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最終更新日:2023/6/29

農業法人として会社設立するメリット・デメリット【費用や設立の流れとは】

森 健太郎
この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

この記事でわかること

  • 農業法人と一般法人との違いについて知ることができる
  • 農業法人を設立することのメリットとデメリットがわかる
  • 農業法人を設立する流れや必要書類、費用などを知ることができる

農業法人という名称を聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。

農業法人という名前のとおり、農業に関係のある法人であることはわかりやすいですね。

しかし、具体的にどのような組織で、一般法人とは何が違うのかまで知っている方は少ないのではないでしょうか。

そこで、農業法人とはどのような組織で、どのように設立するのか解説していきます。

また、設立にかかる費用についてもご紹介していきます。

農業法人とは?一般法人の違いとは

農業法人とは、法人の形態で農業を営む事業者の総称です。

農業を営む法人には、正式名称が「○○株式会社」となる会社法人と、「○○農事組合法人」となる農事組合法人があります。

会社法人も農事組合法人も、農業経営を行う法人はすべて農業法人と呼ばれます

農業法人の中でも、農地を取得できる要件を満たした法人は、農地所有適格法人と呼ばれます。

ただ、農地を借りて農業を営む法人や農地を利用しない法人もあるため、すべてが農地所有適格法人になるわけではありません。

一方、一般法人とは、「□□商事株式会社」というような株式会社や合同会社を指す場合が多いです。

これらの法人は、農業を事業として行っていないことが、農業法人との大きな違いとなります。

また、一般法人はどのような理由があっても、農地を保有することはできません

農業法人として会社設立するメリット・デメリット

農業法人は、会社法にもとづく株式会社や合同会社が多くある一方で、一般法人とは異なるものであることがわかりました。

そこで、農業法人として会社を設立することのメリットとデメリットについて解説していきます。

農業法人を設立するメリット

農業法人を設立するのは農業に従事している個人の場合もありますし、異業種から参入する法人の場合もあります。

個人の方が農業法人を設立する際のメリットとしては、農業経営が家計と分離され、正確に農業経営の状況を把握できることです。

また、法人として社会保険に加入するため、人材確保ができることもメリットとなります。

さらに、外部から優秀な後継者を受け入れることができるため、円滑な事業承継が図れる他、相続税の負担にも影響されません

一方、異業種から農業法人に参入する場合は、農地を所有しやすくなるメリットがあります。

農地所有適格法人となるためには、農業からの売り上げが半分以上なければなりませんが、異業種の場合はこの限りではありません。

農業法人を設立し、いくつかの要件をクリアすることで農地を賃借することができることが大きなメリットといえます。

農業法人を設立するデメリット

農業法人を設立するデメリットは、その設立や運営に費用がかかることです。

特に、これまで個人事業として農業を行ってきた人の場合、法人化することで経費の負担が増加する可能性が高くなります。

また、個人事業として税金計算を行うより、法人として税金計算をする方が税負担が増えることがあります。

規模が小さいほど、法人化は税負担の増加につながる可能性が高いため、注意が必要です。

農業法人を設立する流れ・必要書類

農業法人を設立するためには、どのような手続きが必要となるのでしょうか。

会社として農業法人を設立する場合と、農事組合法人を設立する場合とに分けて、その設立の流れを確認していきましょう。

会社としての農業法人を設立する流れ

株式会社や合同会社として農業法人を設立する場合です。

新規に農業に参入する場合や、個人事業の方が単独で法人化する場合は、基本的に会社を設立する必要があります。

(1) 事前準備を行う

会社を設立する際には、その会社の基本的事項を決定しなければなりません

まずは、株式会社にするか合同会社にするか、あるいは別の会社組織にするかを決定します。

また、資本金の額や事業内容、誰が役員になるのかといった内容を決めていきます。

これらの内容は、後ほど定款を作成する際に必要となるため、じっくり考えて決めていきましょう。

また、同一の所在地に同一の商号を持つ法人を設立することはできません。

新しく設立する法人の商号が使えるかどうかを、法務局で調査することができます。

この調査結果を参考にして、会社の商号も決定する必要があります。

(2) 発起人会を開催する

会社の基本的事項を決定したら、発起人会を開催します

発起人会を開催した記録として、発起人会議事録(発起人が1人の場合は発起人決定書)を作成し、発起人が押印します。

(3) 定款を作成し認証を得る

会社の目的や商号、本店所在地、資本金などの事項を決定し、定款に記載していきます。

定款には必ず記載しなければならない絶対的記載事項がある他、定款に記載しなければ効力がない相対的記載事項もあります。

専門家に相談するなどして、有効な定款を作成するようにしましょう。

特に農地所有適格法人は、株式の譲渡制限についての定めが必要となるため、忘れないようにしましょう。

また、作成した定款は、公証役場で公証人による認証を受ける必要があります。

(4) 出資を行う

発起人は、会社の設立時発行株式を引き受けたら、出資に係る金額を全額支払う必要があります。

指定された預金口座に、資本金となる金額の預け入れを行います。

(5) 役員等を選任する

出資を行ったら、発起人は設立時の取締役などの役員を選任します

設立時役員等を選任するためには、発起人の議決権の過半数で決定されます。

選任された設立時取締役は、出資の履行が完了していること、設立手続きが法令や定款に違反していないことを確認します。

また、取締役会設置会社に該当する場合は、取締役の中から代表取締役を過半数の決議により選定します。

(6) 設立登記を行う

設立登記は、設立時取締役による調査が終了した日か、発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内に行う必要があります。

