記事の要約
- 内縁の妻や夫のような内縁関係のパートナーに相続権はない
- 内縁関係のパートナーには認められない権利もある
- 内縁関係のパートナーに財産を渡す場合は遺贈などの手段がある
婚姻届を出していない状態で正式な夫婦と同様の共同生活を営んでいる関係を、事実婚や内縁関係といいます。
内縁の妻や夫など内縁関係のパートナーには、法律上の相続権はありません。
しかし、「生前贈与」や「遺贈」、「死亡保険金」の受取人への指定など、内縁関係のパートナーでも財産を受け取る方法はあります。
この記事では、内縁関係における相続上のデメリットをはじめ、内縁の妻(夫)遺産を遺すための対策などについて詳しく解説します。
目次
内縁の妻や夫のような内縁関係のパートナーに相続権はない
内縁関係とは、婚姻届を提出していないものの夫婦同様の関係を持ち、共同生活を営んでいる状態を指します。
このような内縁関係にある人が亡くなった場合、そのパートナーに相続権は認められていません。
民法において「被相続人の配偶者は常に相続人となる」と定められていますが、この場合の配偶者は「婚姻届を提出した戸籍上の配偶者」に限定されています。
したがって、たとえ何十年も夫婦同然に暮らしているような状況であっても、被相続人の遺産を内縁の妻(夫)が相続することはできません。
また、被相続人の「相続人ではない」もしくは「戸籍上の配偶者ではない」等の理由から、内縁の妻(夫)には以下の権利が認められない点も注意が必要です。
- 寄与分が認められない
- 遺留分が認められない
- 配偶者居住権を適用できない
ここからは、相続における内縁の妻(夫)に認められない権利について、それぞれ解説していきます。
参考被相続人と内縁の妻(夫)の間に生まれた子の相続権
内縁の妻(夫)との間に生まれた子は、被相続人との法律上の親子関係の有無や続柄によって、相続権の有無が異なります。
- 内縁の妻(子の母親)が亡くなった場合
- 子は分娩の事実によって、母親の法定相続人となります。
- 内縁の夫(子の父親)が亡くなった場合
- 父親がその子を認知していなければ、子は父親の法定相続人にはなれません。
子が内縁の夫の法定相続人となるには、「市区町村役場に認知届を提出する」「子を認知する旨を遺言書に記載する」等の手段で、父親が認知を行わなければなりません。
認知によって父子間に法律上の親子関係が認められることで、子は相続権を有することとなります。
配偶者居住権を適用できない
「配偶者居住権」とは、被相続人が所有していた建物に配偶者が居住していた場合、一定の要件を満たしていれば、被相続人が亡くなったあとも無償でその建物に居住し続けることができる権利です。
この配偶者居住権には、「残された配偶者が被相続人の法律上の配偶者であること」が成立要件に含まれているため、内縁の妻(夫)には適用できません。
そのため、内縁関係のパートナーが被相続人名義の所有物件に住んでいる場合、その家を他の法定相続人が相続すると、将来的に建物の明け渡しを求められる可能性があります。
寄与分が認められない
「被相続人の介護を献身的に行っていた」など、被相続人の財産の維持や増加に貢献した相続人が、その貢献度に応じて法定相続分を超える遺産を受け取れる制度が「寄与分」です。
この寄与分の対象となるのは「法定相続人」に限定されているため、相続権を持たない内縁の妻(夫)は寄与分を主張することはできません。
また、相続人以外の親族が被相続人に対して同様の貢献をしていた場合、金銭の支払いを請求できる「特別寄与料」という制度があります。
しかし、この請求が認められるのは「民法上の親族(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)」に限られます。
内縁の妻(夫)は該当しないため、特別寄与料の請求もできません。
遺留分が認められない
遺留分とは、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人に対して、最低限保障された遺産の取り分のことです。
この遺留分を請求する権利も、内縁の妻(夫)には認められません。
たとえば、被相続人が「自身の全財産を別の誰かに相続させる」と遺言書に記載していたとします。
この場合、法律婚の配偶者であれば遺留分を請求して一部を取り戻せますが、内縁の妻(夫)にはその権利がありません。
内縁の妻(夫)が遺産を受け取るときの相続税の注意点

内縁の妻(夫)に相続権がないため、パートナーが遺産を遺したいときには、遺贈などの手段をとらなければなりません。
内縁の妻(夫)に遺贈した財産を含めた被相続人の遺産総額が基礎控除額(非課税枠)を超えると、相続税がかかります。
相続税の基礎控除を計算する際「法定相続人の数」に含まれない
相続税の基礎控除額は、「3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)」の計算式で求めますが、この「法定相続人の数」に内縁の妻(夫)は含まれません。
そのため、戸籍上の配偶者が相続人に含まれている場合と比べて、相続税が非課税となる枠が600万円少なくなります。
