東京弁護士会所属。
交通事故の被害者にとって、弁護士は、妥当な慰謝料をもらうための強い味方になります。
特に、加害者の保険会社との示談交渉がうまくいかず悩まれていたり、後遺症が残ってしまい後遺障害慰謝料請求を考えていたりする方は、 ぜひ検討してみてください。
交通事故で人身に傷害を負った被害者には、強制加入保険である自賠責保険から保険金が支払われますが、交通事故の損傷が原因である後遺障害等級の認定がなされると受け取れる保険金が増額されます。
この記事では、後遺障害等級の中でも障害の程度が軽いとされる13級について、その等級の認定基準と慰謝料の他認定の申請手続き、認定を獲得するための注意点について説明していきます。
目次
人身事故の被害者の中には、事故による損傷・衝撃が原因で身体の機能障害・運動障害・神経症状などの後遺症が残ることがあります。
この症状については、損害賠償保険料率算出機構から後遺障害等級の認定がなされると被害者から請求できる慰謝料などが増額されます。
この後遺障害等級の認定は、すべての被害者が受けられるものではなく、次の3つの要件を満たしていなければなりません。
後遺障害等級13級は、身体の部位と状態によって11のカテゴリーに分類されています。
以下に詳細を説明していきます。
・第13級の1「1眼の視力が0.6以下になったもの」
眼鏡やコンタクトレンズを使用しても片目の矯正視力が0.6以下になった状態のことです。
・第13級の2「正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの」
「複視」とは、ものが二重に見える症状で、ここでは上下左右を見たときに症状が現れる状態のことです。
・第13級の3「1眼に半盲症、視野狭窄または視野変状を残すもの」
以下の「視野変状」の状態にあり、片目の視力が正常な方と比べて60%以下であることを指します。
・第13級の4「両眼のまぶたの一部に欠損を残し、または、まつ毛はげを残すもの」
両目のまぶたを閉じたときに、瞳(黒目)は完全に覆うことができるが、白目の部分が露出している状態、またはまつ毛の2分の1以上がはげてしまった状態のことです。
・第13級の5「5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの」
差し歯、入れ歯、インプラントなどの人工物で欠損した歯の機能を取り戻す治療のことを「歯科補綴(しかほてつ)」と呼び、永久歯5本から7本未満までを治療したときに該当します。
・第13級の6「1手の小指の用を廃したもの」
片方の小指について以下のいずれかが該当することを指します。
・第13級の7「1手の親指の指骨の一部を失ったもの」
片手の親指の骨の一部を失った状態で、レントゲン写真などで確認できるときに該当します。
・第13級の8「1下肢を1cm以上短縮したもの」
下肢(股関節からつま先までの部分)が、骨折が治った後に骨折していない方と比べて1cm以上短くなった状態のことです。
・第13級の9「1足の第3の足指以下の1または2の足指を失ったもの」
片足の中指(第3の足指)、薬指、小指のうち、1本または2本の指について、その付け根の関節から先を失った状態のことです。
・第13級の10「1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの、または、第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの」
以下のいずれかに該当することを指します。
・第13級の11「胸腹部臓器の機能に障害を残すもの」
以下のいずれかの状態に該当することを指します。
人身事故の被害者は、治療費・通院慰謝料・治療中の休業補償などを賠償金として請求できますが、後遺障害等級の認定がなされるとこれらに加えて後遺障害の賠償金として後遺障害慰謝料と逸失利益も請求できるようになります。
後遺障害等級の認定を受けた被害者は、加害者へ慰謝料などを含んだ賠償金を請求できます。
まず自賠責保険から自賠責基準で最低額の支払いがなされ、不足分があれば加害者側の任意保険会社へ請求しますが、
