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最終更新日:2020/5/22

【個人事業主が納める税金の種類と計算が5分でわかる】法人との違いや節税方法なども解説

この記事でわかること

  • 個人事業主が納める4つの税金について計算方法が理解できる
  • 個人事業主ができる3つの節税対策がわかる
  • 税金面で個人事業主と法人どちらが得になるか判断基準がわかる

個人事業主の方は、会社などと同じように事業活動を行っているという側面と、サラリーマンと同じように一個人という側面があります。

事業活動を行っているため、サラリーマンであれば発生しない税金を納める必要がある一方で、個人としてサラリーマンと同じように負担しなければならない税金もあるのです。

ここでは、個人事業主として納める税金の種類とその計算方法、そして節税の方法などを解説していきます。

個人事業主が納める租税公課と事業主貸の4つの税とは?

個人事業主が納める税金は、サラリーマンなど事業活動を行っていない人が納めるべき税金よりその種類が増えます。

サラリーマンの場合、事業活動を行った会社が法人税や消費税を支払う一方で、給料をもらった人はその給料に対する税金を支払います。

これに対して個人事業主の場合は下記のとおり、事業に関する税金も個人に対する税金もすべてその個人事業主が支払う必要があるからです。

  • 事業活動により発生する税金:個人事業税・消費税
  • 個人に対してかかる税金:所得税・住民税

事業によって発生した税金と、個人に対してかかる税金には大きな違いがあります。

それは、事業によって発生した税金は事業上の必要経費となり、個人に対してかかる税金は事業上の必要経費にならないことです。

これは法人の場合であっても、法人が支払う事業税や消費税は損金となる一方で、法人税や給料をもらった個人が支払う所得税・住民税は会社の損金にならないのと同じです。

青色申告を行っている個人事業主は、帳簿を作成する必要があります。

支払った税金もすべて帳簿に記載されますが、事業から発生したものと個人に対して課されるものについては明確に区別する必要があります。

そのため、事業から発生した税金については「租税公課」の勘定科目を使って会計処理する一方で、個人にかかる税金については「事業主貸」の勘定科目を使って処理することとなります。

4つの税金の計算方法

個人事業主が納める税金は、個人事業税、消費税、所得税、住民税の4つがあります。

これらは、それぞれ計算方法や納付先が異なるので、その計算方法やその他の特徴について解説します。

個人事業税の税率と計算方法

個人事業税は、その居住地の都道府県に納付します。

通常は、確定申告を行った結果にもとづいて都道府県が計算をし、その人に対して直接納付書を送付してくるため、自分で個人事業税の税額を計算することはありませんし、その申告を行うこともありません。

毎年8月と11月の2回納期限が定められており、これに合わせて納付書が送られてきます。

個人事業税の計算を行う際に重要なのが、1年間事業を行った人については290万円の控除があることです。

確定申告の際に税務署に提出した申告書に記載された事業所得からさらに290万円を控除して、それでも残った金額があればその金額に税率を乗じて個人事業税の額を計算します。

また、この控除があるため、収入金額から必要経費を差し引いた所得金額が290万円以下である人は、個人事業税が発生しません。

個人事業税の税率は、業種によって異なります。

例えばあんま・マッサージその他の医業に類する事業については3%、畜産業・水産業などは4%、その他の販売業やサービス業などは5%と定められています。

また、課税対象とならない事業についての定めもありますが、大半の人は5%の税率で個人事業税が課されると考えて間違いありません。

消費税の税率と計算方法

消費税の申告や納税は国に対して行いますが、その税額の一部は国ではなく地方自治体の財源となっています。

2019年10月1日以降、消費税の税率は10%に引き上げられた一方で、食料品などの購入については軽減税率として8%の税率が適用されています。

個人事業主として売上を計上する際は、その売上金額に10%の消費税を上乗せして支払ってもらうこととなります。

そのため、1万円の商品を売り上げた場合には、その10%である1,000円の消費税をあわせた11,000円を受け取るのです。

また、売り上げた商品を仕入れた際に支払った消費税は、税務署に納める消費税額を計算する際に受け取った消費税から差し引くこととなります。

例えば、先ほどの商品を税抜価格8,000円で仕入れたとした場合、実際には仕入れの際に800円の消費税を支払っていることとなるため、1,000円-800円=200円の消費税を税務署に納税することとなるのです。