内縁関係のパートナーに相続税の支払い義務が生じた場合、以下の理由から相続税負担が増してしまう点に注意が必要です。
- 相続税の特例や税額軽減を適用できない
- 死亡保険金や死亡退職金の非課税枠が使えない
- 相続税額が2割加算される
ここからは、これらの理由について各項目ごとに詳しく解説していきます。
参考内縁の妻(夫)は、贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)が適用できない
婚姻期間が20年を超える夫婦間で、居住用不動産(またはその取得資金)の贈与が行われた場合に適用できる「贈与税の配偶者控除」も、内縁関係のパートナーには適用できません。
適用要件にある「夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与」に関して、内縁関係は法律上の婚姻期間に含まれないためです。
相続税の特例や税額軽減を適用できない
相続税には「配偶者控除(配偶者の税額軽減)」や「小規模宅地等の特例」など、税負担を軽減できる制度が設けられています。
しかし、こうした制度の適用要件に内縁の妻(夫)が含まれないため、法律上の配偶者と比べて相続税の税負担が増してしまいます。
- 配偶者の税額軽減
- 「配偶者の税額軽減(相続税の配偶者控除)」を適用した場合、配偶者が取得した遺産のうち、「1億6000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか多い金額までは相続税がかかりません。
この制度の適用要件には「被相続人の戸籍上の配偶者であること」が含まれており、内縁関係のパートナーには適用できません。 - 小規模宅地等の特例
- 「小規模宅地等の特例」とは、被相続人と共に住んでいた自宅の土地などについて、一定の要件を満たせば土地の評価額を最大80%減額できる制度です。
この特例を適用できるのは「法律上の配偶者」や「一定の条件を満たす親族」に限定されています。
内縁の妻(夫)は民法上の親族に該当しないため、この特例も適用対象外となります。
死亡保険金や死亡退職金の非課税枠が使えない
「被相続人が保険料を負担し、かつ被保険者であった死亡保険金」や、「被相続人の勤務先から支払われる死亡退職金」を法定相続人が受け取る場合、「500万円 × 法定相続人の数」で計算する非課税枠が設けられています。
しかし、内縁の妻(夫)は法定相続人ではないため、この非課税枠を適用することはできません。
したがって、受け取った死亡保険金・死亡退職金の全額が相続税の課税対象となります。
相続税額が2割加算される
被相続人の「一親等の血族(子・父母)」および「配偶者」以外が財産を受け取る場合、算出された相続税額に2割が加算されます。
内縁の妻(夫)が遺贈等によって被相続人の財産を取得した場合、法律上の配偶者や一親等の血族には該当しないため、納税額は一律で20%アップしてしまうのです。
たとえば、遺贈によって内縁の妻(夫)が3,000万円を受け取り、算出された相続税の本来の額が200万円だったとします。
このとき、内縁の妻(夫)が実際に納める税額は200万円×1.2=240万円となり、本来の税額に加えて40万円の追加負担が生じることになります。
内縁の妻(夫)に財産を遺す方法
内縁の妻(夫)には法律上の相続権はありませんが、相続以外の手段を活用すれば、パートナーに財産を承継させることができます。
- 遺言書を作成する
- 生前贈与を行う
- 生命保険の死亡保険金の受取人に指定する
- 確実に財産を遺すなら「籍を入れる」
ここからは、内縁の妻(夫)に財産を渡す代表的な方法について、4つの項目に分けて詳しく解説していきます。
遺言書を作成する
内縁の妻(夫)に財産を遺す手段として有効なのが、遺言書の作成です。
遺言書は被相続人の意思を強く反映し、財産分割において法定相続分よりも優先される法的効力を持ちます。
そのため、「内縁の妻(夫)に財産を遺贈する」と明記することで、戸籍上の婚姻関係がなくてもパートナーに財産を遺せます。

ただし、遺言によって内縁の妻(夫)に財産を遺す場合、法定相続人に認められている「遺留分」を侵害しないように注意が必要です。
兄弟姉妹以外の法定相続人には遺留分が認められていることから、遺言の内容が法定相続人の遺留分を侵害している場合、遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
相続人と内縁の妻(夫)との相続トラブルに繋がるケースもあるので、遺言書作成時に遺留分を侵害しないよう配慮することが大切です。
なお、遺言書に「付言事項(ふげんじこう)」として、「内縁の妻(夫)に財産を遺す背景」や「他の相続人への感謝の言葉」などを記載しておくのも有効です。
こうした一文を付け加えることで、遺言書の内容に対する納得感を与え、親族間での揉め事を防ぐ効果が期待できます
遺言執行者の指定も有効
内縁の妻(夫)に遺言書を遺す場合、遺言執行者を指定しておくことも有効です。
遺言書の通りに財産分割を進める際、不動産の遺贈登記など相続人全員の協力が必要になる手続きもあります。
