3つ目はオンライン申請です。
いずれにもメリットとデメリットがありますから、それぞれの手続きの流れと特徴を知っておきましょう。
法務局の窓口での申請
窓口での申請は、設立する会社の本店所在地を管轄する法務局で行います。
登記申請書とともに前述の必要書類一式を持参し、直接提出する方法です。
申請に時間と労力を要するものの、提出書類の不備などがあれば、その場で指摘してもらえる可能性があることなどがメリットといえます。
一般的には7~10日程度で登記が完了しますが、申請書の不備があり修正を求められた場合にはさらに日数が必要です。
この場合、期限内に必要な補正を行わなければなければなりません。
郵送による申請
本店所在地を管轄する法務局あてに、登記申請書と必要書類を郵送する方法でも申請が可能です。
窓口での申請と同様に、書類到着後7~10日間程度で登記が完了します。
郵送の際には、レターパックや簡易書留など、配達状況を追跡できる手段を用いることが大切です。
窓口での提出と同様に、申請書に不備があった場合には登記官から連絡があります。
その場合は、補正した書面を郵送するなどの方法で対応しましょう。
オンライン申請
登記・供託オンライン申請システム「登記ねっと 供託ねっと」を利用することで、オンラインでの申請も可能です。
事前にソフトウェアのインストールや利用者情報の登録が必要になるものの、操作手引書に従って入力をすることでいつでも申請が可能であること、補正が必要な場合もオンライン上で対応できることなど、活用できれば非常に利便性の高い仕組みといえます。
登記申請だけでなく、登記事項証明書や印鑑証明書の請求や供託の申請などもオンラインで対応できるため、設立した会社の事業を行う上でも活用の場面が見込まれるからです。
ただし、電子申請などのPC操作に慣れていない場合には、オンライン申請は難しく感じるかもしれません。
この場合には、窓口か郵送での書面を用いた申請の方が不安は少ないともいえるでしょう。
参考:法務局「登記ねっと 供託ねっと」
まとめ
法務局のWEBサイトからダウンロードした申請書をもとに手続きを行えば、登記申請自体はそれほど難しくないかもしれません。
しかし前述した通り、登記申請は会社設立の最終段階の手続きであり、そこまでの手続きが適切に完了していることが大前提です。
また、事業内容に応じた内容の定款を作成して登記をしなければ、その後の会社の運営に支障をきたす可能性もゼロではありません。
例えば建設業を営む会社であれば、建設業法に則した業種を適切に記載しなければ、建設業許可を取得できない可能性が生じます。
登記手続きに不安を覚える方はもちろん、できるだけスムーズに新たな会社のスタートを切るためにも、専門家のアドバイスを受けるのも有効な選択肢の1つです。