最終更新日:2022/6/6
【法人登記】バーチャルオフィスは登記住所にも使える?メリットや注意点・選び方について解説
ベンチャーサポート司法書士法人代表司法書士。
東京司法書士会所属(登録番号:第7627号)
1987年生まれ、香川県出身。
青山学院大学卒業後、都内の司法書士法人に補助者として勤務しながら、2014年司法書士試験に合格。合格後から今日に至るまで、相続分野を専門とし、多岐にわたる知識、経験を培う。
2018年ベンチャーサポート司法書士法人の代表社員に就任。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-tana
この記事でわかること
- バーチャルオフィスとはどのようなものであるか知ることができる
- バーチャルオフィスで法人登記する際のメリットとデメリットがわかる
- バーチャルオフィスで登記する際の注意点や選び方がわかる
バーチャルオフィスというサービスについてご存知でしょうか。
できるだけ少ない費用で、法人を設立しようとする際に選択肢となるものであり、徐々にその認知度が上がっています。
ここでは、バーチャルオフィスとはどのようなものであるかを説明していきます。
また、バーチャルオフィスで法人登記する際の注意点や、バーチャルオフィスの選び方についても解説していきます。
目次
バーチャルオフィスとは?
バーチャルオフィスとは、文字どおり「仮想の事務所」と表現することができます。
会社を設立する際に、事務所などを借りる場合には、その住所で法人の登記を行います。
しかし、現在はまとまった事務所を必要としない業種も多くあるため、自宅で仕事をする人も増えています。
ただ、会社の所在地だけは都心部にしたり、自宅とは別の住所にしたりする場合に利用できるのが、バーチャルオフィスです。
バーチャルオフィスを利用して入手した住所には、実際には事務所や店舗はありません。
つまり、会社の設立にあたって必要となる本店所在地の住所を入手できるサービスです。
また、電話番号やファックス番号などの情報をレンタルすることもできます。
レンタルオフィスというサービスもありますが、こちらは実際に仕事ができるスペースや電話、ファックスなどがあります。
バーチャルオフィスの場合、仕事に使うための場所がないケースも多く、あくまで登記を行うことに主眼が置かれています。
ただ、最近はバーチャルオフィスの中にも、必要に応じて場所を借りられるものがあり、両者の差は徐々になくなりつつあるのです。
バーチャルオフィスでの登記は可能か
バーチャルオフィスを利用して、本当に法人の設立登記を行うことができるのか、疑問に思う方もいるかもしれません。
バーチャルオフィスにより住所を利用できるとは言っても、実際にその住所に何があるのかもよくわからない状態です。
そのような場所に会社を設立することが本当に可能なのか、疑問を持ち不安に感じるのは当然と言えば当然です。
しかし、バーチャルオフィスを利用して法人の設立登記を行うことに、法的な問題はありません。
実際、法人の本店所在地にする場所については特に制限はありません。
そのため、事務所や店舗など実際に会社が利用する場所だけでなく、自宅を本店所在地として登記することも多くあります。
また、本店というイメージとは程遠い倉庫の場所や、まったく関係のない知人の住所で登記することもできるのです。
バーチャルオフィスを登記する場合のメリットとは
バーチャルオフィスを利用して法人の設立登記を行うことには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
どのようなメリットがあるのかを理解して、そのメリットを最大限活かすことができるような利用法を考えましょう。
初期費用を抑えて法人を設立できる
会社を設立して自宅以外の場所に事務所を構える場合、様々な費用が発生します。
事務所の家賃や敷金・礼金などの費用、事務所内の備品や電話などの通信機器の購入費用など、数百万円程度かかります。
また、会社の設立登記にも費用がかかるため、会社の売上が何もない状態で設立者が負担しなければなりません。
この点、バーチャルオフィスを利用すれば、会社設立のための支出を最小限に抑えられます。
また、会社に資産がないからといって利用できないということもありません。
設立準備も手早く済ますことができ、バーチャルオフィスの場合、契約から1週間程度で登記の手続きを行うことができます。
一等地を会社の本店所在地にできる
都心にある一等地の住所で事務所を開設する場合、その家賃は非常に高くなってしまいます。
そのため、会社を設立する段階で一等地の住所を本店所在地とすることは、現実的には難しいのです。
しかし、バーチャルオフィスを利用すれば、非常に少ない費用で一等地の住所を本店とすることができます。
