最終更新日:2022/9/16
知っておきたい!仮想通貨の節税対策3つ【暗号資産の税金の仕組みとは?】
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
この記事でわかること
- 仮想通貨の取引により発生する税金の計算方法がわかる
- 仮想通貨取引により発生する税金を減らす方法を知ることができる
- 仮想通貨取引を行う際にどのような行動をするといいのかわかる
仮想通貨の取引により、多額の利益を得た人がいるというニュースを記憶している方もいるのではないでしょうか。
かつてのような爆発的な価格の上昇はありませんが、現在でも価格の上昇と下降を繰り返しています。
そのため、仮想通貨取引により利益を得ている方は多くいます。
仮想通貨取引により利益を得ると、税金はどれくらい発生するのでしょうか。
また、税金の額を減らすことができる方法はないのでしょうか。
目次
仮想通貨取引でかかる税金
仮想通貨取引を行うと、仮想通貨購入時の価格と売却時の価格の差額が利益となります。
利益が発生した場合は、その金額から税金の計算を行い、確定申告する必要があります。
仮想通貨取引の利益は「雑所得」
仮想通貨取引により発生した利益は、所得税の計算上、「雑所得」に分類されます。
所得税の計算をする上で、どの所得区分に分類されるかにより、所得金額の計算や適用される税率が変わります。
雑所得以外の所得区分は、以下の9種類となっています。
- 給与所得
- 退職所得
- 事業所得
- 不動産所得
- 山林所得
- 配当所得
- 利子所得
- 一時所得
- 譲渡所得
これら9種類の所得区分は、いずれもどのような取引から発生した所得かがはっきりしています。
たとえば、勤務先から支給された給料や賞与から発生するのは給与所得、家賃収入から発生するのは不動産所得という感じで分類されています。
そして、この9種類の所得区分に分類されない所得金額については、雑所得に分類することとされています。
仮想通貨取引による利益は、この9種類の所得区分のいずれにも該当しないため、雑所得になります。
雑所得に該当するものは他に、年金を受け取った場合の収入や原稿料などがあります。
仮想通貨の売買により発生する所得は、株式を売却して得られる利益と同じように思えるかもしれません。
しかし、株式の売却益は譲渡所得に該当するものとされているため、仮想通貨の利益と同じではありません。
また、FX取引により得た利益とも同じように思えるかもしれませんが、これもまったく同じではありません。
FX取引により得た利益も雑所得となりますが、分離課税として他の所得と区分されるので、混同してはいけません。
給与所得者の場合、仮想通貨取引で20万円を超える利益が発生したら、確定申告する必要があります。
仮想通貨取引の2つの計算方法
仮想通貨取引で発生する所得金額の計算方法は2つあります。
原則的な計算方法は①総平均法であり、届出によって選択できるのは②移動平均法です。
①総平均法
総平均法は、1年間に購入した仮想通貨の合計額から、平均単価を計算する方法です。
翌年にならなければ平均単価を計算することができない、というデメリットがあります。
ただし、1年間の平均単価は同じ金額になるので、計算の手間はかからないというメリットがあります。
②移動平均法
移動平均法は、仮想通貨を売却した時点で、それまでの取得価額から平均単価を計算する方法です。
売却する都度、平均単価を計算することができるため、所得金額を確定させることができます。
ただし、売却するたびに平均単価が変わることから、計算を間違えないように注意しなければなりません。
仮想通貨の節税対策3つ
仮想通貨取引を行って所得が発生した場合、その金額に応じて税金が発生することとなります。
そのため所得金額が少なくなれば、発生する税額も少なくなります。
所得金額を減らすことがまず考えられる節税対策といえるでしょう。
さらに、所得金額を少なくするだけでなく、他にも節税できる方法があります。
- 必要経費をもれなく計上する
- 他の雑所得に該当する損失で相殺する
- 利益確定するタイミングを見計らう
ここでは、以上の3つの節税対策をご紹介します。
必要経費をもれなく計上する
仮想通貨取引から発生する所得金額の計算方法は、以下の算式によります。
収入金額(譲渡価額)-必要経費=所得金額(雑所得)
