記事の要約
- ゆうちょ銀行の相続手続きは「相続確認表」の提出から審査に進む。相続Web案内サービスを使えば窓口への来店は原則1回で済む
- 口座凍結前に預金を引き出したい場合は、「預貯金仮払い制度」を利用するとよい
- 相続税の申告が必要な場合は、死亡日時点の残高証明書を早めに取得しておく
ゆうちょ銀行の相続手続きは、「相続確認表」という独自の書類を提出してから審査に進むという、2段階のしくみになっています。
一般的な銀行とは少し流れが異なるため、ご家族が亡くなったあと、ゆうちょ口座の手続き方法で戸惑われた方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ゆうちょ銀行の相続手続きの流れや必要書類、急いでお金を引き出す方法、さらに相続税申告との関係までわかりやすくお伝えします。
なお、VSG相続税理士法人では、相続に関するご相談を無料で受け付けておりますので、相続でご不安なことがございましたら、お気軽にご連絡ください。
目次
▼「ゆうちょ銀行の相続手続き」については、下記の動画でも解説しています
ゆうちょ銀行の相続手続きは面倒?他の銀行と何が違う?
ゆうちょ銀行の相続手続きは「面倒」「時間がかかる」と言われることがあります。
その理由は、ほかの銀行とは手続きのしくみが異なることにあります。
ゆうちょ銀行の相続手続き:独自の「2段階」しくみ
一般的な銀行では、必要書類を揃えて窓口に持参すれば、その場で受理・審査が進みます。
場合によっては1回の来店で完了することもあります。
一方、ゆうちょ銀行の場合は、以下のような流れです。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 第1段階 | 窓口へ「相続確認表」を提出し、相続センターへ情報を送付する |
| 第2段階 | 相続センターから届く「必要書類のご案内」に基づき、改めて書類を提出する |
郵便局やゆうちょ銀行の窓口はあくまで「受付」の役割であり、実際の審査や払い戻しの処理は、全国数カ所にある「相続センター」が行います。
そのため、原則として窓口には最低でも2回の来店が必要です。
ただし、「相続Web案内サービス」を利用して事前に「相続確認表」を作成すれば、来店回数を1回にすることができます(詳細は後述)。

手続き完了までにかかる期間の目安
ゆうちょ銀行の相続手続きにかかる期間の目安は、おおむね3週間〜2カ月程度です。
| 項目 | 目安期間 |
|---|---|
| 相続確認表の提出 〜 書類案内の到着 | 1〜2週間 |
| 書類提出 〜 払い戻し(ゆうちょ口座) | 1〜2週間 |
| 書類提出 〜 払い戻し(他行振込) | 3〜4週間 |
最も時間がかかるのは「戸籍謄本の収集」です。
亡くなった方(被相続人)が転籍を繰り返していた場合、すべての戸籍をそろえるだけで数週間かかることもあるため、早めの着手が求められます。
参考戸籍の「広域交付制度」で時間を短縮できる
2024年3月から始まった「広域交付制度」を利用すれば、最寄りの市区町村の窓口で戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍をまとめて請求できます。
転籍によって故人の戸籍が複数の自治体にある場合でも、それぞれの役場に郵送請求をする必要がなくなるため、郵送にかかる日数が短縮できます。
ただし、取得できるのは窓口に出向く本人、本人の直系にあたる人の分です。
代理人や兄弟姉妹による請求、郵送での利用はできません。
ゆうちょ銀行の相続手続きの流れ
ここでは、実務上の手続きを5つのステップに整理して解説します。

ステップ1:ゆうちょ銀行に死亡の届出をする
まずは、最寄りの郵便局の貯金窓口または相続コールセンターへ、口座名義人が亡くなった旨を連絡します。
| 届出方法 | 連絡先・場所 |
|---|---|
| 窓口 | 全国の郵便局またはゆうちょ銀行(貯金窓口) |
| 電話 | 相続コールセンター(0120-312-279) |
届出をした時点で口座は凍結され、入出金や自動引き落としはすべて停止します。
公共料金等の引き落とし口座に指定している場合は、事前に変更手続きを済ませておく必要があります。
ステップ2:相続確認表を提出する
指定の「相続確認表」に、必要事項を記入のうえ提出します。
「相続確認表」(一部抜粋)
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引用元 ゆうちょ銀行
