最終更新日:2026/6/10
現物出資とは?メリット・デメリットから現物出資に必要な手続きまで解説!

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
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YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

この記事では、現物出資とは何か、現物出資のメリット・デメリットなどを解説します。


目次
現物出資とは
会社の設立時は1円以上の出資を行うことが必要であり、発起人が資金を準備して出資するのが一般的ですが、資金の代わりに現物で出資をすることもできます。
これが現物出資です。
この現物を出資金として扱うことができ、自己資金がゼロで現物出資のみという場合でも会社設立をすることが可能です。
手持ちの現金が不足している場合や、設立後の事業運営を有利に運びたい場合に利用されることが多い方法となります。
現物出資は金銭による出資とは異なり、あらゆる規制を受ける側面もあります。
金銭ならばその額面が明確ですが、現物であればその評価額がはっきりとしていないためです。
この評価額が適正につけられていないと、債権者に不利益をもたらしたり、複数の発起人の間で不公平が生まれることにつながるため、規制が細かく設けられています。
現物出資ができる人
会社設立時の現物出資ができるのは、会社設立の手続きを代表で行っていく発起人だけになります。
一般的には、設立時発行の株式を発起人に引き渡す「発起設立」によって設立されることが多いですが、発起人以外に引き渡す人を募集する「募集設立」という方法もあります。
この募集設立の場合は、その募集された引受人は現物出資をすることができないということになります。
現物出資の対象となるもの
現物出資できる現物は、基本的に「譲渡が可能なもの」で、かつ「貸借対照表に計上されている資産」であると認識することができます。
具体的には、以下のようなものが対象です。
- 自動車(ローン支払い中でないもの)
- パソコンやOA機器
- 株式や債券などの有価証券
- 土地や建物などの不動産
- ゴルフ会員権やリゾート会員権
- 特許権
「10万円を超えて資産として計上されているもの」を一つの基準として考えるとよいでしょう。
実際は、10万円に満たない機器や備品などを充当することもできますが、品目が増えすぎると後の資産計上・管理の業務が煩雑化するのであまり好ましい方法ではありません。
事業で引き続き使用するものは、所有権移転の登記手続きを経ることで使用することが可能になります。
逆に、現物出資の対象とならないものもあります。
- ローン支払い中で未完済の資産
- 名義を書き換えることができない預金や保険証券
- ノウハウや労働など無形のもの
事業においてそのまま継続的に利用可能なものであっても、対象とできない場合があるので注意しましょう。
現物出資のメリット
現金ではなく現物で出資することのメリットとして、
- 節税効果がある
- 資本金を増やせる
- 発起人になれる
- 備品の調達コストを抑えることができる
- 設立時に限らず増資に利用できる
などが挙げられます。
それぞれの特徴を詳しく見てみましょう。
節税効果がある
現物出資を行うメリットとしては、まず現物出資として会社設立時に会社のものとした財産を、減価償却費として経費処理していくことができる点が挙げられます。
機械設備などの資産は、固定資産として購入した代金をすべてその時に費用として計上するのではなく、法定耐用年数に応じて数年間で分割して費用として算出します。
そして、製品を作る際にかかった材料代や人件費、光熱費などの費用に、この機械設備の費用も入れて計算していきます。
このように資産の購入金額を法定耐用年数で割ることを「減価償却」といいます。
減価償却で経費処理ができるということは、経費が加算されるのでその結果として会社の利益が減ることを意味しますが、利益が減ると税金の負担も減ることになりますから、現物出資には節税対策としてのメリットがあることになります。
