東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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弁護士依頼の際における「費用倒れ」とは、得られた賠償金よりも弁護士費用の方が高くなってしまう状態のことを指します。
まずは費用倒れの具体例を確認してみましょう。
【被害者が受け取れる賠償金額】
弁護士を入れない場合:100万円
弁護士を入れた場合:150万円−60万円=90万円
弁護士を入れることによって賠償金の増額に成功しても、弁護士費用まで考えると依頼者にとってプラスにならないケースもあります。
費用倒れになると弁護士を入れるメリットが少なくなるので、依頼する前に見積もりを出してもらうことがおすすめです。
示談交渉の場合、弁護士費用は加害者側に請求しないのが一般的です。
弁護士を入れれば賠償金を増額できる可能性が高いですが、基本的に示談交渉は被害者自身でおこなうことができます。つまり、弁護士に依頼するかどうかは被害者自身の意思に委ねられているので、弁護士費用は交通事故による損害としては認められないことになるのです。
ただし、裁判にまで発展した場合には弁護士を入れる必要性が高いと判断される可能性が高いです。この場合には、簡易な事件を除き、裁判で認められた賠償額の10%程度を弁護士費用として加害者側に請求できる場合が多いです。
弁護士費用の相場は次のとおりです。
費用体系 | 項目 | 概要・相場 |
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着手金・報酬金方式 | 相談料 |
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着手金 |
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成功報酬 |
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日当 |
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実費 |
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時間報酬方式 (タイムチャージ) | 依頼の処理にかかった時間に応じて費用を計算する方式 |
また、「裁判に発展した場合」や「後遺障害等級の異議申し立て」をした場合には、別途費用がかかるケースもあります。
依頼当初は費用倒れにならない計算だったとしても、追加費用がかかったり事務処理に時間がかかると費用倒れになってしまう恐れもないとはいえません。
依頼時に見積もりを出してもらい、追加で費用がかかるケースを必ず確認しておくようにしましょう。
交通事故で弁護士に依頼した場合に費用倒れになりやすいケースは、以下のとおりです。
なお、これらのケースに該当するからといっても全てのケースで必ず費用倒れになるわけではありません。
交通事故では弁護士を入れることで高額な示談金を獲得できるケースもあるので、費用倒れになるかどうかは弁護士に相談してみることをおすすめします。
被害者もしくはご家族が弁護士費用特約に加入していない場合、弁護士に依頼すると費用倒れになる可能性があります。
弁護士費用特約とは、保険会社が弁護士費用を負担してくれるサービスです。特約によって負担してくれる上限金額は異なりますが、法律相談料は10万円まで、依頼後にかかる弁護士費用は300万円まで負担してくれるケースが多いです。
弁護士費用特約を使えばリスクなく無料で弁護士に依頼できるので、費用倒れになる心配はなくなります。死亡事故や重度の後遺障害を負った場合には成功報酬が高額になる場合もありますが、それでも被害者自身が交渉するよりも数百万円単位で賠償金を増額できるメリットの方が大きいです。
一方、弁護士費用特約を使えない場合、弁護士費用を被害者自身で支払う必要があります。そのため、獲得した賠償金が低額だった場合には、費用倒れになってしまう恐れがあるのです。
弁護士費用特約は、自動車保険だけでなく生命保険や火災保険についている可能性もあるので、弁護士に依頼する前に約款や保険証券等を確認してみましょう。
加害者が任意保険に加入していない場合、支払い能力がなく賠償金を払ってもらえない可能性があります。
加害者が加入する自賠責保険(強制加入)から支払いをしてもらえますが、上限金額が決まっているため十分な補償は期待できないでしょう。
傷害による損害 | 120万円まで |
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後遺障害による損害 | 75万~4,000万円まで |
死亡による損害 | 3,000万円まで |
加害者が賠償金を任意に支払ってくれない場合、自賠責保険の補償を超える部分については補償を受けられません。
加害者の財産を差し押さえることも可能ですが、そもそも差し押さえる財産がない場合には費用倒れになる恐れもあるでしょう。
運転者がけがをしていない物損事故の場合、弁護士に依頼すると費用倒れになる恐れがあります。
物損事故の場合、賠償金の中でも高額になりやすい慰謝料や逸失利益などを請求できません。車の修理費や公共物の修理費については補償を受けられるものの、過失割合等に争いがない場合には弁護士を入れてもそこまでの増額が見込めません。
