最終更新日:2023/5/23
消費税の節税方法3つ!税金を減らすための外注費の活かし方なども解説
ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。
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この記事でわかること
- 消費税とはどのような性質を持つ税金なのかを知ることができる
- 事業者が納税する消費税を節税する方法を知ることができる
- 消費税の節税を行う際に注意すべき点を知ることができる
日常生活の中に、消費税は当たり前の存在として広く浸透しています。
消費者が負担した消費税は、その消費税を預かった事業者が納税額を計算し、納付されます。
事業者にとっては、消費税の負担は大きく重いものとなるため、節税できないか考えることも多いでしょう。
そこで、消費税の節税方法や節税する際の注意点をご紹介します。
目次
事業者が支払う消費税とは
消費税とは、商品を購入し、サービスの提供を受けた場合に支払う対価に対して、税率を乗じて計算される税金です。
消費税の課税対象となる取引は、「資産の譲渡等」「資産の貸し付け」「役務の提供」の3つに分類されます。
この中でも、消費税がかからないものについては、非課税取引として法令に規定されています。
消費者は、資産の購入やサービスの提供を受ける一方で、資産の販売などは行いません。
そのため、消費税を負担するだけで、消費税を受け取ることはありません。
これに対して事業者は、消費税を支払うことも受け取ることもあります。
事業者は、他の事業者から商品の仕入れを行えば、相手に対して消費税を支払います。
サービスの提供を受けた場合も、その相手方に対して消費税を支払うこととなります。
一方で、事業者は商品を販売し、あるいはサービスを提供することで売上を計上しています。
この売上を計上する際に、相手から消費税を受け取ることとなります。
事業者は消費税を計算し、税務署に納税しなければなりません。
税務署に納付する消費税の額は、原則として、受け取った消費税の額から支払った消費税の額を差し引いて計算します。
この差額が大きくなるほど、納税する消費税の額も大きくなる仕組みです。
事業者が売上を計上し消費税を受け取っても、その消費税はいずれ税務署に納めるものです。
または、仕入先などに消費税として支払う金額にあてられるとも考えられます。
そのため、事業者が受け取る消費税は、会計上は「預り消費税」や「仮受消費税」などと呼ばれます。
受け取った消費税は、事業者にとっては収益ではなく、また確定した税金でもないということになります。
事業者が消費税を節税する方法3つ
消費税の負担は、事業者にとっては避けることのできないものです。
しかし、上手に節税することができれば、その負担を減らすことは可能です。
消費税の節税には、どのような方法があるのでしょうか。
簡易課税制度を適用する
消費税の計算方法には、原則的な計算方法の他、簡易課税制度があります。
簡易課税制度が利用できるのは、2年前の課税売上高が5,000万円以下の事業者という制約があります。
ただ、要件はこれだけですので、後は事前に税務署に届出をしておけば、簡易課税制度を利用することができます。
簡易課税制度を利用すると、売上から計算される消費税額に対し、みなし仕入率を乗じた仕入税額控除が適用されます。
たとえば小売業の事業者の場合、みなし仕入率は80%であるため、売上により預かった消費税額の20%だけを納税することとなります。
みなし仕入率は業種ごとに定められており、小売業の他卸売業(90%)や製造業(70%)などは高くなっています。
また、建設業や飲食業は60%、サービス業は50%、不動産賃貸業は40%などとなっています。
簡易課税制度は選択して適用することができるため、あらかじめ試算した上で、適用するかどうかを検討しましょう。
人件費を派遣費用や外注費に置き換える
人材を抱えて事業を行っている場合、給料や社会保険料などの人件費には消費税がかかりません。
消費税がかからないため、一見すると得をしているように思えますが、実はそうではありません。
経費を支払った時に消費税を負担していないため、支払った消費税は増えず、消費税の納税額が大きくなってしまいます。
そこで、人材を確保するために従業員やパートを確保するのではなく、派遣会社に人材を依頼することができます。
派遣会社に対する支払いは、給料とは違い、派遣会社からの役務提供の対価となるため、こちら側に消費税がかかります。
そのため、消費税の納税額を減らすことができます。
また、人材を社内に抱える必要がなければ、外部の人に外注費として支払う方法もあります。
この場合の外注費も、消費税がかかる支払いとなるため、消費税の納税額を減らすことができます。
経費は登録事業者に支払う
インボイス制度が、2023年10月から導入されます。
インボイス制度が導入されると、消費税の課税仕入れを計上するには、支払先の事業者から適格請求書を受領しなければなりません。
適格請求書を発行することができるのは、適格請求書登録事業者として国税庁に登録した事業者だけです。
登録事業者でない事業者や、事業者でない消費者から購入したとしても、課税仕入れにすることはできません。
取引をする前に相手方が登録事業者かどうかを確認し、登録事業者から仕入を行うことが、消費税の節税を行うコツです。
事業者が消費税の中間納付額を節税する方法
消費税を納付する事業者は、その税額が地方消費税を除いて48万円を上回ると、翌年の決算を迎える前に、中間納付が発生します。
中間納付が発生した事業者は、決められた期日までにその消費税を納付しなければなりません。
中間納付の回数は、前年の消費税額によって1回、3回、11回となります。
たとえば、前年の国税分の消費税額が48万円を超え400万円以下の場合、1回中間納付を行います。
中間納付の額は、基本的に前年の消費税額から計算されます。
たとえば年1回の中間納付の場合は、前年の消費税額の半分を納付することとなります。
ただ、中間納付のタイミングで仮に決算を行ったものとして消費税を計算し、その税額を納付することも認められます。
年1回の中間納付の場合は、期首から6か月間の消費税額を計算し、消費税の申告書を作成することができるということです。
仮決算による税額が前年の実績に基づいた税額より少額となった場合、仮決算による中間納付が認められます。
税務署に申告書を提出し、自身で納付書を記載して中間納付を行えば、中間納付額の節税となります。
消費税を節税するときの注意点
消費税の節税を行うにあたって、どのような注意点があるのか、いくつかポイントをご紹介します。
簡易課税制度は2年間継続適用しなければならない
前述したように、消費税の節税のために、簡易課税制度を利用することができます。
ただ、簡易課税制度は少なくとも2年間は継続して適用しなければなりません。
この間に大きな設備投資を行う場合、多額の課税仕入れが発生しても、簡易課税制度の場合は考慮されません。
そのため、多額の仕入が発生しないか、設備投資などの計画を確認して適用を検討するようにしましょう。
簡易課税制度の適用には事前の届出が必要
簡易課税制度を利用するためには、税務署に選択届出書を提出しなければなりません。
また、簡易課税の選択届出書を提出しても、実際に適用を受けられるのはその翌事業年度からです。
思い立った時に簡易課税制度を利用することはできないため、注意が必要です。
中間納付額は真の節税ではない
仮決算を行うことで、消費税の中間納税を節税することができます。
ただ、これはあくまで中間納税の額を少なくするだけであり、最終的に納める消費税額を減らす効果はありません。
中間納付をする際に、資金繰りが楽になる程度の効果であることは覚えておきましょう。
まとめ
事業者にとって、消費税の負担は非常に大きなものとなります。
ただ実際は、消費税は消費者から預かっているだけの金額であり、事業者自身の収益となるものではありません。
少しでも消費税の負担を軽減することができるよう、簡易課税制度の適用も考えてみましょう。
また、中間納付の金額を少なくすることで、資金繰りが楽になる場合もあるので、うまく活用していきましょう。