東京弁護士会所属。
交通事故の被害者にとって、弁護士は、妥当な慰謝料をもらうための強い味方になります。
特に、加害者の保険会社との示談交渉がうまくいかず悩まれていたり、後遺症が残ってしまい後遺障害慰謝料請求を考えていたりする方は、 ぜひ検討してみてください。
交通事故の被害者の中には、事故当日に全く痛みなどの症状を自覚していなかったところ、数日してから首の痛みや手のしびれを感じて病院を受診した結果、「むち打ち」と診断されたという方がいらっしゃいます。
また、警視庁管内の令和4年度交通事故の統計調査によると、軽傷者のうち首(頸部)を損傷していた方が53.6%で損傷部位別の構成比率で第1位であったことからも、人間の頸部は交通事故によって損傷を受けやすい部分だといえます。
この記事では、交通事故の後遺症で「しびれ」が残った場合、その原因と損傷部位、特に「むちうち」での後遺障害の認定と申請手続きについて解説します。
目次
交通事故に遭って「しびれ」が後遺症として残ってしまった場合、主な原因は事故のケガ、衝撃で末梢神経を損傷したことがあげられ、一般的に末梢神経障害の症状が出ていることを指します。
また、損傷した部位によって、しびれ以外の症状も併発するものも多くあります。
ここでは、しびれの症状が起こる傷病名と主な原因について説明していきます。
「むちうち」は特定の傷病名ではなく、首(頸部)の骨やその周辺を損傷したときに生じる症状で「頸椎捻挫」や「外傷性頸部症候群」とも診断されます。
頸部周辺の脊髄から左右に枝分かれした神経(神経根)が傷ついたり、外傷による腫れが神経根を圧迫したりした結果、首やその周辺の痛み、肩や背中から腕、手足、指先などのしびれ、握力などの筋力低下を引き起こします。
胸郭出口(鎖骨と一番上の肋骨の間にある狭い隙間)という部分には、手を支配している神経や主要な血管が通っています。
これらが事故の衝撃で圧迫されて損傷し、神経障害や血流障害となって、手のしびれや痛みによる握力の低下、肩こりなどを引き起こします。
椎間板は、人間の背骨(脊椎)を構成する骨(椎骨)の間にあるクッションの役割をしていますが、これが事故によって損傷して神経に干渉し、痛みやしびれなどを引き起こします。
また、頸部の場合、頸部椎間板ヘルニアと呼び、首や背中の痛み、手のしびれ、脱力、肩こりなどの症状が現れます。
ただし椎間板は、人体組織の中でも加齢による劣化が激しい部位でもあり、交通事故を原因とするものなら相当の強い衝撃がなければ損傷をしないため、交通事故との因果関係を否定される事例も多くあります。
交通事故の衝撃で背骨(脊椎)が骨折、脱臼し、背骨の中を通る人体の中枢神経(脊髄)を損傷したために、半身、全身の不随や麻痺、呼吸障害などの重篤な症状を引き起こします。
また、脊髄のなかの頸部にある手を支配する神経を損傷した場合でも、手足や指を含めて、体全体に重篤な症状が起こります。
交通事故などで頭部に強い衝撃を受けたことで脳の組織が損傷し、手足や指のしびれだけでなく体全体に不随や麻痺の症状が出てしまうことが多くあります。
その損傷は、部分的な「局所性脳損傷」と全体的な「びまん性脳損傷」に分けられます。
局所性脳損傷の場合、脳挫傷、急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、脳内血腫などがあり、損傷部位とそれによる障害が明らかになっているものが多いと言われています。
交通事故後に手足のしびれが生じてしまうと、今後の生活にも支障が出るのではないかと不安になる方もいるでしょう。
しびれが続くときは、自身の健康のためや適切な補償を受けるために以下の対応をおこないます。
交通事故の影響で手足にしびれが残る場合、まずは病院を受診しましょう。
病院で医師の診察を受け、症状を見てもらい、しびれの原因を調べてもらいましょう。
場合によっては、脊髄や脳に損傷がある場合もあるため、早めに診察を受けるようにしましょう。
交通事故で手足のしびれが残る場合、後遺障害として損害賠償を請求することができます。
損害賠償金を請求するために、まずは後遺障害等級認定を受けます。
