東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。
Contents
会社を廃業するためには、会社の財産や従業員、取引先との契約などをひとつずつ片付ける作業をおこなわなければいけません。
株式会社を廃業するためには、一定の手順に従って手続きを進める必要があります。
まずは、株式会社を廃業するための手続きの流れについて見てみましょう。
株式会社の廃業手続きの流れ
以上が株式会社を廃業するときの一連の手続きになります。
するべき手続きが多く、かなり複雑になっていることがわかるはずです。
株式会社の廃業手続きについてステップごとに説明します。
株式会社の経営状態などでどうしても廃業を選択せざるを得ないケースもあります。
しかしながら、本当に株式会社を廃業しなければならないのか、廃業の手続きを進める前によく考えるべきではないでしょうか。
株式会社をやめたい場合は廃業以外の方法もありますので、比較検討することも可能です。
株式会社の廃業以外の選択肢については、後半で詳しく説明します。
検討のうえでやはり「廃業する」と決めたら、株式会社を廃業することを社員や顧客などに伝えなくてはいけません。
ただ、廃業の手続きが難航するケースもあるため注意してください。
廃業手続きが難航したときのために、廃業日には余裕を持たせておくといいでしょう。
なお、廃業通知ですが、廃業の理由について書く必要はありません。
時節の挨拶と廃業日、廃業する旨を事務的に記載する文面で特に問題ありません。
次におこなうのは、株主総会で株式会社の解散を決議することです。
株式会社の廃業のためには特別決議が必要になります。
「株主総会に発行済み株式数の過半数の株主が出席し、2/3以上の賛成」が必要なのが特別決議です。
株主総会では会社の清算人も決める必要があります。
清算人とは、株式会社の廃業手続きを進める言わば「後片付け役」です。
株式会社の経営と縁の深かった役員などが清算人に就任するのが一般的になっています。
株主総会で株式会社の廃業や清算人を決めたら、法務局で株式会社の廃業に向けた登記をします。
おこなう登記は「解散登記」と「清算人選任登記」になります。
登記すると多くの人が会社の情報を見られますので、この株式会社は廃業に向けて手続きがはじまっているのだとわかるようになります。
解散登記と清算人選任登記は、2週間以内におこなわなければいけません。
会社の廃業が決まったら、税金や社会保険などの手続きも必要になります。
担当の窓口に必要な書類を提出します。
これはあくまで一例です。
この他に、商工会議所や各加入団体などへの退会の届出なども、手続きのタイミングを見ておこなわなければいけません。
また、廃業する株式会社が利用している各種サービス(インターネットや電気など)なども整理する必要があります。
株式会社の状況によって届出の必要なものが変わってくる可能性があり、提出するタイミングの判断も難しくなります。
専門家のアドバイスを受けてミスなく進めていきましょう。
株式会社が廃業することは、債権者にとって利害に関わる重要事項になります。
債権者は会社の債権を持っているわけですから、回収しないうちに勝手に廃業されてしまうと大変です。
そのため、株式会社を廃業するときは、官報により株式会社の債権者に公告をおこないます。
官報とは国の機関紙で、官報への公告期間は法律で2カ月以上と定められています。
官報に掲載をお願いしても即日載せてもらえるわけではありません。
掲載までに1週間ほどは見なければいけませんので、余裕を持って申し込みをしてください。
株式会社が廃業するときは、「解散」して「清算」する必要があります。
株主総会で決めたのは解散です。
解散することを決めて、後片付けである清算をするというふたつのステップで株式会社の廃業が完了します。
現段階では株主総会で解散を決議した状態ですから、解散時の決算書類を作成する必要があります。
後片付けをするときに、何がどこにどれだけある状態なのかわからないと片付け(清算)ができません。
そのため、解散時の決算書類を作成し清算の資料にします。
廃業を進める株式会社の財産目録や賃貸対照表などを準備し、株主総会で承認を得る必要があります。
決算書をまとめたときに会社のマイナスが多い、つまり債務超過の状態であれば破産手続きに進みます。
株式会社の解散時点での決算書類をまとめたら、解散確定申告をおこなわなくてはいけません。
株式会社の廃業では、解散の時点での確定申告と、清算まで終わった時点での確定申告と、確定申告を2回することになります。
この時点で、解散時の確定申告(廃業のための確定申告1回目)を済ませます。
解散確定申告は、解散が決まった日から2カ月以内におこなわなくてはいけません。
解散の処理が終わったら、次は株式会社廃業のための清算に移ります。
