東京弁護士会所属。
交通事故の被害者にとって、弁護士は、妥当な慰謝料をもらうための強い味方になります。
特に、加害者の保険会社との示談交渉がうまくいかず悩まれていたり、後遺症が残ってしまい後遺障害慰謝料請求を考えていたりする方は、 ぜひ検討してみてください。
目次
交通事故により負傷し、治療を続けたが、交通事故前の状況まで治らず、病院や医師から「これ以上治療を続けても治らない」と判断されるときがあります。
このときのことを「症状が固定した」といい、症状が固定したときの状況に応じて要介護1級・2級および1級から14級に分類された後遺障害の等級に認定され、それぞれの等級に応じた後遺障害慰謝料および逸失利益を請求していくこととなります。
ところが、後遺障害の等級認定は、相手方保険会社を経由して提出した調査会社という第三者機関が認定しますが、認定された等級に納得がいかない場合があります。
その場合における対抗策についてみていきましょう。
まず、はじめに後遺障害認定までの流れについてみていきましょう。
1 病院・医師から症状が固定したとされるまで治療を継続する。
※症状が固定したと診断されても継続して治療を受けることは可能です。
しかし、症状固定日以降の治療費は、原則、自己負担となります。
2 担当医師による症状固定したときの症状を基に診断書を作成してもらう。
※診断書を作成するのは、あくまで医師です。
整骨院で治療を受けている方は柔道整復師による施術をうけていますが、整骨院では正式な診断書は作成できません(後遺障害認定の判断材料にはなります)。
3 診断書などを相手方保険会社へ提出。
4 調査会社が出された資料を元に障害等級を認定します。
※認定まで2から3か月かかります。
※1の治療期間中、治療期間に空白があったり、適切な治療を受けていないと判断されたりした場合は、残った症状が交通事故の負傷によるものか関係性を問われ、的確な等級が認定されない場合があります。
正確な等級認定のためにも、病院にはきちんと通いましょう。
5 判断された等級に納得がいかない場合は、後述の異議申立てを検討することとなります。
では、認定された等級に納得がいかない場合、なぜ異議申立てを行わなければならないのでしょうか。
それは、等級によって、後遺障害慰謝料および逸失利益が大きく異なるからです。
それは、たとえ、被害者にとって最も不利とされる自賠責基準でも同じで、等級によって被害者がもらえる金額が大きく異なります。
等級 | 自賠責基準 | 旧任意保険基準 | 弁護士 | 労働能力喪失率(※) |
---|---|---|---|---|
要介護1級 | 1,600万円 (1,800万円) | 100/100 | ||
要介護2級 | 1,163万円 (1,333万円) | 100/100 | ||
第1級 | 1,100万円 (1,300万円) | 1,850万円 | 2,800万円 | 100/100 |
第2級 | 958万円 (1,128万円) | 1,450万円 | 2,370万円 | 100/100 |
第3級 | 829万円 (973万円) | 1,150万円 | 1,990万円 | 100/100 |
第4級 | 712万円 | 850万円 | 1,670万円 | 92/100 |
第5級 | 599万円 | 750万円 | 1,400万円 | 79/100 |
第6級 | 498万円 | 650万円 | 1,180万円 | 67/100 |
第7級 | 409万円 | 550万円 | 1,000万円 | 56/100 |
第8級 | 324万円 | 450万円 | 830万円 | 45/100 |
第9級 | 245万円 | 350万円 | 690万円 | 35/100 |
第10級 | 187万円 | 250万円 | 550万円 | 27/100 |
第11級 | 135万円 | 200万円 | 420万円 | 20/100 |
第12級 | 93万円 | 150万円 | 290万円 | 14/100 |
第13級 | 57万円 | 65万円 | 180万円 | 9/100 |
第14級 | 32万円 | 45万円 | 110万円 | 5/100 |
いかがでしたか?自賠責基準でも、第14級と認定されるか第12級と認定されるかにより、慰謝料に60万円位の差が発生することがお分かりいただけたと思います。
(弁護士基準ともなると、倍以上の差額になります)。
