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最終更新日:2026/4/30

相続で遺産分割協議書は必ず作成するの?作成が必要・不要なケースを詳しく解説

田中 千尋 (司法書士)
この記事の執筆者 司法書士 田中千尋

VSG司法書士法人 司法書士 昭和62年生まれ、香川県出身。

相続登記や民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

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相続で遺産分割協議書は必ず作成するの?作成が必要・不要なケースを詳しく解説

記事の要約

  • 遺産分割協議書は全ての相続で作成が必要なわけではない
  • 遺言書がなく相続人が複数人の場合などは、遺産分割協議書の作成が不可欠
  • 相続人が1人の場合など、遺産分割協議書の作成が不要なケースもある

遺産分割協議書は、すべての相続において一律に作成が義務付けられているわけではありません。

しかし、相続人が複数いる場合などでは、遺産分割協議書の作成が非常に重要となります。

協議書が不適切であったり、作成を怠ったりすると、金融機関での手続きが滞るだけでなく、「本来適用できるはずの相続税の軽減措置が受けられない」というリスクも生じかねません。

そこでこの記事では、遺産分割協議書が「必要」なケースと「不要」なケースを整理したうえで、実際に作成する場合の流れを詳しく解説します。

遺産分割協議書は相続の状況次第で必要・不要が変わる

遺産分割協議書とは、亡くなった方(被相続人)の財産について、相続人全員で遺産分割協議を行った結果をまとめた「遺産の分け方の合意記録」です。

遺産分割協議書を実際に作成する必要があるかどうかは、「相続人の人数」や「遺言書の有無」、「分割する財産の種類」などの状況によって異なります

特に被相続人が遺言書を遺していない場合、遺産分割協議書を作成していないと、以下のデメリットが生じる可能性があるのです。

遺産分割協議書を作成しない場合に起こりうるデメリット

相続人同士のトラブル・紛争リスク

遺産分割協議は口頭での合意も法的には可能ですが、書面で残していないと、合意内容の事実関係が不明確になってしまいます。

相続人の間で「言った・言わない」といった水掛け論が発生し、トラブルに発展するリスクがあります。
名義変更が進まない

不動産や自動車などの名義変更手続きにおいて、相続人全員が合意したことを証明する書類として、遺産分割協議書の提出が必要になります。

この場合、遺産分割協議をしたうえで、遺産分割協議書の作成を行わない限り、名義変更手続きが進まなくなってしまいます。
特例・税額軽減が適用できない

相続税負担を大幅に抑えられる「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」を適用するには、遺産分割が確定していることを証明する書類(遺言書または遺産分割協議書の写し)の提出が必須です。

まずは、遺産分割協議書が「必要なケース」と「不要なケース」について、以下の順で解説していきます。

  • 遺産分割協議書が必要なケース
  • 遺産分割協議書が不要なケース

遺産分割協議書の作成が必要なケース

相続時の状況が以下のケースに当てはまる場合、遺産分割協議の実施と遺産分割協議書の作成が必要になります。

遺産分割協議書が必要なケース

  • 遺言書がなく相続人が複数人の場合
  • 預貯金口座の解約や不動産や有価証券・自動車の名義変更を行う場合(相続人が1人の場合・遺言書がある場合を除く)
  • 遺言書の内容と異なる分割をする場合

ここからは、遺産分割協議書の作成が必要なケースについて、それぞれ詳しく解説していきます。

遺言書がなく相続人が複数人の場合

被相続人が遺言書を遺しておらず、相続人が2人以上存在する場合、法定相続分と異なる分割をするのであれば、遺産分割協議書の作成が必要です。

相続が開始すると、遺言書で承継先が指定されていない限り、被相続人の遺産はいったん「相続人全員の共有状態」となります。

この共有状態を解消するためには、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産の分割を確定させなければなりません。

その合意を証明するものとして、遺産分割協議書の作成を行います。

遺言書に記載のない財産が見つかった場合

法的に有効な遺言書があったとしても、その遺言書に記載されていない財産が後から見つかった場合には、その残りの財産について協議を行い、遺産分割協議書を作成しなければなりません。

預貯金口座の解約や不動産や有価証券・自動車の名義変更を行う場合

金融機関で「預貯金口座の解約」や「払い戻し」を行う際、遺産分割協議で合意した内容を証明する書類として、遺産分割協議書の提出が求められます。

このとき、相続人全員が合意していることを証明するために、遺産分割協議書と併せて「各相続人の印鑑証明書」も提出しなければなりません。

また、相続で「不動産」や「有価証券」、「自動車」を取得した場合、その財産の名義変更手続きにおいても、遺産分割協議書の提出が求められます。

なお、相続人が一人の場合や有効な遺言書があり、その内容のとおりに財産を取得する場合は遺産分割協議は不要です。

不動産や有価証券、自動車等の名義変更

不動産の名義変更(相続登記)

