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最終更新日:2023/5/23

マッチング拠出はやるべき?節税効果シミュレーションとメリット・デメリット

税理士 鳥川拓哉
この記事の執筆者 税理士 鳥川拓哉

ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-tori

この記事でわかること

  • マッチング拠出とはどのようなことをいうのか知ることができる
  • マッチング拠出を行うメリットとデメリットがわかる
  • マッチング拠出の節税効果がどれくらいあるのか知ることができる

大企業に勤務している方などは、勤務先の会社が企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入していることがあります。

そして、企業型DCに加入している人は、勤務先でマッチング拠出(加入者が掛金を払うこと)をできる場合があります。

2022年10月から、マッチング拠出を行うか、あるいは自身で個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入するか選択できるようになりました。

マッチング拠出とはどのようなものか、そしてどのような節税効果があるのか、解説していきます。

マッチング拠出とは

企業型DCに加入している場合、掛金を支払うのは勤務先の会社になります。

従業員自身で掛金を支払うことはなく、掛金の上限金額は月額55,000円となっています。

また、他の企業年金制度を併用している場合、掛金の上限は27,500円となります。

マッチング拠出を行うと、会社の掛金に上乗せする形で自身が掛金を拠出することができます

マッチング拠出を行う場合、掛金について2つのルールがあります。

1つ目は、会社が出す掛金を超えないことです。

2つ目は、企業型DCのみの場合は会社と本人の掛金の合計が55,000円以内、他の企業年金制度と併用している場合は27,500円以内とされます。

マッチング拠出を導入するメリット・デメリット

マッチング拠出を導入することには、どのような意味があるのでしょうか。

マッチング拠出することのメリットとデメリットについて、2つのポイントから確認していきます。

節税できる

マッチング拠出を行い、自身で掛金を拠出する(支払う)ようになると、その掛金は所得控除の対象になります

その結果、毎年負担する所得税の額を減らすことができます。

掛金の額は、上限なくそのまま全額が所得控除の対象となるため、将来への備えを非課税で行うことができ、大きな節税効果を得られることとなります。

これがマッチング拠出の大きなメリットと言えます。

ただ、マッチング拠出の他に、自身でiDeCoに加入するという選択肢もあります。

勤務先が支払う企業型DCの掛金の額により、どちらが有利になるかは変わってきます。

節税という観点からは、マッチング拠出だけが選択肢ではないことを覚えておきましょう。

投資する銘柄の選択肢が少ない

マッチング拠出を行う上で、最大の問題点となる可能性があるのが、投資対象となる商品についてです。

マッチング拠出を行うと、勤務先が利用する運営管理機関で自身の掛金も運用することとなります。

その運用管理機関で取扱う商品に魅力が少ない場合、何に投資したらいいかわからない状態となってしまうでしょう。

このような場合には、マッチング拠出を行わずにiDeCoに加入するのも選択肢となります。

ただ、iDeCoに加入することとなれば、自身で口座を開設しなければなりません。

またこの場合には、口座管理手数料が余分にかかることもデメリットとなります。

マッチング拠出の節税効果シミュレーション

マッチング拠出を行うべきかどうかを検討している方にとって大きなポイントとなるのは、どれだけ節税できるのかでしょう。

そこで、マッチング拠出を行った場合とそれ以外の場合で、どれだけの所得税が発生するのか比較していきましょう。

前提条件

ここでは、以下のような条件の人がマッチング拠出を行った場合と行わなかった場合を比較していきます。

  • 1年間の給与収入が800万円(給与所得は610万円)
  • 社会保険料控除120万円
  • 基礎控除48万円
  • 上記以外はマッチング拠出やiDeCoに関する控除のみが発生するものとする