仮に、内縁関係のパートナーへの遺贈を快く思わない相続人がいる場合、協力を受けられずに手続きが停滞してしまうかもしれません。
遺言執行者が指定されている場合、一部の手続きにおいて相続人全員の協力なしに手続きを進めることが可能となり、被相続人の意向が実現しやすくなります。
なお、遺言執行者は未成年者や破産者でなければ誰でもなることができますが、遺産を受け取る内縁関係のパートナーを遺言執行者に指定した場合、他の相続人との利害関係からトラブルになる可能性があります。
そのため、弁護士などの専門家を指定しておくのがおすすめです。
生前贈与を行う
内縁関係のパートナーへ財産を渡す方法として、生前贈与も有効な選択肢の一つです。
贈与は贈与者と受贈者の合意があれば関係性を問わず行えるため、被相続人が存命のうちに、確実に内縁のパートナーへ財産を移転させることができます。
また、贈与税の一般的な課税方式である暦年課税には年110万円の基礎控除があるため、この範囲内で複数年にわたり贈与を行うことで、贈与税の負担を抑えながら財産を渡すことも可能です。
ただし、「まとまった金額を複数年に分けて贈与する」と当初から約束している場合などは「定期贈与」とみなされ、総額分に対して贈与税が課税される可能性があります。
「贈与する金額や時期を変えたり、贈与をしない年を挟んだりする」「贈与の都度、贈与契約書を作成する」などの対策を行いましょう。
生命保険の死亡保険金受取人に指定する
内縁関係のパートナーを生命保険金の受取人に指定しておくことで、被相続人が亡くなった時に死亡保険金を受け取ることができます。
死亡保険金は法律上「受取人固有の財産」とされ、原則として遺産分割協議の対象となる相続財産には含まれません。
そのため、他の相続人の同意を得ることなく、パートナーがすぐに現金を受け取れる点が大きなメリットです。
ポイント
生命保険の受取人を戸籍上の配偶者や二親等以内の血族に限定している保険会社が一般的であるため、保険会社によっては、内縁関係のパートナーを受取人に指定できない可能性があります。
ただし、被相続人が保険料負担者かつ被保険者であった場合、パートナーが受け取った死亡保険金は、遺産総額が基礎控除を超えていれば「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。
前述の通り、内縁の妻(夫)には「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠が適用されないため、受け取った保険金の全額に対して相続税が課される点に注意しましょう。
確実に財産を遺すには「籍を入れる」
相続において、内縁の妻(夫)は法律上「第三者」として扱われます。
そのため、相続権が認められないだけでなく、戸籍上の配偶者に認められる税務上の優遇措置も一切受けることができません。
それだけ相続における「被相続人の戸籍上の配偶者であるか否か」は重要な要素であるため、婚姻届を提出して戸籍上の婚姻関係になることが、内縁のパートナーに確実に遺産を渡せる方法の一つと言えます。
内縁関係を続けるのに特別な理由がない場合は、相続の観点からは「籍を入れる」という選択肢を検討することをおすすめします。
他に相続人がいない場合は「特別縁故者制度」という選択肢もある
被相続人に法定相続人が一人もいない場合に限り、内縁の妻(夫)でも「特別縁故者」として遺産を受け取れる可能性があります。
「特別縁故者」とは、「生前に被相続人と特に密接な関係にあった」と家庭裁判所に認められた人のことです。
- 被相続人と生計を同じくしていた者であること
- 被相続人の療養看護に努めた者であること(療養看護の対価として報酬を得ていた場合などを除く)
- その他、被相続人と特別の縁故があった人
特別縁故者として遺産を受け取るためには、家庭裁判所への「相続財産清算人の選任申立て」や「特別縁故者に対する相続財産分与の申立て」などの手続きを踏む必要があります。
官報での公告期間なども必要なため、実際に被相続人の遺産を受け取るまでに1年以上かかる可能性があります。
また、申立てを行えば必ず認められるわけではないうえに、認められたとしても、被相続人の財産全てを受け取れるとは限らない点にも注意が必要です。
「特別縁故者制度」については、以下の記事で詳しく解説しております。
内縁の妻(夫)の相続で悩んだら相続専門の税理士に相談しよう
戸籍上の配偶者と比べて、内縁の妻(夫)は相続において認められる権利が非常に限られています。
大切なパートナーに財産を確実に遺すためには、これまで解説したようなデメリットを正しく理解し、入念な事前対策を講じることが不可欠です。
こうした相続対策は専門的な知識も必要なため、相続専門の税理士などに相談して具体的なアドバイスをもらうのが有効です。
相続専門の税理士は無料相談の機会を設けているケースも多いため、ぜひご活用ください。
我々VSG相続税理士法人は、相続人の皆さまのお悩みについて、平日夜21時まで、土日祝も無料相談を受け付けております。ぜひお気軽にお問い合わせください。