土地や建物の名義を相続人に変更する際、法務局へ遺産分割協議書を提出する必要があります。

2024年4月1日から相続登記は義務化されており、所有権の取得を知った日から3年以内に申請しなければなりません。
有価証券の名義変更

金融機関や証券会社で名義変更の手続きを行う際、相続人全員の合意を証明する書類として、遺産分割協議書の提出を求められます。
自動車の名義変更

運輸支局での手続きの際に、原則として遺産分割協議書の提出が必要です。

ただし、査定額が100万円以下の普通自動車については、「遺産分割協議成立申立書」を提出すればよいケースもあります。

遺言書の内容と異なる分割をする場合

有効な遺言書があっても、「相続人」および「受遺者」、「遺言執行者」といった関係者全員の合意があれば、遺言とは異なる内容で遺産を分割することができます。

この場合は、遺産分割協議を行い、その合意内容を遺産分割協議書として作成する必要があるのです。

適正に作成された遺産分割協議書があれば、もとの遺言書の指定内容は事実上失効し、協議書の合意内容が優先されます。

遺産分割協議書の作成が不要なケース

相続が発生したとしても、すべての場合で「遺産分割協議書」が必要なわけではありません。

以下のケースでは、遺産分割協議書の作成が不要となります。

遺産分割協議書の作成が不要なケース

相続人が一人だけの場合

遺産を分割する相手がいないため、戸籍謄本等で唯一の相続人であることを証明できれば、協議書なしで手続きが可能です。
有効な遺言書があり、その内容通りに分ける場合

亡くなった方(被相続人)が法的に有効な遺言書を残しており、その指定通りに分ける場合は遺言書が分割の根拠となるため、協議書は不要です。

ただし、「包括遺贈」がなされている場合や、相続人全員の合意により遺言で指定された内容と異なる分割を行う場合は、遺産分割協議が必要となります。
法定相続分でそのまま分割する場合

法律で定められた割合で遺産を相続するなら、遺産分割協議を行う必要はなく、遺産分割協議書の作成も不要です。

ただし、相続人同士のトラブル防止などの理由から、法定相続分で分割する場合でも遺産分割協議書の作成をおすすめします。

遺産分割協議書を自身で作成する場合の流れ

遺産分割協議書を自身で作成する場合、以下の流れで進めます。

遺産分割協議書を自身で作成する場合の流れ

遺産分割協議書を完成させるには、書類を作成する前段階である「相続人や相続財産の調査」が重要です。

仮に相続人の把握漏れがあったり、一つの財産を見落としたりするだけで、作成した協議書の内容が無効となるリスクがあるのです。

ここからは、それぞれのステップごとに解説していきますので、ぜひ参考になさってください。

遺産分割協議書作成のステップ

  • STEP1:遺言書の有無を確認する
  • STEP2:相続人を確定させる
  • STEP3:相続財産を調査する
  • STEP4:遺産分割協議で合意したら遺産分割協議書を作成する
  • STEP5:署名・実印で押印し、手続きに進む

STEP1:遺言書の有無を確認する

STEP1:遺言書の有無を確認する

相続が開始したら、まずは遺言書があるかどうかの確認を行います

法的に有効な遺言書が存在する場合は、原則としてその内容が優先されるため、遺言に従って遺産を分けることになります。

遺言書の主な保管場所としては、自筆証書遺言であれば「自宅」や「貸金庫」などがあるほか、2020年7月以降は「法務局での保管制度」も開始されました。

また、公正証書遺言の場合は、公証役場で原本が保管されています。

もし遺言書が見当たらない場合は、次のステップとして遺産分割協議を行うための準備を進めましょう

STEP2:相続人を確定させる

STEP2:相続人を確定させる

法定相続人が1人でも参加していない場合、その遺産分割協議は法的に無効となってしまいます。

そのため、協議を行う前に法定相続人の範囲を正確に把握しておくことが不可欠です。

法定相続人の調査は、「被相続人の出生から死亡までの連続したすべての戸籍謄本等(除籍謄本・改製原戸籍謄本を含む)」を取り寄せて行います

これらの書類は、各戸籍の本籍地を管轄する市区町村役場の窓口、または郵送で請求します。

また、「戸籍証明書等の広域交付制度」を活用することで、窓口に出向く方の配偶者、直系尊属(父母など)直系卑属(子など)の戸籍であれば、最寄りの市区町村役場の窓口でまとめて取得することができます。

