東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。
新型コロナ禍や後継者不足により会社廃業を検討する経営者が増えているといわれています。
日本政策金融公庫の調査によると、後継者不足問題などを理由に3割以上の会社が廃業を検討しているのだとか。
日本の会社が事業を継続するためには、新型コロナの問題や後継者問題など乗り越えるべき課題があるのが現状です。
数々の課題や経営者自身の人生設計、会社の状況から廃業を検討する場合、どのような手続きで廃業を進めればよいのでしょうか。
また、廃業の手続きを進める際はどのくらいの費用がかかるのでしょう。
この記事では廃業手続きの進め方や費用、借入金が残っているときの清算方法など、廃業を進めるうえで必要になる基本的な知識をご紹介します。
廃業以外の選択肢についてもあわせて解説します。
会社の経営者はどのようなタイミングで廃業を考えるべきなのでしょうか。
経営者が廃業するという判断を下すのは、以下のようなタイミングがあります。
会社の経営で債務が大幅な超過状態になってしまうと、もはや廃業は難しくなります。
プラスをマイナスがやや上回った、回復できる、改善できるくらいが会社のひとつ目の廃業するタイミングになります。
会社の経営でプラスをマイナスが大幅に上回ってしまうと、もはや廃業ではなく倒産になってしまうことでしょう。
債務が上回っているが、まだ債務が少ない。
これが廃業する第一のタイミングです。
会社を継続したくても現経営者はリタイアを考えている。
あるいは、経営者が高齢であったり、体調面での不安があったりと、会社の経営が難しい状況である。
このようなケースでは後継者がいれば会社を後継者に引継できるのですが、後継者不足が問題視されている昨今、なかなか後継者が見つからない可能性があります。
また、子供や孫、会社内の若手などを経営者が後継者にしたいと願っても、本人に会社を承継するつもりがないケースもあるのです。
後継者を探しても、経営者がリタイアしたいタイミングで後継者候補が見つからないケースも少なくありません。
このように、会社の後継者不在問題により会社の継続が難しくなったときも廃業するタイミングのひとつです。
廃業の手続きには費用がかかります。
会社の経営のために廃業のための資金を使ってしまうと、廃業手続きを進めることが難しくなるのです。
そのため、廃業のための費用を会社運営や会社維持のために使ってしまう前のタイミングや、廃業資金を捻出できるタイミングで廃業を進める方法があります。
この他に、生活資金に手を出す前が廃業タイミングのひとつになります。
廃業後は会社からの収入がなくなるため、生活費をどのように捻出するかが問題になるのです。
生活費についてまったく考えずに廃業してしまうと、元経営者や家族が困窮する可能性があります。
また、会社の経営や維持に経営者自身の資産を使ってしまうと、同様に廃業後の生活に困る可能性があるのです。
廃業後の生活を考えて、廃業後の生活の資金に手を出す前に廃業することもタイミングを決める方法になります。
廃業資金を準備できたタイミングで廃業することも考えられます。
廃業手続きには費用がかかります。
また、廃業後の生活費などについても考えなければいけません。
近いうちに後継者不在などにより廃業しなければならないと判断した段階で廃業費用や廃業後の生活資金などの準備をはじめ、廃業するための資金準備ができたタイミングで廃業するのです。
経営者が廃業するという決断を下したら廃業手続きに入ります。
廃業手続きはどのような流れで進むのか、廃業手続きにはどのくらいの期間がかかるのかを説明します。
会社の廃業手続きは大きく2つのステップにわけられます。
ひとつは「解散」、もうひとつは「清算」です。
解散とは「会社を廃業する(解散する)ことを決めて手続きする」ステップになります。
清算とは「会社を終わらせる(解散させる)ために会社の資産などを後片付けする」ステップのことです。
解散と清算のふたつのステップは、さらに合計8つのステップにわけられます。
会社を廃業するときの8つのステップを順番に見てみましょう。
廃業するときは、まず社員や取引先、クライアントへの通知をおこないます。
廃業するといっても黙って即日廃業することはできません。
また、取引先は新しい取引先を探さなければいけないケースもあるでしょうし、クライアントも新たな依頼先を探さなければならないケースもあるはずです。
顧客も同じです。
