最終更新日:2022/6/6
不動産投資が節税になる理由!節税効果や投資時のデメリット・リスクとは
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
この記事でわかること
- 不動産投資をするとどうして節税になるのかを知ることができる
- どのような人が不動産投資による節税をするといいかがわかる
- 不動産投資による節税をする際のメリットとデメリットがわかる
給与所得者は、メインの収入となる給与で節税することがほとんどできません。
そのため、節税のために不動産投資を行う方がいます。
しかし、不動産物件を購入して節税を考えることは、とても大きなリスクがあるようにも見えます。
そこで、どうして不動産投資が節税になるのか、そしてどのような人が不動産投資に向いているのかを解説します。
また、不動産投資に向いている物件の選び方についても確認しておきましょう。
目次
不動産投資が節税になる理由
不動産投資による節税の内容を説明する前に、どうして不動産投資を行うと節税になるのかを確認しておきます。
基本的な税金計算の方法を知ることで、より効果的に節税を行うことができるのです。
減価償却費でお金を多く残す
不動産投資を行うと、必ず不動産を購入することとなります。
この不動産のうち、建物部分については時間の経過や使用により劣化していくため、徐々に経費がかかると考えることができます。
この経費の計算方法を減価償却といい、計上される経費のことを減価償却費というのです。
たとえば、3,000万円の建物を20年間で減価償却したとします。
すると、3,000万円×0.050=150万円の減価償却費が20年間にわたって計上されるのです。
減価償却費は、実際にお金を支払って計上される経費とは異なり、お金の支払いとは関係ありません。
そのため、実際の支出額より減価償却費の方が大きくなると、その分手元に多くのお金を残すことができるのです。
また、支出額より大きな経費を計上することができれば、その分所得税や住民税の節税になります。
不動産所得が赤字になれば損益通算できる
物件の金額や建物の耐用年数によっては、不動産所得の額が赤字になることがあります。
普通は赤字になるような不動産投資をしてはいけないと考えますが、赤字になる原因が減価償却費にある場合は別です。
不動産所得が赤字でも、家賃収入から借入金の返済や経費の支払を行っても収支はプラスになっていることがあります。
この場合、不動産投資に必要な資金は確保できているので問題ありません。
一方で、不動産所得の赤字は給与所得や事業所得など、他の所得の黒字を相殺する効果があります。
そのため、何もしなかった場合と比較して、所得税や住民税の額を減額することができるのです。
不動産を売却した際の税率は一律
不動産を売却した際にかかる所得税の税率は、不動産の所有期間が5年を超える場合15%と定められています。
また、この場合の住民税の税率は5%と定められています。
売却した際の譲渡益については、比較的低い税率で税金計算をすることができるため、トータルで見れば節税になるのです。
法人化して所得税と法人税の税率の差を利用する
不動産投資を法人化すれば、不動産投資で発生した所得に対しては、法人税が課されます。
法人が納める法人税と地方税をあわせた実効税率は、約33.5%となります。
ただ、中小企業の場合は軽減税率が適用されるため、実際の税負担は30%未満となります。
一方、個人が納める所得税+住民税の税率は所得金額により異なり、所得金額が大きくなるほど税率は高くなります。
そして、個人の所得金額が900万円を超えると、その合計税率は約33.5%となります。
不動産物件を法人化すれば、この税率の差を利用して節税をすることができるのです。
不動産投資で節税するのが向いている人
不動産投資を行って節税するのに向いているのは、本業での所得金額が大きな人です。
所得金額が大きいほど、不動産所得も含めて計算する課税所得に対する税率は高くなります。
そのため、不動産所得で計上した赤字から生ずる節税効果が大きくなるのです。
特に本業の課税所得が安定して毎年900万円を超える人は、不動産投資による節税に向いているといえます。
課税所得が900万円を超える人の場合、不動産所得から発生する赤字について、所得税と住民税で約33.5%節税効果があります。
また、売却した際にかかる税率は約20%であり、不動産の所有~売却にかかるトータルの税金を計算してもメリットを受けられます。
また、不動産物件の法人化という選択肢を考えるうえでも、課税所得が900万円を超えるかどうかが大きな目安になるでしょう。
節税目的の不動産投資に向いている物件
それでは、節税目的の不動産投資に向いている物件は、どのようなものなのでしょうか。
不動産投資に向いている人に該当すれば、どのような物件を購入しても成功するわけではありません。
より確実に不動産投資を行うため、確認しておきましょう。
減価償却を大きく計上できる物件を選ぶ
不動産投資を行う上で重要なのは、減価償却費の金額が大きくなることです。
減価償却費の計算は、「建物の取得価額×償却率」で行うため、取得価額か償却率が大きくなれば、減価償却費は大きくなります。
ただ、建物の取得価額が大きくなれば、売却時に譲渡損が発生する可能性が上がってしまいます。
また現実的に、誰でも高額の物件を購入することができるとは限りません。
そのため、償却率が高くなるような物件を選ぶことが重要となるのです。
償却率が高い物件とは
建物の耐用年数は、その建物の構造に応じて法令により定められています。
ざっくり言えば、丈夫な建物ほど耐用年数が長くて償却率が低くなり、簡単な構造の建物ほど償却率は高くなります。
たとえば、木造の建物は耐用年数が22年となり、鉄筋コンクリートなど他の構造より短い期間で償却することができます。
また、中古の建物は新築の建物と耐用年数の求め方が異なります。
「法定耐用年数-経過年数+経過年数×20%」となるため、新築より短い期間で償却可能となるのです。
