東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。
Contents
まずは、会社を解散し、清算の手続きを行う流れを簡単に見ていきましょう。
株主総会で会社の解散決議を行います。
このときの決議は、特別決議が必要となります。
解散決議と合わせて、清算人の選任についても決議します。
解散した日から2週間以内に、解散登記、清算人選任登記を行います。
官報へ解散公告を掲載します。
官報への掲載期間は2カ月を超えるものでなければなりませんので、ご注意ください。
解散した日から2カ月以内に、解散事業年度の確定申告を税務署に行います。
また、解散した旨を異動届出書に記載し、税務署、都道府県税事務所、市区町村役場へ提出します。
解散の届出、確定申告を提出した後は、会社の清算を行って、法人を消滅させます。
会社の資産を現金化し、債務をすべて弁済します。
債務の弁済が完了して残った財産がある場合は、残余財産として確定させて株主に分配します。
そして、株主総会で決算報告書の承認を得ると、清算は結了となります。
清算が結了したら、法務局へ清算結了登記を行います。
清算が完了したら、残余財産確定事業年度の確定申告を税務署へ行います。
また、清算結了した旨を記載した異動届出書を税務署、都道府県税事務所、市区町村役場へ提出します。
ここまでの手続きがすべて完了すると、法人は完全に消滅となります。
会社清算は、複雑な手続きがあり、会社の規模や資産、負債の状況によって、清算期間が複数年に及ぶ場合もあります。
そのような清算手続きを進める中で、想定しない事態に陥る可能性もあります。
その想定しない事態のひとつが、税金の滞納問題です。
ここでは、会社の解散・清算と税金の滞納問題について解説していきましょう。
会社の負債を完済し残余財産が確定したら、株主に分配を行って清算結了となります。
そして、法務局に清算結了の登記を行いますので、それで清算はすべて完了したと考える方も多いと思いますが、税法上ではすべて完了したということにはなりません。
税法上は、解散登記や清算結了の登記が行われていても、各事業年度の所得に対する法人税を納める義務を履行するまでは、その法人は存続しているとみなされます。
そのため、登記を完了していても、税金を納めるまでは法人が存続しますので、税金の滞納がある場合、その法人は消滅していないということになります。
税法上、税金の滞納がある場合、その法人は存続しているということになりますが、実際は解散決議によって、すでに法人としての実態は消滅しているケースも多いでしょう。
そのように法人の実態がなくなっていても、税金の滞納がある場合は納税義務は消滅しません。
では、滞納している税金はいったい誰が支払う義務を負うのでしょうか。
法人が解散し、本来の納税義務者(法人)から税金を徴収しきれない場合は、第二次的に別の者に納税義務を負わせ、残額を徴収します。
第二次納税義務とは、本来の納税義務者が税金を滞納した場合、その納税義務者の財産について滞納処分を執行しても徴収すべき額に不足すると認められるときに限って、納税義務者と関係のある者に第二次的に納税義務を負わせる制度です。
残余財産の分配後、修正申告等によって追徴税額が生じた場合でも、会社はすべての財産を整理し終わっているので、税金を納付することはできません。
この場合、第二次納税義務は、清算人と残余財産の分配を受けた者が負うことになります。
会社の債務をすべて弁済し、残った財産の分配を受けた株主を「残余財産の分配を受けた者」といいます。
この財産の分配は、会社の解散後に行われたものに限られません。
会社が解散することを前提として、解散前に財産の分配が行われた場合も含まれますので、注意が必要です。
会社解散時、残余財産の分配後に税金の滞納がある場合、第二次納税義務を「清算人」と「残余財産の分配を受けた者」が負うことになりますが、無限に責任を負うわけではありません。
それぞれが負う第二次納税義務の範囲は以下の通りとなります。
会社を解散、清算する際、思わぬ税金の追徴が発生してしまった場合や税金の計算ミス等によって滞納がある場合、第二次納税義務として清算人が税金を支払う必要があります。
また通常、清算人には代表取締役が選任されることも多いです。
会社を解散しなければならないような経営状態の場合、すでに代表取締役が自己資産を会社に投入しているケースも多く、第二次納税義務を果たせないこともあるのではないでしょうか。
そのような場合、一定の条件を満たすことが必要ですが、税金の支払いを延長してもらったり、税金を無くしてもらったりすることも可能です。
ここでは、税金の支払いについて検討できる方法を紹介します。
一定の要件に該当する必要がありますが、国に税金の納付期限を1年に延長してもらえる制度があります。
この制度は、「納税の猶予」と呼ばれ、1年の猶予期間内に納税するための資金を確保し、完納を目指します。
さらに、納税の猶予を受けられた場合は、滞納分の延滞税が全額または半額免除されます。
納税の猶予は、納税者には有利な制度ですが、以下の要件のいずれかを満たす必要があります。
納税猶予の要件
会社の解散・清算の場合、(2)の要件に該当しますので、納税の猶予を受けられることになります。
納税の猶予を受けるためには、「納税の猶予申請書」を税務署に提出します。
申請書には、税金の未納額、財産状況、今後の収支予想といった事項を記載し、状況によっては契約書などの書類を添付します。
このとき、一定の金額や猶予期間を超えて納税の猶予を求める場合は、担保が必要となりますのでご注意ください。
納税の猶予を申請しても、あくまでも納付期限の延長ですので、納税義務がなくなるわけではありません。
しかしながら、納付猶予期間が1年あっても、税金を支払うお金を用意することができない場合もあります。
そのような場合、検討したいのは「滞納処分の執行停止」です。
滞納処分というのは、税金を強制徴収することです。
納税者の財産を差し押さえ、現金化し滞納している税金に充てます。
滞納処分の執行停止とは、このような税金の強制徴収を停止することを意味します。
また、滞納処分の停止状態が3年間続いた場合、滞納している税金は消滅し、支払いが免除されます。
この滞納処分の執行停止が適用されるのは、法人だけではなく、第二次納税義務者も含まれますので、会社の解散・清算時に税金の滞納が発生した場合、とても有利な方法となります。
この滞納処分の執行停止は、以下のいずれかに該当する必要がありますが、会社の解散・清算時に滞納した税金の支払い義務を負うような場合は、要件に当てはまる場合も多いです。
滞納処分の執行停止の要件
ただし、滞納処分の執行停止は、納税の猶予と違い申請することができません。
国や自治体が、独自で滞納処分の執行停止が必要かを判断し、職権で停止します。
申請することができないとはいえ、国や自治体が滞納処分の執行停止をしてくれることを待っていても、実行される可能性は低いです。
自ら相談に向かう姿勢が必要でしょう。
国や自治体の判断ですから、必ずしも執行停止になるかはわかりませんが、自ら税務署や自治体の担当者へ何度も相談することが求められます。
滞納処分の執行停止を受けるためには、専門的な知識も必要となりますので、専門家である税理士に相談するようにしましょう。
会社清算は、手続き自体も複雑ですが、発生する税務を把握していないと、税金の滞納が発生する可能性があります。
会社清算時に税金の滞納が発生した場合、納税義務者である会社は消滅していますので、清算人と残余財産の分配を受けた者が第二次納税義務を負うことになります。
滞納した税金については、納税の猶予や滞納処分の執行停止を求めることも可能ですが、専門的な知識と経験が必要となりますので、税理士等の専門家に相談しましょう。