また、後遺障害の場合は、逸失利益といって、本来事故に遭わなければ得られたであろう収入を請求することができますが、その計算式は
となります。
つまり、逸失利益の計算においても、等級によって労働能力喪失率の割合が大きく異なるため、正しい等級の認定を受けることは非常に大事です。
通常より低い等級しか認定されないと、今後の生活の補償が充分にされなくなる可能性があります。
したがって、保険会社に書類を提出する段階ではなく、病院へ通っているときから、適切な治療を受け、医師には自分の症状を正しく伝えることは非常に大事になるのです。
では、調査会社が認定した等級に納得が行かない場合の方法についてみていきましょう。
この方法は異議申し立てとされ、3種類あります。
後遺障害等級認定が申請した障害等級に該当しない「非該当」に終わり、その結果に納得できない場合は自賠責保険に対して「異議申し立て」を行うことができます。
初回と同様、申し立てのやり方には「事前申請」と「被害者請求」の2通りがあります。
異議申し立てに必要な書類は以下の通りです。
①異議申立書
②異議申立書の理由を証明できるような診断書・画像等の検査結果
すでに1度「非該当」となっているわけですから、それを覆すような事故との因果関係をしっかり説明できる検査結果が求められることは言うまでもありません。そこがクリアできていないと、初回と同じ結果になってしまいます。
また異議申し立てによる審査は、初回よりもさらに専門的なものになります。これを踏まえると、異議申し立てを成功させるには、交通事故に関する知識と経験が豊富で、どういう資料を用意すれば審査官を納得させられるかということについて詳しい弁護士に頼むのが現実的なのではないかと思います。
上記1以外の保険会社に対して以外にも、自賠責保険・共済紛争処理機構という中立な機関に、所定の申請書(インターネットでダウンロードできます)を提出し、適切な等級を認定される手続きです。
ここでは、内閣総理大臣および国土交通省の認可を受けた医師などの専門家が審査を行います。
1と同様、費用もかからず、また原則、書面審査のみとなります。
1との違いは、一度きりしか申請ができないことです。
1や2でも納得が行かない場合は、裁判を提起し、裁判所に正確な等級を認定してもらいます。
裁判所では裁判所に提出された資料などから、裁判官が独自の判断で等級認定をされることができるとされております(つまり可能性としては、調査会社が下した等級より低い等級として判断される可能性もあります)。
しかし、実際には、必ずしも調査会社が認定した等級が覆る可能性は決して高いとはいえず、1・2と違い費用もかかります。
また、裁判の結果に納得がいかない場合は、簡易裁判所で裁判を起こした場合は地方裁判所→高等裁判所、地方裁判所で裁判を起こした場合は高等裁判所→最高裁判所へと控訴をすることができますが、多大な費用と時間を要します。
では、最もオーソドックスな1の保険会社に対する異議申し立ての具体的な記載方法についてみていきましょう。
まずは保険会社に提出した資料に不足がないかを確認します。
チェックポイントとしては、
※たとえば、交通事故の怪我で視力や聴力が悪化する場合もあります。
その場合、原則、視力ならば眼科、聴力ならば耳鼻科で治療を受けることになりますが、頭にも衝撃があった場合、場合によっては脳外科などの診断を受けた方がいいこともありますし、精神的に視力や聴力が低下している可能性も否定できませんので、心療内科により、原因が判明することもあります。
などをチェックし、治療を受けた病院と相談する、あるいは上記の通り、他の診療科目を受診することも否定できないことから総合病院や、交通事故に精通した病院に相談するのも方法の一つでしょう。
異議申し立て書には、これを書かなければいけないという決まりはありませんが、おおむね下記のポイントを中心に、わかりやすく記載すべきでしょう。
※交通事故により両眼を負傷し、視力が0.6以下になった(9級に該当)が、交通事故が原因ではないと判断され、「後遺障害なし」との判断に対し、異議を申し立てるケース
調査会社が認定した後遺障害の等級に納得がいかない場合は、今後の生活の補償のために正確な等級を認定するためにも異議申し立てを検討しましょう。
異議申し立てには3つの種類がありますが、一度下した結論を覆すためには、より精密な資料が必要となります。
正確な後遺障害を認定してもらうためには、異議申し立てを行う時点で慌てるのではなく、交通事故直後から、きちんと病院に通い、適切な治療を受けることがポイントです。