東京弁護士会所属。
交通事故の程度によっては、入院が必要になったり、定期的な通院、精神的にも疾患を負ったり、PTSDとして現れることもあります。
こうした状況の中で、交渉ごとを被害者本人でまとめようとすることは非常に大変です。
弁護士に示談交渉を依頼することで、直接示談交渉をしたり、資料を準備したりする精神的負担が軽減できます。
つらい事故から一日でもはやく立ち直るためにも、示談交渉は弁護士に任せて、治療に専念してください。
目次
物損事故と人身事故の違いは、主に負傷者の有無で決定されます。けが人がいれば人身事故、物にのみ損害が出ている場合には物損事故となります。
人身事故 | 物損事故 | |
---|---|---|
事故の特徴 | けが人がいる | けが人なしで、物の損害のみ |
賠償金の項目 | ・車の修理費や買替費用 ・治療費や各種慰謝料 など | 車の修理費や買替費用 など |
示談金の金額 | 高い | 低い |
示談金を受け取れるまでにかかる期間 | 【人身事故(後遺障害なし)】 事故発生から半年~1年程度 【人身事故(後遺障害あり)】 事故発生から1年程度 【死亡事故】 被害者が亡くなってから半年~1年程度 | 事故発生から2〜3ヵ月程度 |
保険の適用 | ・自賠責保険 ・任意保険 | 任意保険 |
加害者への刑事罰 | 刑事罰を科されるケースあり | 原則的になし |
違反点数の加算 | あり | 原則的になし |
くわしくは以下の記事をご覧ください。
→人身事故と物損事故の違いは?警察が物損にしたがる理由や切り替え方を解説
あとからけがをしていることがわかったら、速やかに人身事故への切り替えをおこないましょう。
切り替え手続きをすべき主な理由は、以下のとおりです。
物損事故のままでは、治療費や慰謝料を支払ってもらえません。
けが人のいない物損事故として正式に処理をしていた場合、治療の必要もないはずです。そのため、あとから出てきた痛みで治療をしたとしても、その治療費は自己負担となるのが原則です。
また、交通事故で請求できる慰謝料は「事故のけがによる精神的苦痛を和らげる目的で支払われるお金」です。事故に巻き込まれたことによる精神的苦痛は、車の修理費や破れた衣服の弁償代などで和らげることができるとされているからです。
物損事故でも慰謝料が認められる例外的なケースはありますが、原則としてけが人のいない事故で慰謝料は請求できないことを頭に入れておきましょう。
物損事故で賠償の対象となるのは、車の修理費や修理中の代車使用料などに限られます。治療費や慰謝料、逸失利益や休業損害などさまざまな賠償金は請求できないので、物損事故のままでは損をする可能性があるのです。
後述するように物損事故のままで治療費や慰謝料を請求できるケースもありますが、時間が経てば経つほど事故と症状の関係性を証明しづらくなります。
保険会社に「その痛みの原因は事故ではなく別にあるのではないか」と疑われると、適切な補償を受けられない恐れもあるでしょう。
物損事故のままでは、自賠責保険から賠償を受けることもできません。自賠責保険は人身事故で負った損害を補填する性質を持っているからです。
人身事故証明書入手理由書を提出すれば賠償を受けることも可能ですが、作成や提出に手間がかかることを考えると、人身事故への切り替え手続きを早めにおこなっておくのが望ましいでしょう。
人身事故であれば、運転していた加害者本人だけでなく車の所有者に対しても賠償請求が可能です(運行供用者責任)。そのため、運転者が無保険で資力がなかったとしても、車の所有者から最低限の補償を受けることが可能になります。
物損事故ではこの規定が適用されないため、請求先が運転者本人に限られ適切な補償を受けられない恐れがあります。
物損事故では実況見分調書が作成されません。事故状況の詳細が記載された調書を示談交渉の際に証拠として使えなくなるので、過失割合でもめたときに不利になる恐れがあります。
物損事故で作成される物件事故報告書では、事故状況に簡易的な記載しかされません。
事故当時の状況につき詳細はあきらかにされないため、過失がなかったとの主張を裏付ける証拠が不足する可能性があります。
慰謝料を含む賠償金の支払いは民事上の責任ですが、懲役刑や禁錮刑、罰金刑などの刑罰を受けることは刑事上の責任にあたります。故意に物を壊した場合は別として、原則として物損事故では刑事責任を問えません。
被害感情が強く相手に対して刑事責任を徹底的に問いたい場合には、人身事故への切り替え手続きを検討しましょう。
物損事故から人身事故に切り替える流れは、以下のとおりです。
物損事故で処理したあとに痛みが出てきたら、できるだけ速やかに病院で医師の診察を受けてください。医師の作成する診断書は切り替え申請の際に必要になります。
受診する際は、接骨院や整骨院ではなく病院の整形外科等に行きましょう。病院以外では診断書を作成してもらえず、症状を証明するための適切な検査も受けられない恐れがあるからです。