そのため、廃業するときは取引先やクライアントなどが困らないように、事前に通知する必要があります。
廃業するときは、社員は別の勤め先を探さなければいけません。
廃業手続きを進める前に、社員にも会社を廃業する旨を伝えます。
廃業することを社員やクライアント、取引先などに通知する場合は文面をどうするか悩むでしょう。
廃業するときは、特に廃業理由について通知文面に書く必要はありません。
挨拶と廃業する旨、廃業日などを記載します。
会社を廃業するときは株主総会で解散の決議をする必要があります。
また、会社を解散するときは、会社の後片付け役である清算人を選任しなければならないのです。
清算人は廃業する会社の社長などがよく就任します。
会社を廃業するときの株主総会の解散決議には、発行済み株式数の過半数の株主が出席し、そのうえで3分の2以上の賛成を得なければいけません。
株主総会で解散の決議と清算人の選任をおこなったら、次は法務局で解散と清算人の登記をおこないます。
会社を廃業するときの解散と清算人選任の登記は2週間以内にしなければいけません。
会社を廃業するときの解散と清算人選任の登記をすることで、登記記録から会社が廃業手続きに入ったことを読み取れるようになるのです。
会社を廃業するときは税金や許認可の届出も必要になります。
税金の届出は、法人税については税務署が窓口です。
法人事業税や法人住民税は自治体や県税事務所が管轄の窓口になりますので、窓口を間違えないように注意してください。
廃業する会社が許認可を受けている場合は、許認可の管轄窓口へ廃業する旨の届出もしなければいけません。
会社が廃業するときは、会社の債権者に会社が廃業することを官報で公告しなければいけません。
会社の債権者は会社に対して債権を持っています。
債権者が知らないうちに会社が廃業すると債権者が貸したお金などを回収できず、権利が不当に害されてしまうかもしれないのです。
そのため、国の機関紙である官報によって会社を廃業する旨を債権者に公告し「債権者は申し出てください」呼びかけます。
債権者を保護するために官報公告をおこなうのです。
会社が廃業する旨を官報公告する場合は、2カ月以上の期間を公告期間として設けなければいけません。
官報の公告期間がごく短期だと債権者が見逃す可能性があるからです。
清算とは廃業する会社の資産や負債の後片付けのような手続きになります。
廃業する際に資産などを残してしまっても、廃業した会社は消えてしまいますから、資産を管理することも所有することもできなくなります。
そのため、廃業するときは会社の資産や負債などをきれいに片付けなければいけないのです。
会社が廃業するときの清算手続きでは、廃業する会社が有している資産の換金や債権の回収などをおこないます。
また、換金や回収により得た資金によって債務の弁済などもおこなうのです。
債務を返済しても資産が残る場合は、廃業する会社の株主へ分配します。
廃業する会社の清算が終了したら次は決算書類を作成します。
廃業する会社の清算手続きをおこなった結果を決算書類で示し、株主総会で承認を受けるためです。
廃業する会社の清算の結果を決算書類にまとめて株主総会で承認を受けると、会社の法人格が消滅し、会社としての終わりをむかえるのです。
会社を廃業するときの決算書類の承認が終わったら、後は清算決了登記と確定申告をおこないます。
清算決了登記は決算書類の承認後2週間以内に法務局で済ませなければいけません。
清算決了登記をすることによって、その会社の廃業により登記記録が閉鎖されることになるのです。
清算決了登記の他には、確定申告もしなければいけません。
清算後の確定申告は、残余財産が確定してから1カ月以内におこなうルールです。
廃業するときの手続きにかかる期間は最短で2カ月ほどです。
官報公告の期間が2カ月になっているため、短くても2カ月ほどの期間は見なければいけません。
ただし、2カ月という期間はあくまで手続きがスムーズに進んだ場合の期間です。
廃業する会社の状況によってはさらに期間がかかります。
2カ月はあくまで廃業するときの最短期間であると考えて、余裕を持った期間設定をする必要があります。
廃業する会社の規模が大きいと資産や負債の清算にも時間がかかるため注意が必要です。
会社規模によっては廃業するときの準備や手続きに年単位の期間がかかるケースもあります。
会社を廃業するときは、廃業手続きの種類ごとに費用がかかります。
会社の廃業手続きを進める際は費用についても考えたうえで進めることが重要です。
