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最終更新日:2020/9/17

医師ができる節税対策とは?!勤務医と開業医ができる節税対策について解説

この記事でわかること

  • 勤務医が利用することのできる節税について知ることができる
  • 特に効果の大きな節税対策があることがわかる
  • 勤務医と開業医の節税に対する考え方の違いを知ることができる

勤務医の方は、勤務する病院から給料を受け取っています。

つまり、その雇用形態はサラリーマンと変わりがありません。

しかし、収入金額はサラリーマンの平均より高いため、そのままでは多額の税金を負担しなければなりません。

そこで、今回は、勤務医ができる節税対策について解説します。

また、開業医の方は、勤務医とは違った形で節税を行うことができるため、その違いや具体的な方法についても解説していきます。

勤務医が活用できる10種類の控除とは

所得税は、単に収入金額から税額を算出するわけではありません。

収入を得るために必要な経費や、最低限の生活を送るために認められている控除額、あるいは税制上の恩典として認められている控除をした後の金額に対して税金が課されます。

ただ、勤務医の場合は給与所得者であるため、原則として必要経費を計上することはできません

そこで、各種控除を適用することが、節税を考えるうえでは非常に重要になるのです。

控除⑴基礎控除・給与所得控除

「基礎控除」とは、所得計算を行うすべての人に認められている控除額です。

給与所得者でも事業主でも不動産のオーナーでも、基礎控除の金額自体に違いはありません。

ただし、2019年まではすべての人が同額となっていましたが、2020年以降は所得金額によって基礎控除の額が変わることとされました。

合計所得金額基礎控除の額
2,400万円以下48万円
2,400万円超2,450万円以下32万円
2,450万円超2,500万円以下16万円
2,500万円超0円

また、「給与所得控除」とは、必要経費が認められない給与所得者について、収入金額から必要経費に相当する金額を控除することを認めるものです。

これは、その名のとおり、給与所得者のみに認められる控除であり、給与所得控除の額も2020年から改正されました。

給与収入金額給与所得控除額
180万円以下収入金額×40%-10万円
(55万円に満たない場合は55万円)
180万円超360万円以下収入金額×30%+8万円
360万円超660万円以下収入金額×20%+44万円
660万円超850万円以下収入金額×10%+110万円
850万円超195万円

給与収入の額が大きくなるほど給与所得控除の額も大きくなりますが、195万円までという上限が定められています。

控除⑵配偶者控除・配偶者特別控除

配偶者の所得金額が一定額以下の場合、配偶者がいることで所得控除を受けることができます。

わかりやすく説明するため、給与所得者の夫とパートで働く妻のパターンで考えてみます。

「配偶者控除」は、夫の所得金額が1,000万円以下であり、妻の所得金額が48万円以下の場合に適用されます。

妻の所得金額をパートの給与収入で考えると、103万円以下となるため、一般的に「103万円の壁」といわれるのはこの配偶者控除が適用できるかどうかのラインのことです。

配偶者控除の額は、以下のように決められています。

納税者本人(ここでは夫)の所得金額一般の控除対象配偶者老人控除対象配偶者(12/31現在で70歳以上の配偶者)
900万円以下38万円48万円
900万円超950万円以下26万円32万円
950万円超1,000万円以下13万円16万円

「配偶者特別控除」は、夫の所得金額が1,000万円以下であり、妻の所得金額が48万円超133万円以下の場合に適用されます。

配偶者控除と同じく、夫の所得金額と妻の所得金額によって控除額が細かく決められています。

妻の所得金額が95万円まで、パートの給与収入でいうと150万円までは一般の配偶者控除と同額の控除を受けることができます。

そのため、「150万円の壁」といわれることもあります。

控除⑶扶養控除

「扶養控除」は、16歳以上の子供や親など、所得金額が48万円以下の親族が同一生計にある場合に認められる控除です。

下宿している学生や離れて暮らす親も、その生活費などを負担していれば扶養親族となるため、扶養控除を適用できます。

扶養控除の額は以下のように決められています。

区分控除額
一般の控除対象扶養親族38万円
特定扶養親族(12/31現在で19歳以上23歳未満)63万円
老人扶養親族(12/31現在で70歳以上)同居している58万円
同居していない48万円

控除⑷社会保険料控除

給与所得者は通常、毎月支給される給与から健康保険料や厚生年金保険料が天引きされています。

所得計算を行う際には、これらの金額を控除することができます。

これを「社会保険料控除」といいます。

また、同一生計の配偶者や家族などの社会保険料を負担した場合には、その金額も合わせて控除することができます。

控除⑸生命保険料控除

保険会社などに生命保険料、介護保険料、個人年金保険料を支払った場合、支払金額に応じて控除額が計算されます。

これを「生命保険料控除」といいます。

平成24年1月1日以後に契約した保険契約については、一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料ごとに、以下の計算式で控除額を計算します。

