東京弁護士会所属。
交通事故の被害者にとって、弁護士は、妥当な慰謝料をもらうための強い味方になります。
特に、加害者の保険会社との示談交渉がうまくいかず悩まれていたり、後遺症が残ってしまい後遺障害慰謝料請求を考えていたりする方は、 ぜひ検討してみてください。
「12級の症状ってどのようなものなの?」
「慰謝料はいくらもらえるの?」
とお悩みになられていませんか?
後遺障害等級は1級~14級まで詳細に認定条件が定められています。
また、等級により賠償金の額も大きく異なりますので、自分の怪我を少しでも高い等級で認めてもらいたいと思われるのも当然のことです。
いったい後遺障害等級12級とはどのようなものなのでしょうか?
具体的な症状から、慰謝料の相場など、これから後遺障害等級認定の申請をしようとお考えになられている被害者の方のご参考になれば幸いです。
下記で、具体的に解説していきます。
目次
後遺障害12級は、端的にいうと「神経痛やしびれ・関節の不具合」でお困りの方が該当します。
症状別に12級1号~14号まであり、いずれかの等級に認定されれば、被害者は「後遺障害慰謝料」という慰謝料を得ることができます。
弁護士基準(裁判基準)で計算すると、およそ290万円が相場です。
もし、これより低い金額で提示されているのなら、ここから先の解説をご参考にしてください。
事故で怪我を負われたのですから、適正な慰謝料額でしっかりと賠償してもらいましょう。
損害保険料率算出機構が公表する2022年度版「自動車保険の概況」を参照すると、後遺障害12級の認定は難しい状況といえます。
後遺障害全体の認定件数は4万2,980件ですが、そのうち12級の認定件数は7,020件になっており、認定率はわずか16.33%しかありません。
等級がもっとも低い14級は認定件数が2万4,417件、認定率は56.81%になっているため、13級以上の認定ハードルはかなり高いようです。
後遺障害の申請件数は公表されていませんが、自賠責保険の支払件数は約83万7,000件あるので、後遺障害全体の認定率は約5%です。
後遺障害12級の認定を目指すときは、十分な対策が必要でしょう。
12級の1号~14号までの具体的な説明をしていきます。
外貌とは顔に醜状を残すものとされています。原則、次のいずれかに該当する場合に人目につく程度以上のものをいいます。
残存した神経系統の障害が神経学的検査結果や画像初見などの多角的初見といわれるものにより、医学的に証明できるものが該当します。
※むち打ち症などは、痛みによる痺れや麻痺などの自覚症状がありますが、医学的な証明ができない場合は示談の際に大きな問題となるので注意が必要です。
片足の指が、いずれかに該当することが必要です。
具体的には、中足指節関節から失ったものが該当します。
10号の条件としては、以下の内容が当てはまります。
後遺障害12級9号の「一手の小指を失ったもの」とは、以下のような状態です。
簡単にいうと、片手の小指を付け根や第2関節から失った状態ですが、指先に近い第1関節を失った場合は9号に該当しません。
長管骨とは足や腕にある長い骨のことです。
6号と似ています。
上肢の3大関節(腕:肩、肘、手首、 足:股関節、膝、足首)のうち、一つの関節において関節の可動域角度が4分の3以下になっているものが該当します。
ですが、手のひらを上向きにしたり下向きにしたりする運動(回内・回外)に限り、動かせる範囲が2分の1以下になってしまったものが該当し、時折、舗装器具が必要になる場合、すぐに脱臼してしまうようになってしまった場合(習慣性脱臼)がこれに該当します。
裸になった時に明らかな変形がわかる状態が該当します。
この場合では、何センチ骨がずれているといった数値的な基準は定められておらず、他の人が見た時に明らかに変形していることが確認できれば条件をクリアしたとされています。
耳殻の軟骨部分の2分の1以上を失った状態が該当します。
耳を失ったことで後遺障害認定される主な理由は、「外見が醜くなる」という醜状障害にあたるからです。
場合によっては、第7級12号でも適用される余地があります。
交通事故が原因で歯を7本以上失い、著しく破損してしまった場合に歯科補綴(しかほてつ)を加えます。ブリッジ、差し歯、またはクラウンなどで治療し、事故以前のように普通に物が噛めるようになった状態が該当します。
もともと虫歯で抜けていた、生え変わる予定であった乳歯は非該当となります。
後遺障害の対象はあくまでも「永久歯限定」です。
目蓋(まぶた)を開いた時に瞳孔を完全に覆えない、または目蓋を閉じた時に角膜を完全に隠すことができない状態が該当します。
