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最終更新日:2023/3/17

妻が扶養に入るメリット・デメリットまとめ【収入の壁とは?】

森 健太郎
この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

この記事でわかること

  • 妻が夫の扶養に入ることのメリットがわかる
  • 妻が夫の扶養に入ることで生じるデメリットを知ることができる
  • 妻が夫の扶養に入る際の「収入の壁」について知ることができる

結婚して夫婦が1つ屋根の下で暮らすこととなり、妻が夫の扶養に入るという選択をすることもあるでしょう。

扶養に入るという状態は、単に仕事を辞めて夫の収入で生活をすることだけを意味するものではありません。

夫の収入から発生する税金や、妻の老後に関係する社会保険にも大きな影響を及ぼします。

ここでは、夫の扶養に入る妻について、詳しく解説していきます。

妻が夫の扶養に入るメリット

妻が夫の扶養に入ることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。

夫にとっても妻にとってもメリットがあるので、その内容を確認していきましょう。

夫の所得税の負担が軽減される

妻が夫の扶養に入ると、夫の税金計算において配偶者控除または配偶者特別控除が適用されます

配偶者控除が適用されると、夫の所得金額に応じて、13万円~38万円(妻が70歳以上の場合は16万円~48万円)が控除されます。

また、配偶者特別控除が適用されると、夫の所得金額と妻の所得金額によって1万円~38万円が控除されます。

配偶者控除38万円が適用された場合、どの程度の節税になるのかを計算してみましょう。

夫の年収が500万円で基礎控除のみが適用された場合、所得税の額は210,500円です。

この人が妻について配偶者控除の適用を受けた場合、所得税の額は172,500円となります。

したがって、その差額210,500円-172,500円=38,000円が節税できる税額となります。

妻が国民年金の第3号被保険者になれる

夫がサラリーマンや法人の役員など、給与所得者の場合に限定されますが、妻が国民年金の第3号被保険者になることができます

第3号被保険者とは、厚生年金保険等に加入している人に扶養されている配偶者のことをいいます。

第3号被保険者になると、実際には年金保険料を納付していなくても、納付しているとみなされます。

そのため、夫の厚生年金などとは別に、妻は自身の国民年金を受給できるようになります。

夫が自営業者などで国民年金に加入している場合、妻は第3号被保険者になることができません。

また、給与所得者の妻であっても、年収が130万円以上である場合は第3号被保険者になることはできません。

さらに、年収が130万円未満であっても、妻が厚生年金保険の加入要件に該当すると、第3号被保険者にはなれません。

妻が国民健康保険に加入しなくてよい

妻が夫の扶養に入ることで、夫が加入している健康保険に妻も加入することができます

妻が夫の扶養に入ると、妻は健康保険料を負担する必要はなくなります。

また、健康保険に加入することで、妻が病院や調剤薬局などで支払う金額は最大3割の負担で済みます。

夫の扶養に入ることのできない妻は、自身で健康保険料を負担しなければなりません。

妻が夫の扶養に入って健康保険料の負担がなくなることは、大きなメリットとなります。

妻が夫の扶養に入るデメリット

妻が夫の扶養に入れば、基本的にいいことしかないように思うかもしれません。

しかし、夫の扶養に入ることのデメリットも少なからずあります。

どんなデメリットがあるのかを確認していきましょう。

扶養に入るには収入を一定額以上増やせない

夫の扶養に入る妻の中には、専業主婦でなく、パートやアルバイトを行っている人もいます。

パートやアルバイトをしている人であっても、1年間の収入金額が少額であれば、扶養に入ることができます。

ただ、妻が夫の扶養に入る前提で全てを考えていると、妻の収入を一定金額以上に増やすことはできません

収入がある人は、家族や夫婦であっても他の人の扶養家族に入ることはできません。

そのため、本当は仕事を増やして収入を増やせる状況にあるのに、それができないことがあります。

妻が夫の扶養に入ると、税金や社会保険料の負担が軽減される一方で、収入を大きく増やすことができません。

そのため、扶養に入っている限りは、負担が軽減される一方で収入が増えないままとなります。

妻の年金が少なくなる

夫の扶養に入った妻は、第3号被保険者となることができます。