例えば、会社設立時に社長の所有物100万円(自動車など)を現物出資とし、5年間かけて減価償却費として経費処理するとした場合、毎年20万円だけ経費を増やすことができます(※単純化のため残存価格なしの旧定額法で計算しています)
20万円経費が増えるということは、法人税の実効税率が30%だったとすると、およそ6万円程度の節税効果を得られることになります。
金銭で同額の100万円を出資する場合には得られない、現物出資の場合でだけ享受できるメリットになります。
資本金を増やせる
出資金を用意する時に現金だけでなく、現物でも出資することで出資総額を増やすことができます。額面での出資金と現金とのギャップは必ず考慮しておき、資金繰りの計画を綿密に立てておく必要が額面での出資金と現金とのギャップは必ず考慮しておき、資金繰りの計画を綿密に立てておく必要が
資本金額は、金融機関から融資を受ける際の会社評価において、その融資金額を左右する重要な位置づけのものであり、その目標の出資金を現金だけで準備する必要が無いことは、資金調達コストをカットできることから見てもかなりのメリットであるといえます。
資本金の金額を設定する際のコントロール幅が増えることで、融資の場合に限らず社会的な信用を得やすくなるという点で、設立まもない会社を軌道に乗せていく上で有利な展開になることも多いでしょう。
発起人になれる
現金を準備できなくても、現物出資することで発起人になることができます。
例えば、複数人で出資して会社を設立する場合においては、他の人と同程度の現金を準備できなくても現物で同程度の額を出資することができるので、大いにメリットであるといえます。
備品の調達コストを抑えることができる
事業に必要なものを現物出資という形をとっておけば、それらを取得する際に必要なコストを抑えることができます。
自動車、パソコン、OA機器などはその最たるもので、設立時のコスト削減に大いに役立つでしょう。
設立時に限らず増資に利用できる
会社設立時に限らず、会社を経営していく中での増資のための手段として利用することもできます。
経営の方向転換や事業規模の変化などで増資を必要とする場面において、調達コストを抑えながら増資を実行できる方法として有効です。
現物出資のデメリット
現物出資には多数のメリットがある一方で、そのデメリットも少なからず存在しています。
- 現物出資が資本金をかさ上げする
- 会社の所有物とする手続きが必要
- 不足価額が生じた場合に支払い義務がある
- 譲渡に際して課税される場合がある
それぞれの特徴を詳しく見てみましょう。
現物出資が資本金をかさ上げする
厳密にいうと現物出資のデメリットというわけではありませんが、資本金の金額に対して現物出資の金額が占める割合が大きいという場合、資本金は大きいのに実際には会社にあんまりお金がない…という状態になることもありますから注意しておきましょう。
例えば、資本金1億円で会社を設立したけれど、その資本金の内訳のほとんどは社長が現物出資した土地や建物であるというような場合には、実は会社にはほとんど現金がない…というようなケースも考えられます。
会社の運営においては当然、「運転資金」「設備資金」のように金銭での資金が必要になります。
額面での出資金と現金とのギャップは必ず考慮しておき、資金繰りの計画を綿密に立てておく必要があることは言うまでもありません。
資本金というもののこのような内実については例えば銀行融資の担当者も理解していますから、融資審査では資本金の金額よりも自己資金(実際にすぐに引き出せるお金)をもとに審査が行われるのが一般的です。
資本金が大きいから高額の融資が受けられるだろう…と考えていたら思っていたよりも融資限度額が低かった、ということはよくある話ですので注意しておきましょう。
会社の所有物とする手続きが必要
社長や出資者の個人的な所有物を会社に対して現物出資するためには、所有権移転の手続きを行わなくてはなりません。
現物出資とした財産は定款に記載する必要があるほか、役所に対して「この財産は確かに会社のものです」ということを登録しておかなくてはなりません。
例えば、自動車の場合には運輸支局での名義変更や会社名義となっている車庫証明取得、不動産の場合には法務局での所有権移転登記が必要になります。
所有権移転登記には登録免許税として費用が発生しますから、この点も考慮しておかなくてはなりません。
