東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。
日本損害保険協会による2018年度モニタリング調査によると、その年の車両事故では、27.6%が駐車場内で発生していて、そのうち1.6%で当て逃げが発生していたとの結果が公表されました。
私有地である駐車場内の事故では、道路交通法が適用されないと捉えている方もいるようですが、不特定多数の利用が許されている駐車場においては、道路上と同じく法律が適用され、当て逃げ事故の加害者に刑事罰が課されることになります。
この記事では、駐車場内で当て逃げ事故の被害に遭わないための対策との選び方と遭ってしまったときの対応、また当て逃げ対策用ドライブレコーダーの選び方を説明します。
目次
駐車場で当て逃げ事故の被害に遭わないための予防対策には、以下のように駐車するときの工夫と車の装備を増やすことが挙げられます。
不特定多数の利用が想定されている店舗や施設などの駐車場には、防犯・監視カメラが設置されていることが殆どなので、これらのカメラの死角にならない場所に駐車することをおすすめします。
店舗や施設などの駐車場利用者は、建物の出入口付近に駐車をしたがる傾向が強く、その周辺の駐車スペースで車の出入りが多くなるために事故が起こりやすくなります。
あえて建物の出入口から離れた場所に駐車することで、当て逃げ事故の被害に遭う可能性を低くすることができます。
駐車場を利用するときは、隣接する駐車スペースとの間隔にゆとりがあるところがおすすめですが混雑しているときには、すぐ隣のスペースではなく1台分を開けて駐車すると良いでしょう。
ドライブレコーダーは、走行中や駐車中などに自動車の車内から一定方向を自動的に録画するビデオカメラで、この映像記録が交通事故の確定的な証拠となるため装備することをおすすめします。
また、当て逃げしようとした加害者のなかには、被害車両にドライブレコーダーが装備されていることに気付いたため現場を立ち去ることを止める者も多いといわれています。
ドライブレコーダーは、各メーカーの技術革新によって多種多様な製品が販売されていて、どの様な製品を購入すれば良いか悩んでいる方も多いでしょう。
ここでは、駐車場内での当て逃げ対策用としてのドライブレコーダーの選び方について説明します。
ドライブレコーダーは、一般的に自動車のエンジンキーをオンにすると録画が開始し、オフにすると録画を終了させものなので、駐車して車から離れているときには当然に録画されていません。
そこで、エンジンキーがオフでも録画ができる「駐車監視機能」を備えたドライブレコーダーを使用すると、駐車中で車から離れていても録画することができます。
ドライブレコーダーは、一定方向に向けて固定しているカメラから撮影するため、ある程度の死角ができてしまいます。
この問題を解消するには、カメラの設置台数を増やすか、可能であれば死角のない、または死角の少ない製品を選びましょう。
ドライブレコーダーなどのカメラは、逆光、暗闇、カメラの撮影範囲内で明暗の差が大きいなどの状況では正しく映像を記録できない弱点があります。
駐車場内での当て逃げ対策用ドライブレコーダーとしては、カメラの弱点となりやすい状況でも「加害車両のナンバーが読み取ることができるぐらいの映像が撮れる」認識精度の高い製品を選択することをおすすめします。
また録画品質は、カメラの弱点となる状況でも加害車両のナンバーが読み取れるぐらいの精度を求めると、HDでは不十分で2Kから4Kが必要だといわれています。
ドライブレコーダーは、高性能になるほど操作が難しくなる製品も多くなります。
そのため、会社や家族など複数の人が運転する機会が多い車両には高性能で操作が簡単な製品を選ぶことをおすすめします。
駐車中の駐車監視機能を使用するためには、走行中の通常録画から手動で切り替えなければならない製品も多いので、リモコン操作が可能な製品を選ぶと良いでしょう。
また、タッチパネルを備えた製品、スマートフォンと連動できる機能を備えた製品など視認性と操作性を高めた製品もあります。
当て逃げ事故は、人身事故であるひき逃げ事故と比べて加害者の検挙率が低いといわれています。
しかし以下のような事故発生時の現場での対応や事故後の行動によって、加害者を特定できる可能性を高めることができます。
当て逃げ事故の被害に遭った車両にドライブレコーダーが装備されているのであれば、録画データが上書きされないように保管して、必要があれば警察へ提出するようにしてください。
また事故現場では、目撃者を探して協力を依頼し、事故直後の車両と損傷部分、周辺の状況を写真に記録しておきましょう。
特に、加害車両のものとみられる事故現場に散乱している破片や損傷部分に付着している塗装片は、加害者を特定する重要な証拠となりますので、発見したら必ず警察へ報告しましょう。
交通事故の当事者は、被害者であっても道路交通法によって警察への報告義務がありますので、必ず通報してください。
また、警察へ事故の届出をしていないと、保険会社への保険金請求手続きで必要な交通事故証明書の交付を受けることができませんので注意してください。
駐車場の管理者へ当て逃げ事故があったことを伝えて、加害者の特定のために協力を依頼してください。
また、防犯・監視カメラなどの映像記録は、警察をとおして依頼しないと提供してもらえない場合が多いので注意が必要です。
被害者が車両保険に加入しているのであれば、加害者が見つからないときや加害者に賠償金の支払い能力がないなど修理費を自己負担することを想定して、自分が加入している保険が適用できるか保険会社へ相談することをおすすめします。
駐車場内での物損事故は、接触時の衝撃が弱くて加害者が事故に気付かないことや、被害車両の損害もキズやへこみなどの軽度で、被害者が現場にいなくなっていることも多いため、加害者が現場を立ち去ってしまう当て逃げ事故につながりやすいといわれています。
このような被害に遭って加害者が見つからず、被害者が修理費を自己負担しなければならなくなるなどの泣き寝入りをしないためにも、事前の対策が必要になってきます。
昨今では、あおり運転などの危険運転の被害の届出にも映像記録が用いられて、犯人の検挙に繋がっていますので、車を所有している方はもしもの時に備えてドライブレコーダーを装備してはいかがでしょうか。