最終更新日:2023/5/23
減価償却はなぜ節税になる?節税効果やメリット・デメリットも解説
ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。
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この記事でわかること
- 減価償却とはどのようなものかを知ることができる
- 減価償却を行うことで節税になる方法を知ることができる
- 減価償却の計算による租税優遇措置の種類や計算方法がわかる
不動産投資を行っている人の場合、購入した物件から減価償却の計算を行います。
この減価償却の計算が不動産投資を行う上での節税のポイントとなりますが、詳しい計算方法はよくわからない方も多いでしょう。
そこで、減価償却とはどのような計算方法なのか、そしてどのように節税につながるのかを解説します。
また、税額が少なくなる優遇措置もあるため、その内容についてもご紹介します。
目次
減価償却とは
減価償却とは、購入した固定資産の取得価額を、一定の期間にわたって経費に計上するための計算方法です。
主な減価償却費の計算方法には「定額法」と「定率法」があり、いずれかの方法で減価償却費を求めます。
定額法は、固定資産の取得価額に償却率を乗じ、毎年の減価償却費を計算します。
計算により求められる減価償却費は毎年一定であり、同じペースで経費を計上できるという特徴があります。
一方の定率法は、固定資産の残存簿価に償却率を乗じて、減価償却費を計算します。
残存簿価とは、「固定資産の取得価額-減価償却累計額」で計算される額であり、まだ減価償却していない金額のことです。
残存簿価は年数が経過するとともに小さくなるため、減価償却費の額も年々少なくなるという特徴があります。
建物や構築物を取得した場合は、すべて定額法により減価償却費を計算することとされています。
また、器具備品に該当する固定資産を取得した場合も定額法が基本ですが、定率法を選択することもできます。
減価償却が節税になる理由
減価償却費を計上すると節税になるのは、その経費の計上方法にあります。
ほとんどの経費は、お金を支払った時にその支払った金額が経費となります。しかし、固定資産を購入した場合は、全額が一度に経費になるわけではありません。
その代わり、購入した年から何年にもわたって減価償却費という経費を計上していくことができます。
たとえば、年間の所得金額が300万円の人が、2,000万円の固定資産を購入したとします。
そして、この2,000万円の固定資産から、20年にわたり毎年100万円ずつ減価償却費を計上したとします。
こうして毎年100万円の減価償却費を計上すると、所得金額を毎年100万円減額する効果があります。
その結果、トータルで100万円×20年=2,000万円の所得金額を減少させることができます。
トータルの所得金額が大きく減るのであれば、その分発生する所得税の金額も少なくなります。
一方、もし2,000万円の固定資産を取得した時に全額経費になるとした場合、購入した年に2,000万円の経費が発生します。
しかし、翌年からは固定資産の取得に関する経費は計上されません。
その結果、減少する所得金額は購入した年の所得金額300万円のみとなります。
このように、減価償却費を計上することは大きな節税効果があります。
減価償却で節税するメリット・デメリット
減価償却の計算が節税になることがわかりました。
減価償却で節税することについて、メリットとデメリットはどのようなものがあるのか、確認していきます。
減価償却のメリット
減価償却のメリットは、購入した固定資産を一度に経費にしなくていいため、利益が安定することです。
所得税の計算では、減価償却は定額法で行うこととされています。
定額法は毎年同額の減価償却費を計上するため、毎年の損益計算は減価償却により影響されることはありません。
減価償却のデメリット
減価償却を行うと、購入した年であっても計上できる経費は取得価額のごく一部となります。
そのため、購入した年にも多額の税金が発生することがあります。
しかし、固定資産を購入した年は多くの資金を使っているため、納税資金が不足してしまうことがあります。
購入した年であっても控除できる経費が大きく増えるわけではないことから、大きな負担となる可能性があります。
