東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。
Contents
会社の清算とは、いまある会社の財産と負債を全て整理し、会社を消滅させる手続きをいいます。
会社を設立する際は、株主が法務局で手続きを行い、設立届を提出すれば簡単に設立できます。
会社を清算するためには、まず会社を解散する必要があります。
解散とは、会社が持つ法人格を消滅させる1つの方法です。
法人格を消滅させる方法は他にも、合併や、倒産による消滅があります。
会社を清算する場合は、まず会社を解散することについて株主総会で決議を行います。
株主総会で解散決議を行う場合は、特別決議が必要です。
会社の解散は株主にとって大きな出来事です。
特別決議を成立させるためには、株主総会で行使できる議決権の過半数を有する株主の出席と、出席した株主が有する議決権の3分の2以上の賛成が必要です。
株主総会での解散の決議後、決議の内容に従い、会社が解散した日から2週間以内に法務局で解散の登記手続きが必要です。
清算人の選任も株主総会で行われているため、清算人の登記も同時に行います。
なお、解散した会社は、清算手続きが完了するまでは「清算中の会社」という位置づけになるため、基本的に事業活動は行わずに、清算に向けた活動を行います。
一般的には取締役も解散と同時に退任するため、清算を取り仕切る清算人がその後の会社の代表者となります。
解散の決議・その登記手続きの完了後、解散の事実を税務署や都道府県・市町村など各公的機関に届け出をします。
解散完了後は、引き続き清算手続きを進めます。
やらなければならないことがたくさんあるため、計画的に進める必要があります。
清算人は、解散した日における会社の財産・債務状況を調査します。
調査後、調査結果に基づき財産目録と貸借対照表を作成し臨時株主総会を開催し、作成した書類について株主の承認を受けます。
「財残目録」とは、財産の状況を明らかにしたもので、現金・売掛金などの資産、借入金・買掛金など負債などが種類ごとに一覧になったものです。
また、「貸借対照表」は財産目録の内容を元に、資産と負債の概要を示したもので、会社の財政状況がわかる資料のことをいいます。
解散する会社は利害関係者、特に債権者の保護も必要です。
解散する会社に対して債権がある場合、請求ができなくなる恐れがあるため、解散する会社は、債権者に対して解散する旨を通知しなければなりません。
清算人は2か月以上の一定期間、債権者に対して「官報公告」「個人催告」を行い、申し出を促します。
ここで双方の把握している債権債務の内容に違いがある場合は、正しい金額を確認する必要があります。
事業年度開始の日から解散した日までの期間を1事業年度として、税金の計算をすることとされています。
解散までの1年未満の期間における法人税・消費税については、通常と同じように確定申告を行います。
この申告・納税の手続きは、解散日の翌日から2か月以内です。
解散した日の翌日から、清算中の法人として新しい事業年度が始まります。
解散してから1年以内に精算が完了しない場合には、解散した日から1年間を1清算事業年度として確定申告を行います。
法人税や消費税の納税義務があるため、会社の財産の売却で発生した利益や消費税については、清算事業年度終了の日から2か月以内に納税します。
会社が保有する財産を売却し、その売却代金で債務の返済を行います。
全ての債務を返済した後に残ったお金・資産を残余財産といいます。
この残余財産は、株主のものとなるため、株数に応じて株主に分配します。
残余財産の分配終了後、最後に清算結了の手続きを行います。
会社の消滅まであと一歩ですが、最後まで必要な手続きを怠らないようにしましょう。
清算人は残余財産の分配完了後、速やかに決算報告書を作成し、株主総会で承認を受ける必要があります。
承認を受けることで、正式に会社の清算結了となります。
株主総会での承認を受け清算結了後、その日から2週間以内に清算結了についての登記を行う必要があります。
清算結了登記が行われると、会社の登記簿は閉鎖され、会社は消滅します。
株主総会により残余財産が確定した日までの期間についての、法人税や消費税の確定申告を行います。
残余財産が確定した日から1か月以内に、税務署へ申告書を提出します。
清算結了した旨を報告するため、清算結了届を税務署や都道府県・市町村に提出します。
実務的には、確定申告書と同時に提出することが多いです。
会社が消滅しているため、清算会社の帳簿や様々な書類は、清算人が保管することとされています。
清算結了登記から10年間、清算人は会社の書類を自身で保管しなければなりません。
会社が解散の決議を行うと、引き続き清算の手続きに入ります。
解散の時点で有する債権と債務を、現預金の受け取りや支払いにより全てゼロにします。
清算が完了すると、会社に現預金だけが残ります。
この残った現預金を残余財産といいます。
残余財産のうち、資本金に相当する金額は、株主に分配をします。
資本金に相当する金額は、株主がもともと会社に出資した金額のため、株主に支払っても課税されません。
一方、資本金の額を超えて株主に払い戻される金額については、会社から配当金が支払われたものと考えられるため、支払う段階で所得税が源泉徴収され、受け取った株主も確定申告をする必要があります。
会社を解散・清算する際には、各事業年度において通常の確定申告を行う必要があります。
その事業年度内に発生した所得金額に対して法人税や地方税がかかり、納税をしなければなりません。
ただし、解散した会社は、事業活動を終了するため、それまでのように売り上げが発生することはありません。
そのため、多額の法人税や地方税が発生することはなく、解散後は毎年赤字になることはありません。
ただし、会社が保有する不動産や有価証券を売却した場合は、利益が発生する可能性があるため課税の対象になる場合があります。
また、債務の方が多い場合、債権者に「借りたお金の返済を免除してもらう」債権放棄という手段があります。
特に、元の代表者に対する借入金であれば、容易に債権放棄してもらうことができます。
しかし、この時会社には債務免除益という利益が発生してしまい、この利益も課税対象となる可能性があります。
繰越欠損金や過去の期限切れの欠損金が利用できる場合は、納税が生じないため、この段階で法人税や地方税が発生することはありません。
しかし、必ず税金が発生しないというわけではないため、財産の売却額や債務免除の際の取り扱いについては注意が必要です。
清算を行う段階で、会社が保有する不動産を売却すると、消費税が発生するケースがあります。
不動産の中でも、土地の売却であれば消費税は発生しませんが、建物については消費税が発生します。
消費税の課税要件を念頭に置かなければ、残余財産分配後、現預金がない状態で消費税の納税が生じることになるため、解散する際には、どのような財産の売却を行う必要があるのか、先に売却できる資産はないかを確認しておく必要があります。
会社を解散・清算することは、設立より複雑で慎重に進めていく必要がありますが、原則的な考え方を理解していれば、決して難しいことではありません。
株主に払い戻す金額のうち、資本金は課税対象にならず、資本金を超える部分は課税対象になるのは、株主にとって重要なことです。
また、会社としても清算中に課税される金額が発生する可能性があるため、事前にその対策を考えておきましょう。