誰もが知るような場所に会社を設立することで、会社のイメージアップにつなげることができるのです。
自宅の住所を知られない
会社の業務のために事務所を借りる必要がない場合、自宅を本店所在地とすることが多いでしょう。
しかし、法人の登記情報は法務局で誰でも取得することができる情報であるため、自宅を公開している状態となってしまいます。
一方、バーチャルオフィスを利用すれば、自宅と異なる住所を法人の本店とすることができます。
そのため、自宅の住所を誰かに知られる心配もなく、公私を完全に切り離すことが可能となるのです。
様々なサービスを利用できる
バーチャルオフィスのサービスは、単に住所を利用できるだけではありません。
実際にその住所に郵送物が届いたり、電話がかかってきたりする場合には、その対応をしてくれます。
また、バーチャルオフィスの住所は、登記以外の様々な申請にも利用することができますし、ホームページや名刺にその住所を記載することも可能です。
そのため、住所を使い分ける必要もなく、非常に大きなメリットをもたらしてくれるのです。
バーチャルオフィスを登記する場合の注意点について
新しく設立した会社がバーチャルオフィスを利用することについては、多くのメリットがあることがわかりました。
ただ、その利用にあたっては注意すべき点もいくつかあります。
本店所在地をバーチャルオフィスとした場合の注意事項は以下のとおりです。
業務スペースや来客対応の場所を別に確保する
バーチャルオフィスを利用する場合、仕事を行うためのスペースや倉庫を別に確保する必要があります。
また、会社の専用スペースはないため、来客対応のための場所を準備しなければなりません。
来客対応が必要となるのであれば、会議室などを借りることができるバーチャルオフィスを選ぶのも選択肢となります。
金融機関に対する信用力が低くなる
金融機関で法人の口座を開設する際には、会社の実態を調査されることとなります。
しかし、新しく設立された会社で本店所在地に事務所もない場合、その会社の実態がないものと判断される可能性があるのです。
また、金融機関から融資を受ける場合にも審査が行われ、バーチャルオフィスを利用していることはマイナスになる可能性があります。
ただし事業内容・会社の将来性が伝われば、「この会社は信頼できる」と判断してもらえるかもしれません。
口座開設や融資をスムーズに受けるためには、事前に会社の内容を説明するような資料の提出が必要になるでしょう。
許認可が受けられない場合がある
許認可が必要となる業種の場合、その許認可を得るために書類を提出しなければなりません。
そのような許認可を必要とする業種の中には、書類に事務所の概要や広さを記載しなければならないものがあります。
しかし、バーチャルオフィスでは事務所の概要や広さを記載することができません。
そのため、許認可を得るための申請書を作成することができず、許認可が得られないケースがあるのです。
人材派遣業や不動産業などは、このような業種の代表例です。
バーチャルオフィスの種類
バーチャルオフィスには、複数の種類があります。
自分の会社に合ったオフィスの種類を選ぶことが大切です。
下記では、バーチャルオフィスの種類について紹介します。
事務所の住所のみ
事務所の住所だけをレンタルできるオフィスになります。
あくまで住所の名義貸しのみで、他の種類のバーチャルオフィスに比べてシンプルです。
しかし住所のみのレンタルになると「郵便物の受け取りができない・会議室が利用できない」といったデメリットもあります。
法人登記用に住所だけレンタルしたい場合は問題ないですが、そのほかの機能が必要な場合は注意しましょう。
郵便物の受け取りを利用できる
バーチャルオフィスの住所で法人登記した場合、会社宛の郵便物はバーチャルオフィスの住所宛に届きます。
バーチャルオフィスによって、郵便物の受け取り・転送をサービスとして提供している場合もあります。
オフィスによって違いますが、郵便物がきたことを通知してくれたり、月1回まとめて転送してくれたりします。
郵便物がきたらすぐ転送するサービスもありますが、その分料金は高くなります。
電話番号を利用できる
法人を運営するのに、電話番号も必要になります。
「携帯電話を使うから、固定電話では連絡は取らない」という人もいるかもしれませんが、銀行・大手企業と取引するときには、固定電話を利用することもあります。
例えば銀行に融資を依頼する際は、依頼書類に固定電話の番号を記載する箇所があります。
そこでおすすめなのが、電話番号が利用できるバーチャルオフィスです。
電話番号が利用できるバーチャルオフィスであれば、わざわざ自分で固定電話を契約してくても大丈夫です。
バーチャルオフィスによっては、電話転送機能を使って、固定電話宛にかかってきた着信を個人の携帯電話に自動転送してくれます。