この時、登記申請書を作成する他、定款や発起人の決定書、取締役等の就任承諾書、払い込みを証する書面などを添付します。

また、取締役になる人は印鑑証明書を提出する必要があります。

設立登記が完了すれば、会社の登記簿謄本を取得することができるようになります。

(7) 各種届出を行う

会社の設立が終了したら、様々な官庁に対して会社を設立した旨の届出を行います

税務署、労働基準監督署、年金事務所の他、都道府県や市町村にも届出が必要です。

提出先ごとに定められた届出書の他、登記簿謄本や定款などの書類の提出が求められる場合もあります。

農事組合法人として農業法人を設立する場合

農事組合法人は、農業に従事している人が3人以上発起人となる必要があります

そのため、新たに農業に参入するような場合には利用できない形態となるため注意が必要です。

農事組合法人を設立する際の流れをご紹介していきます。

(1) 事前準備を行う

会社の場合と同じように、定款に記載する事業の目的、業務内容などを決定しておきます

この他、創立総会の開催準備や、その際に決定する事項の確認を行います。

(2) 創立総会を開催する

農事組合法人を設立するための創立総会を開催します

この総会に参加するのは、農事組合法人の発起人であるため、発起人会とも呼ばれます。

定款の作成、理事の選任、理事に対する役員報酬限度額などの内容を創立総会で決議します。

また、選任された理事が設立事務を引き継ぐこととなるため、その事務の引渡しを行います。

(3) 組合員による出資の払い込みを行う

農事組合法人の組合員となる者は、出資金を組合に対して払い込む必要があります

農事組合法人が設立されたら、組合員は出資の払い込みを行いましょう。

(4) 設立登記を行う

最初に組合員からの払い込みが行われたら、農事組合法人の設立登記申請書を作成し、2週間以内に、法務局に申請します

またこの時、定款や出資の払い込みがあったことを証明する書類、役員選任決議書、就任承諾書を添付します。

創立総会の開催時に作成された書類の他、金融機関の証明書などが必要になる場合もあります。

払い込みからの期間が2週間しかないため、早めに準備に取り掛かるようにしましょう。

設立登記が完了すると、法務局で登記簿謄本を取得することができるようになります。

(5) 各種届出を行う

農事組合法人は、「農事組合法人設立届」を作成し、その所在する都道府県あるいは農林水産省に届出を行う必要があります。

この時、登記簿謄本、定款、事業計画書、設立経過報告書、設立総会の議事録謄本、組合員名簿を添付しなければなりません。

すでに作成している書類であれば、その書類を準備するだけで済みます。

ただ、この設立届のために作成が必要となる書類もあるでしょうから、設立登記を行ったら、引き続きその書類の準備をしておくようにしましょう。

なお、設立登記が完了してから2週間以内に、設立届を提出しなければなりません。

また、税務署や年金事務所などの行政庁に対しても届出を行う必要があります

この時、それぞれの役所で定める設立届などの書類を作成しなければなりません。

この他、登記簿謄本や定款などの書類を添付する必要があるため、準備しておきましょう。

農業法人として会社設立するのにかかる費用・内訳

農業法人として会社設立を行う際には、どの程度の費用がかかるのでしょうか。

農業法人であっても、その中身は一般法人を設立するのと変わりはありません。

そこで、株式会社として農業法人を設立する際に必要となる費用の目安を確認しておきます。

法定の費用

株式会社の設立にかかる法定費用は、定款認証にかかる費用と登記にかかる費用の2つに分けることができます

公証役場での定款認証にかかる費用は、認証手数料として50,000円(※)、印紙代40,000円、謄本交付料2,000円となります。

※ 資本金の額等が100万円未満の場合「3万円」、資本金の額等が100万円以上300万円未満の場合「4万円」、その他の場合「5万円」となります。

そのため、合計すると92,000円の費用がかかります。

また、法務局での設立登記には、登録免許税が発生します。

「資本金の額×0.7%」が登録免許税の額となりますが、最低150,000円とされているため、多くのケースでは150,000円となります。

これらを合計すると、株式会社設立の法定費用として、少なくとも242,000円が発生することとなります。

設立代行費用

株式会社を設立するためには、定款を作成するなど、専門家に依頼しなければ難しい内容のものもあります。

そこで、会社設立の際には、司法書士などの専門家に代行してもらうことが多いでしょう。

当然、専門家に依頼すればそのための費用が発生します。

その金額は、法定費用のように一律で定められているわけではなく、それぞれが独自に金額を定めています。

一般的には、株式会社の設立を依頼する場合、100,000円~200,000円程度になることが多いでしょう。

まとめ

農業法人として会社を設立することには、多くのメリットがある一方でデメリットもあります。

ただ、相続や後継者問題に左右されず、継続的に農業を行うためには、農業法人とすることには大きなメリットがあります

農業法人を設立するためには、多くの手続きを経なければなりません。

決めなければならないことや必要な書類が多くあるため、失念することのないようにしましょう。

会社設立の手続き

会社設立の手続きは、設立内容の決定から始まり、事業目的のチェック、定款認証、出資金の払い込み、法務局への登記申請を行います。株式会社の設立、合同会社の設立立手続きの基本的な流れを知り、スームーズに手続を行えるにしましょう。

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会社設立内容の決定

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