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交通事故に精通している弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所 > 交通事故弁護士コラム > 怪我・後遺障害等級 > 交通事故の症状固定はいつ?納得いかないときの対処法

交通事故の症状固定はいつ?納得いかないときの対処法

弁護士 水流恭平

この記事の執筆者 弁護士 水流恭平

東京弁護士会所属。
交通事故の被害者にとって、弁護士は、妥当な慰謝料をもらうための強い味方になります。
特に、加害者の保険会社との示談交渉がうまくいかず悩まれていたり、後遺症が残ってしまい後遺障害慰謝料請求を考えていたりする方は、 ぜひ検討してみてください。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/tsuru/

交通事故の示談交渉において最も注意しなければならないのは、「治療が終了するまで」あるいは「症状が固定するまで」示談をしてはならないということです。

正確には示談交渉は行っても構いませんが、示談書に押印し、示談を終了させてはいけません。

示談が一旦成立すると、それ以降に発生する治療費などの実費を請求することができず、また、症状が固定し、障害が残るかどうかについては後に説明する慰謝料との問題にも関係してくるからです。

では、症状が固定する(あるいは治療が終了する)とはどのようなときなのか、そして症状固定に納得がいかないときにはどのように対処すべきかを見ていきましょう。

傷害慰謝料と後遺障害慰謝料

そもそもなぜ、「治療が終了するまで」あるいは「症状が固定するまで」といった時期にこだわる必要があるのでしょうか。

それは、被害者が加害者に対して請求できる金額の具体的な中身が変わってくるからです。

「被害者から加害者に請求できる金銭の内訳」

※死亡事故は除きます。

まず、共通事項として治療費や修理費などの実費を請求することができます。

上記に加え、事故により傷害を負った場合は、その精神的・肉体的な慰謝料として、

  • ・通院日数に応じた傷害慰謝料
  • ・通院などで仕事を休まざるをえなかった場合の休業損害

を請求することができます。

また事故により障害が残った場合には、上記に加えて、

  • ・認定された等級に応じた慰謝料
  • ・後遺障害により労働能力が低下した場合には、その分を逸失利益(いっしつりえき)

として請求することができます。

このように交通事故の被害に遭い、負傷はしたものの完治をした場合には傷害事故とし請求することが可能です。

後遺障害(つまり完治せず、一生何らかの障害が残った場合)が残ってしまった場合は、後遺障害事故としての慰謝料や逸失利益を請求することができるという大きな違いがあります。

したがって、傷害事故として処理すべきなのか、あるいは後遺障害事故として処理すべきなのかを判断するためには、適切な治療を受け、病院・医師の判断が必要なのです。

交通事故における症状固定とは?

では、交通事故における症状固定とは、具体的にいつのことを指すのでしょうか。

交通事故においては、症状に応じて介護を必要とする要介護1級・2級と、介護を要しない場合の1級から14級(※数値が低いほど重い)に分類されます。

後遺障害等級(※一部のみ)