なお、現物出資のために登記は法律上は必ずしも必要ありませんが、設立後に会社の経費として所有財産を減価償却費として経費処理していくために登記を行なっておくのが一般的です(そうしておかないと税務署による税務調査で経費否認されてしまう可能性があります)
譲渡に際して課税される税金
上記の登録免許税の他に、譲渡する現物によっては、
- 所得税
- 不動産取得税
- 固定資産税
- 自動車税
- 自動車取得税
- 所得税
- 贈与税
- 消費税
など、これらの課税対象となる場合があります。
例えば、不動産を法人に現物出資した場合は、資産の譲渡に関しての所得税が課税されます。
この際の金額は当該不動産の時価でなく、現物出資によって取得することになった株式・出資持分の時価です。
加えて、所有権移転登記を行う必要があるためその際に登録免許税が発生し、同時に不動産取得税・固定資産税も発生します。
この他にも場合によっては、出資者に対して所得税や贈与税が課せられることもあります。
譲渡所得とみなされる現物の対象には
- 土地や建物などの不動産
- 自動車
- 機械器具
- ゴルフ会員権
- 有価証券(一部のもの)
などが挙げられます。
不足価額が生じた場合に支払い義務がある
出資した現物の価額を定款に記載しておく必要がありますが、その価額が適正であるかどうかが第三者にはわからないケースもあります。
定款に記載された額に対して、実際に会社を設立した際の当該財産の価額が不足していた場合、出資した発起人や取締役はその差額を支払う義務が生じます。
想定していなかった現金の必要が生じる可能性があるため、価額の見極めは慎重に行う必要があります。
現物出資に必要な手続き
現物出資の際は、現金での出資とは違った特定のプロセスを経る必要があります。
それぞれの手順と押さえておきたいポイントについて確認していきましょう。
①現物時価の調査
まずは、出資する現物の時価を調べることから始めます。
その価額の調査は取締役が行うことになりますが、以下条件に該当する場合は検査役による調査が必要となります。
- ①市場価格のある有価証券が現物出資の対象であり、定款の認証の日における最終市場価格を超えている場合
- ②定款に記載の価額が相当であると弁護士、税理士等の証明受けていない場合。また、不動産であるならば不動産鑑定士の鑑定評価を受けていない場合
- ③現物出資した動産の総額が500万円を超えている場合
これらに該当し、裁判所が選任した検査役による調査を受ける必要があると、数十万円もの検査費用や数か月という日数がコストとして発生します。
手持ちの金銭が不足していることから選択されることの多い現物出資であるわけですから、これら3つの条件に適合しないように調整して、取締役による調査を実施できるようにすることが好ましいといえるでしょう。
②定款への記載
次に、現物出資した内容についての詳細を定款に記載する必要があります。
記載する内容は
- 現物出資する発起人の氏名と住所
- 現物出資する財産の詳細と価額
- 出資者に対して割り与える設立時発行株式の数
となります。
特に、出資する現物については
- 商品名
- 製造元の会社名
- 製造番号
- 現物の数
などその詳細を記載しておく必要があるので、漏れの無いように注意しましょう。
調査報告書の作成
出資された現物財産の価額が適正であるか、財産の引継ぎが終了しているかなどを取締役が調査し、その結果が妥当であると判明した際は、調査報告書を作成します。
監査役が別途設置されている場合は、設立時取締役と設立時監査役で調査と調査報告書作成を実施する必要があります。
この調査報告書が、株式会社設立登記申請書への添付書類となります。
財産引継書の作成
現物出資する発起人は、設立する際に割り当てられる発行株式を引き受け、滞りなく出資現物を会社に納めます。
現物が引き渡された際は、財産引継書を作成する必要があります。
設立時取締役(監査役が設置している場合は設立時取締役と設立時監査役)の調査報告書に添付する形で、設立登記申請書と共に法務局に提出することになります。
この財産引継書は発起人ごとに作成する必要があるため、複数の発起人がいる場合は人数分それぞれに対して作成することに注意しましょう。
資本金の金額は大きいに越したことはない?