STEP3:相続財産を調査する

STEP3:相続財産を調査する

次に、遺産分割の対象となる財産をすべてリストアップします。

被相続人が保有していた「プラスの財産」だけでなく「マイナスの財産」もすべて相続税の計算対象となるため、漏れのないよう洗い出さなければなりません。

被相続人の自宅に残された通帳や郵便物、固定資産税の通知書などを手がかりに調査を進め、その内容をもとに「財産目録」を作成しましょう。

財産目録には被相続人が保有していたすべての財産について、プラスの財産(資産)とマイナスの財産(負債・債務)に分けて記載します。

STEP4:遺産分割協議で合意したら遺産分割協議書を作成する

STEP4:遺産分割協議で合意したら遺産分割協議書を作成する

相続人と財産が確定したら、法定相続人全員で遺産分割協議を行います。

このとき、全員が必ずしも対面で集まる必要はありません。電話やメール、Web会議などを活用して合意を形成することも可能です。

協議により遺産の分け方が決定したら、その内容を「遺産分割協議書」として書面に残します

遺産分割協議書の書き方の例

項目 書き方
①タイトル 「遺産分割協議書」と記載します。
②被相続人の情報 氏名・生年月日・亡くなった日・本籍地・最後の住所地を記載します。

本籍地は「戸籍謄本」、住所地は「住民票の除票」を参照し、一字一句正確に転記してください。
③前書き 相続人全員で協議を行い、合意に至った旨を記載します。
④取得財産の情報 「誰が」「どの財産を」「どれだけ」取得するかを、取得者ごとに明確に記載します。

■ 不動産は登記事項証明書の内容を正確に転記します。

■ 預貯金は金融機関名・支店名・口座種別・口座番号・名義人を記載します。
⑤未発見財産への対応 協議書の作成後に新たな財産が見つかった場合に備え、その帰属先や再協議の有無について記載しておくと安心です。
⑥後書き 協議書の通数や保管方法について記載します。
⑦日付・署名・押印 日付は協議書を作成した日を記入します。

署名は相続人本人が自筆で行い、実印で押印します。なお、手続きの際には各相続人の印鑑証明書を添付します。

遺産分割協議書の書き方は以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考になさってください。

STEP5:署名・実印で押印し、手続きに進む

STEP5:署名・実印で押印し、手続きに進む

遺産分割協議書が完成したら、相続人全員で署名・押印を行います

法的には、遺産分割協議書への押印は必ずしも「実印」である必要はありません。

しかし、「金融機関での相続手続き」や「不動産の相続登記」などでは、遺産分割協議書に押印された印影と相続人全員の印鑑証明書を照合することで、協議が成立した事実を確認します。

各手続きをスムーズに進めるためにも、相続人全員が氏名を自筆で署名し、実印を押印しましょう。

無事に書類が整ったら各金融機関や法務局、税務署へ必要書類と共に提出し、実際の名義変更や相続税の申告・納税手続きを進めていきます。

遺産分割協議書の主な提出先
提出先 手続き内容 協議書の扱い 備考・注意点
法務局(登記所) 不動産の相続登記 原本を提出 ■印鑑証明書・戸籍類も必要

■不動産ごとに管轄法務局が異なるため要確認
金融機関 口座解約・名義変更 原本または写しを提出(金融機関によって異なる) ■通常は全ての法定相続人の署名・実印押印+印鑑証明書が必要

■原本を複数部作成しておくとよい
証券会社 株式・投資信託の名義変更や口座解約 原本または写し ■銘柄ごとの分配内容も明記が望ましい
税務署(相続税申告) 相続税の申告添付資料(任意) 任意提出(写しで可) ■相続税申告書に添付すれば分割内容の説明が明確になる。

■基本的には法定相続人全員の印鑑証明書の写しも必要

遺産分割協議書など相続に関する疑問は専門家へご相談を

遺産分割協議書は、相続が発生したからといって、必ずしもすべての方に必要な書類ではありません。

相続人が一人だけの場合をはじめ、以下のようなケースであれば、遺産分割協議書を作成せずに相続手続きを進めることも可能です。

  1. 相続人が一人だけの場合
  2. 有効な遺言書があり、その内容通りに分ける場合
  3. 法定相続分でそのまま分割する場合

一方、被相続人が遺言書を遺しておらず、相続人が複数いる場合は、遺産分割協議書の重要性が大きく高まります

特に金融機関での払い戻しや法務局での名義変更といった相続手続きを行う必要がある場合は、作成が不可欠です。

遺産分割協議書の作成や、相続税申告などについて疑問が生じた場合は、専門家へご相談することをおすすめします。

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