東京弁護士会所属。
交通事故の程度によっては、入院が必要になったり、定期的な通院、精神的にも疾患を負ったり、PTSDとして現れることもあります。
こうした状況の中で、交渉ごとを被害者本人でまとめようとすることは非常に大変です。
弁護士に示談交渉を依頼することで、直接示談交渉をしたり、資料を準備したりする精神的負担が軽減できます。
つらい事故から一日でもはやく立ち直るためにも、示談交渉は弁護士に任せて、治療に専念してください。
目次
玉突き事故とは3台以上の車両が追突する交通事故です。
後方車両が追突されて、前に押し出されてさらに前の車両に次々と追突する事故です。
3台以上なので4台、5台以上になる場合もあります。
玉突き事故の多くの原因は後方車両の前方不注意、車間距離の狭さ、前の車両の急ブレーキなどがあります。
玉突き事故は渋滞で車間距離が狭くなっている時に起きやすく、一般道路だけでなく高速道路でも発生しやすい事故です。
玉突き事故の過失割合は、原則として最後方、つまり最初に追突した車両が100%の過失になります。
先頭の車両はもちろん無過失ですが、後ろからの追突が原因で前の車に追突してしまった中間車両も同様に無過失とされることが一般的です。
要するに、玉突き事故は基本的に追突した最後方車両が10、追突された車両が0の10:0の過失割合になると覚えておきましょう。
ただし、玉突き事故は複数台の車が関係する事故なので、事故状況もさまざまです。
状況に応じて、過失割合は修正要素が加味され、さらに示談交渉により決められます。
以下では、玉突き事故の状況別に過失割合がどのようになるのかを見ていきましょう。
前の車両が必要もないのに急ブレーキを踏んだ結果、玉突き事故が起きた場合を考えてみましょう。
たとえば、3台の玉突き事故で、先頭車両A、真ん中の車両がB、最後尾車両をCとします。
真ん中の車両Bが必要もないのに急ブレーキを踏んだ結果、C車がB車に追突して、C車に追突された衝撃でB車がA車に追突します。
最初に追突したC車の過失割合は70%、必要のない急ブレーキを踏んだB車は30%、先頭車両のA車は0%程度の過失割合になります。
先頭車両のA車が必要のない急ブレーキを踏んだ結果起きた玉突き事故では、先頭車両Aは30%、真ん中の車両Bは0%、最後尾の追突した車両Cは70%程度の過失割合になります。
前の車両の不適切なハンドル、ブレーキ操作が原因で、後方車両が追突した場合はどうでしょうか。
真ん中の車両が不適切なハンドル、ブレーキ操作をした場合は、真ん中の車両が20%、最後尾の追突した車両は80%、先頭車両は0%の過失割合になります。
先頭車両が不適切なハンドル、ブレーキ操作をした場合には、先頭車両が20%、最後尾の追突した車両は80%、真ん中の車両は0%の過失割合を負います。
高速道路は一般道よりも高速で車が走行するため、駐停車によって一般道より事故の被害が大きくなる場合があります。
高速道路上で駐停車していて追突された場合には、駐停車していた車両40%、追突した車両60%という高い過失割合が加算されます。
しかし、やむを得ない事情で駐停車した場合の過失割合は、上記よりも低くなります。
たとえば、渋滞で停車していた場合には過失割合は加算されないケースが多いです。
故障などで退避する場所がなくやむを得ず本線上に駐停車した場合には、40%ではなく10~20%程度の過失割合になる可能性が高いでしょう。
玉突き事故であっても、事故には個々の事情があります。
画一的な過失割合を割り当てるのではなく、個々の事故事情に応じた過失割合の決定には過失割合の修正要素が考慮され、さらに示談交渉によって決められます。
前例で言えば、玉突き事故は追突事故の一種なので、追突された方の過失割合は0の10:0の事故です。
しかし、追突された側が不必要な急ブレーキをかけた場合には、過失割合が加算されます。
ただし、やむを得ない事情で急ブレーキをかけた場合には、過失割合が加算されない可能性があります。
また、道路上に駐停車していた場合にも過失割合が加算されます。
