東京弁護士会所属。
交通事故の程度によっては、入院が必要になったり、定期的な通院、精神的にも疾患を負ったり、PTSDとして現れることもあります。
こうした状況の中で、交渉ごとを被害者本人でまとめようとすることは非常に大変です。
弁護士に示談交渉を依頼することで、直接示談交渉をしたり、資料を準備したりする精神的負担が軽減できます。
つらい事故から一日でもはやく立ち直るためにも、示談交渉は弁護士に任せて、治療に専念してください。
目次
交通事故は車や構造物などの物を損傷させてしまう物損事故、人に接触・衝突して身体を損傷させてしまう人身事故に分けられます。
物損事故の加害者が現場から逃走してしまうことを「当て逃げ」、人身事故の加害者が現場から逃走してしまう「ひき逃げ」と区別され、交通事故の当事者は、道路交通法により事故が発生したときに次の5つの義務を負っています。
これらの義務に反して交通事故の加害者が現場から逃走してしまうと「当て逃げ」や「ひき逃げ」の事故になってしまいます。
「当て逃げ」や「ひき逃げ」は、刑事事件として捜査が行われ、加害者が容疑者として逮捕されることになり、「当て逃げ」の場合は刑事処分として罰金刑や懲役刑などが課せられます。
当て逃げは、道路交通法に定められている「報告義務違反」や「危険防止措置義務違反」にあたり、刑事罰や行政罰の対象となります。
ちなみに、報告義務違反は3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金、危険防止措置義務違反は1年以下の懲役または10万円以下の罰金です。
また、行政罰として7点の違反点数が課され、これまで違反がなかった場合でも免許停止となります。
安全運転義務違反の2点と危険防止措置義務の5点が加算され、前歴なしの免許停止基準である6点を超えてしまうためです。
当て逃げは被害者がいない自損事故にあたるため、報告義務や危険防止措置義務はないと考えがちです。
しかし、実際には自損事故でも報告や危険防止措置に関する義務は発生します。
自損事故を起こしてもきちんと対応すれば、刑事罰や行政罰を課されずに済む場合がほとんどなので、事故後の報告や危険防止措置を怠らないようにしましょう。
物損事故の加害者が次のケースに当てはまると、当て逃げとして処理されます。
ただし、事故に気付かずに現場を離れてしまった場合、事故に気付かなかったことに嘘偽りがなく、自ら警察へ届け出て、被害者との示談交渉を誠心誠意対応すれば当て逃げではなく通常の物損事故として処理されることがあります。
当て逃げ事故の被害に遭っていたにもかかわらず、気付かずに現場を離れてしまった被害者には、次のような対応をおすすめします。
当て逃げに気づかなかったときの対処法
それでは1つずつ見ていきましょう。
交通事故の現場を離れてから警察へ被害を届け出るときは、ドライブレコーダーの記録映像や目撃者、駐車場内の防犯カメラ映像、駐車場周辺の防犯カメラ映像などの確実な証拠が必要になるため、被害者自身が収集できるものについては、積極的に集めて提出することをおすすめします。
被害車両の損傷部分に付着した加害車両の塗料片なども重要な証拠となるので、修理をする前に被害車両を警察へ持ち込みましょう。
事故被害に遭った駐車場の管理者へ連絡を取り、施設内の防犯カメラ映像の提出を依頼して事故現場を確認し、写真などの映像記録を撮っておきましょう。
また、施設内に事故の目撃者を募るポスターやチラシなどを設置させてもらえるよう協力を依頼するのもよいでしょう。
当て逃げ事故の被害届は、事故発生から時間が経ちすぎると現場での証拠や目撃情報の確保が難しくなるので、一日でも早く警察へ提出してください。
被害届が受理されれば、当て逃げの場合でも警察は捜査を行います。
警察の捜査により、犯人の特定に至るケースもあるでしょう。
警察による当て逃げの捜査内容は、被害車両や現場に残された証拠の保全や写真撮影、事実確認などです。
当て逃げの瞬間を録画した可能性がある防犯カメラやドライブレコーダーがあれば、映像のチェックも行われます。
駐車場や周辺施設などから防犯カメラ映像の提出を求める場合は、警察を通して依頼することで協力を得られやすくなることがあります。
ただし、どこで当て逃げ被害に遭ったかわからない状態では、警察も被害届を受理しないおそれがあるので注意してください。
車両保険に加入している場合は、加害者が見つからない、加害者に賠償金の支払い能力がないなど修理費を自己負担しなければならない事態に備えて、保険会社へ相談しておくことをおすすめします。
「当て逃げに気が付かなかった」「当て逃げなんてしていない」と、加害者に当て逃げを否定された場合は、証拠を揃えて事実を立証する必要があります。
事故現場に防犯カメラがある場合は、映像を確認しましょう。
車同士が衝突した事実や相手の車両ナンバーが映っていれば、当て逃げの確固たる証拠になります。
ドライブレコーダーがある場合は、当て逃げの瞬間に生じた衝撃音や相手のリアクションも重要な証拠です。
当て逃げ対策として、走行時はもちろん駐車時も録画できるタイプのドライブレコーダーの装着をおすすめします。
映像がない場合は、当て逃げの疑いがある車両と、自分の被害車両に付着している塗料や傷を検証しましょう。
駐車場内で他人の車や施設内の構造物(看板、柱、塀、壁など)に接触・衝突していたが、気付かずに現場を立ち去ってしまった場合には、次のような対応がおすすめです。
当て逃げに気づかなかったときの対処法
それでは1つずつ見ていきましょう。
当て逃げ事故を起こしてしまったと気付いた場合、すぐに警察へ出頭して事故を届け出ることが何よりも大切です。
すでに被害者が当て逃げ事故の被害を警察へ届け出ていた場合、事故から数週間もあれば防犯カメラの画像解析から犯人の特定が進められるといわれているため、警察から任意出頭を求められることもあり得ますし、逮捕状の執行もあります。
被害者が届け出る前や犯人が特定される前であれば、加害者が自ら警察へ届け出ることで、刑事処分がされずに通常の物損事故として処理される可能性もあります。
被害者へ連絡がつくようになれば、まず加害者が自ら謝罪を行って、誠意をもって示談交渉へ応じる旨を必ず伝えましょう。
被害者との示談が成立していると、当て逃げ事故として処理せずに通常の物損事故として処理される可能性が高くなるといわれています。
職業によっては、刑罰を課せられると失職する可能性があるため、刑事処分を避けるためには早期の示談成立を目指しましょう。
ここで説明している「事故に気付かなかった」とは、「もしかしたら少し接触したかもしれないけど、まあ大丈夫か」との認識だと「事故に気付かなかった」とはいえないため注意が必要です。
警察での事情聴取の際に、どの程度の認識を持っていたのかと問われることは少なくありません。
その際に「まったく気付いていなかった」ということが重要なため、認識の程度を明確に答えるようにしましょう。
駐車場内での当て逃げ事故は、損傷の程度が軽微なほど接触時の衝撃が弱く、事故を起こしたことに気付きにくいといわれています。
自動車を運転していると、誰でも事故の加害者や被害者になる可能性があるため、避けては通れない問題です。
もしもの時のために任意保険に加入することも大切ですが、問題が発生してしまったときには、速やかに交通事故の賠償問題や刑事処分に精通した弁護士へ相談することをおすすめします。