解散時点での決算書類をもとに、債権の回収や資産の換金などをおこないます。
また、株式会社の負債については債権者へ返済することになります。
債務の返済については注意点があります。
債務の返済は、裁判所の許可を受けたケースでなければ、官報公告の期間を満了するまでしてはいけません。
なぜなら、官報公告を見るタイミングは債権者によって違うからです。
債権者によっては官報公告が掲載された翌日にすぐ見て連絡してくるかもしれませんが、別の債権者は期間満了ぎりぎりまで気づかないかもしれません。
債権者に先着順で債務の返済をおこなってしまうと、官報公告に遅れて気づいた債務者が返済してもらえないリスクがあります。
そのため、後から官報公告を見た債権者が不利にならないよう、官報公告の期間満了までは返済できないルールになっています。
債権回収や返済などが終わって残余財産があれば、株式会社の財産を分配します。
清算が終了したら清算が終了した時点での決算書を作成し、株主総会に報告して承認を受けます。
後片付けが終わったことを報告すると共に、後片付けの結果について承認を受けます。
清算結了により株式会社の法人格が消滅します。
ただし、手続きはこの後も続きますので注意してください。
株主総会で決算報告書の承認を受けたら、法務局で計算結了登記をおこないます。
清算結了登記は、廃業のうちの清算について決算報告書の承認を受けてから2週間以内におこなうルールです。
清算結了登記をおこなうと、株式会社の登記記録が閉鎖されます。
株式会社の支店がある場合は、支店の所在地でも清算結了登記をおこなう必要があります。
株主総会で解散を決めて登記することで、株式会社が廃業のための手続きに入っていることが登記簿からわかるようになっていました。
この清算結了登記によって会社の登記簿が閉じられ、株式会社は登記の点で廃業がわかるかたちになります。
株式会社の廃業手続きは、清算結了登記の後もまだ続きます。
株式会社の清算結了登記が終わったら、今度は清算が終わった時点での確定申告をおこなわなければいけません。
株式会社を廃業するときの2度目の確定申告が、この清算確定申告になります。
清算確定申告は、残余財産が確定してから1カ月以内におこなわなければいけません。
税務署に清算結了届も提出すれば、一連の株式会社の廃業の手続きは終了となります。
株式会社を廃業するときは、手続きなどに費用がかかります。
費用の相場は、以下のようになります。
株式会社に廃業にかかる費用相場
株式会社の廃業について弁護士や税理士、司法書士といった専門家に相談すると相談料などが別途かかるため注意してください。
専門家に廃業手続きや登記申請などをお願いする場合は、見積もりを取得することをおすすめします。
費用相場の例として挙げた金額は、司法書士に登記などをお願いしたケースを想定しています。
税務署や法務局、自治体などの各窓口に相談や書類の提出、書類の取得のために足を運ぶと交通費などの費用も検討する必要がありますので、注意しておきましょう。
債権者への官報公告や株主総会決議、確定申告や登記など、必要な手続きが多数あるため、手続きの準備や手続きに要する期間などを考慮すると、最短でも2カ月ほどの廃業手続き期間が必要です。
2カ月という株式会社の廃業手続きに要する期間は、あくまで最短でこなした場合になります。
手続きに時間がかかると、その分だけ廃業までに期間を要するので注意してください。
株式会社の規模によっても、廃業までにかかる期間は異なります。
規模の大きな株式会社はその分だけ廃業までに期間を要する可能性があり、中には株式会社の廃業を決めてから実際の廃業まで数年かかるケースもあります。
債権と債務をすべて清算した後に残った財産を、残余財産といいます。
残余財産のうち資本金に相当する金額は、もともと株主が会社に出資したお金なので、株主に支払いをしても税金がかかりません。
ただし、資本金以上の金額を支払う場合は、会社からの配当金と考えられます。
配当金には所得税がかかるため源泉徴収され、株主も確定申告をする必要があります。
株式会社を廃業するときに手続きを進めていると会社の債務が残ってしまうケースがあります。
会社の資産で債務を返済できず廃業時に残ってしまった場合は、どのようにすればいいのでしょうか。
債務が返済できなかったときの取り扱いと、清算方法について順番に説明します。
株式会社の廃業手続きの中で返済できずに残ってしまった債務については、株式会社の代表や役員などが肩代わりして返済する必要はありません。
もちろん株式会社の社員にも返済の義務はありません。
ただし、株式会社の代表や役員が連帯保証人などになっていれば話は別です。
連帯保証人になっていれば返済義務があるので、株式会社を廃業するときは、代表や役員の債務の保証の状況についても確認しておきましょう。
