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最終更新日:2023/6/29

子どもを扶養に入れるメリット・デメリット【節税効果を具体例付きで解説】

森 健太郎
この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

この記事でわかること

  • 子どもを扶養に入れることのメリットとデメリットがわかる
  • 子どもを扶養に入れるとどれくらい節税になるのかがわかる
  • 夫婦のどちらが子どもを扶養に入れるといいのかがわかる

子どもがいる家庭においては、その子どもは両親いずれかの扶養家族となります。

子どもを扶養に入れるのは当然と思っているかもしれませんが、実際どのようなメリットとデメリットがあるのでしょう。

また、子どもを扶養に入れると、税金がどれくらい節税になるのかも確認しておきましょう。

夫婦共働きの場合、いずれが子どもを扶養に入れるべきか、その考え方も解説していきます。

子どもを扶養に入れるメリット

子どもを扶養に入れることで、家族全体の金銭的な負担が軽減されることが期待できます。

実際に、子どもを扶養に入れるメリットとして考えられるのは、以下のようなことです。

所得税の負担が少なくなる

子どもを扶養に入れると所得控除の金額が大きくなり、その結果、所得税の負担が軽減されます

所得控除とは、給与所得や事業所得など、1年間に獲得した所得金額から差し引かれる金額のことです。

サラリーマンの場合は、年末調整を行う際に子どもの情報を「扶養控除等申告書」に記載します。

また、確定申告を行う人は、子どもの情報を確定申告書に記載します。

すると、子どもの年齢に応じて計算された控除額が所得金額から差し引かれるため、課税対象の金額が減少することとなります。

住民税の負担が少なくなる

住民税の計算においても、子どもを扶養に入れると所得控除の金額が大きくなります。

その結果、住民税の負担が軽減されます

年末調整や確定申告などで所得税の所定の計算を正しく行えば、住民税の計算は後ほど市町村で行われます。

なお、所得税と住民税の税率の違いにより、住民税の方が大きくなる方も多く、この場合のメリットはより大きなものとなります。

社会保険料の負担がなくなる

扶養に入れる場合、所得税や住民税の計算の他、社会保険料の扶養という考え方もあります。

サラリーマンが社会保険料の金額を計算する際に、親の扶養に入っている子どもは、社会保険料を負担する必要はありません

ただ、社会保険料の計算はサラリーマンと自営業者では大きく異なる点に注意が必要です。

たとえば、自営業者で国民年金に加入している場合、20歳以上の子どもを扶養に入れるという考え方はありません。

そのため、20歳以上の子どもも原則として、国民年金保険料を負担しなければなりません。

子どもを扶養に入れるデメリット

子どもを扶養に入れれば、税金や社会保険料の負担が軽減されますが、その半面、デメリットはないのでしょうか。

実は、子どもを扶養に入れることによるデメリットは、ないと言って差し支えありません

子どもを扶養に入れて、その親が困ることはないと言ってもいいでしょう。

ただ、注意しておくべきことはあります。

それは、子どもを扶養に入れることが必ずベストな方法とは言えないことです。

子どもが扶養に入れば、その分親の税金の負担は軽減され、扶養に入れなかった場合よりいいように思われます。

しかし、扶養に入れないくらい子どもに収入があれば、その方がいいという考え方もできます。

子どもの年齢が高くなった時には、子どもを扶養に入れることだけが選択肢にならないよう注意しましょう。

子どもを扶養に入れたときの節税効果

子どもを扶養に入れると、所得控除の額が大きくなるため、その分所得税の負担は軽減されます。

実際に子どもを扶養に入れた場合、どれくらいの税額が節税になるのか確認しておきましょう。

まずは、計算に必要な所得控除や所得税の金額を導きだすための表を以下にご紹介します。

所得控除の金額表

所得控除の計算には、以下の表を用います。

給与の収入金額給与所得控除の金額
1,625,000円まで550,000円
1,625,001円から1,800,000円まで収入金額×40%-100,000円
1,800,001円から3,600,000円まで収入金額×30%+80,000円
3,600,001円から6,600,000円まで収入金額×20%+440,000円
6,600,001円から8,500,000円まで収入金額×10%+1,100,000円
8,500,001円以上195万円(上限)

参考:国税庁

所得税の税率表

所得税の金額を計算する際は、下記の速算表を用います。

課税所得金額税率控除額
1,000円から1,949,000円まで5%0円
1,950,000円から3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円