廃業することを決めた時点で、会社廃業の費用をプールするなど、廃業するときの手続き費用対策をしておきましょう。
会社を廃業するときにかかるのは5つの費用です。
会社を廃業するときにかかる費用についてそれぞれ説明します。
会社を廃業するときのそれぞれの費用相場についてもあわせて解説します。
会社を廃業するときは解散登記や清算人の選任登記、清算決了登記などが必要になります。
登記の際は登録免許税という税金がかかるのです。
登録免許税とは登記の手数料のような税金になります。
登録免許税は印紙や現金で納めます。
登録免許税は登記の種類によって金額が異なります。
会社が廃業するときの登録免許税は以下の通りです。
廃業するときに必要になる登記の費用は、合計で41,000円はかかる計算です。
債権者に会社を廃業することを伝える官報公告にも手続き費用がかかります。
官報公告の費用目安は3万円ほどです。
ただ、官報公告は掲載ボリュームによって費用が変わってくるため注意が必要です。
官報公告の費用が気になる場合は、会社廃業するときの官報公告の掲載申し込み前に費用について問い合わせておくとよいでしょう。
なお、官報公告は申し込んで即日掲載してもらうことはできません。
申し込みから官報公告までに1週間ほどは見なければならないため、費用の確認をする際に掲載日についても確認しておくとよいでしょう。
会社を廃業するときの手続き日程の参考になるはずです。
会社を廃業するときの登記を司法書士に依頼する場合は登録免許税の他に司法書士への報酬が必要になります。
司法書士の報酬は一律に決まっておらず、司法書士によって異なります。
司法書士に依頼する仕事の範囲によっても変わってくるため、司法書士に登記などをお願いするときは依頼する仕事内容を伝えたうえで見積もりを出してもらうとよいでしょう。
会社を廃業するときに税理士や弁護士などに廃業手続きや税金などについて相談する場合は相談料が必要になります。
弁護士に会社を廃業するときの手続きを依頼する場合も弁護士報酬が必要になるのです。
弁護士や税理士の相談料は事務所によって異なります。
中には初回相談無料などにしている事務所もあります。
会社を廃業するときの手続きを弁護士に依頼する場合も、会社の規模や状況によって報酬が変わってくる可能性があるため、見積もりを取ることをおすすめします。
会社を廃業するときに税務署や法務局、自治体などの窓口に相談したり書面を提出したりする場合は、交通費といったその他の費用も必要になります。
他にも廃業手続きをするために細々とした費用が必要になる可能性があります。
登記や債権者への官報公告、弁護士費用などの他に細々として費用が必要になることもあるため、廃業するときは廃業費用に余裕を持たせて準備しておくことがポイントです。
会社を廃業するときに資産不足により借入金が残ってしまうケースがあります。
会社を廃業するときに借入金が残ってしまう場合はどのような方法で対処したらよいのでしょうか。
また、会社の借入金が残っている場合、会社の経営者などの代表や役員などに返済義務はあるのでしょうか。
廃業する会社に借入金が残っている場合の返済義務と、廃業する会社の借入金に返済義務がある場合の対処法について順番に説明します。
廃業する会社の借入金については、経営者や役員など会社の代表や経営に関わっていた人たちに返済義務はありません。
会社の借入金は経営者や役員などの借金という印象があるかもしれません。
それは違います。
会社の借入金は、あくまで会社の借金です。
そのため、経営者や役員などには基本的に会社の借入金の返済義務はありません。
ただし、経営者や役員に会社の借入金の返済義務が生じるケースもあるため注意が必要です。
廃業する会社の経営者や役員などが会社の借入金の連帯保証人になっていれば、廃業する会社の借入金について返済義務を負います。
会社の廃業を検討している場合は、会社の借入金の連帯保証の状況などについて確認しておくことが重要です。
廃業する会社の借入金に返済義務があった場合はふたつの対処方法があります。
ひとつは自己破産、もうひとつは借入金の返済についての相談です。
経営者や役員に廃業する会社の借入金の返済義務がある場合でも、返済が現実的に難しい場合は少なくありません。
廃業する会社の借入金の返済が難しい場合は、廃業する会社の経営者や役員などが自己破産する方法があります。
自己破産は裁判所の手続きです。
裁判所に自己破産を申し出て借金の免責を受ける方法になります。