後遺障害等級は、その人の後遺障害の症状によって決められ、その等級に応じて、後遺障害慰謝料の金額が決まっています。
症状にあわせて、正しい等級の認定を受ける必要があります。
後遺障害等級認定をうけたら、その内容をもとに、加害者や保険会社と示談交渉を行います。
示談交渉は、被害者自身が1人で行うこともできます。
ただ、専門的な知識や、交通事故の取扱いに関する経験がないと、交渉が不利になってしまうこともあります。
そこで、交通事故に詳しい弁護士に依頼し、基本的にすべてを任せてしまうのがおすすめです。
交通事故後のしびれの原因がむちうちと診断された場合でも、交通事故の後遺障害等級の認定が受けられることもあります。
認められたらそれ相応の慰謝料を受け取ることができます。
具体的な等級と認定基準は次のとおりです。
数字が小さいものほど後遺障害の程度が重くなります。
等級 | 認定基準 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
参考:国土交通省
むちうちの後遺障害は、患者が感じている「痛い」「しびれる」などの自覚症状が、検査結果や客観的資料から医師が判断した「他覚的所見」があると「医学的に証明できる」ものとなり、重い方の等級「局部に頑固な神経症状を残すもの」で認定されます。
このMRI検査などの診断画像は、有力な客観的資料となりますので、必ず検査を受けることをおすすめします。
むちうちによるしびれで後遺障害等級の認定がなされると、被害者は、加害者に対して認定を受けた等級に応じた後遺障害慰謝料と逸失利益を請求できるようになりますが、次の3種類の基準をもとに算出されます。
自賠責基準 | 強制加入保険である自賠責保険の基準 自動車損害賠償保障法で定められ、最も低額になります。 |
---|---|
任意保険基準 | 任意保険会社の内部基準 それぞれの保険会社が独自に定めていて、自賠責基準を少し上回る金額といわれています。 |
裁判基準 | 裁判所の過去の判例をもとに作成された基準 最も高額、弁護士基準ともよび、示談交渉や裁判上での相場とされています。 |
むちうちによるしびれで後遺障害等級の認定を受けられた場合、具体的に請求できる可能性のある金額は、次のとおりです。
等級 | 自賠責基準 | 裁判基準 |
---|---|---|
12級13号 | 94万円 | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
(参考元:国土交通省)
後遺障害等級では、その等級に応じた「労働能力喪失率」が定められていて、「後遺症のために失ってしまう将来得られたはずの収入」である逸失利益の算出に用います。
むちうちによるしびれで受けられる後遺障害等級に応じた労働能力喪失率は、次のとおりです。
等級 | 労働能力喪失率 |
---|---|
12級 | 14% |
14級 | 5% |
計算方法は、「基礎収入額」に「労働能力喪失率」と「労働喪失期間に対応する係数(ライプニッツ係数)」を乗じて算出します。
事例後遺障害14級9号を認定された年収500万円の47歳男性会社員の遺失利益
500万円(年収)× 5%(労働能力喪失率)× 14.877(ライプニッツ係数)= 371万9,250円(遺失利益)
ライプニッツ係数とは、将来的に受け取るはずの収入を一括前払いで受け取るときに「利息」を控除するための指数で、「ライプニッツ係数表」として公開されています。
交通事故後に出てくるしびれの症状は、末梢神経の損傷によるむちうちや椎間板ヘルニアなどが関係している可能性があります。
しびれの症状が続くときは、早めに病院へ行って診察を受けましょう。
もし病院で治療をしてもしびれが残ってしまった場合は、適切な補償を受けるために後遺障害等級認定の申請をして、加害者側と示談交渉を行う必要があります。
後遺障害等級の認定を受けられるか否かは、支払われる慰謝料の金額に大きく関わるため、被害者にとっては何よりも重要な問題です。
適切な認定を受けるためには、交通事故の後遺障害等級の認定に精通し、高額な示談実績のある弁護士の力を借りることも最善の策となるでしょう。