参考:国税庁

年収600万円の人が高校生の子どもを扶養に入れた場合

まずは、年収600万円のサラリーマンのケースで考えてみます。

年収600万円で、所得控除の金額が基礎控除48万円のみの場合の所得税を計算します。

サラリーマンの所得税の計算に用いる給与所得控除の金額は、先ほどの表を使って計算します。

①給与所得控除の金額
600万円×20%+44万円=164万円

②給与所得の金額
600万円-164万円=436万円

③課税所得の金額
436万円-基礎控除48万円=388万円

④所得税額
388万円×20%-427,500円=348,500円・・・Ⓐ

次に、高校生の子どもを扶養に入れた場合を計算します。

高校生の子どもの場合、扶養控除の金額は38万円となるため、その分所得控除の金額が増えます。

①給与所得控除の金額
600万円×20%+44万円=164万円

②給与所得の金額
600万円-164万円=436万円

③課税所得の金額
436万円-(基礎控除48万円+扶養控除38万円)=350万円

④所得税額
350万円×20%-427,500円=272,500円・・・Ⓑ

この両者の計算を比較すると、Ⓐ-Ⓑ=76,000円となります。

つまり、子どもを扶養控除に入れたことで、76,000円の所得税が節税できたということになります。

年収1,000万円の人が大学生の子どもを扶養に入れた場合

次に、年収1,000万円のサラリーマンが大学生の子どもを扶養に入れる前と、入れた後の税額の違いを計算してみましょう。

年収1,000万円のサラリーマンの所得税額は以下のとおりです。

①給与所得控除の金額
195万円

②給与所得の金額
1,000万円-195万円=805万円

③課税所得の金額
805万円-(基礎控除48万円+※所得金額調整控除15万円)=742万円

※所得金額調整控除は23歳未満の子どもがいる場合、扶養控除の適用を受けなくても適用されます。
この場合の金額は、(1,000万円-850万円)×10%=15万円となります。

④所得税額
742万円×23%-636,000円=1,070,600円・・・Ⓐ

この人が大学生の子どもを扶養に入れると、所得税の計算は以下のようになります。

①給与所得控除の金額
195万円

②給与所得の金額
1,000万円-195万円=805万円

③課税所得の金額
805万円-(基礎控除48万円+所得金額調整控除15万円+扶養控除63万円)=679万円

④所得税額
679万円×20%-427,500円=930,500円・・・Ⓑ

扶養に入れる前の税額Ⓐ1,070,600円と、扶養に入れた後の税額Ⓑ930,500円の差額は140,100円です。

この場合、子どもを扶養に入れるかどうかで、14万円以上も所得税額に違いが出ることになります。

子どもは夫婦どちらの扶養に入れるべき?

夫婦共働きの家庭が増え、夫妻ともに収入があるケースが増えています。

夫あるいは妻のいずれか一方だけに収入がある場合は、誰が子どもを扶養に入れるか検討する必要はありません。

しかし、ともに収入がある場合は、いずれか1人しか扶養に入れることはできません。

そこで、どちらが子どもを扶養に入れるのか、その判断基準を考えてみましょう。

基本は「収入が高い人」の扶養に入れる

子どもを扶養に入れるということは、子どもについて適用される扶養控除の金額が扶養に入れた人に計上されます。

その結果、扶養に入れた人の税額は軽減されます。

扶養控除の金額は、基本38万円ですが、子どもが大学生の年齢に相当する間は、その額が63万円に拡大します。

控除額としてはかなり大きいため、扶養控除の適用を受けることができれば、大きな節税となります。

扶養控除の額が増えることで節税の効果が大きくなるのは、より所得が高い人です

その理由は、所得税の税率は、所得金額が大きくなるほど高くなる累進課税制度となっていることにあります。

扶養控除が増えると、税率の高い部分の課税所得金額を減少させた上で所得税額を求めます。

そのため、所得金額の大きな人、つまり収入が高い人ほど減少する所得税の額は大きくなります。

たとえば、子どもの扶養控除を適用する前の課税所得金額が夫500万円、妻800万円だとします。

この場合、夫に扶養控除を適用した場合は、扶養控除の金額×20%の所得税が減額されます。

一方、妻に扶養控除を適用した場合は、扶養控除の金額×23%の所得税が減額されます。

このように同一人物であっても、誰が扶養控除に入れるかにより、所得税の減税効果には違いがあります。

収入が高い人の扶養に入れるのが、最も効果的で損をしない方法と言えるでしょう。

兄弟で分けても扶養控除に入れる人を毎年変えてもいい

夫と妻の収入に大差がない場合などは、夫と妻の一方だけが扶養控除を適用するのは不公平と考えられます。

そこで、子どもが何人かいる場合には、その子どものうち何人かを夫が、残りの何人かを妻が扶養に入れることができます。

扶養控除の適用を兄弟で分けることはまったく問題ないため、収入金額を想定しながらバランスよく適用を受けられます。

また、子どもが1人しかいない場合や収入の高い人が入れ替わるような場合には、扶養に入れる人を変えても問題ありません

サラリーマンの場合は、勤務先に提出する「扶養控除等申告書」に氏名等を記載するだけです。

扶養控除の適用を夫婦で変える場合には、そのように記載するだけなので、難しいことではありません。

ただし、同一の子どもが夫と妻の双方で扶養控除に入ることはできません。

夫と妻がともに扶養控除に入れてしまうと、後から所得税額の是正の通知が会社に届き、所得税が追加徴収されます。

ペナルティを受けるわけではありませんが、会社を通しての手続きとなるため、注意してできるだけ避けるようにしましょう。

まとめ

子どもを扶養に入れるということ自体は、当たり前のようにほとんどすべての人が行っていることです。

しかし、扶養に入れて何が変わるのか、その内容まで理解している方は意外に少ないかもしれません。

夫婦いずれが子どもを扶養に入れるのか、その選択によっては余分な税金を支払っているケースもあり得ます。

扶養控除の適用をどのように受けるのがいいのか、よく考え、夫婦で話し合って決めるようにしましょう。

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