- 亡くなった方の氏名・住所・生年月日
- 貯金の種類・記号番号(通帳に記載されている5桁の記号と最大8桁の番号)
- 相続人全員の氏名・住所・続柄
- 払い戻し方法の希望(ゆうちょ口座への入金・他行振込・払戻証書など)
記入漏れや誤りがあると、手続きがやり直しになってしまいます。
貯金の記号番号は通帳を見ながら正確に、また、法定相続人は一人も漏らさず記載しましょう。
なお、故人がゆうちょ銀行で保有していた口座が分からない場合は、相続確認表の裏面にある「貯金等照会書(相続用)」を併せて提出すれば、口座を調査してもらえます。
また、ゆうちょ銀行の「相続Web案内サービス」では、相続確認表を作成できるほか、必要書類の案内もその場で確認できます(状況によっては、案内されたもの以外の書類が必要になる場合があります)。
このサービスを利用すると、ステップ2と3を同時に進めることができ、窓口への来店が原則1回で済みます。
ただし、以下の条件に該当する場合は、相続Web案内サービスを利用できません。
- 亡くなった方の貯金の有無や記号番号がわからない場合(※窓口での現存調査が必要)
- 投資信託、投資一任サービス、住宅ローン、電子マネー(Suica・Edy)等を利用している場合
- 非課税貯金(マル優等)を利用している場合
- 相続手続きを終える前に亡くなった相続人がいる場合(数次相続)
ステップ3:必要書類を揃えて提出する
相続確認表の提出後、1〜2週間後に相続センターから「必要書類のご案内」が届きます。
案内には、相続の状況に応じた必要書類が、個別に記載されています。
必要書類をそろえたら、ゆうちょ銀行または郵便局の貯金窓口へ持参しましょう。
窓口は平日の日中しか開いていませんが、ゆうちょ銀行の店舗では事前予約制を導入しているところもありますので、事前にWebサイトから来店予約をしておくと待ち時間を減らせます。
ステップ4:相続センターでの審査
提出した書類は相続センターに送付され、そこで専門の担当者による精査が行われます。
書類に不備があった場合は、相続センターから郵送または電話で連絡が届きます。
書類の追加提出を求められることもあるため、連絡先には日中連絡がつく電話番号を記載しておきましょう。
ステップ5:貯金の払い戻し・名義変更
審査完了後、相続確認表で指定した方法で、貯金の払い戻しまたは名義変更が行われます。
| 受け取り方法 | 所要期間 | 手数料(税込) |
|---|---|---|
| 代表相続人のゆうちょ口座へ入金 | 1〜2週間 | 無料 |
| 他の金融機関への振込 | 3〜4週間 | 5万円以上:880円 5万円未満:660円 |
| 払戻証書の郵送 | 1〜2週間 | 無料(証書を窓口で現金化する際の手数料はなし) |
相続払戻金は、代表相続人等の通常貯金口座への入金、他の金融機関口座への振り込み、貯金払戻証書などの方法で受け取れます。
他の金融機関への振り込みを選ぶ場合は、振込金額に応じた手数料がかかります。
また、名義変更を選んだ場合は、相続人の名義に書き換えられた通帳が簡易書留で届きます。
ケース別・相続手続きに必要な書類一覧
ゆうちょ銀行の相続手続きに必要な書類は、遺言書の有無や遺産分割の方法によって変わります。
ここでは、ケースごとに必要な書類を整理してお伝えします。
全員共通の基本書類
いずれのケースでも、必要になる書類は次のとおりです。
- 相続確認表(ゆうちょ銀行所定の書式)
- 貯金等相続手続請求書(相続確認表の提出後に準備が必要)
- 亡くなった方の戸籍謄本(婚姻時から死亡までの連続した戸籍)
- 亡くなった方の通帳・証書・キャッシュカード
- 届出をする方の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
- 印鑑登録証明書・実印(必要に応じて)
ゆうちょ銀行の場合、亡くなった方の戸籍謄本は「婚姻時(初婚、未婚の場合は16歳時)から死亡まで」の範囲で足ります。
ただし、一般的な銀行の手続きや不動産の相続登記、および相続税の申告においては、原則として「出生から死亡まで」の連続した戸籍謄本が必要です。
ゆうちょ銀行以外の手続きも並行して予定されている場合は、あらかじめ出生からの戸籍をそろえておくことで、取得の二度手間を防ぐことができます。
【ケース別】追加で必要となる書類
相続の方法に応じて、以下の書類を基本書類と併せて提出します。
| 相続の方法 | 追加で必要な書類 | 備考 |
|---|---|---|
