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交通事故が発生し、捜査を行うこととなれば警察は、事件の報告を「検察官」にします。
このことを「送致」といいます。
送致された事件は、検察官へと引き継がれて検察官による取り調べなどの捜査を行い判断が下されます。
【point!】
証拠により犯罪を犯したことが明白で、刑事責任で事件が審理されるべきであると判断されるかどうか
※起訴・不起訴の判断は「検察官」のみに与えられた権限です。検察官により精査され、一律に決められた基準はありません。個々の事件の内容により異なります。
起訴 | 検察官により「刑事裁判」で事件が審理されるべきと判断されること |
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不起訴 | 検察官により「刑事裁判」で事件が審理される必要がないと判断されること |
検察官が“起訴をすべきである”と判断し起訴が決定すれば、「起訴状」が裁判所に提出され、次に「刑事裁判」へ移行します。
被害者からは悪質な加害者に対して何らかの処罰を与えて欲しいと思うのは自然な感情であるといえます。
しかし現実は被害者の望みとおりにはいきません。
とても悔しく、怒りの矛先を向ける場所がなく激しい憤りを感じるのではないでしょうか。
被害者本人ではなくても、たとえば報道などで取り上げられた交通事故の事件に関しては怒りの感情が押し寄せるものです。
最近では、高齢者が加害者となる交通事故が増えており「略式起訴」などという言葉を聞く機会も増えています。
起訴の種類は1つではありません。
いったい、どのような種類があるのでしょうか?
一つずつ確認していきましょう。
そもそも起訴にはどのような種類があるのでしょうか?
起訴の種類
「略式手続き」は、交通事故に限らずさまざまな事件が報道されているため一度は聞いたことがあるかもしれません。
ここでは「略式手続き」について見ていきます。
被疑者の同意のもとで書面審査のみ(公判手続きなし)で最終決定が下される(略式命令)手続きのことです。
被疑者は、「罰金」(略式罰金)さえ支払えば釈放され刑務所に収監されることはありません。
以下の3つの条件を満たすことが必要です。
つまり、よほど悪質な事故(ひき逃げ、飲酒運転、あおり運転など)でなければ、比較的甘い処分で終わってしまうことが多いのです。
前述のとおり、起訴・不起訴を決めるのは検察官です。
とてももどかしい気持ちになりますが、被害者の処罰感情のみではどうすることもできないのが現実です。
先ほども見てきましたが、警察から送致された交通事故の捜査内容を精査し、必要があれば再捜査をこない「刑事裁判で審理されるべきか否か」の必要性を検察官が判断します。
「起訴」となれば、刑事裁判へ移行し、被疑者(加害者)は「被告人」と呼ばれます。
また、検察官が刑事裁判での審理を求める必要がないと判断すれば「不起訴」となります。
不起訴は、「理由」に応じて3種類に分類されます。
いずれも、捜査の結果が前提となります。
【不起訴の理由】
嫌疑なし | 被疑者に対して「犯罪」の疑いがなくなった場合 |
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嫌疑不十分 | 全には「犯罪」の疑いがなくなったわけではないが、客観的な証拠などが足りず、刑事裁判において“有罪”の証明をすることが難しいと考えられる場合 |
起訴猶予 | 刑事裁判において“有罪”の証明が可能であっても諸々の事情を鑑みて、検察官の裁量により不起訴となる場合。【起訴裁量主義】 ※犯罪後の状況(示談成立か否か)、被疑者の性格や年齢・境遇、犯罪の軽重など |
不起訴となれば、いわゆる「前科」が付かず、身体拘束やさまざまな不利益から解放されることになり日常生活を取り戻すことができます。
これまでも見てきたとおり、被害者にとっては納得のいかない最終決定が下されてしまうことがあります。
交通事故後に、加害者が被害者に対して、謝罪もなければ反省の色も見えないとなればどうでしょうか。
100万円以下の罰金程度では「納得できない」と強く思われるのではないでしょうか。
厳罰を望む被害者に何か取り得る手段はないのでしょうか?
端的にいうと、弁護士のサポートを受けて、検事に対し「起訴」を願い出ることです。
つまり、略式手続きではなく「正式な裁判」に持ち込むように働きかけることです。
具体的には、略式手続きの決定を検察官が下す前に「上申書」を提出すること、担当検察官に直接面会に行き被害者の立場で訴えかけることなどが必要となります。
一般的な刑事事件と比べると、交通事故のケースでは「在宅捜査」となるため交通死亡事故の例では略式手続きに至るまで1年近くかかることもあります。
だからといって、あまり悠長に構えてもいられません。
実際には、交通事故の加害者が起訴されることは少ないとされています。
その背景には、人身事故の加害者を全て起訴していると処理対応が追いつかないことが原因であるという事情があります。
それだけに、検察官に委ねるのではなく被害者自らが動かなくてはなりません。
しかし、法的な知識や厳格な手続きを取る必要があるため、被害者が自力で行うことは至難の技であることは想像に難くありません。
加害者に対して厳罰を望むのであれば、弁護士に依頼してサポートを受けながら確実に進めていくことが賢明であるといえます。
それでは、続いて「起訴」となった事例について見ていきましょう。
加害者の悪質性(罪を科すべきもの)が問われるものですが、いったいどのような事例が該当するのでしょうか?
近年では、交通事故の加害者に対して“厳罰化”の傾向が高まっています。
【※参考】
交通事故問題を解決するまでには、実にさまざまな過程を経なければなりません。
専門用語や法律用語が飛び交い、頭がパニックになるのではないでしょうか?