急ブレーキの時と同様に、やむを得ない事情で駐停車した場合には過失割合が少なく、あるいは加算されない可能性があります。
このように、個々の事故事情によって過失割合は加算・減算され調整されるのです。
過失割合は事故現場を実況見分した警察が決めると思っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、過失割合は事故の当事者あるいは当事者の代理人(保険会社、弁護士等)の示談交渉によって決定します。
単に、お互いの主張をしあうのではなく過去の裁判例と事故状況を照らし合わせて、互いの主張を立証していくように話し合いを進めなければなりません。
そして示談交渉によってお互いに合意すれば、過失割合が決まるという流れです。
一方で示談がうまくいかず裁判になると、最終的に裁判所が過失割合を決めることになります。
玉突き事故の損害賠償先は、過失のあった人に対して請求します。
3台の車両が関係する、玉突き事故の事例を見てみましょう。
事例3台の車両が関係する玉突き事故の場合
先頭車両A、真ん中の車両Bともに過失がない場合は次のようになります。
AはCに対して100万円、BはCに対して100万円の損害賠償を請求できます。
先頭車両Aの必要のない急ブレーキでAの過失割合が30%の時、AはCに対して過失相殺で70万円の損害賠償を請求できます。
BはCに対して70万円、Aに対して30万円の損害賠償を請求できます。
CはAに対して30万円を請求できますが、Aには過失相殺によって70万円を支払うことになります。
真ん中車両Bの必要のない急ブレーキでBの過失割合が30%の時、BはCに対して過失相殺で70万円の損害賠償を請求できます。
AはCに対して70万円、Bに対して30万円の損害賠償を請求できます。
CはBに対して30万円を請求できますが、Bには過失相殺によって70万円を支払うことになります。
玉突き事故の被害でもらえる賠償金には以下の種類があります。
それぞれの種類を詳しく見ていきましょう。
積極損害とは、事故が原因でかかった出費です。
積極損害には下記のものがあります。
慰謝料などと違って、実費でかかったものが賠償金の対象となります。
事故が原因で仕事を休まなければならず、減ってしまった給料などに対して休業損害が支払われます。
減少分の実費が賠償金の対象となります。
逸失利益は事故のために失われた、将来の収入を指します。
会社員、公務員、アルバイト、契約社員など仕事に就いている人はもちろん主婦や主夫などにも認められます。
また、子どもの場合は将来に収入を得られる見込みがあるため、逸失利益が認められます。
逸失利益の賠償金額は、職業や立場によって変わってきます。
慰謝料は入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の三種類があり、人身事故によって被害者が受けた精神的苦痛に対して支払われるものです。
慰謝料は人身事故の時にのみ支払われ、物損事故では支払われることはありません。
慰謝料の算定基準には自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の三つの基準があります。
一般的には、弁護士基準が最も高く、自賠責基準が最低限の基準です。
種類 | 内容 | 金額 |
---|---|---|
自賠責保険基準 | 最低限度の補償 | もっとも低い |
任意保険基準 | 任意保険会社が独自に設定 | 自賠責保険よりは高い |
弁護士基準 | 弁護士依頼・裁判時に採用される基準 | もっとも高い |
複数の車両が絡む玉突き事故は、損害の請求先が分かりにくい場合があります。
過失があった人に請求できるのですが、玉突き事故のパターンによって基本の過失割合はあるものの、事故状況によって過失割合の修正要素が考慮されます。
さらに、過失割合は示談交渉によって決定します。
このパターンであればこの程度という目安はありますが、必ずしも目安通りにならないことを覚えておきましょう。
示談交渉に不安がある場合は早めに弁護士などの専門家の力を借りることをおすすめします。