会社の借入金について返済が難しい場合などは、裁判所手続きである自己破産を利用して解決をはかる方法があるのです。
廃業する会社の借入金を経営者や役員などが返済する方法になります。
廃業する会社の借入金を一括で返済できればよいのですが、借入金は高額であるケースも少なくないため、一括で返済することが難しい可能性があるはずです。
廃業する会社の借入金をまとめて返済することが難しいときは、債権者に相談のうえで分割払いすることを検討してはいかがでしょう。
相談次第では債権者側が分割払いを認めてくれる可能性があるのです。
債権者に分割払いの相談をするときは「債権者が誰になっているか」確認することが重要になります。
金融機関から廃業する会社がお金を借入れた場合は金融機関が債権者だと思うかもしれません。
廃業する会社の借入金を返済するときは債権者が変わっていることもあるため注意が必要です。
保証会社から金融機関に代位弁済がおこなわれていた場合は保証会社が債権者になります。
分割払いの相談先は保証会社です。
廃業する会社の借入金は債権回収会社(サービサー)に売却されることもあります。
債権回収会社に廃業する会社の債権が売却されている場合は、債権者は債権回収会社です。
廃業する会社の借入金返済について減額や分割払いの相談をするときは、債権回収会社におこなうことになります。
金融機関からの借入金でも債権者が保証会社や債権回収会社に変わっていることがあるため、返済や相談をおこなうときは先に債権者の確認をしておきましょう。
会社の後継者不在などで悩んでいる場合は廃業する以外にも選択肢があります。
後継者不在などで会社の継続が難しい場合は、会社を廃業する以外に「休業」や「M&A」などの選択肢があるのです。
後継者不在などで会社の継続が難しい場合は、必ずしも会社を廃業する必要はありません。
会社の休業やM&Aなどで対処できる可能性があります。
会社を廃業するのではなく、会社を休業するという対処方法があります。
会社の休業とは、言葉通り会社を休むことです。
会社を興したからには事業を継続しなければならないと考えるかもしれません。
しかし、会社の場合は経営者などの都合に合わせて一定期間休む「休業」が認められているため、会社の継続が困難な状況が解決するまでの間、会社を休ませることも可能なのです。
会社を休業するためには、まず会社の事業をストップしなければいけません。
取引先などにも休業する旨を伝え、会社を休業するための準備を整えましょう。
そのうえで、自治体や税務署などの窓口に休業の届出(移動届出)をおこないます。
休業する会社に従業員がいる場合は、日本年金機構にも届出が必要になりますので注意してください。
必要な届出をおこなうと、会社は休業状態になります。
なお、会社は12年間休業を続けると法人が消滅します。
会社継続のための問題点があれば、休業している間に解決を目指すことになるのです。
会社を廃業する以外では「M&A」という対処法があります。
M&Aとは会社の合併や買収のことです。
廃業を検討している会社を、会社を必要としている他会社や個人に売却する方法になります。
会社を廃業すると、会社は手続きが終わった時点で消えてしまいます。
しかしM&Aの場合は会社を必要としている人や会社に、会社で培った技術や歴史、ノウハウなどを引き継いでもらえるのです。
後継者が不在の場合はM&Aで会社を引き継いでもらうという方法も視野に入れてみてはいかがでしょう。
M&Aには会社売却により資金捻出が可能なメリットなどもあります。
M&Aでは会社が廃業するときのように会社が消えませんので、従業員の生活を守れるというメリットもあるのです。
会社が継続するうえでの問題を抱えている場合はM&Aで解決できないか検討してみてはいかがでしょう。
そのうえで、会社の廃業とどちらを選択すべきか考えてみてはいかがでしょうか。
会社を廃業するときは手続きがあります。
廃業するときの手続きは複雑で、経営者が自分で廃業する手続きを進めようとしても、難解なため途中で挫折したり、手続きがわからずスケジュールに遅れが出てしまったりすることもあるのです。
廃業する以外にもM&Aや休業といった選択肢もあるため、よりニーズにあった適切な方法を選択することも重要になります。
廃業するときの手続きをスムーズに進めるためにも、弁護士などの専門家を頼ってはいかがでしょう。
M&Aや休業、廃業などの選択についても適切なアドバイスを受けられるはずです。