このように、1年間の売上にかかる消費税と仕入れにかかる消費税の額を集計し、差し引きした金額を翌年3月31日までに納付する必要があります。

消費税の計算方法には2種類ある

個人事業主が消費税を納付する際には、売上にかかる消費税の額から仕入れに係る消費税の額を差し引きして、納めるべき消費税額を計算する方法とは別の計算方法があります。

この計算方法のことを「簡易課税制度」といいます。

簡易課税制度とは、売上にかかる消費税を計算したら、その消費税額に業種ごとに定められた「みなし仕入率」を乗じて計算した金額を仕入れにかかる消費税額とみなして、納付する消費税額を計算する方法です。

簡易課税制度を利用するメリットは大きく2つあります。

  • メリット1:仕入れにかかる消費税額を集計する必要がないこと
  • メリット2:みなし仕入率を使って計算した仕入れにかかる消費税額が実際の金額より大きくなる場合があること

とくに2つ目のメリットは納付する消費税額に直接影響するため、非常に重要なポイントです。

みなし仕入率は、卸売業90%、小売業80%、製造業70%、サービス業50%、不動産業40%、その他の事業は60%と定められています。

これは、例えば卸売業に該当する事業者の場合、売上にかかる消費税額の90%は仕入れにかかる消費税として控除でき、残りの10%分の消費税を納付するということを意味します。

実際の仕入れにかかる消費税を集計した場合より、みなし仕入率を使って計算した場合の納税額が小さくなるケースが多いため、簡易課税制度を利用することも検討してみましょう。

なお、簡易課税制度が利用できるのは2年前の課税売上金額が5,000万円以下の事業者です。

課税売上の額が大きな事業者は利用できないため、この点には注意が必要です。

消費税を納めなくてもよい事業者がいる

すべての個人事業主が消費税を納付しなければならないわけではありません。

「小規模事業者の納税義務の免除」の制度により、2年前に発生した課税売上金額が1,000万円以下の人は消費税を納付する必要がないのです。

開業したばかりの個人事業主の場合は、消費税の納税義務が発生しないケースが多くなります。

開業初年度は2年前の売上金額がないため、消費税の納税義務はありません。

また開業2年目も2年前の売上はないのですが、前年の1月~6月に間に発生した課税売上と給与支払額の両方が1,000万円を超えた場合には、2年目から消費税の課税事業者となり消費税を納付しなければならなくなります。

初年度の開業時期によって2年目に消費税の課税事業者となる可能性のある人は、開業時期を7月以降にするなどの対策を考えておくと、税負担を減らせる場合があります。

所得税の税率と計算方法

所得税とは、事業主に限らず、すべての個人がその所得金額に応じて国に納める税金です。

サラリーマンの場合は、勤務先で年末調整を行って所得税の計算と納税を行っているため、原則として自分で申告書を作成する必要はありません。

しかし、個人事業主の場合は、1年間に発生した所得金額を翌年2月16日~3月15日に確定申告することとされています。

ここにいう所得金額とは、売上から発生した収入金額から仕入れにかかる金額や必要経費の額を引いて計算した金額です。

収入金額そのものから計算するわけではないので、利益が出ていない場合には所得税の額は発生しません。

また、所得税の税率は累進課税といって、所得金額が大きくなるほど高い税率が課される制度になっています。

所得税率は5%~45%まで7段階に区分されているため、所得税の税率は人によって、あるいは年によっても異なるのです。

なお、個人事業主は確定申告をして所得税の計算をすることとなるのですが、その際に、事業以外から発生した所得がある場合には、その所得についても申告する必要があります。

他の会社から給料をもらっている場合、土地やマンションなどを売却した場合、株式等を売却した場合など、他に所得が発生するケースは多くあるため、申告漏れとならないように気を付けましょう。

住民税の税率と計算方法

住民税とは、すべての個人がその所得金額に応じて住んでいる市町村に対して納付する税金です。

所得税は国に対して納めますが、所得税の地方版という位置づけです。

確定申告を行うと、その申告内容にもとづいて市町村が自動的に住民税を計算します。

そのため、特別な理由がなければ住民税の申告書を作成して申告する必要はありません。

住民税の納税額は、毎年6月ごろに市町村から送られてくる納税通知書で確認することができます。

また、一緒に納付書が送られてくるため、その納付書で納税することとなります。

1年間に発生した所得金額にもとづいて計算された住民税を翌年6月、8月、10月、翌々年1月に納付するため、大きな利益があった場合はその翌々年1月まで多額の住民税を納付しなければなりません。