近くのものを見たり、遠くのものを見たりした時にピント機能がうまく働かない状態(調節機能障害)または、頭を固定した状態で目だけを動かした時に、視野が健常者の2分の1程度になってしまった状態(運動機能障害)のいずれかが該当します。
後遺障害等級認定「12級」で得られる慰謝料の相場は以下のとおりです。
弁護士基準(裁判基準)で算出される金額が最も高額であることが一目瞭然です。
かなりの差が生じてしまいますので、結果的にみれば早い段階で弁護士に依頼した方が良いことがわかります。
また、後遺障害等級認定されるか否かが最も大きなポイントとなり、被害者ご自身が手続きをされるのには、大変な時間と労力を要します。
専門家である弁護士に依頼すれば、煩雑な手続きや示談交渉のストレスから解放される上にスムーズに手続きを進めることができ、メリットが大きいといえるでしょう。
もし、いま悩まれているようでしたら躊躇せずに相談だけでも早めにすることをおすすめします。
逸失利益とは、交通事故で後遺障害や死亡により失った、将来得られるはずであった利益に対する賠償のことです。
亡くなられた被害者の収入や年齢、後遺症の等級を元に算出されます。
下記に具体例を挙げてみます。
(逸失利益)
2つの基準での差に驚きを隠せない方も多いのではないでしょうか。
自賠責基準では、後遺障害賠償限度額(逸失利益+後遺障害慰謝料)224万円から慰謝料限度額93万円を差し引いた金額となります。
弁護士基準では下記のような計算方法です。
後遺障害の逸失利益=(基礎収入×労働能力喪失率)×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
年収500万円×労働能力喪失率0.14%×ライプニッツ係数14.898=1,042万8,600円
となります。
細かく定められていますので、下記をご参考にしてください。
・会社員(給与所得者)
事故以前1年間の実際の収入を基礎収入として計算します。
・個人事業主(事業所得者)
前年度の確定申告で申告した金額を実際の収入として計算します。
・会社役員(役員報酬)
「労働対価」として認められる部分のみを基礎収入として計算します。
・専業主婦
原則、「賃金センサス」に基づき女性労働者の全年齢平均賃金を基礎収入として計算します。
※賃金センサスとは厚生労働省の統計のことです。
たとえば、令和4年度では394万3,500円が女性労働者の全年齢平均賃金となっていますので、日額基礎収入は1万804円となります。
・学生
専業主婦と同じように「賃金センサス」を基礎収入とした計算方式に基づきます。
ですが、実際に働くことができる年までの分は控除されてしまいます。
平均賃金(円) | |
---|---|
全年齢 | 3,943,500 |
~19歳 | 2,388,200 |
20~24歳 | 3,131,200 |
25~29歳 | 3,726,300 |
30~34歳 | 3,907,800 |
35~39歳 | 4,111,400 |
40~44歳 | 4,238,500 |
45~49歳 | 4,317,100 |
50~54歳 | 4,315,800 |
55~59歳 | 4,280,700 |
60~64歳 | 3,436,000 |
65~69歳 | 2,975,500 |
70歳~ | 2,955,200 |
引用元:賃金構造基本統計調査
労働能力喪失率とは、後遺症により失われた労働力の喪失率を後遺障害等級に応じて定めたものです。
以下に、介護が不要な後遺障害の例をあげてみます。
(労働能力喪失率)
1級 | 100% |
2級 | 100% |
3級 | 100% |
4級 | 92% |
5級 | 79% |
6級 | 67% |
7級 | 56% |
8級 | 45% |
9級 | 35% |
10級 | 27% |
11級 | 20% |
13級 | 9% |
14級 | 5% |
後遺障害等級12級では労働能力喪失率は「14%」となります。
ライプニッツ係数(中間利息控除係数)とは、事故による労働能力喪失期間の中間利息を控除するための値です。
この値は年齢により異なります。
また、民法改正により2020年4月1日以降に発生した事故は、ライプニッツ係数が異なった基準で計算する費用があるので注意が必要です。
ご心配であれば、弁護士に相談して確認することをおすすめします。
下記に一部抜粋をご紹介します。
年数 | ライプニッツ係数 |
---|---|
1 | 0.952 |
2 | 1.859 |
3 | 2.723 |
4 | 3.546 |
5 | 4.329 |