第3号被保険者は保険料の負担をしなくても、将来的に国民年金を受け取ることができます。

しかしこの場合、妻が受け取れる国民年金はわずかな金額にすぎません

妻が扶養から外れ、自身で厚生年金に加入すれば、多額の年金が受け取れるようになる可能性があります。

しかし、扶養に入るという選択をした場合は、年金の額を大きく増やすことはできません。

妻が働くときの収入の壁4つ

妻が夫の扶養に入るには、収入金額が一定額以下でなければなりません。

この収入金額の上限を「収入の壁」といいます。

どのような控除を期待して扶養に入るかについて、検討の要素となる収入の壁にはいくつかの種類があります。

ここでは、妻がパートに行って給与を受け取る場合の「収入の壁」についてご紹介します。

収入の壁①103万円

1つ目の収入の壁は、夫が税金計算をする際に妻を配偶者控除の対象とすることができる年収103万円です。

配偶者控除の対象とできる妻の条件は、所得金額が48万円以下であることです。

給与所得の金額は「給与収入-給与所得控除」とされ、少なくとも55万円が給与収入から控除できます。

年収103万円となった場合、給与所得の金額は103万円-55万円=48万円となり、配偶者控除の対象となります。

なお、年収103万円以下であれば、妻自身の所得税は必ずゼロとなります。

この点も収入の壁を考える上では重要なポイントとなります。

収入の壁②150万円

2つ目の収入の壁も、夫の税金計算に関するものです。

妻の収入が103万円を超えても、一定金額までは配偶者特別控除の適用を受けることができます。

配偶者特別控除の金額は、妻の所得金額により変動しますが、所得金額が95万円までは配偶者控除と同じく満額(最高38万円)が控除されます。

配偶者控除と同じ金額の控除を配偶者特別控除で受けるには、年収150万円が収入の壁となります。

収入の壁③130万円

続いては、妻が社会保険に関して、夫の扶養に入ることができるかどうかの収入の壁です。

妻が夫の加入する社会保険の扶養に入るには、妻の収入は年収130万円未満でなければなりません。

もし、妻がパートで130万円以上の収入を得た場合には、妻は下記のいずれかの対応が必要となります。

  • (1)自身で国民健康保険に加入する
  • (2)パート先で社会保険に加入する

いずれを選択するか、基本的には自身で決定することとなります。

ただ、勤務先での手続きが難しい場合には、自身で役場に行き、国民健康保険に加入する必要があります。

夫が会社員の場合で、妻が夫の社会保険の扶養から外れると、第3号被保険者になることもできません。

そのため、健康保険の他に年金に関する手続きも必要となります。

パート先で社会保険に加入できない場合には、自身で国民年金に加入しなければなりません。

一方、パート先で社会保険に加入する手続きを行った場合は、厚生年金に加入することができます。

なお、厚生年金に加入した場合は、そこから自身の厚生年金の加入期間が始まり、将来受け取ることのできる年金が計算されます。

国民年金だけの場合より、受け取ることができる年金の額は大幅に増えることが見込まれます。

収入の壁④106万円

実は、社会保険に関する130万円の壁が徐々に低くなっています。

妻のパート先の規模により、パートでも社会保険に加入しなければならないとされる金額が下げられているためです。

2022年10月以降、下記のすべての要件を満たす場合は社会保険に加入しなければなりません。

  • (1)従業員101名以上の企業で働いている
  • (2)収入金額が毎月88,000円を超える
  • (3)週20時間以上働いている
  • (4)雇用期間が2か月を超える見込みである
  • (5)学生ではない

上記のすべてを満たす場合は、たとえパートやアルバイトであっても、勤務先で社会保険に加入しなければなりません

週20時間以上ということは、平日だけ働いても毎日4時間以上働いた場合には該当することとなります。

そのため、勤務先の規模次第では社会保険の加入義務が発生するケースが大幅に増えます。

なお、会社の規模については今後、「従業員51名以上の企業」とさらにハードルが下がる可能性もあり、注意が必要です。

まとめ

夫婦共働きの家庭が増えていますが、妻が夫の扶養に入るケースも依然多くあります。

また、子どもが小さいうちは正社員ではなく、パートで働くという選択肢もあります。

妻が夫の扶養に入るためには、収入によりいくつかの壁があるため、注意しておく必要があります。

また、仮に扶養から外れた場合にはどの程度影響があるのかも、シミュレーションしておくとよいでしょう。

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