東京弁護士会所属。
交通事故の程度によっては、入院が必要になったり、定期的な通院、精神的にも疾患を負ったり、PTSDとして現れることもあります。
こうした状況の中で、交渉ごとを被害者本人でまとめようとすることは非常に大変です。
弁護士に示談交渉を依頼することで、直接示談交渉をしたり、資料を準備したりする精神的負担が軽減できます。
つらい事故から一日でもはやく立ち直るためにも、示談交渉は弁護士に任せて、治療に専念してください。
交通事故の加害者は、事故による被害者の損害を賠償しなければなりませんが、経済的な理由や事故の原因や状況、損害の程度によっては損害の全部または一部の賠償を拒否することがあります。
この記事では、物損事故の被害者に向けて、賠償金の支払いを拒絶された事例とその対処法、また被害者であっても賠償金を支払う事例も併せて説明していきます。
目次
ここでは、物損事故の賠償金のメインである修理代について、支払いを拒絶される事例について説明します。
物損事故の損害は、事故車両の分損と全損に区別されますが、全損では、さらに物的全損と経済的全損に区別されます。
そして、それぞれの損害の賠償については、次の様に取り扱われます。
被害者が事故車両を大事にしていて、どんなに費用が掛かっても修理して使用し続けたいという思い入れがあっても、経済的全損とされれば修理費用の全額の支払いを拒絶されることになります。
交通事故では、当事者の双方に何らかの過失があることが一般的で、その過失を数値化して表したものを過失割合と呼びます。
具体的には、10対0または100%対0%、6対4または60%対40%などと表記され、数値の大きい方が加害者となります。
この過失割合は損害額の賠償責任を負担する割合を定めるときに用いられ、これに応じて過失相殺がなされて、具体的に支払われる賠償金の額が算出されます。
加害者の過失割合が圧倒的に高いときには問題となりませんが、被害者の過失割合が高いときなどは、加害者や加害者側の任意保険会社から修理費等の賠償金の支払いを拒絶されることがあります。
物損事故では、人身事故と違って自賠責保険から被害者へ賠償金が支払われることはありませんので、加害者が任意保険に加入していないときには、経済的な理由から賠償金を支払えないことがあります。
ちなみに、損害保険料率算出機構の統計によると、国内で運行されている車両(自家用、商用、二輪車を含む)の任意保険の加入率は、約75%であると公表されていて、実に4台に1台が任意保険に加入していないことになります。
物損事故の加害者が任意保険に加入していないと、被害者への賠償金の支払いを自己負担しなければなりませんが、示談成立のためにも加害者の積極的な行動が必要になってきます。
しかし、実際には問題解決に向けた加害者の積極的な行動が少なく、被害者への賠償金の支払いを踏み倒してしまうことさえあります。
ここでは、被害者がとれる対処法を、加害者と連絡がとれるか否かに分けて説明します。
加害者の中には、経済的な理由や過失割合の主張の違いを理由にして、被害者への賠償金の支払いを拒否してくる者もいます。
たとえ、加害者に賠償金について支払い能力がなくても、加害者の不法行為責任がなくなることはありませんので、被害者は示談交渉を通じて加害者に責任を認めさせる必要があります。
また、当事者の過失割合の主張に争いがあるのなら、示談交渉を通じて当事者の責任を明確にすることが大切になってきます。
物損事故の損害賠償では、被害者が加害者に対して請求できる期間に3年という時効がありますので、加害者が経済的理由から示談交渉を拒んでいたとしても、必ず時効が完成するまでに示談を成立させましょう。
当然ですが、示談を成立させるためには、示談金の支払方法を分割払いや一定期間猶予するなどの被害者側の譲歩も必要になってきます。
また、示談を成立させるうえで、次の点も取り入れることをおすすめします。
過失割合の主張の違いについては、示談交渉自体が難航しますので、弁護士に依頼したほうが得策だと言えます。
物損事故では、賠償金の額が低いことも多いので、弁護士費用が賠償金の額を超えてしまう可能性がありますが、被害者自身が加入している任意保険に事故処理の弁護士特約が付いているのであれば活用してみることをおすすめします。
過失割合は、これまでの裁判例を参考に定められるものなので、被害者が訴訟を提起して、自身の主張を認めてもらう方が加害者と示談交渉をすすめるよりも解決が早まる可能性もあります。
交通事故の加害者の中には、被害者へ賠償金を支払いたくないからと意図的に連絡を絶って所在不明になる者もいます。
これは、示談成立前なら加害者が話し合いを拒否していること、また示談成立後なら加害者が支払いを拒否して示談を反故にしたことが明らかであるといえます。
この場合、被害者は、訴訟を提起して勝訴判決を得て加害者の財産へ強制執行を行うことでしか解決を図れません。
また、加害者が仕事中に起こした事故であれば、加害者の雇い主へ使用者責任を追及して、交通事故による損害の賠償を請求できる可能性もあります。
物損事故では、過失相殺がなされますので、被害者に全く過失がないときを除いて、当事者双方の過失割合が賠償金の額に大きく影響してきます。
また、被害者の損害よりも加害者の損害が大きいときには、過失割合によっては、被害者が加害者へ賠償金を支払う可能性もあります。
ここからは、具体的な損害額と過失割合から賠償金の額を比較して説明します。
加害者 | 被害者 | |
---|---|---|
損害 | 100万円 ① | 100万円 ② |
過失割合 | 90% ③ | 10% ④ |
具体的な金額は、まず当事者の損害に相手方の過失割合を乗じて負担額を算出し、負担額の大きい方から少ない方を差し引いた額が賠償金となります。
また、負担額の大きい方の当事者は、負担額の少ない方の当事者へ賠償金を支払うことになります。
計算式
負担額の大きい方が賠償金を支払う当事者となりますので、このケースでは、加害者が被害者に対して80万円を賠償金として支払うことになります。
加害者 | 被害者 | |
---|---|---|
損害 | 100万円 ① | 100万円 ② |
過失割合 | 60% ③ | 40% ④ |
計算式
こちらのケースでは、加害者が被害者に対して20万円を賠償金として支払うことになります。
加害者 | 被害者 | |
---|---|---|
損害 | 200万円 ① | 100万円 ② |
過失割合 | 60% ③ | 40% ④ |
計算式
こちらのケースでは、被害者の過失割合が大きく、かつ加害者の損害も大きいので、被害者の負担額が加害者の負担額を超えることになります。
この結果、被害者が加害者に対して20万円を賠償金として支払うことになります。
物損事故の被害者が少しでも賠償金を多くしたいのならば、示談交渉での過失割合の算定が大切になってきますが、当事者の主張に食い違いがあると交渉が遅れ、最終的に示談が決裂することもありえます。
そして、示談交渉が成立せずに時間だけが経過してしまうと、加害者が賠償金の支払いの踏み倒しや時効が成立して請求が出来なくなってしまうおそれもあるのです。
被害者に有利な内容で1日でも早く問題の解決を図りたいのであれば、交通事故の問題処理に実績のある弁護士に相談や依頼することをおすすめします。