年間支払保険料控除額
2万円以下支払保険料の額
2万円超4万円以下支払保険料×1/2+1万円
4万円超8万円以下支払保険料×1/4+2万円
8万円超4万円

平成23年12月31日以前の保険契約については、区分や計算式に違いがありますが、合計して最大12万円の控除を受けることができます。

控除⑹地震保険料控除

地震の損害に対する保険料を負担した場合、支払った保険料に応じて控除額が計算されます。

これを「地震保険料控除」といいます。

平成19年1月1日以後に契約した地震保険については、その支払保険料が控除されます。

ただし、最大で5万円とする上限があります。

また、平成18年12月31日までに契約した一定の損害保険については、最大で15,000円が控除されます。

控除⑺小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済、企業型確定拠出年金または個人型確定拠出年金などに加入した人は、その掛金を全額控除することができます。

これを「小規模企業共済等掛金控除」といいます。

生命保険料控除などのように上限額がないため、かなり大きな控除額になると考えられます。

控除⑻医療費控除

病院・医院に診療費や治療費、入院費用として支払った金額や、医薬品の購入代金などを支払った場合、その支払額から10万円を控除した後の金額が控除されます。

これを「医療費控除」といいます。

ただし、所得金額が10万円未満の人については10万円ではなく、所得金額×5%を差し引いた後の金額が医療費控除の額になります。

医療費控除を適用するためには確定申告をしなければなりません。

申告する本人だけでなく、生計を一にする家族が支払った医療費についても含めることができるため、場合によっては大きな控除額となる可能性があります。

控除⑼寄附金控除

「寄附金控除」を利用すると、国や地方公共団体、あるいは特定公益増進法人などに寄付をした場合、寄付した金額から2,000円を引いた額を控除することができます。

また、ふるさと納税を行った場合にも寄附金控除の対象となります。

寄附金控除の適用を受けるためには、確定申告をしなければなりません。

控除⑽住宅ローン控除

住宅ローンを利用してマイホームを購入した場合、確定申告をすれば住宅ローンの年末の残高に応じた税額の控除を受けることができます。

これが「住宅ローン控除」です。

住宅ローン控除は、⑴~⑼に挙げた所得控除とは違い、税額控除という制度に分類されます。

そのため、住宅ローン控除の残高から求めた金額を所得税の額から控除することとなり、大きな節税効果があります。

勤務医の節税対策①特定支出控除を利用する

ここからは勤務医ならではの節税方法を解説していきます。

1つ目は「特定支出控除」です。

特定支出控除とは、給与所得者が国税庁の定める「特定支出」をした場合に、一定の金額を給与所得から控除できる制度です。

給与所得者しか利用することができませんから、開業医では利用することができず、勤務医ならではの制度となっているのです。

特定支出の範囲

特定支出の内容勤務医としての支出の内容(例)
通勤費勤務先(アルバイト先の病院も含む)へのガソリン代、高速料金など
転居費引っ越し費用など
研修費研修会、学会への参加費や交通費など
資格取得費専門医の資格を取得する際の費用や更新料など
帰宅旅費単身赴任した場合の自宅と赴任先の移動のための旅費
勤務必要経費図書費、衣服費、交際費などで合計65万円まで

これらの費用を自分で負担している場合、特定支出控除を利用することができます。

特定支出控除の計算方法

特定支出控除を利用する際の控除額は「特定支出の額-給与所得控除額×1/2」となります。

例えば、給与収入が1,000万円の人の場合、給与所得控除の額は195万円となります。

特定支出の額が120万円だったとした場合、特定支出控除の額は120万円-195万円×1/2=22万5,000円となるのです。

特定支出の額が給与所得控除の額の1/2を超えなければ、特定支出控除は適用されません。

ハードルはやや高いのですが、勤務医の方の中にはそれだけの支出をしているケースがあるかもしれません。

領収書などをきちんと保管しておいて、利用できるかどうか検討してみましょう。

勤務医の節税対策②プライベートカンパニーを設立する

プライベートカンパニーの設立は、勤務先からの給与収入以外の収入を、個人の収入とするのではなく、設立した会社の収入にすると同時に、その会社の業務に関連する費用を計上することで、税額を大幅に圧縮する方法です。

非常勤で勤務している病院の給与や、講演料や原稿料などの収入を、個人ではなく会社の収入とします。

一方で、給与所得では必要経費にならない車両やパソコンの購入費用のほか、特定支出控除の対象となる図書費、交際費などの金額を会社の費用とすることで、プライベートカンパニーの税金の額を抑えることができます。