マッチング拠出もiDeCoも利用しない場合

給与所得610万円が合計所得金額となります。

また、所得控除の金額は社会保険料控除120万円+基礎控除48万円=168万円となります。

その結果、課税所得金額は610万円-168万円=442万円となります。

この場合、所得税額は442万円×20%-427,500円=456,500円となります。

マッチング拠出を行った場合①

会社が企業型DCに拠出する掛金が毎月3万円の場合、マッチング拠出の掛金の上限額は以下のいずれか少ない方の金額となります。

①会社の出す掛金が上限のため、3万円

②掛金の合計額の上限額が55,000円であることから、55,000円-3万円=25,000円

①>②となるため、この場合の掛金の上限額は月額25,000円となります

上限額までマッチング拠出を行った場合、年間で30万円の所得控除が増えることとなります。

すると、所得控除の合計額は社会保険料控除120万円+基礎控除48万円+小規模企業共済等掛金控除30万円=198万円となります。

その結果、課税所得金額は610万円-198万円=412万円、所得税額は412万円×20%-427,500円=396,500円となります。

マッチング拠出を行った場合②

会社が企業型DCに拠出する掛金が毎月5,000円の場合、マッチング拠出の掛金の上限額は以下のいずれか少ない方の金額となります。

①会社の出す掛金が上限のため、5,000円

②掛金の合計額の上限額が55,000円であることから、55,000円-5,000円=5万円

①<②となるため、この場合の掛金の上限額は月額5,000円となります

この場合、上限までマッチング拠出を行っても、年間で6万円しか所得控除の額は増えません。

所得控除の合計額は、社会保険料控除120万円+基礎控除48万円+小規模企業共済等掛金控除6万円=174万円となります。

その結果、課税所得金額は610万円-174万円=436万円、所得税額は436万円×20%-427,500円=444,500円となります。

iDeCoに加入した場合

企業型DCに加入する人でも、iDeCoに加入することができます。

この場合、iDeCoの掛金の上限額は毎月2万円となります

企業型DCに加入する人がiDeCoに加入し上限額まで掛金を拠出すると、年間で24万円の所得控除が増加します。

所得控除の合計額は社会保険料控除120万円+基礎控除48万円+小規模企業共済等掛金控除24万円=192万円となります。

その結果、課税所得金額は610万円-192万円=418万円、所得税額は418万円×20%-427,500円=408,500円となります。

このように、マッチング拠出もiDeCoにも加入しない場合は税額が456,500円であったのに対し、マッチング拠出やiDeCoに加入すると税額に変化が起こることがおわかりいただけるでしょう。

マッチング拠出を活用する際の注意点

マッチング拠出を行うと、大きな節税になるなどのメリットがあることがわかりました。

早速マッチング拠出を利用しようと考える方もいるかもしれませんが、注意点もあります。

掛金の上限額算出には様々な条件がある

マッチング拠出の掛金の金額が大きくなるほど、所得控除の金額も大きくなります。

そのため、できるだけ大きな金額の掛金を支払いたいと考えている方もいるのではないでしょうか。

ここで注意しなければならないのは、マッチング拠出の掛金の上限は会社の掛金によって変わるということです。

マッチング拠出の掛金は、会社の拠出額より大きな金額にはできません。

また、会社と個人の掛金の合計額は55,000円あるいは27,500円のいずれかとされます。

そのため、思ったより掛金を支払うことができず、節税効果が限定的になってしまうこともあります。

さらに、月額2万円が上限のiDeCoの方が多くの掛金を拠出できる場合もあります

そのため、マッチング拠出を行うか、あるいはiDeCoに加入するかも検討する必要があります。

60歳になるまでは引き出せない

マッチング拠出は、仕事を退職した後の老後の生活を安定させるために加入するものです。

そのため、所得を得ている間に拠出した掛金は、全額がそのまま所得控除の対象とされる仕組みです。

運用を行った結果、大きな利益を得ることができるかもしれません。

しかし、引き出せるのは60歳を過ぎてからとされています。

そのため、年齢の条件に合わなければ、マッチング拠出を利用して子供の教育費を貯めるといったことはできません。

まとめ

企業型DCに加入している方は、マッチング拠出を行えば、老後の備えをさらに万全にすることができます。

またマッチング拠出を行うことで、さらに大きな節税効果を得られます

ただ、マッチング拠出の他にiDeCoに加入するという選択肢もあり、その場合のメリットがマッチング拠出よりも大きくなる場合もあります。

どの選択肢が自身のライフプランに合っているか、よく考えて選択するようにしましょう。

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