最終更新日:2022/10/14
税制改正で「ドローン投資」に規制!節税対策に有効な投資先3つ
この記事の執筆者 税理士 森健太郎
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
この記事でわかること
- ドローン投資と呼ばれる節税の方法が使えなくなったことがわかる
- ドローン投資がどうして節税になっていたのかその理由がわかる
- ドローン以外に節税に使える投資先を知ることができる
2021年から「ドローン投資」と呼ばれる投資が、広く人気となっていました。
この投資を実行すると、節税効果があると言われていたからです。
なぜドローン投資が節税になっていたのか、その理由を解説します。
また、税制改正によりドローン投資が使えなくなった今、何に注目が集まっているのかご紹介します。
目次
令和4年税制改正でドローン投資の節税が難しくなる
ドローン投資と呼ばれる投資の方法が、広く利用されていました。
この投資は、ドローンを保有して事業を行う会社に対して資金を提供する事業者にとってメリットがあります。
ドローンが様々な用途に用いられるようになり、その需要が非常に高まっています。
そこで、ドローンを大量に保有してドローンスクールを運営する、あるいは工事現場などで利用する会社が多く現れました。
ただ、ドローンを大量に購入するには多額の資金が必要となりますが、資金力の弱い会社は多くあります。
一方で資金に余裕があり、節税を行いたい事業者も数多くあります。
そこで、投資家がドローンを大量に購入し、ドローンで事業を行う会社に貸し付けます。
こうすればドローンを大量に調達することができ、投資家も多くの経費を計上することができます。
投資家がドローンを購入して経費となるのは、そのドローンの1機あたりの金額が10万円未満だからです。
1機あたりの金額が10万円未満であれば、大量にドローンを購入しても全額が経費となります。
1機9万円のドローンを100機購入すれば、900万円の経費が計上され、大きく節税ができました。
しかし、2022年4月から施行された改正税法では、これまでの経費に計上できる資産の内容が見直されました。
貸付用の資産を購入した場合、1単位あたりの金額が10万円未満でも経費にできないこととされました。
取得時の経費とならない場合、その資産の内容に応じた法定耐用年数で、減価償却の計算を行わなければなりません。
すると、購入した時に節税できる効果が薄くなってしまい、投資家としては積極的に利用する理由がなくなった状態です。
ドローン投資が節税になっていた理由
ここで、ドローン投資が節税になっていた理由について、さらに詳しく説明します。
ドローン投資の1番のポイントは、購入した時に全額が経費として計上できたことです。
通常は資産を購入した場合、その資産の内容により定められている法定耐用年数で減価償却しなければなりません。
たとえば撮影用ドローンの場合、「カメラ、映像撮影機、映写機及び望遠鏡」に分類され、耐用年数は5年となります。
ただし、多くの場合ではドローンの1機あたりの金額は10万円未満となっています。
このような場合には資産の内容に関係なく、全額を購入時の経費とすることができることになっています。
そのため、大量のドローンを購入して多額の支出を行い、その全額を経費とすることが可能となっていました。
また、ドローンを購入した後にそのドローンから生じる収益が、一度に発生せず数年に分散されることも節税となる要因です。
購入したドローンは、ドローンを使って事業を行う会社に貸し出され、毎月の利用料を受け取ります。
この利用料の受け取りは契約によって定められますが、数年間に及ぶため、一度に売上を計上する必要はありません。
その結果、ドローンを購入した年に多額の経費が発生し、大きな節税効果を得られるというスキームになっていたのです。
税制改正で見直しが図られたのは、このうち購入時に全額経費とすることができた点です。
貸付用の資産を購入した場合、10万円未満の資産であっても購入時の経費にはできず、減価償却しなければならなくなりました。
そのため、経費の計上時期と売上の計上時期が一致することとなり、多額の節税をすることはできなくなったのです。
なお、今回の税制改正はドローンに限らず、同じようなスキームで節税を行っていた商品にも適用されます。
そのため、足場レンタル、LEDレンタル、エアコンレンタルなどとして利用されてきた節税商品は、すべて利用できなくなっています。
【2022年最新】節税目的に有効な投資先4つ
ドローン投資に代表される節税方法は禁止されましたが、これ以外にも節税に有効な投資先はいくつもあります。
ここでは、2022年4月の税制改正以後も規制を受けない節税方法について、ご紹介します。
ゴルフシミュレーター
コロナ禍にあって、その影響が少ないゴルフは人気が回復傾向にあるともいわれます。
気軽に練習できる施設として、ゴルフシミュレーターの需要も高まっており、その施設を購入する投資があります。
ゴルフシミュレーターを、中小企業庁が行っているサポート「経営力向上計画A類型」を利用して、全額経費になるように購入します。
その結果、ゴルフシミュレーターの購入費用を全額経費とすることができます。
一方、ゴルフスクールの運営を運営会社に委託し、その施設の運営会社に対して業務委託費を支払います。
そのため、運営に手間暇をかける必要はなく、気軽に参入しやすいというメリットもあります。
オペレーティングリース
オペレーティングリースという聞き慣れない言葉に、戸惑っている方もいるかもしれません。
投資家が匿名組合へ出資を行い、匿名組合では投資家から集めた資金で航空機や船舶、コンテナなどを購入します。
匿名組合は、購入した航空機等を航空会社などに貸し出し、毎月リース料を得ることができます。
その収益を集めた匿名組合は、投資家に分配を行うというスキームです。
航空機や船舶は定率法で減価償却の計算を行うため、購入直後には多額の減価償却費が計上されます。
そのため、購入直後の最初の年度では、赤字になることが見込まれます。
その後も、毎月の利用料を組合が受け取りますが、一度に大きな売り上げが発生するわけではありません。
その結果、投資家にとっては節税効果も得られる魅力的な商品となっているのです。
キャンピングカー
キャンピングカーを購入し、そのキャンピングカーをカーシェアリングとして貸し出します。
売上は購入した月から少しずつ発生する一方、購入したキャンピングカーの取得金額は減価償却の計算を行います。
ここでポイントとなるのは、購入するキャンピングカーは中古であることです。
中古の資産を購入した場合、その法定耐用年数を短縮できるためです。
たとえば4年落ちのキャンピングカーを購入すると、法定耐用年数は2年となり、償却率は100%となります。
購入時に全額を経費に計上でき、売上は毎月少しずつ計上するという形になるので、購入した年に節税することができる仕組みです。
コインランドリー
コロナ禍となって以降、人との接触を避ける一方、清潔な環境への意識の高まりを受け、コインランドリーの需要が高まっています。
そこで、コインランドリーを新たに開設し、収益を確保しつつ節税を行うことができます。
通常、コインランドリーの機械を購入した場合、法定耐用年数である13年で減価償却を行います。
しかし、中小企業庁の経営力向上計画の認定を受けると、取得した年に全額を償却することが可能となります。
そのため、投資金額をすぐに損金計上することができ、節税効果を得ることができるのです。
基本的に無人で運営することができ、手軽で本業の妨げにならない点も大きな魅力といえます。
まとめ
節税効果のある投資商品は、過去から何度も現れては禁止される、の繰り返しとなっています。
今回紹介したドローン投資も、2022年4月以降は節税効果を得られなくなりました。
しかし、他にも節税効果のある投資は数多くあります。
どの程度の節税を求めるのか、事業を行う際に係る費用や手間はどれくらいあるのかなどを検討し、早いうちに実行しましょう。