収入金額は、仮想通貨を売却して得た売却代金のことです。
売却代金は、誰がどのように計算しても変わることはありません。
一方、必要経費として計上する金額は、どれだけのものを含めるかによって金額が変わります。
できるだけ多くの必要経費を計上して、少しでも所得金額を減らすことが、節税につながります。
必要経費として計上できると考えられるものには、以下のようなものがあります。
- 仮想通貨の取得費(総平均法または移動平均法により計算します)
- 仮想通貨取引にかかる手数料(出金手数料や取引手数料など)
- 仮想通貨取引のセミナー参加費用や交通費
- 仮想通貨に関する情報交換の勉強会費用
- 仮想通貨取引を行うためのインターネット通信料
- 仮想通貨の取引を行うために借りた事務所の費用
- 仮想通貨取引に用いるスマホやパソコンの購入費用
- マイニングに要した費用
- 仮想通貨取引の計算を委託した場合の委託費用
- 会計ソフトの購入費用
- 確定申告を税理士に依頼した場合の税理士費用
ここで紹介した費用は、仮想通貨取引を行っている人に発生する可能性のあるものの一部です。
これ以外にも、仮想通貨取引を行うために必要な支出があれば、必要経費に含めることができます。
一方で、先に挙げた費用が必ず発生するわけではなく、また発生しても必要経費とはならない場合もあります。
ここでポイントとなるのは、「仮想通貨取引を行うために必要なもの」といえるかどうかです。
仮想通貨の所得を得るために必要な費用かどうか、その中身を検討しておきましょう。
他の雑所得に該当する損失で相殺する
仮想通貨取引により発生する所得は、雑所得に分類されるとご紹介しました。
雑所得に分類される所得は、他の雑所得と合算した後、給与所得など他の所得金額とあわせて税額計算を行います。
ただし、雑所得と他の所得で発生した損失を相殺することはできません。
そのため、他の雑所得に該当する損失を計上することで、仮想通貨取引の所得を減額できることになります。
他に雑所得に該当する取引には、以下のようなものがあります。
- 海外の為替FX取引
- アフィリエイト
- ブログなどの広告料
- 原稿料や講演料
雑所得に該当するものは、他の所得区分に該当しないすべてのものとされているため、この他にも多くの取引があります。
ただし、損失が発生するものでなければ、仮想通貨取引の所得金額を圧縮することはできません。
そのため、他の雑所得に該当する取引を行ったからといって、必ず節税になるわけではないことに注意しましょう。
雑所得がマイナスになる可能性があるものとしては、海外の為替FX取引やアフィリエイト、ブログなどが考えられます。
海外の為替FX取引については、仮想通貨取引で大きな所得が発生し、かつFXで含み損を抱えている場合に、決済して損失を出します。
FXを年内に決済して損失が発生すれば、仮想通貨取引で発生した所得金額を圧縮することができます。
一方、アフィリエイトやブログは、年末近くになって急に始めることはできません。
アフィリエイトやブログを開始し、その必要経費を計算しておくことで、損失を計上できるようにしておくことをおすすめします。
利益確定するタイミングを見計らう
仮想通貨取引で所得が発生するのは、実際に売却した場合です。
購入しても売却していなければ、仮に含み益を抱えている仮想通貨でも所得は確定せず、課税対象にもなりません。
そのため、含み益を抱えている仮想通貨を売却するタイミングをずらして、多額の税金が発生しないようにしましょう。
特に、年末ギリギリに売却して利益を確定することは、税金計算に与える影響が大きいため要注意です。
すでに仮想通貨で所得金額が発生している状態で売却益が上乗せされると、所得金額がさらに大きくなってしまいます。
所得税は所得金額が大きくなるほど税率が高くなる累進課税制度となっているため、想像以上に税負担が大きくなってしまいます。
含み益を抱えた仮想通貨は慌てて売却せず、よく考えてから売却するようにしましょう。
まとめ
仮想通貨取引から発生する所得は雑所得に分類され、所得税の課税対象となります。
給与所得者の場合、20万円を超える雑所得が発生すると確定申告しなければなりません。
仮想通貨取引から発生する所得金額を計算する際には、必要経費を少しでも多く計上し節税しましょう。
また、他の雑所得の金額を計上することで節税できる場合もあるため、様々な方法を考えておきましょう。