この不足分についてはいくら支払われるかを被害者と加害者の話合い(示談交渉)で解決することになります。
示談交渉では、加害者側の任意保険会社が独自の基準で算出した金額を提示してきますが、これを任意保険基準と呼び、一般的に公開されていませんが自賠責基準を少し上回る額だといわれています。
また、弁護士が被害者の代理人として交渉する場合、受け取れる賠償金の額が最大になるよう、過去の裁判における判例を基準にした裁判基準(弁護士基準)をもとに請求していくことになります。
これら3つの基準を比べると「自賠責基準<任意保険基準<裁判基準(弁護士基準)」の関係になりますが、後遺障害等級13級の具体的な慰謝料の金額は、自賠責基準で57万円、裁判基準で180万円となります。
交通事故の被害者が、後遺障害がなければ得られたであろう将来の収入のことを逸失利益とよびます。
計算式は、「基礎収入額」×「労働能力喪失率」×「労働喪失期間に対応する係数(ライプニッツ係数)」=「逸失利益」となります。
「労働能力喪失率」とは、後遺障害の各等級に応じて一定の割合が定められており、後遺障害等級13級では「9%」になります。
「ライプニッツ係数」とは、将来の収入を一括して前受けするときに利息を控除するための指数です。
労働能力の喪失期間に応じて定められた「ライプニッツ係数表」として、損害保険会社などから一般的に公開されています。
たとえば年収500万円、47歳、男性、会社員が後遺障害等級13級の認定を受けた場合、逸失利益は、「6,694,650円」となり、計算式は次のとおりです。
後遺障害等級の認定申請は、次の手順で行います。
認定申請には、被害者の症状が「これ以上の治療を続けても改善しない、また悪くもならない」と医師が診断した「症状固定」がなされることを前提としています。
認定の申請手続きは、加害者側の任意保険会社へ必要書類の収集などを依頼して行う「事前認定」、被害者本人が必要書類を収集して行う「被害者請求」の2つの方法があります。
「事前認定」では、被害者は後遺障害診断書を提出するだけで申請手続きが済みますが、「被害者請求」では、被害者本人が以下の必要書類を収集する必要があります。
後遺障害等級の認定では、すべての被害者が認定を受けられるものではなく、実際の症状よりも軽いとされる等級の認定がなされることもあり得ます。
ここでは、後遺障害等級13級の認定が受けられる可能性が少しでも高まるポイントを説明していきます。
被害者と加害者側の任意保険会社では、後遺障害等級の認定の有無、等級の軽重の結果が支払われる慰謝料などの賠償金の増減に影響するという利害が対立する関係にあります。
事前認定の手続きでは、保険会社から被害者への適切なアドバイスや被害者に有利になる資料の収集、提出なども積極的になされることが期待できないともいえますので、必ず被害者請求で申請手続きを行って下さい。
医師は診断や治療など医療の専門家ではありますが、後遺障害等級の認定について精通しているわけではないので、後遺障害診断書の記載内容が認定を受けるために適切ではないおそれがあります。
また、医療現場では一般的に治療に必要のない検査や効果のない治療などを行ないませんので、認定に必要な検査がなされているかどうかも併せて、後遺障害等級の認定に精通している弁護士に相談し、必要があれば検査の追加や診断書の修正をしてもらって下さい。
被害者が弁護士へ依頼する場合、すべての弁護士が交通事故の示談や後遺障害等級の認定について精通しているわけではありませんので、実績のある適切な弁護士を選任するように注意してください。
交通事故の被害者にとって後遺障害等級の認定を受けられるか否かが非常に重要な問題であり、後遺障害のある生活を続けていく困難や苦痛を少しでも和らげるためにも適切な損害賠償がなされることが何よりも大切なことです。
後遺障害等級の認定は、原則として書類審査のみで行われ、1枚の書類が認定の可否に影響を与えることもありますので、被害者だけで手続きを行うことが不安なときや書類の収集が困難なときには、弁護士などの専門家を頼りにすることも考えてはいかがでしょうか。
最後になりますが、交通事故の解決という問題を抱えた被害者の方々にとって、この記事が一助になれば幸いです。