弁護士費用特約を使えない場合には、費用倒れになるかどうかを弁護士に確認した方が良いでしょう。
小規模な人身事故で通院するようなけがをしていない場合には、得られる示談金も低額になり費用倒れになる恐れがあります。
入院がなく通院期間が1カ月にも満たない場合には、弁護士を入れても慰謝料の大幅な増額は見込めません。多くの場合数万円程度の増額になるので、弁護士費用でかかる金額を考えると経済的なメリットは得られにくいでしょう。
また、入通院慰謝料は入院・通院したことに対する精神的苦痛を賠償するために支払われるお金です。そのため、けがをしたものの通院せずに自宅療養した場合には入通院慰謝料は請求できないことに注意が必要です。
被害者側の過失割合が大きい場合、弁護士に依頼すると費用倒れになる可能性があります。
過失割合とは、事故の当事者間における責任の割合です。被害者:加害者=2:8であれば被害者にも事故の責任が2割認められるということになります。
被害者にも事故の過失が認められる場合、被害者の過失割合に応じて賠償金額が減額されます。たとえば、賠償金額が100万円で被害者にも過失が2割認められる場合には、実際に得られる賠償金は80万円となります。
依頼する法律事務所の費用体系によっては、実際に得られる賠償金額ではなく過失割合によって減額される前の金額を基準に成功報酬が算出される場合があります。そのため、被害者の過失が大きい場合には、実際に得られる賠償金が低いにもかかわらず、高額な弁護士費用を支払うことになり費用倒れになる可能性があるのです。
損害状況を証明できる証拠が不足している場合、弁護士に依頼しても示談金の増額は見込めないため、費用倒れになる確率が高いでしょう。
交通事故の証拠には警察の実況見分調書や交通事故証明書、診断書や入院・通院の記録などがあり、事故状況や被害の程度を客観的に証明できます。
しかし、交通事故を警察に通報しなかったときや、病院の治療を受けなかったときは証拠不足になるため、被害者に落ち度がなくても過失がないことを証明できなかったり、被害者に損害が発生したことを証明できない可能性があります。
交通事故の証拠は時間が経つほど入手が難しくなるので、証拠収集に自分で対応できないときは、弁護士に依頼しておきましょう。
弁護士への依頼で費用倒れにならないようにするには、次の方法を検討する必要があります。
弁護士への依頼で費用倒れにならないようにするには、弁護士に依頼する前に見積もりを出してもらうことが重要です。
経験豊富な弁護士なら、獲得可能な賠償金額をおおまかに推測できます。弁護士費用と比較して賠償金が高額になるケースであれば、弁護士に依頼しても費用倒れにはならないでしょう。
ただし、いくら弁護士でも交通事故の詳細な状況がわからなければ獲得できる賠償金額を推測できません。弁護士に相談する際には、ドライブレコーダーの映像や事故現場・車両の写真など可能な限りの証拠を見せるようにしてください。
司法書士や行政書士なら弁護士より依頼費用が低いので、依頼しても費用倒れにならない可能性があります。
ただし、司法書士や行政書士が対応できる範囲が限られているため、満足いく結果を得られない可能性が高いです。たとえば、司法書士は賠償金が140万円を超える場合は示談交渉をおこなえませんし、行政書士の場合そもそも示談交渉自体をおこなうことができません。
司法書士や行政書士への依頼は、賠償金が少額なケースや後遺障害等級認定の申請書の作成だけ頼みたい場合などに限られるでしょう。
完全成功報酬型の費用体系である法律事務所に依頼すれば、弁護士費用を抑えることができ費用倒れを防げる可能性があります。
弁護士費用はそれぞれの事務所が自由に設定できます。そのため、着手金が無料で獲得できた賠償金から成功報酬を差し引く完全成功報酬型の費用体系を設定している法律事務所も存在します。
事務所によっては、賠償金の増額が見込めない場合にはそもそも依頼を受けないケースもあります。ただし、こうした事務所では依頼者が費用倒れにならないよう配慮してもらえるので、成功報酬の減額にも柔軟に応じてくれる可能性があるでしょう。
どこまで対応してくれるかは事務所次第なので、相談時に費用についても確認してみましょう。
前述したように、弁護士費用特約を使えば多くの場合で自己負担なく弁護士に依頼できます。被害者自身が加入している自動車保険だけでなく、生命保険や火災保険、ご家族が加入している保険に付帯している特約も使える場合があります。
たとえば、被害者の家族が弁護士費用特約に加入している場合、以下の親族も特約の対象になるケースがあります。
具体的に誰が特約を利用できるかは契約内容によっても異なります。被害者自身に重大な過失があるときなど一定の場合には特約を使えないこともあるため、利用を検討している場合にはあらかじめ保険会社に利用の可否を確認しておくのが良いでしょう。
交通事故で被害にあったら、賠償金を増額するためにも弁護士に対応を依頼することが重要です。
ただし、弁護士費用特約を使えない場合や物損事故など賠償金が低額になる場合には、費用倒れになり弁護士に依頼する経済的なメリットがなくなる恐れがあります。
費用倒れを回避するには、依頼前に弁護士に見積もりを出してもらうことが重要です。交通事故の経験が豊富な弁護士なら、推測する賠償金額をより正確に算出できます。
弁護士事務所によって費用体系は異なりますし、増額できる賠償金額を推測するには専門的な判断が必要です。
自己判断で費用倒れになると決めつけると賠償金増額のチャンスを逃してしまうので、弁護士への依頼を検討しているならまずは弁護士に相談することをおすすめします。