| 遺産分割協議で手続きする場合 | 遺産分割協議書、相続手続請求書、相続人の印鑑登録証明書など | 相続人全員の署名と実印の押印が必須。 |
| 遺言書がある場合 | 遺言書(正本または謄本)、相続人または遺言執行者の印鑑証明書・本人確認書類など | 自筆証書遺言(法務局保管以外)は検認済証明書が必要。 遺言執行者が家庭裁判所で選任された場合は、遺言執行者選任審判書も必要。 |
遺産分割協議を選択する場合、相続人が遠方に居住しているケースでは書類の往復だけで数週間を要することがあります。
また、手続きを円滑に進めるために、以下のポイントも押さえておきましょう。
①印鑑証明書の有効期限に関する留意点
ゆうちょ銀行に提出する印鑑証明書は、「発行から6カ月以内」のものが求められます。
ただし、ほかの金融機関では「3カ月以内」と規定しているケースも多いです。
複数の銀行で並行して手続きを行う場合は、最も短い期限に合わせて取得できるよう、準備するとよいでしょう。
②遺言書の種類と検認手続きの要否
遺言書がある場合、その種類によって家庭裁判所での「検認」手続きの要否が分かれます。
【参考】複数の相続手続きがある場合は「法定相続情報一覧図」の活用も
複数の金融機関での解約や相続登記などが重なる場合は、法務局で発行される「法定相続情報一覧図」の活用が便利です。
法定相続情報一覧図とは、法務局の登記官が相続関係を認証する公的な書類であり、戸籍謄本の束に代わる証明書として利用できます。
ゆうちょ銀行においても、法定相続情報一覧図を利用した手続きが認められています。
「法定相続情報一覧図の作成」(一部抜粋)
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引用元 ゆうちょ銀行
また、無料で複数枚の写しを取得できるため、ゆうちょ銀行以外の各金融機関にも同時に提出して相続手続きを進めることも可能です。
複数の相続手続きを並行することで、手続き完了までの所要期間を短縮できる点が、この制度の大きなメリットです。
口座凍結のしくみと凍結前に貯金を引き出す場合の注意点
銀行口座は、銀行が口座名義人の死亡を知った時点で凍結(停止設定)されます。
具体的には、ご家族が郵便局やゆうちょ銀行の窓口に「亡くなりました」と連絡したタイミングで凍結されます。
凍結前に引き出す場合の2つのリスク
誰かがゆうちょ銀行に連絡しなければ、口座はそのまま使える状態が続きます。
しかし、亡くなった方の口座からお金を引き出す行為には、以下の2つのリスクがあります。
| リスク | 内容 |
|---|---|
| 単純承認のリスク | 相続財産を処分したとみなされ、相続放棄ができなくなる可能性がある。 |
| 親族間トラブル | ほかの相続人から「勝手にお金を使い込んだ」と疑われ、遺産分割に支障をきたす。 |
もし、葬儀費用等のために現金が必要な場合は、次に紹介する「仮払い制度」を適切に利用しましょう。
葬儀費用をすぐに引き出す方法:預貯金仮払い制度
2019年7月にスタートした「預貯金仮払い制度」は、ほかの相続人の同意がなくても、各相続人が単独で一定額の預貯金を払い戻せる制度です。
遺産分割協議がまだ整っていない段階でも利用できるため、葬儀費用や、残された家族の当面の生活費を確保することができます。
引き出せる金額の計算方法
預貯金仮払い制度で引き出せる金額は、次の計算式で求められます。
必要な書類
ただし、1つの金融機関から引き出せる上限は150万円までです。
- 亡くなった方のゆうちょ銀行の残高が600万円、相続人は配偶者と子ども2人の場合
- 配偶者の場合:600万円 × 1/3 × 1/2(法定相続分)= 100万円 → 100万円まで引き出し可能
- 子どもの場合:600万円 × 1/3 × 1/4(法定相続分)= 50万円 → 50万円まで引き出し可能
仮払い制度利用時の必要書類
預貯金仮払い制度を利用する場合の必要書類は、以下のとおりです。
- 亡くなった方の除籍謄本等(出生から死亡までの連続した戸籍謄本)
- 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明(亡くなった方との続柄が確認できるもの)
- 請求する相続人の印鑑証明書
- 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
- 金融機関所定の払戻し請求書
窓口で申請後、おおむね1週間程度で指定した口座に振り込まれます。