さらに会社の収入が大きい場合には、家族を従業員や役員として給与を支払うこともできるため、税金をさらに抑えることも可能です。

ただ、会社の設立には費用がかかること、会社が赤字となった場合でも毎年70,000円程度の税金が発生すること、さらに会社として決算書や申告書を作成し、毎年法人税の申告をしなければならないことは覚えておかなければなりません。

勤務医の節税対策③その他の節税方法

このほかにも、節税対策として利用できるものがあります。

勤務医に限らず利用できるものばかりですが、収入が大きな人ほどその効果が高いため、その内容を理解したうえで利用してみましょう。

ふるさと納税

寄附金控除の項目でも名前を挙げましたが、「ふるさと納税」は節税の一つとしてすっかり定着し、広く利用されています。

ふるさと納税とは、自分の住む自治体以外の自治体に住民税の一部を納める制度です。

これ自体は節税のためではなく、自分が住む自治体以外の自治体を応援するために行うものであり、納税額自体も減るわけではありません。

ただ、ふるさと納税を行った自治体から返礼品を受け取ることができるため、実質的には節税の効果があります。

最低限2,000円の自己負担は必要ですが、逆にいえば2,000円で日本各地の名産品や生活必需品などを入手することができるのです。

税額を正しく計算して自己負担を最小限に抑えるためには、確定申告をしなければなりません。

ただし、ふるさと納税を行ったのが6自治体以下で、ほかに確定申告をすべき理由がない場合には、ふるさと納税の「ワンストップ特例制度」を利用することで確定申告をする必要がなくなります。

個人型確定拠出年金(iDeCo)

「個人型確定拠出年金」とは、働いている間に掛金を拠出してかつ運用を行い、60歳以降にその金額を受け取る制度です。

この制度には、掛金が所得控除の対象になるほか、運用益が非課税であること、受取時に所得税がかかりにくくなる控除を受けられるといったメリットがあります。

特に、老後資金に対する不安を解消するための制度として、ここ数年の間に広く認知されてきました。

掛金の金額や運用方法はすべて自分で決めることができますが、掛金の額には上限があります。

給与所得者の場合、企業年金の状況にもよりますが、最大で年間276,000円まで掛金を設定することができます。

働いている間に拠出した金額は、すべて小規模企業共済等掛金控除の対象となります。

不動産投資

「不動産投資」は、特に所得が高い人に節税対策として利用されています。

マンションやアパートなどの賃貸物件を購入し、その物件を貸して賃料を得る一方で、その必要経費を計上します。

また、マンションやアパートの購入価額は、その後10年~20数年にわたって減価償却を行い毎年の必要経費となります。

さらに、金融機関からの借入れを返済する際の支払利息も必要経費になります。

一般的に、減価償却の計算を行っている間は不動産所得の金額が赤字となるため、本業の給与所得と相殺され、結果的に節税になるのです。

ただし、空室になれば賃料収入がゼロになるリスクがあったり、建物の維持管理や修繕に思わぬ出費が必要になる可能性もあります。

このようなデメリットについても理解しておく必要があります。

開業医と勤務医の税金に対する違いとは

開業医は、自分でクリニックを運営する立場であり、給与をもらう勤務医とは異なります。

勤務医は給与所得者、つまりサラリーマンですが、開業医は事業所得を得る個人事業主ということになります。

事業所得を計算する際には、収入金額と必要経費を計算します。

収入金額は、クリニックでの診療報酬などが計上される一方、必要経費には事業に必要なすべての経費を計上します。

勤務医と大きく違うのは、この必要経費の額の考え方です。

勤務医などの給与所得者は、給与所得控除と特定支出控除を利用することができますが、給与所得控除の額は自動的に計算された金額であり、上限額も決まっています。

また、特定支出控除はその範囲が決まっており、どのような支出でも経費になるわけではありません。

これに対して開業医の場合、事業収入を得るために必要と認められるものはすべて必要経費となります

クリニックで使用する医薬品や消耗品、医療機器や備品などはもちろんですが、車両の購入代金やガソリン代、家族を雇用した場合の給料なども、その実態があれば必要経費とすることが認められます。

もっとも、開業医は本業に関する必要経費が大きくなると、本業が赤字になる可能性もあります。

この場合、節税対策を考える必要はありません。

開業医の方が節税対策を考えるのは、本業での収支が安定して確実に所得が発生するようになってからでも遅くはありません。

まとめ

勤務医も開業医も、いずれも所得金額が大きくなる傾向があり、節税対策を行わないと大きな税負担をしなければなりません。

ここに挙げた節税対策は、誰でも利用することができるものばかりですが、所得金額が大きな人ほど実際に減額される税額は大きくなります

まだ利用していないものについてはその特徴を理解したうえで、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。

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