6 | 5.076 |
7 | 5.786 |
8 | 6.463 |
9 | 7.108 |
10 | 7.722 |
後遺障害12級の認定を受ける場合、申請方法は以下の2種類があります。
認定機関は損害保険料算出機構の自賠責保険調査センターですが、自分で直接申請するのではなく、加害者側の保険会社が窓口になります。
どちらの申請方法もメリット・デメリットがあるので、以下を参考にしてください。
事前認定とは、加害者側の任意保険会社を介して後遺障害を申請する方法です。
申請タイミングは症状固定後になり、以下の書類を保険会社に提出すると、申請手続きを進めてもらえます。
事前認定では後遺障害診断書と同意書のみ準備するので、被害者側の負担が軽くなるメリットがあります。
ただし、後遺障害12級は認定率が低く、加害者側の任意保険会社が等級認定を積極的にサポートしてくれるわけではありません。
申請用の添付資料も保険会社任せになるため、有効な書類を提出してもらえなかったり、資料不足になったりするデメリットがあります。
また、後遺障害12級に認定されても、示談が成立するまで慰謝料や逸失利益を受け取れないので注意してください。
被害者請求とは、申請用の書類を被害者本人が集め、加害者側の自賠責保険会社を介して後遺障害を申請する方法です。
事前認定とは異なり、申請書類を自分で選べるため、後遺障害診断書の事前チェックや資料の追加により、後遺障害12級に認定されやすくなるメリットがあります。
被害者請求の場合、自賠責保険から以下の仮渡金や先払い金も受け取れます。
仮渡金 | 怪我の完治または症状固定前に5万円、20万円、40万円のいずれかを受け取り可能 |
---|---|
先払い金 | 怪我は120万円、後遺障害は75万~4,000万円まで受け取り可能 |
なお、被害者請求は資料収集の負担がデメリットになるので、有効な資料を選ぶための専門知識や、ある程度の準備期間が必要です。
被害者請求で後遺障害を申請するときは、弁護士に協力してもらうとよいでしょう。
後遺障害12級に認定されず、非該当や下位の等級になったときは、異議申し立てが認められています。
異議申し立ても加害者側の保険会社を介して申請しますが、当初の申請と同じ書類では再審査を通過しないため、診断書の見直しや追加検査などが必要です。
異議申し立ての際には非該当などの原因分析も必要なので、当初の申請時に以下のような状況だったかどうか、必ずチェックしてください。
異議申し立ても書面審査になるため、12級が妥当と認められる客観的な証拠を提出しなくてはなりません。
医師任せでは再審査を通過しない可能性があるので、交通事故を専門に扱っている弁護士にサポートしてもらいましょう。
大前提として、後遺障害等級認定の審査においては以下の2点が重要です。
以上のことから、後遺症診断書に記載される内容は極めて重要です。
また、裏付けとなる客観的な資料がなければ後遺障害認定は難しいでしょう。
下記でポイントを解説していきます。
適切な後遺障害の認定を受ける場合、交通事故の直後から継続して通院している必要があります。
指の欠損などは誰もがほぼ確実に通院しますが、12級に該当する症状には目まいや頭痛もあるため、つい我慢して仕事や家事を続けるケースがあるようです。
事故から何日も経過した後に通院を始めると、怪我の症状と交通事故の因果関係を証明しにくくなるため、後遺障害を申請しても非該当や下位の等級になるでしょう。
強い痛みやしびれを感じていなくても、事故直後はすぐに病院の診察を受けてください。
なお、レントゲンやMRIなどの検査は治療方針の決定が目的になっており、後遺障害の等級認定を見据えたものではないので注意が必要です。
後遺障害12級の認定を目指すときは、弁護士のサポートも受けておくとよいでしょう。
「事故との因果関係」を証明することは至難の技です。
自賠責保険の調査事務所ではさまざまな角度から審査を行い認定します。
医師が、診断書に「交通事故によるもの」と書いていてもこれだけでは不十分です。
たとえば、事故状況を立証する客観的資料である警察記録など、または、後遺障害の内容を明確にするMRI画像などの客観的資料が該当します。
保険会社に「そろそろ症状固定ではないですか」といわれている被害者の方は多いのではないでしょうか。
そのようにいわれてお困りの被害者の方は、安易に応じてはいけません。
症状固定とは、交通事故によって負った怪我が、治療を継続してもこれ以上回復する見込みがない状態のことをいいます。
医師が症状固定と判断してしまえば、それ以降の治療費や通院慰謝料は発生せず受け取ることができません。