株式会社廃業時に債務が残ってしまう場合は、3つの清算方法があります。
株式会社に残っている債務を代表や役員といった個人が返済する方法です。
株式会社の役員や代表などが個人的に株式会社の債務を返済する場合には、債権者が誰になるかで対処方法が変わります。
債権者がそのままであれば債権者に返済すればいいのですが、「保証協会」や「サービサー」が登場する場合は注意が必要です。
債務に保証協会の保証がついている場合は、保証協会の代位弁済により債権者が金融機関から保証協会になっているケースがあります。
保証協会が債権者になっている場合は、返済や分割払いの相談などは保証協会におこなうことになります。
この他に、サービサーが債権者になることがあります。
サービサーとは債権回収会社のことで、債務をサービサーに売却された場合はサービサーが債権者になるため、分割払いなどの相談先もサービサーになります。
株式会社の債務などについて裁判所に自己破産を申し立てる方法です。
自己破産とは、裁判所の手続きにより債務の免責をおこなう債務の処理方法になります。
3つ目の方法としては特別清算を使う方法があります。
特別清算とは、裁判所を通して手続きを進める倒産に近い処理方法で、特別清算を使った場合は債権者への支払い義務はなくなります。
株式会社をやめようと思ったとき「廃業」という言葉が脳裏をよぎるかもしれません。
しかし、株式会社をやめる方法は廃業だけでなく、廃業以外にも株式会社を畳む方法があります。
廃業を決める前に「本当に廃業で良いのか」「廃業以外の方法の方がニーズに合っていないか」をよく考えてみましょう。
廃業以外の方法としては、「休業」と「M&A」があります。
休業とは、株式会社を「一回休みにする」ことです。
今は会社を経営できない状態であれば休業し、後でまた経営できる状況になったら再び会社を休業状況から元に戻す方法です。
休業を選択した場合は、休業状態から復活させることも可能なので「廃業したいが迷っている」「今は株式会社の経営が難しいがまたやりたいと思っている」などの事情がある場合は、一時的に休業するのも選択肢のひとつです。
株式会社を休業するときには、まず株式会社の事業をストップしなければいけません。
いきなり「明日から休業する」となると取引先などが困ってしまうため、休業に向けて少しずつ株式会社の事業を調整して休業できる状況に持っていくことが第一です。
そのうえで休業手続きの準備を整えることになります。
株式会社を休業できる状況にしたら、都道府県税務署と自治体の窓口に「移動届出書」を提出します。
社員がいる場合は、年金事務所などにも届出が必要なので注意してください。
なお、株式会社の休業から12年経ってしまうと、休業させていた会社の法人格が消滅するためあわせて注意が必要です。
株式会社には廃業や休業の他にM&Aという選択肢があります。
株式会社のM&Aとは、会社の合併と買収のことです。
M&Aという言葉から会社の乗っ取りのようなシーンを想像するかもしれませんが、M&Aは後継者不在状態の解消や新規事業の参入、事業承継などにも使われている方法です。
この他に、会社再建の際にM&Aが使われることもあります。
M&Aで会社の売却をおこなうことには廃業にはないメリットがあります。
株式会社の廃業の場合はせっかく育てた会社そのものがなくなってしまいますが、M&Aを使えば会社は別の会社に引き継がれます。
株式会社が培った技術や知識、ノウハウなどがM&Aを通じて残ります。
また、M&Aを使えば会社の従業員を守れるという点や株式会社の目に見えない価値も評価してもらえるという点でもメリットがあります。
廃業の場合は、廃業とともに従業員も勤め先がなくなってしまうため、従業員の雇用は守れません。
しかし。M&Aの場合は雇用継続も可能なので、従業員の生活を守ることにもつながります。
株式会社の知識や技術などもM&Aで会社を売却する際の評価に直結します。
会社を何らかのかたちで残したい経営者や、従業員を守りたい経営者は、廃業で会社のすべてを消してしまうのではなく、M&Aで会社を残すかたちで畳んではいかがでしょう。
株式会社の廃業には専門的な知識が必要で、手続きが複雑な他、手続きごとに期間なども定められています。
準備もありますから、手際よく進めなければ株式会社が廃業するまでに長い時間がかかってしまいます。
株式会社には廃業以外のM&Aなどの選択肢もあるため、何が自分や会社にとってメリットになるのか、廃業そのものを他の選択肢と比較したうえで検討することも重要です。
株式会社の廃業をスムーズに進めることや他の選択肢と比較検討して判断することは、専門知識や実務経験がないと難しいことです。
M&Aや廃業に通じた専門家に相談し、適切な方法を検討するところからはじめてはいかがでしょうか。