土地や建物などの現物を出資した場合、資本金の金額が数千万円?数億円と大きくなるということも珍しくはありません。
会社設立後には銀行融資を受けることを検討している場合には、少しでも資本金の金額は大きい方が良いことも確かですが、そう単純に判断できるかどうかは微妙なところでもあります。
というのも、資本金というのは会社設立後にはいつでも引き出せる性質のお金ですから、銀行の融資担当者としても「資本金が1億円あるから、会社の金庫には1億円があるはず」とは考えないからです。
実際に、資本金の金額が大きくても資金が足りなくなって倒産…という企業はたくさんありますから、資本金というのはあくまでも「会社設立時にこれだけのお金があった」という情報にすぎません。
消費税について
前述したように現物出資に伴って課税される税金が多数存在しており、特に消費税は注意が必要です。
資産を渡して株式という有価証券を受け取ったという行為は、税務上の扱いとしては資産を売却して金銭を受け取ったことと見なされ、消費税がかかります。
出資者が個人事業主で、基準期間の売上が1000万円未満であれば消費税非課税事業者として免除されますが、1000万円を超えていれば消費税が課されることになります。
また、資産を受け取る側の法人も、資本金が1000万円を超えてしまうと、設立から2年間は消費税の非課税事業者として免除される特典が利用できなくなります。
資本金をいくらに設定するかは、細心の注意をもって決定する必要があるでしょう。
資本金の金額が1000万円を超えている場合、消費税の免税事業者とはなれないなどのデメリットがありますから、資本金をいくらにするべきか?については最初の売り上げが入ってくるまでどのぐらいの資金が必要かなどを考えながら、慎重に判断する必要があります。
なお、中小企業の場合には、運転資金として必要なお金の3ヶ月分程度を、1000万円を超えない範囲で資本金とするケースが多いです。
現物出資によるM&A
M&Aとは「Mergers(合併)」&「Acquisitions(買収)」の略称で、企業の合併買収のことを指し、このM&Aを実施する手法の一つに現物出資があります。
分社型分割と現物出資
M&Aでの買収方法において、分社型分割と現物出資は性質が似ていますが、その定義において異なる部分があります。
分社型分割では、事業に関する権利業務の全部または一部を包括的に承継させる必要があり、個別単体での財産分与という形は認められません。
その一方で、現物出資は増資への対価としての位置づけで個別単体の資産等を分け与える行為と定義され、個々の権利業務がそれぞれに承継されることになります。
デット・エクイティ・スワップにおける現物出資
デット・エクイティ・スワップ(DES: Debt Equity Swap)とは、会社債務と交換で株式を発行して交換するM&Aでの手法のことです。
「債権の株式化」もしくは「債務の資本化」と表現することができます。
会社が負う債務に対して、債権を債権者が現物出資という形を取って資本化するという流れで利用されることが多いといえるでしょう。
債務者から見たDES
債務者から見れば、過剰債務を減らして財務状況を整えられるメリットがあります。
- 決算書上、借入金が減少し資本が増加するため、自己資本比率が上がる
- 自己資本比率が上がると、金融機関をはじめ対外的信用が増す
- 有利子負債が減少することによって金利というコストが軽減できる
このような点から、債務者企業の再建においてとても有効な方法です。
債権者から見たDES
逆に、債権者にとっては債権が消滅してしまうと、債務者が再建に成功して業績が回復しても回収をすることができません。
しかし、DESを使えば株式として持っておくことができるので、配当金という形でその利益分配を享受することが可能になります。
まとめ
現物出資によって現金以上の出資金額で会社を設立できることは、社会的な信用を得ていく上でとても有利に働きます。
一方で、それらの現物譲渡に関する費用や手続きが生じるため、それらをトータルで見越しておく必要がありますが、出資金額をコントロールできる幅が持てることは嬉しいメリットであるといえます。
会社設立、増資の際の選択肢の一つとして有効に使っていきたいものです。


