電話をかけてきた相手は、転送されたことが分からないようになっているため、安心して利用できます。
電話がそのまま転送されたり、不在時にバーチャルオフィスに常駐の方が電話を取ってくれたりと、複数の電話サービスがあります。
会議室を利用できる
バーチャルオフィスでは、会議室を提供している場合もあります。
すべてリモートで仕事をできる人ならいいですが、対面での打ち合わせ・商談は仕事をするうえで欠かせません。
事務所を構えてれば問題ないですが、バーチャルオフィスで法人登記した場合は、打ち合わせ場所に困ると思います。
そこで会議室が利用できるバーチャルオフィスであれば、打ち合わせ・商談などの来客があっても安心して対応できます。
バーチャルオフィスによっては、受付システムがあり友人対応してくれる場合もあるので、事前にチェックしておきましょう。
バーチャルオフィスを選ぶ方法
バーチャルオフィスのサービスを提供している会社は数多くあり、物件の数も増えています。
そのため、どのようにバーチャルオフィスを選べばいいのか悩んでいる方もいることでしょう。
バーチャルオフィスを選ぶ際のポイントとしてまずあげられるのは、住所や電話番号です。
住所となっている場所が繁華街の一角であったり、IP電話しか利用できなかったりするのでは不都合な場合があります。
また、郵便物の受け取りや会議室の利用のためにバーチャルオフィスに出かける機会もあるため、アクセスも比較しておきましょう。
利用する目的や必要性を考えて、バーチャルオフィスの住所や電話番号を選ばなければなりません。
また、サービスの内容についてもよく比較する必要があります。
電話の転送や郵便物の取り扱い、会議室の利用条件などは、バーチャルオフィスによって異なります。
自身のビジネススタイルに合ったバーチャルオフィスを探すようにしましょう。
バーチャルオフィスで法人登記する手順
大まかな流れとして、バーチャルオフィスを契約して、そのあとに登記を行います。
- ・バーチャルオフィスを選ぶ
- ・実際に申し込む
- ・審査を受ける
- ・許可をもらい決済する
- ・契約手続きを完了
- ・住所が利用できるようになる
- ・法人登記する
- ・バーチャルオフィスに届出る
バーチャルオフィスに申し込んでから、住所が利用できるようになるまで、1週間程度かかります。
あらかじめ余裕を持って、手続きを行いましょう。
バーチャルオフィスでの法人登記が向いている人
下記ではバーチャルオフィスでの法人登記が向いている人を紹介します。
スピード感を持って事業を進めたい
会社を設立したばかりだと、事業を軌道に乗せるまでが大変です。
事務所や設備をしっかり構えてしまうと、それだけで初期費用が高くなります。
初期費用がかかれば、事業の経費としてお金を使えません。
そこでバーチャルオフィスを利用すれば、初期コストを格安に抑えられるため、事業にお金を使えます。
会社設立初期に「スピード感を持って事業を進めたい!」と思っているなら、バーチャルオフィスを利用して、初期コストを抑える方法がおすすめです。
事業に店舗・事務所が必要ない
店舗や事務所が必要ない事業を選んでいる人は、バーチャルオフィスの利用がおすすめです。
例えばインターネットの事業で、基本は自宅で仕事をしているケースもあるでしょう。
自宅で法人登記をしてしまうと、自宅の住所が会社情報としてバレてしまうため、バーチャルオフィスの利用がおすすめです。
もし事業拡大して、事務所や店舗を準備したら、そのときに登記変更すればいいだけです。
認可の必要ない事業を選んだ
業種によっては、実態のある住所が必要になります。
- ・古物商
- ・税理士、弁護士、司法書士
- ・職業紹介業
- ・人材派遣業
- ・建設業
- ・不動産業
- ・探偵業 など
これらの業種を選んだ場合は、バーチャルオフィスが利用できません。
ただ認可の必要ない事業であれば、バーチャルオフィスの住所で法人登録できます。
自社事業が認可を必要としていない場合は、バーチャルオフィスの法人登記でコスト削減するのがおすすめです。
法人登記後の住所変更はできるのか?
最初はバーチャルオフィスで法人登記をして、あとから事務所を契約して登録住所をするケースがあるかもしれません。
法人登記後の住所変更はできます。
変更前の住所と変更後の住所が同じ法務局の管轄内だと3万円、管轄外だと6万円になります。
ただし法人登記した際の条件によって、他の手続きが必要になるかもしれません。
不安な方は、専門家への相談がおすすめです。
まとめ
会社の設立にかける費用を抑えるため、バーチャルオフィスを利用するのは大変効果があります。
会社の設立登記を行う際にも、バーチャルオフィスが障害になることはないため、安心して利用することができます。
バーチャルオフィスの選択肢は増えているので、ビジネススタイルに合ったものを選ぶようにしましょう。