不動産投資による節税効果のシミュレーション結果
それでは、実際に不動産投資を始めた人がどれくらい節税できるのかをシミュレーションしてみましょう。
また、計算上の利益の他、不動産投資の資金繰りについても確認しておきます。
給与所得から発生する所得税と住民税
ここでは、年収1,500万円のサラリーマンを例に計算してみます。
所得控除は基礎控除48万円と、社会保険料控除200万円だけとします。
この場合、課税所得金額は1,057万円、所得税額は1,993,000円、住民税額は1,059,500円の合計3,052,500円となります。
不動産所得が赤字となった場合の節税額
この人が、不動産投資を始めて、1年間の収支は以下のようになったとします
収入金額 | 300万円 |
---|---|
必要経費(減価償却費以外) | 100万円 |
必要経費(減価償却費) | 250万円 |
不動産所得 | マイナス50万円 |
この場合、不動産所得で発生したマイナス50万円は、給与所得と損益通算することができます。
すると、課税所得金額は1,007万円となり、所得税額は1,824,600円、住民税額は1,009,500円、合計税額は2,834,100円になります。
そのため、不動産投資を行う前と比較すると、218,400円の節税となりました。
資金繰りのシミュレーション
不動産投資を行う際は、不動産収益から不動産経費を控除した金額から、借入金の返済を行うこととなります。
今回のケースでは、300万円-100万円=200万円となることから、1年間の返済額が200万円以内であれば収支はプラスとなります。
この収支がマイナスとなる場合は、赤字となるメリット以上に手元の現金が減るデメリットを意識しなければならないのです。
節税目的で不動産投資をするデメリット・リスク
節税のために不動産投資を行うと、一定の効果が得られることがわかりました。
ただ、節税のためだけに不動産投資を行うことにはデメリットがあります。
また、不動産物件を保有することによるリスクも見逃せません。
ここでは、そのようなデメリットやリスクについて確認しておきましょう。
賃貸需要が低い物件の可能性がある
節税目的ではあっても、不動産物件を保有している間に賃貸収入が得られなければ、不動産物件を維持することはできません。
多くの人は、購入する際にローンを組んで、毎月借入金を返済しなければならないからです。
空室となる期間が長い物件を購入した場合、節税どころか純粋に損をしてしまうことも考えられます。
物件を選定する際は償却率も重要ですが、それ以前の問題として入居者を確保できる物件を選ぶようにしましょう。
維持費やリフォームに多額の経費がかかる
特に中古物件を購入した場合、減価償却費を大きく計上できるメリットがある一方で、その維持費も大きくなるケースがあります。
雨漏りがしたり、水回りをリフォームしたりするために、多額の支出が必要となることが少なくないのです。
減価償却費以外の経費は、お金を支払って経費となるものです。
したがって、維持費が多くかかる物件を購入すると、赤字になるだけでなく資金ショートしてしまう可能性があるのです。
赤字となれば節税はできますが、資金ショートして手元の預金を減らすことになっては意味がありません。
年数が経過すればするほど入居率や家賃は下がる
節税目的で不動産を購入し、最初は入居者を確保できる物件でも、年数が経過するとしだいに空室となる期間が増えてしまいます。
これは入居者の気持ちになればわかることで、多くの人は同じような条件の物件であれば、少しでも新しい物件を選ぶからです。
空室が増えてくると、入所者を確保するために月々の賃料を下げざるを得ません。
そのため、時間の経過とともに不動産物件の収益性は悪化してくるのです。
はじめは順調だからということで安心していると、思わぬ結果を招くこととなりかねないのです。
節税目的で不動産投資をするときに意識すべきこと
最後に、不動産投資を行う際に考えておくべきポイントについて確認しておきます。
不動産投資は、物件を購入すれば必ずうまくいくわけではありません。
そのため、事前に注意点を理解したうえで、不動産投資を行うようにしましょう。
節税のためだけに不動産投資を行うのは難しい
支払う税金の額を減らしたいという理由だけで不動産投資を行うのは、難しいと言わざるを得ません。
不動産を取り巻く環境は日々変化しますし、入居者の状況もまた変化します。
そのため、黙って不動産物件を保有していればいいわけではなく、様々な決断を迫られる場面が訪れます。
また、節税のためと思っていても、思わぬ利益が生じることもあります。
その場合には多額の税金を支払う必要が出てくるため、どのように納税額を減らすかという考え方も重要になってきます。
節税の方法は1つではない
サラリーマンの方でも、節税できる方法はいくつもあります。
そのため、不動産投資が節税の方法としてベストとは限りません。
人によっては、不動産投資を行うより、iDeCoを始める方が効果的な場合もあります。
不動産投資だけが節税の方法ではないということを知っておきましょう。
税制について多少なりとも理解する
ここでご紹介した内容は、不動産投資で節税するためには必要最低限の情報です。
不動産投資を行うのであれば、この内容を多少なりとも理解できるようにしておく必要があります。
不動産投資を始めると、毎年確定申告を行うこととなります。
しかし、確定申告や様々な計算に不安がある場合には、他の節税の方法を考える方がいいかもしれません。
まとめ
不動産投資を行って節税をするということがどうして可能なのか、なかなか理解できないかもしれません。
また、基本的な所得税の計算方法を知らずに不動産投資を行っても、節税効果を十分に得られません。
そればかりか、かえって現金が減ってしまうなどのデメリットが生じることとなりかねないのです。
また、節税目的の不動産投資を行う際に、物件選びは成功のために重要な要素です。
じっくり厳選して、少しでも成功の確率を上げられるようにしましょう。