減価償却で節税する方法
減価償却による節税を考える際に、より効果的に節税を行う方法があります。
どのような方法があるのか、そのポイントとなるのはどのような点か、確認していきましょう。
中古の資産を購入する
減価償却の計算に用いる償却率は、固定資産の種類ごとに定められた法定耐用年数に基づいて決められます。
法定耐用年数は、新品の固定資産を購入した場合を想定して定められています。
もし中古の固定資産を購入した場合、その年数は既に使用した年数に応じて短くなります。
そのため、中古の固定資産を購入すると、償却を行う期間が短くなり、1年あたりの減価償却費が大きくなります。
その結果、節税効果がより大きくなります。
少額減価償却資産を購入する
青色申告を行っている場合、1つあたりの金額が30万円未満の固定資産であれば、購入した年に全額を経費にできます。
ただし、1年間に少額減価償却資産に計上できる金額は、合計で300万円までとされている点には注意が必要です。
租税優遇措置の適用を受ける
固定資産の購入は、将来的な経費は増える一方、購入した年の経費が大きく増えるわけではありません。
そのため、購入した年だけの節税を行うことは難しいものです。
そこで、固定資産の購入に関して租税優遇措置が定められており、該当すれば税負担が軽減されます。
詳しくは、次の見出しで紹介していきます。
減価償却の節税になる租税優遇措置
それでは、具体的にどのような租税優遇措置があるのか、確認していきましょう。
中小企業投資促進税制
青色申告を行う中小企業者が、新品の機械装置などを購入した場合に適用を受けられます。
適用対象となる資産は、種類ごとに金額の基準が設けられています。
機械装置の場合は1台あたり160万円以上、ソフトウェアの場合は70万円以上などとなっています。
適用が認められると、取得価額の30%の特別償却、あるいは取得価額の7%の税額控除が適用されます。
中小企業経営強化税制
青色申告を行う中小企業者が、経営力向上計画の認定を受け、固定資産を取得した場合に適用を受けられます。
適用が認められると、取得した固定資産の税額を特別償却することができます。
また、特別償却の他に取得価額の7%または10%の税額控除の適用を受けることもできます。
カーボンニュートラルに向けた投資促進税制
青色申告を行う個人や法人が、環境負荷を低減する設備投資を行った場合に、特別償却や税額控除が適用されます。
適用を受けるためには、事前に事業適応計画を作成し、経済産業局で審査を受ける必要があります。
この計画が認められると、設備の取得価額の10%の税額控除、あるいは50%の特別償却が認められます。
減価償却で節税するときの注意点
固定資産を購入し減価償却を行う場合には、どのような点に注意する必要があるのでしょうか。
耐用年数を正しく求める
減価償却の計算で最もポイントとなるのは、償却率がどれだけになるのかです。
そして、償却率を決定する際に重要なのは、耐用年数が何年になるかです。
耐用年数は、固定資産の種類に応じて、国税庁が公表する耐用年数表により決定されます。
また、中古資産を購入した場合は別に計算を行う必要があるため、間違えないようにしましょう。
借入金の返済は経費には含まれない
固定資産を取得すると、固定資産の取得価額を計上し、減価償却費の計算を行います。
そのため、現金の支出と減価償却費の計上は直接関係しません。
ただ、借入をして固定資産を購入した場合は注意が必要です。
借入金の返済は経費にならないため、税金を減らす効果はありません。
また、借入金の返済期間は耐用年数より長いことが多くあります。
そのため、減価償却費が計上できず税負担が増える一方で、借入金の返済はまだ続くということも想定されます。
まとめ
減価償却という言葉を聞いたことはあっても、その計算をどのように行っているのか、詳しくは知らない方も多いでしょう。
減価償却費の計算は、特に不動産投資を行っている人にとっては大きなポイントとなるため、事前に確認しておく必要があります。
所得税の計算を行う場合、減価償却費は基本的に毎年同額となるため、損益計算のシミュレーションはしやすいといえます。
減価償却費を求めた上で、どれだけの税負担になると想定されるのか、節税効果は何年続くのか、確認しておきましょう。