なお、仮払い制度で引き出した金額は、後の遺産分割の際にその相続人が「すでに受け取った分」として差し引かれます。
あくまで遺産の前渡しであり、追加でもらえるお金ではない点に注意しましょう。
また、相続税の申告上も相続財産に含まれますので、忘れずに計上してください。
100万円以下の少額口座における簡易手続き
ゆうちょ銀行では、故人が保有していた貯金の合計残高が100万円以下の場合、「簡易な相続手続き」を利用することができます。
たとえば、通常貯金と定期貯金の口座がある場合には、その合計で100万円以下かどうかを判断します。
簡易手続きができるかどうかは、最寄りのゆうちょ銀行の窓口で判断してもらえます。
簡易手続きの必要書類は以下のとおりです。
- 相続確認表
- 亡くなった方の除籍謄本等(死亡の事実が確認できるもの)
- 相続人代表者の戸籍謄本(亡くなった方との続柄が確認できるもの)
- 相続人代表者の印鑑証明書
- 通帳・証書(手元にある場合)
通常の相続手続きでは、相続人全員の署名や印鑑証明書が必要です。
しかし、簡易手続きの場合は相続人全員分の書類は不要であり、代表相続人1名による請求で口座解約や払い戻しができます。
通帳を紛失している場合でも手続きは可能ですが、口座の記号番号が不明な場合は「貯金等照会書」で口座の調査を依頼する必要があります。
照会には2〜3週間ほどかかりますので、通帳が見当たらない場合は早めに対応しましょう。
残高証明書の取得方法と相続税申告への活用
相続税申告が必要な場合は、「残高証明書」の取得も欠かせません。
ゆうちょ銀行の相続手続きは時間がかかることも多いため、「相続確認表」の提出と同時に、発行依頼をするのが効率的です。
相続税申告に残高証明書が必要な理由
相続税申告では、亡くなった日(相続開始日)時点の預貯金残高を正確に把握する必要があります。
通帳の記帳だけでは、未記帳の利息や死亡日時点の入出金状況を完全に反映できないケースがあるため、残高証明書の提出が求められます。
特に定額貯金・定期貯金がある場合、死亡日までに発生しているものの、まだ受け取っていない「既経過利息」も相続財産に含まれます。
既経過利息の金額は通帳には記載されないため、残高証明書を取得して確認しなければなりません。
残高証明書の取得手順・手数料・必要書類
残高証明書は、最寄りのゆうちょ銀行または郵便局の貯金窓口で取得できます。
発行手数料は、1通につき1,100円(税込)です。
また、発行までには1~2週間程度かかります。
残高証明書を請求する際は、必ず「死亡日現在の残高」を指定しましょう。
また、相続税申告に備え、定額・定期貯金の「既経過利息の計算書」も併せて依頼してください。
相続税の申告・納付の期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内と厳格な期限が定められているため、必要書類は早めに取得しましょう。
相続税申告でのゆうちょ貯金の評価方法
ゆうちょ銀行の貯金を相続税申告で評価する方法は、その「貯金の種類」によって異なります。
普通貯金の場合は、通常、死亡日時点の残高がそのまま相続税の評価額になります。
既経過利息が少額な預貯金については、死亡日時点の残高のみで評価することが認められているためです。
一方、定額貯金や定期貯金の場合は、次の計算式で評価します。
計算式
残高証明書に既経過利息の金額が記載されていれば、その数字をそのまま申告書に活用できます。
ゆうちょ銀行の相続手続きでよくある質問
Q1:口座を開設した郵便局以外でも手続きできる?
Q2:ゆうちょ銀行の相続手続きに期限はある?
Q3:代理人に相続手続きを依頼できる?
Q4:通帳やキャッシュカードを紛失した場合は?
Q5:相続人それぞれの口座へ、直接振り込める?
まとめ:ゆうちょ銀行の手続きをスムーズに進めるために
ゆうちょ銀行の相続手続きは、他の銀行と比べると手順が多く時間がかかりやすいですが、全体の流れを理解しておけば、手続きを円滑に進めることができます。
- 「相続Web案内サービス」を活用して来店回数を原則1回に抑える。
- 戸籍謄本の収集は、他の相続手続きも滞りなく進められるよう、早めに着手する
- 残高100万円以下の「簡易手続き」や、当面の資金を確保する「仮払い制度」を状況に合わせて検討する
また、相続税申告が必要な場合は「相続発生を知った翌日から10カ月以内」に手続きをしなければなりません。
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