東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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死亡事故の被害者遺族は、大切な家族の命を突然奪われてしまい、精神的に非常に辛い思いをしているかと思います。
悲しみに暮れる間もなく、葬儀の準備や遺品整理、保険会社との交渉をおこなっていく必要があるので、何から手をつけてどう対応していけばいいのか、よくわからなくなってしまうでしょう。
この記事では、死亡事故の被害者遺族がすべきことについて、裁判までの流れや事故対応で注意すべき点などをわかりやすく解説していきます。
目次
遺族が事故直後にやるべきこととしては、主に次のとおりです。
具体的にどういう対応をすべきなのか、それぞれについて詳しく確認していきましょう。
遺族は、被害者に不利な状況で捜査が進まないよう、警察官と密に連絡を取り、事故状況を正確に把握する必要があります。
死亡事故の場合、被害者はすでに亡くなっていることから、実況見分は加害者の立ち会いのみでおこなわれます。
ここで作成される実況見分調書は、事故の過失割合に影響する重要な書面になりますが、加害者は自分の罪を少しでも少なくするために、加害者に有利になるような主張をしてくる可能性があるのです。
もちろん、加害者の主張が全てそのまま通るわけではありませんが、裁判や示談交渉のことまで考えると、遺族側から何も反論しないのは得策ではありません。
ドライブレコーダーの映像・目撃者の証言・近隣のコンビニエンスストアなどの防犯カメラの映像・現場の状況・加害者のけがの程度など、あらゆる証拠から事故状況を正確に把握し、裁判や交渉を有利に進められるように対応しておくことが重要だといえるでしょう。防犯カメラは2週間程度で消えてしまうものも多く、ドライブレコーダーも上書きされて行ってしまうので、迅速に動く必要があります。
また、今後のために、加害者の氏名や連絡先、加入している保険会社や現在の捜査状況などを、警察に確認しておくのが良いでしょう。
被害者が病院に担ぎ込まれたあとに亡くなったのであれば、治療費の支払いなど、病院側と一定のやりとりが発生する可能性があるでしょう。
治療費については、加害者側の保険会社に賠償請求できますが、保険会社への連絡が遅れてしまった場合、一旦窓口負担が出てしまう可能性があります。
また、被害者が事故で即死してしまった場合、警察による検死が必要となるため、遺体の引き渡しまでに時間がかかる場合があります。
検死は早ければ半日程度で終わりますが、事件性がある場合で、司法解剖に時間がかかる場合には、1か月以上の時間がかかるケースもあります。
遺族はなるべく早い段階で、「被害者自身が加入している保険会社」および「加害者が加入している保険会社」に連絡をしておくのをおすすめします。
被害者側の保険会社からは、人身傷害保険などの死亡保険の利用可否や示談代行サービスなどのさまざまなサポート、今後の手続きの流れなどについて適切なアドバイスをもらえます。
遺族が加入している保険会社からも補償を受けられる場合があるので、くわしい補償内容は保険会社に確認してみるのが良いでしょう。
また、加害者が任意保険に加入しているのであれば、示談交渉は加害者側の保険会社とおこなうことになります。すぐに示談交渉を始めるわけではありませんが、今後の対応をスムーズにおこなう意味でも、早い段階で1度連絡しておくのが良いでしょう。
なお、病院側に治療費等を支払う必要があるのであれば、保険会社に申告することで病院側に直接支払いをしてもらうことも可能です。
被害者遺族は、事故対応と並行して故人を弔う準備もおこなう必要があります。葬儀をおこなうのであれば、依頼する葬儀屋に連絡して、葬儀の手続きを進めていくことになるでしょう。
まず、病院や警察から死亡診断書(死体検案書)を受け取ったら、「死亡届」を各市区町村の自治体に提出します。
死亡届を提出すると、遺体の火葬に必要な「火葬許可証」を発行してもらえます。この火葬許可証は、火葬後の納骨に必要な「埋葬許可証」として使うことになりますので、失くさないよう大切に保管してください。
なお、葬儀屋に依頼する場合にはこれらの手続きを代行してもらえるため、遺族の負担を減らすことができるでしょう。
葬儀の準備や遺品整理などと並行して、事故状況に関する資料や情報を収集しておきましょう。
被害者自身の加入する保険会社から保険金を受け取る際や、加害者側の保険会社と示談交渉をおこなう際には、さまざまな書類が必要になります。
保険金支払請求書や事故状況報告書など、書式があらかじめ定められている場合もあるので、どの書類をどの書式で提出すればいいかは、あらかじめ保険会社に確認をとるようにしてください。
また、過失割合などについて加害者側と争いになりそうであれば、ドライブレコーダーの映像や事故現場近辺の防犯カメラ映像、目撃者の証言などの証拠を整理しておくのが良いでしょう。
ただし、葬儀の準備や遺品整理などと並行しながら証拠を集めるのは難しい場合が多いので、ご自身での対応が難しいのであれば、なるべく早めに弁護士に相談するようにしてください。
慰謝料を含む賠償金を受け取るために加害者側の保険会社と示談交渉を始めるのは、一般的に49日法要が終わったあとです。なぜなら、この49日法要にかかった金額も、事故による損害として加害者に請求できるからです。
49日法要前に保険会社から示談の提案があるかもしれませんが、そのタイミングで示談すると損をすることになるので注意してください。
また、後述するように、民事手続きである示談交渉は、刑事手続きが終わったあとにおこなうのがベストです。
死亡事故の加害者は、次の3つの責任を負うことになります。