また、所得税と違い、住民税の税率は所得金額に関係なく一律10%となっています。

そのため、所得が大きな人にとっては所得税より少ない金額となるのですが、逆に所得金額が少ない人にとっては所得税より住民税の方が大きな負担となります。

個人事業主が検討すべき節税対策

個人事業主が支払う税金は4つもあるわけですから、その負担を少しでも減らすことができるような節税策を実行すれば、税額が大きく変わる可能性があります。

そこで、ぜひ検討すべき節税対策について解説します。

必要経費をもれなく計上しているか

必要経費の金額は、所得金額を求める際に収入金額から差し引く金額となるため、必要経費の額が増えれば自動的に所得金額は少なくなります。

所得金額が少なくなれば、所得税だけでなく住民税や個人事業税の額も少なくなりますから、必要経費を正しく計上することが節税への第一歩となります。

商品の仕入代金や、仕事のために移動した際の交通費や宿泊費など、明らかに事業のためだけに用いた経費については、計上漏れとなることはないかもしれません。

しかし、事業のために使っているのかプライベートのために使っているのかがあいまいな支出やどちらにも使っている支出については、事業のために使用した部分を按分して必要経費とすることができるため、面倒でもそのような計算を行うようにしましょう。

例えば、以下のように按分することができます。

  • (1)自宅と事務所を兼ねて利用している場合、家賃を床面積で按分する、
  • (2)固定電話や携帯電話、インターネットの接続費用を実際の使用頻度に応じて按分する
  • (3)車を事業用とプライベート用ともに利用している場合には、その減価償却費やガソリン代、車検代、自動車保険、駐車場代などを走行距離に応じて按分するなどの計算を行い、事業用として計算された金額を必要経費とする

青色申告を行うことができるか

青色申告を行うと、青色申告特別控除の適用を受けることができます。

青色申告の要件を満たせば、最大で65万円の控除額を所得金額から控除することができるため、大きな節税効果があるのです。

65万円の特別控除を受けるためにポイントとなるのが、「複式簿記により記帳を行っている」ことです。

複式簿記とは、伝票の左右に勘定科目と金額を記載して、預金などの財産や買掛金などの債務の残高と損益の金額を集計するものです。

決して難しいものではないのですが、簿記に関する知識がまったくない人にとってはハードルが高いかもしれません。

また、本業に時間を取られるとそこまで手が回らないという人もいるかもしれません。

場合によっては、税理士などの専門家の力を借りて青色申告を行うことも検討するといいでしょう。

所得控除の計算を正しく行っているか

事業のための支出ではないために、必要経費にならない支払は数多くあります。

その中に、事業部分の支出があれば按分するなどして必要経費に計上するということは最初に説明しましたが、実は個人的な支払いであっても所得控除として節税につながるものがあります。

生命保険料や地震保険料は、それぞれ生命保険料控除、地震保険料控除として所得控除の金額となります。

また、ふるさと納税の金額や災害義援金などを寄付した場合には寄附金控除が適用されますし、支払った医療費が多額になる時は医療費控除が適用されます。

これらの控除は、確定申告の際に申告書に金額を記載したり必要書類を提出したりすることで、初めて適用が認められるものです。

事業に関係ない費用だからといって、領収書などを捨ててしまわないようにするとともに、郵送されてきた証明書をきちんと保管しておきましょう。

個人事業主が法人よりも税金で得するボーダーライン

個人事業主として開業する際に、会社を設立して法人で事業を行うことを考える人がいるかもしれません。

会社に対してかかる法人税の税率は一律23.2%であるため、所得税の最高税率である45%の約半分ほどで済みます。

ただ、あまり大きな所得が発生していない場合には、法人税を課されると税負担が増えてしまうこともあるため、法人が絶対有利というわけではありません。

それでは、所得金額がいくらまでなら、個人事業主の方が税金上で得になるのでしょうか。

法人で事業を行っている場合は、法人で課される法人税と個人で課される所得税・住民税を合わせて税負担を考えなければならないため、一概には言えないのですが、参考になるのは法人税の税率と所得税の税率の違いです。

法人税の税率は一律23.2%、これに対して個人の所得税の税率が23%となるのは所得金額が695万円を超えた時です。

つまり、所得金額が700万円程度までは個人事業主の方が有利で、700万円を超えたあたりから法人の方が有利になる可能性があります。

ただ、法人が個人に報酬をいくら払うのか、また法人がどのような費用を計上するのかといった要因によっても変わるため、絶対的なボーダーラインはなく、あくまで参考として覚えておいてください。

まとめ

個人事業主が納めなければならない税金の種類は、法人やサラリーマンなどより多くあります。

また、所得税額や消費税額の計算は自分で行う必要があるほか、個人事業税や住民税の計算も確定申告書をもとに行われます。

そのため、少しでも税負担を軽減できるような方法を考えるとともに、確定申告の際に正確な計算を行うことが重要となるのです。

また、個人事業主として開業した人が法人になるかどうかの判断基準として、所得金額が高くなるほど法人にメリットがあるということを覚えておきましょう。

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