今後の生活のためにも、簡単に諦めずに交渉することが大切です。
後遺症等級認定に関する診断書作成経験がない医師は、どのような内容で書けば認定されやすいかを知らないこともあります。
医師は、治療のプロであるわけですから知らなくとも当然です。
だからこそ、病院選びも重要なポイントです。
弁護士に依頼すれば、交通事故案件に精通した病院・医師を紹介してもらえる可能性が高いでしょう。
自覚症状をできるだけ正確に伝えること、根気よく話し合いを進めることを念頭におき、しっかりと話し合いを進めてください。
自覚症状についてのメモなどを書いておき、医師との話し合いの時に参考とすることも有効です。
また、作成後に記入漏れがあると審査の際に差し戻し対象となります。
※整骨院では作成はできませんので注意が必要です。
交通事故に精通した弁護士に依頼すると、適切な後遺障害等級に認定される確率が高くなります。
各弁護士には専門分野があるので、交通事故が専門かどうか、法律事務所のホームページをチェックしてください。
交通事故に詳しい弁護士であれば、以下のように被害者をサポートしてくれます。
後遺障害の認定には後遺障害診断書や添付資料が大きく影響するので、弁護士にも確認してもらいましょう。
診断書の内容に不足があるときは、追加検査などの必要性を医師に助言してくれるので、弁護士が関わると後遺障害に認定されやすくなります。
示談交渉も依頼しておけば、賠償金の増額も期待できるでしょう。
上記2点が重要であるということは、先述したとおりです。
これら以外の方法で損害賠償額を増額したいときは、下記の4つのポイントもご参考にしてみてください。
このうち入通院慰謝料と後遺障害認定慰謝料は、自賠責保険基準か弁護士基準(裁判基準)かで大きく異なります。
このとき、弁護士基準の方が高額であることを決して忘れないでください。
また、治療のための通院を怠らずに継続することも必須条件です。
過失割合に納得していなければ、弁護士を介して交渉してもらいましょう。
一方で休業損害は、交通事故による怪我のために働くことができなかった期間の「得られなかった収入」に対する補償のことです。
例:給与(基本給+残業代+手当)、ボーナス
※社会保険料、などの各種控除が差し引かれた差し引き支給額ではありません。
認定結果に納得がいかなければ、異議申し立てを行い適正な等級を得られるようにしましょう。
後遺障害12級に該当する症状には関節の機能障害や骨の変形障害、指の欠損などがあるため、障害者手帳がもらえるのか?といった疑問が生じるでしょう。
入通院慰謝料や後遺障害慰謝料の相場もあまり知られていないので、後遺障害12級に関する疑問がある方は、以下の「よくある質問」を参考にしてください。
障害者手帳をもらえる可能性はありますが、かなり厳しい条件です。
交通事故の後遺障害認定と身体障害者の認定は別々の制度になっており、障害に応じた等級や認定要件も異なります。
たとえば、眼球に著しい調節機能障害などがある場合、後遺障害では12級1号に認定されますが、身体障害では心臓などの障害も要件になっている等級があります。
また、指の欠損によって高障害等級に認定される場合でも、身体障害者の5級については、「体幹機能の著しい障害」などの要件を満たさなければなりません。
身体障害者の要件はかなり厳しく設定されているので、後遺障害12級の要件を満たすだけでは、障害者手帳の交付は難しいでしょう。
後遺障害12級に認定されると、自賠責保険からは後遺障害慰謝料94万円と逸失利益を合わせ、224万円を限度として保険金が支払われます。
自賠責保険の入通院慰謝料については、治療費や休業損害などを含め、限度額120万円まで請求可能です。
補償が不十分だったときは任意保険の慰謝料も上乗せされますが、あまり大きな増額は期待できないでしょう。
なお、弁護士基準で慰謝料を算定すると、12級の後遺障害慰謝料は290万円になるため、自賠責保険や任意保険基準の3倍以上を受け取れます。
入通院慰謝料も高い水準に設定されているので、後遺障害12級の補償を増額させたいときは、まず弁護士に相談してみましょう。
後遺障害等級「12級」についてご理解いただけたでしょうか?
今まで当たり前のようにできていたことができなくなるなど、事故がなければ失うことのなかったことがたくさん出てきます。
被害者の方は、肉体的にも精神的にも大変辛い経験をされていらっしゃいます。
だからこそ、一人で悩み続けていてもよい結果は得られません。
弁護士に依頼して話をじっくりと聞いてもらい、納得のいく補償を求めましょう。
きっと、今後の生活のお役に立てることがあるはずです。