なお、診断書の作成には通常2,000円~1,0000円程度の作成費用がかかります。作成費用はあとで保険会社に請求できるので、領収書をかならず保管しておくようにしましょう。
また診断書の作成に時間がかかる場合は、先に警察に事情を伝えておくとその後の手続きがスムーズに進みます。
医師に診断書を作成してもらったら、警察で人身事故への切り替え申請をおこないましょう。
申請手続きをスムーズに進めるためにも、行く前に電話でアポをとっておくのがおすすめです。事故の当事者双方の出頭を求められたり、事故車両で来るように言われたりすることもあるので、あらかじめ当日に必要なものを確認しておきしょう。
なお、加害者が人身事故への切り替えを拒否したらその旨を警察に伝えましょう。事故から日数が経過しておらず診断書があれば、加害者が拒否していても切り替えが認められるケースも多いです。
切り替え手続きが順調に進むと、警察による実況見分がおこなわれます。被害者と加害者が立ち会いのもと事故当時の状況を確認されるため、記憶に基づき事実を正確に伝えましょう。
実況見分後に作成される実況見分調書は、保険会社との示談交渉において自身の主張を裏付ける重要な証拠となります。
誤った情報が記載されると不利な過失割合が認定される恐れもあるため、警察官に事細かに状況を説明することが重要です。
切り替え手続きが無事完了したら、その旨を「被害者自身が加入している保険会社」と「加害者の加入する保険会社」の双方に連絡してください。
被害者自身が加入している保険会社に連絡することで、人身事故で利用できる各種保険やサービス、弁護士費用特約などについて説明を受けられます。
また、加害者の加入する保険会社に通院先を連絡しておけば、病院に直接治療費を支払ってもらえる可能性があります。今後の示談交渉をスムーズに進めるためにも、早めに連絡を入れておきましょう。
切り替え手続き前の初診料は被害者側で立て替えることになりますが、あとで保険会社に請求できるので領収書を大切に保管しておいてください。
立て替えの際は費用負担を軽くするため、健康保険を使っても問題ありません。
物損事故から人身事故への切り替えに期限はありませんが、事故発生から時間が経ちすぎると切り替えを認めてもらえない可能性があります。
症状が出始めるタイミングにもよりますが、できれば事故から10日以内には病院で診察を受けることが望ましいです。
事故から数週間~1カ月程度経過してしまうと、事故当時の痕跡がなくなり事故とけがの因果関係を証明できなくなる可能性が高いです。
もし警察に切り替え手続きを断られてしまったら、弁護士に相談して対応方法についてアドバイスをもらってください。
人身事故への切り替え期限についてくわしく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
→交通事故で物損事故から人身事故への切り替え期限【切り替える理由や方法も解説】
警察に人身事故への切り替えを認めてもらえなかった場合には、「人身事故証明書入手不能理由書」を加害者側の保険会社に提出するのがよいでしょう。
人身事故証明書入手不能理由書とは、やむを得ない理由により警察に人身事故の届出ができなかった場合に提出する書面です。この書面を提出すれば、物損事故のままで治療費や慰謝料の支払いが認められる可能性があります。
保険会社のホームページから取得することも可能ですが、保険会社に事情を伝えれば書面を郵送してくれます。
なお、人身事故証明書入手不能理由書を提出したからといって、必ずしも治療費や慰謝料の支払いが認められるとは限らない点には注意が必要です。示談交渉でもめたら早めに弁護士に相談することをおすすめします。
免許点数の加算や刑事罰を免れるために、加害者から物損事故にしてほしいと頼まれることもあるでしょう。もし少しでも身体に違和感があったり事故時に衝撃を受けたりしていた場合には、人身事故で処理してもらうことをおすすめします。
「慰謝料は必ず支払うから」と言っていても、被害額全額を速やかに支払ってくれる補償はありません。悪質なケースでは、その後連絡が取れなくなってしまうケースもあります。
被害者にとって物損事故にするメリットはほとんどないので、加害者の頼みがあっても物損事故で処理しないよう注意しましょう。くれぐれもその場で示談することは避けてください。
物損事故で処理したとしても、診断書を警察に提出すれば人身事故に切り替えることも可能です。
事故から10日以内であればスムーズに切り替え手続きが進むケースが多いですが、それ以上経過している場合には警察に事故とけがの因果関係を疑われる恐れがあります。
物損事故のままでは治療費や慰謝料の請求が認められず、被害者として適切な補償を受けられない恐れがあります。
もし切り替え手続きを拒否されてしまったら、交通事故に強い全国対応の”ベンチャーサポート法律事務所”までぜひお気軽にご相談ください。