等級(要・介護)内容
第1級・神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
・胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
第2級・神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
・胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
等級(介護を必要としない)>内容
第1級・両眼が失明したもの
・咀嚼及び言語の機能を廃したもの
・両上肢をひじ関節以上で失ったもの
・両上肢の用を全廃したもの
・両下肢をひざ関節以上で失ったもの
・両下肢の用を全廃したもの
第2級・一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの
・両眼の視力が0.02以下になったもの
・両上肢を手関節以上で失ったもの・両下肢を足関節以上で失ったもの
第3級・一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの
・咀嚼(そしゃく)または言語の機能を廃したもの・神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
・胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
・両手の手指の全部を失ったもの
(第4級から第11級は略)
第12級・一眼の眼球に著しい調節機能障害または運動障害を残すもの
・一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
・7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
・一耳の耳殻の大部分を欠損したもの
・鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨または骨盤骨に著しい変形を残すもの
・一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
・一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
・長管骨に変形を残すもの
・一手の小指を失ったもの
・一手の人指し指、中指または薬指の用を廃したもの
・一足の第二の足指を失ったもの、第二の足指を含み二の足指を失ったものまたは第三の足指以下の三の足指を失ったもの
・一足の第一の足指または他の四の足指の用を廃したもの
・局部に頑固な神経症状を残すもの
・外貌に醜状を残すもの
第13級・一眼の視力が0.6以下になったもの
・正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
・一眼に半盲症、視野狭窄または視野変状を残すもの
・両眼のまぶたの一部に欠損を残しまたはまつげはげを残すもの
・5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
・一手の小指の用を廃したもの
・一手の親指の指骨の一部を失ったもの
・一下肢を1センチメートル以上短縮したもの
・一足の第三の足指以下の一または二の足指を失ったもの
・一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したものまたは第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの
胸腹部臓器の機能に障害を残すもの
第14級一眼のまぶたの一部に欠損を残しまたはまつげはげを残すもの
3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
一耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの
下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの
一手の親指以外の手指の指骨の一部を失ったもの
一手の親指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの
一足の第三の足指以下の一または二の足指の用を廃したもの
局部に神経症状を残すもの

症状が固定したとは?

交通事故の被害に遭い、これらの症状が残った場合には、後遺障害が残ったとして後遺障害事故として処理することとされます。

重要なのは、後遺傷害が残ったときというのは、「さらに治療を続けてもこれ以上改善されない」と医師が判断したときのことを指し、そのときのことを「症状が固定した」といいます。

たとえば、交通事故の治療を受けている被害者の片方の視力が0.6になったからといって、直ちに13級になったとはいえません。

適切な治療を受け、もう視力が0.6から回復しないと判断したとき(あるいは0.6から悪化することはない)と医師が判断したときが症状が固定したとされる時期になり、この時点が後遺障害の等級が13級になったと判断されます。

※正確には等級の判定は、病院や医者ではなく、病院から提出された診断書や医療記録を元に、調査会社という第三者機関が判断します。

症状が固定したことで勘違いしがちな事

注意しなければならないのは、症状が固定したと判断するのは保険会社でもなく、被害者あるいは加害者でもなく、病院・医師の判断が最重要になります。

よくあるケースとして相手方保険会社から、「もうあなたの症状は固定しています」と言われることもあります。

保険会社は言わば交通事故処理のプロですから、今までの経験上から被害者の症状が固定したと予測しているにすぎず(一般的なケースとして、症状にもよりますが症状が固定するのは6ヶ月前後と言われています)、何ら根拠がある訳でもありません。

たとえ、相手方保険会社から「症状が固定したはずだ」との提案を受けたとしても、臆することはなく、適切な治療に専念しましょう。

また、通院の煩わしさや仕事の忙しさから、通院治療を怠りがちになるかもしれませんが、通院日数に空白があったり、適切な治療を受けたりしていないと、残った障害が交通事故によるものか疑われ、また、正確な症状固定日がわからず、正確な後遺障害の等級が認定されない場合もあります。

その他、整形外科ではなく、整骨院で施術を受けている方も多くいらっしゃいます。

整骨院の施術費用ももちろん、加害者に請求することができます。

しかし、後遺障害の場合には、症状が固定したかを判断するのは、整骨院に従事する柔道整復師ではなく、整形外科などの医師になります。

整骨院の施術は、症状の緩和には役立ちますが、整形外科と整骨院を混同しないように注意しましょう。

※保険会社から「症状が固定したのでは?」との提案を受けた場合や、その提案に応じてしまった場合は、保険会社から病院に対して支払われている治療費は打ち切りとなります。

もちろん、上述の通り、症状が固定したかの判断は保険会社ではなく医者になりますので、治療は継続できます。

しかし、以後は、自費で治療を受けることになります。

そのような場合は自身が加入している健康保険での治療を選択することにより、自己負担は最低限(1割から3割)で済みます。

健康保険を用いた治療に切り替える場合には、自身が加入する健康保険組合(自身の健康保険証を確認してください)に「第三者行為による傷病届」という手続きが必要になります。

症状が固定するとどうなるの?