ただでさえ、怪我をしている、場合によっては大切なご家族を亡くされている状況で適切な判断ができるはずもありません。
慰謝料についても、また頭の痛い問題です。
これらの民事上の問題を解決することのほかに、厳罰を望むのであれば刑事上の責任についても考えていかなければなりません。
交通事故の被害に遭うと、加害者には以下のような3つの責任が生じます。
加害者への3つの責任
つまり、加害者だけではなく被害者にとっても責任を果たしてもらう側の立場としてできることを適切に行わなければ不利益を招いてしまうことなります。
民事上の損害賠償の示談交渉は多岐に渡ります。
また、これらの金銭補償に関わるものだけではなく「過失割合」についても大きな争点となりますので、被害者本人やご遺族が行うことは大変な労力を伴います。
たとえば、慰謝料一つ取ってみても「算出基準」の違いにより雲泥の差額が生じてしまいます。
“どの基準を用いて算出するか“という発想さえ思い浮かばないことが普通です。
何も知らなければ、保険会社の提示してきた金額で納得がいかなくても「そういうものだ」と思い不満があっても渋々合意してしまうのではないでしょうか。
このような不利益を開始するためには、正しい知識を被害者自身が備えておく必要がありますが、なかなか一度で網羅的に理解できないでしょう。
示談交渉は、ややこしく煩雑な手続きを要することも多いので、早い段階から弁護士に依頼することが賢明といえます。
特に、慰謝料請求の場面では「弁護士基準」と呼ばれる基準を用いて慰謝料アップが期待できます。
慰謝料の計算方法には3つの基準があることを知っている人はあまりいないでしょう。
事故経験者か、保険・法律関係者でもない限り知らないことの方が一般的です。
自賠責保険基準 (最も低額) | 車両所有者全て対して加入が義務付けられている保険のこと。 必要最低限の補償が目的(被害者救済のため) |
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任意保険基準 (自賠責保険基準に少し加算した程度の金額) | 車両所有者が任意で加入する保険のこと。 保険会社ごとに基準が異なり計算式などは保険会社の裁量基準なので不明。 |
弁護士基準(裁判基準) (最も高額) | 過去の裁判例に基づき弁護士や裁判所が用いる基準。 いわゆる「正当な金額」で算出されているといえる。 |
弁護士基準の金額は、裁判所の考え方や判例などをもとに日弁連の交通事故相談センターの支部等が作成しています。
地域によって赤本・青本・黄色い本などがありますが、東京を中心に使われる赤本に従って紹介・解説していきます。
例:むち打ちなどの事例
通院期間 | 自賠責保険 | 任意保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|---|
3か月 | 25.8万円 | 37.8万円ほど | 53万円 |
6か月 | 51.6万円 | 64.2万円ほど | 89万円 |
8か月 | 68.8万円 | 76.8万円ほど | 103万円 |
(※自賠責基準は、月間の通院日数を10日間・日額4300円として計算しています)
「後遺障害慰謝料」の金額については下記の表になります。
※()内の数値は要介護の後遺障害の事例となります。
等級 | 自賠責保険基準 | 任意保険基準(推定値) | 弁護士基準 |
---|---|---|---|
1級 | 1,150万円(1,650万円) | およそ1,600万円 | 2,800万円 |
2級 | 998万円(1,203万円) | およそ1,300万円 | 2,370万円 |
3級 | 861万円 | およそ1,100万円 | 1,990万円 |
4級 | 737万円 | およそ900万円 | 1,670万円 |
5級 | 618万円 | およそ750万円 | 1,400万円 |
6級 | 512万円 | およそ600万円 | 1,180万円 |
7級 | 419万円 | およそ500万円 | 1,000万円 |
8級 | 331万円 | およそ400万円 | 830万円 |
9級 | 249万円 | およそ300万円 | 690万円 |
10級 | 190万円 | およそ200万円 | 550万円 |
11級 | 136万円 | およそ150万円 | 420万円 |
12級 | 94万円 | およそ100万円 | 290万円 |
13級 | 57万円 | およそ60万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | およそ40万円 | 110万円 |
これまでも見てきたとおり、加害者に対して厳罰を望むのであれば、検察官に対して起訴を求める行動を一早く起こすことが重要です。
民事上の示談交渉においても、主張が食い違い「合意」に至らなければ最終的には裁判所で決着をつけることになります。
裁判手続きは、厳格な様式が求められます。
たとえば、管轄を間違えてしまえば受理してもらえませんし、それを調べるだけでも意外と大変なものです。
客観的な証拠を集める作業なども時間がかかり、被害者本人が自力で行うことは現実的ではないでしょう。
何より、一つ一つわからないことを調べながら進めていくと間に合わなくなってしまう可能性が高く本末転倒となってしまいます。
被害者であるご自身の希望通りに効率よく進めるためにも一度弁護士にご相談されてみてはいかがでしょうか。
自動車運転技術の発展は目覚ましいものがあります。
交通事故の発生件数は減少傾向にある一方で、悲惨な交通事故のニュースがなくなることはありません。
「被害者だから、何もしなくても誰かが動いてくれるはず。」と思われるのも無理もありませんが、現実は違います。
大変な労力を伴いますが、被害者自らが動き出さなくては何も変わりません。
そのような苦しい状況のときに支えとなるのは法律のプロである弁護士にほかならないでしょう。
法的な観点から、最適なアドバイスで被害者の加害者に対する処罰感情を検察官に伝えることができます。
あまり考えている時間はありませんので、少しでも早くご相談されることをおすすめします。