刑事責任 | 自動車運転死傷行為処罰法や道路交通法違反等の罪で、懲役・罰金・禁固などの刑罰を受ける |
---|---|
行政責任 | 免許の停止・取り消しなどの処分を受ける |
民事責任 | 慰謝料を含む損害の賠償請求を受ける |
加害者が懲役刑などの刑事罰を受けたとしても、民事手続きで慰謝料を請求することは可能です。
また、被害者遺族が行政罰に関与することはできませんが、刑事罰については、「被害者参加」と呼ばれる制度を活用して、事故に関する事実関係や法律の適用について意見を述べることも可能です。
死亡事故が発生してから示談交渉がまとまるまでの流れについて、「刑事事件」と「民事事件」の2つにわけて解説していきます。
死亡事故が発生すると、警察が現場検証をおこない、その調査結果をまとめた「実況見分調書」が作成されます。
これ以降、警察は事故について捜査をおこなうことになりますが、死亡事故の場合には被害者への聞き取りができないので、遺族に対して聞き取り調査が行われる場合があります。
加害者が逮捕されるかどうかは状況にもよりますが、警察・検察の捜査が一通り終わると、加害者を起訴するかどうかの決定がおこなわれます。「危険運転致死傷罪」に該当するような悪質な事故であれば、起訴されて刑事裁判にかけられる可能性は高いです。一方で、不慮の事故などで「危険運転致死傷罪」に該当する場合であれば、起訴されない可能性がないわけではありません。
起訴されると刑事裁判にかけられることになりますが、遺族は被害者参加制度を利用すれば「事件の当事者」として手続きに関われるので、参加を検討するのも良いでしょう。
参照:被害者参加制度 裁判に参加する被害者をサポート|政府広報オンライン
死亡事故の遺族は、いつでも加害者や加害者が加入する保険会社と示談交渉をおこなえますが、特に過失割合に争いがある場合、できれば刑事事件の手続きが済んだあとに示談交渉を開始するのがベストです。
刑事事件が終了したあとに示談交渉をおこなうメリットは、次のとおりです。
刑事手続きが終わったあとであれば、刑事裁判で出た判決や捜査資料を民事訴訟の証拠資料として使えるようになるので、加害者の民事上の賠償責任を立証しやすくなります。
また、先に民事上の示談が成立している場合には、刑事事件において加害者の量刑が軽く判断される可能性もあります。
つまり、加害者側の保険会社と示談交渉をおこなうタイミングは、刑事事件が終了し、かつ49日法要が過ぎたあとがベストだといえます。
死亡事故で遺族が保険会社と示談交渉をおこなう際は、次の3つの点に注意してください。
以下、それぞれくわしく解説していきます。
1度でも示談書にサインをしてしまうと、基本的にあとから示談のやり直しはできないことを頭に入れておいてください。
基本的には、刑事手続きが終了し49日法要が終わったあとに示談交渉を開始することになりますが、加害者や保険会社が、それより前に示談を申し出てくるケースもあるでしょう。
この場合、精神的負担の大きさから、とにかく早く示談を成立させたいと考えてしまうかもしれません。
しかし、自社の営利を追求する保険会社は少しでも被害者に支払う賠償金を少なくしようとしてくるので、相場よりも低い示談金を提示してくるケースがほとんどです。
また、刑事手続きよりも先に示談に応じることで、加害者の刑罰が軽減されてしまう可能性もあります。
死亡事故では、賠償額が数千万円と高額になるので、安易に示談交渉には応じないようくれぐれも注意してください。
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示談交渉をいつ開始してもいいからといって対応せずに放置していると、時効にかかり請求する権利を失うおそれがあるので注意してください。
遺族が保険会社に賠償を請求できる権利は、一定の期間が経過すると時効で消滅します。
損害の種類 | 時効期間 |
---|---|
死亡慰謝料 | 死亡した日の翌日から5年 |
加害者不明の損害 | 事故発生日の翌日から20年※ |
たとえば、被害者自身の保険会社から保険金を受け取ったことで満足し、加害者への請求を怠っていると、高額な賠償金を受け取ることができなくなるおそれがあります。
時効が迫っている場合には、時効の完成を猶予させる手続きが取れないか、弁護士に相談してみましょう。
なお、被害者が加入していた保険会社に保険金を請求する場合の時効は3年です。加害者側の保険会社に賠償を請求する場合よりも早く時効が成立するため、気をつけてください。
死亡事故の対応は、基本的に弁護士に任せるのがおすすめです。
弁護士に依頼するメリットは、次のとおりです。
死亡事故の被害者遺族は、大切な家族を失った悲しみに暮れる暇もなく、葬儀の手続きや保険会社との交渉を進めなくてはいけません。当然、遺族自身の生活も維持していかなくてはいけないので、仕事も続けながら全ての対応を行っていくことになるでしょう。
ただでさえ、慣れていない手続きにもかかわらず、示談交渉の際に保険会社から心無い言葉を言われたら、精神的なダメージが大きく、日常生活に支障を来してしまう可能性もあります。
弁護士なら、保険会社から理不尽な主張に対して毅然と対応できるだけでなく、裁判まで視野に入れた交渉で、最大限の補償を実現することができます。
遺族だけで交渉しようとすると、賠償金額が数千万円単位で変わる可能性もあるので、死亡事故の対応は交通事故に精通している弁護士に依頼することをおすすめします。
交通事故の被害者遺族がしなければいけないのは、主に次の3つです。
事故後は、やることが多くて精神的にも肉体的にも大変かと思いますが、弁護士に任せてしまえば、遺族は葬儀などの準備に専念することができます。
何から手をつければいいのかわからなくなってしまった場合には、まずは1度弁護士に相談してみることをおすすめします。