では、具体的に症状が固定するとどうなるのでしょうか。

まず、繰り返しになりますが、症状が固定したというのは、医師が「これ以上治療を続けても改善の見込みがない」と判断されたときになります。

したがって、(少なくとも交通事故の示談交渉においては)症状固定日以降の治療は無意味と判断され、それ以降の治療費を相手方に請求することができなくなります(腎臓破裂により継続して人工透析が必要な場合など例外もあります)。

症状が固定したからといって、治療を受けられるのではなく、治療費が原則自己負担となること、示談交渉において症状固定日の症状を元に障害等級が認定されるにすぎないことに注意してください。

また、症状が固定するとそれ以降は、たとえ通院治療のために会社を休んだとしても休業損害は認められなくなります。

その代わりに等級に応じて、労働能力が損失した分を逸失利益(つまり本来事故に遭わなければ得られたであろう分の費用)として請求することになります。

【逸失利益の計算例】
事故前の年間収入×労働能力喪失率(※)×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

<労働能力喪失率>

等級喪失率(%)
1級100
2級100
3級100
4級92
5級79
6級67
7級56
8級45
9級35
10級27
11級20
12級14
13級9
14級5

症状固定に納得が行かない場合~重要なチェックポイント3つ

では、自身が診断された症状固定、つまり病院から「もうこれ以上治療しても改善の見込みはない」と判断された場合に納得が行かない場合はどのようにしたらよいでしょうか。

その場合は、下記3ポイントをチェックしてみてください。

自己の症状を適切に伝えているか?

まずは、自己の症状を適切に担当医師に伝わっているか確認しましょう。

特に「●●が痛い」といった他覚症状では気づかない症状の場合には、きちんと自己の症状を伝えることにより、別の治療方法が見つかったり、新たな負傷箇所が見つかったりする場合もあります。

適切な病院(診療科目)で診断を受けているか?

交通事故の治療は、一つの診療科目で治療を受けるとは限りません。

たとえば、打撲・骨折、および脳に傷を負った場合には、整形外科に加え、脳神経外科などの治療も必要になります。

総合病院で治療を受けている場合には、あまり診療科目の間違いということはありませんが、個人院など、小さな規模の病院で治療を受けている場合には、適切な診療科目で受けておらず、さらには他医院への紹介すらなされていないこともあります。

ご自身の症状と治療を受けている科目が適切か確認してみましょう。

病院を変えてみるのも方法の一つ

上記2点を試してみても、どうしても納得が行かない場合には、思い切って病院を変えてみたり相談したりする(セカンド・オピニオンといいます)のも方法の一つです。

できれば、事故直後から治療を続けてきた病院で治療を行うのが、これまでの治療経過も分かり、ベストなのかもしれませんが、病院を変えることにより治療がスムーズに行った、後遺障害が残ったと診断されたのが、完治したケースも少なくありません。

まとめ

示談交渉を本格的に開始するのは、病院あるいは医師から「完治した」あるいは「症状が固定した」と判断されてからにしましょう。

症状が固定したと判断された場合、後遺障害が残ったとされ、それ以後の治療費などの実費や休業損害は請求することができず、等級に応じた後遺障害慰謝料および逸失利益を請求することとなります。

正確な症状固定の診断および正確な後遺障害等級の判断のためには、相手方保険会社の言うことを鵜呑みにせず、適切な治療を受けましょう。

病院での診断内容に納得が行かない場合は、適切な症状を伝えているか・適切な病院(診療科目)で治療を受けているかを再確認し、場合によっては他の病院に相談してみるのも方法の一つでしょう。

保険会社とのやり取りを私たちが代行し、最後まで妥協することなく示談交渉していきます。事故直後にできる対策もありますのでお早めにお電話ください。 保険会社とのやり取りを私たちが代行し、最後まで妥協することなく示談交渉していきます。事故直後にできる対策もありますのでお早めにお電話ください。

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