東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。
新型コロナウイルスの影響により、会社の経営状況悪化が懸念されています。
仮にコロナ禍が終息したとしても、即座にV字回復するほどの収益をすべての会社が上げることは難しいのではないでしょうか。
取引先が倒産した影響を受けたり、営業を自粛していた期間のマイナス補填などを行ったりしなければいけないからです。
経営状況や今後の事業を考えて「廃業」という選択肢を検討している経営者もいることでしょう。
廃業を検討している経営者に、廃業の意味や手続きなどの基礎知識を解説します。
会社の廃業を検討する際の手引きとして役立ててください。
Contents
会社の廃業はよく破産や倒産と混同されます。
会社を廃業するか否か経営者が正しい判断を下すためにも、「廃業とは何か」「破産などの他手続きと廃業の違い」を知っておきましょう。
廃業とは「経営者が自分の判断で会社を畳むこと」をいいます。
債務の返済にも困っていない。
今後も事業を継続できる状況だった。
今後も会社をやっていける状況において「会社を畳もうか」と経営者判断で自主的に終わらせることを廃業といいます。
経営者にとって廃業は破産や倒産と同じくマイナスのイメージがあるかもしれません。
しかし「自主的に会社をやめること。
会社を経営者判断で畳むこと」なので、廃業は必ずしもマイナスというわけではないのです。
高齢で会社の経営が心身共に辛くなってきた。
そろそろ年金をもらう年代なので、老後を楽しむために経営者が仕事と縁切りする。
会社の継ぎ手がいない。
このようなときにもよく廃業が使われています。
倒産とは「財産と負債を整理、清算する法的な手続き」です。
裁判所に破産を申立て、負債や資産を計算した上で清算を進めることになります。
破産という言葉は一般的にこの裁判所での手続きを指しますが、明確な定義があるわけではないため、「お金がなくて会社が立ち行かなくなったとき」などにも破産という言葉が使われることがあるのです。
そのため、倒産と同義で使われたり、混同されて使われたりすることがあります。
破産は裁判所での法的手続きで債務や資産の清算を進めることですが、廃業は必ずしも裁判所を通す必要はありません。
裁判所を通すかどうかという点に違いがあります。
また、廃業は会社継続が可能な状況でも任意で会社を畳みますが、破産の場合はそもそも会社のマイナスが多く会社自体が立ち行かない状況です。
任意で会社を畳むか、資産状況が悪く裁判所を通して状況を解決するしかないかという点に違いがあります。
なお、破産は会社だけでなく個人用の手続きもあります。
個人の債務整理や自己破産などにも破産という言葉を使うのです。
破産は会社にだけ使う言葉ではありません。
倒産とは「支払不能などにより会社の継続ができなくなることによって、会社を終わらせること」です。
破産は会社の資金がないため、債務の返済もできません。
従業員に支払う給料すら苦慮している状況です。
会社の事業を継続する資力が尽きている状態になります。
会社が事業を継続するためには資金が必要です。
しかしその会社の資金が返済すらできない状況まで追い詰められているわけですから、「事業を継続したい」と経営者が強く願っていたとしても、事業継続はできないわけです。
廃業は経営者が自主的に会社を畳むことになります。
対して倒産は、会社を続けることができず畳まざるを得ないときの手続きです。
破産や倒産以外にも廃業と勘違いされる言葉があります。
「経営破綻」や「休業」です。
経営破綻とは、経営が難しく破綻している状況を指します。
倒産と似た意味で使われますが、経営状況が悪く破綻しているが倒産まで行っていない段階でも使われる言葉です。
廃業の場合は必ずしも経営状況が悪化しているとは限りませんから、廃業=経営破綻ではありません。
廃業と休業も混同されることがあります。
休業は会社や事業を一時休むことです。
会社や事業自体を終わらせることではありません。
対して廃業は、会社や事業自体を廃する(やめる)ことを意味します。
休業と廃業は意味が違っているため、混同しないように注意しましょう。
会社の廃業は経営者だけでなく取引先や従業員にも影響を及ぼします。
取引先や従業員への影響も考えて計画的に行うことが重要です。
廃業はどのようなタイミングで検討し、計画的に進めたらいいのでしょうか。
廃業を検討するタイミングは次の5つです。
5つのタイミングを具体的に見てみましょう。
後継者が見つからず会社の継続が難しい。
子供たちや主な従業員に声をかけたが、会社を継ぐことに消極的だ。
周囲に継ぎ手がいないため、自分の代で会社を終わらせようと思っている。
これが会社廃業のタイミングのひとつです。
後継者が見つからないことが確定したいタイミングで「いつ頃会社を畳むか」を計画し、計画に合わせて廃業の手続きを進める流れになります。
債務が多く経営状況が思わしくない場合、廃業のひとつのタイミングになります。
資金繰りの悪化を改善できないと、会社を維持存続できず倒産に至るのです。
廃業で解決できる段階で廃業してしまい、倒産を避ける方法があります。
資金繰りが悪化して倒産する以外に方法がない段階では、廃業することは難しくなるのです。
債務の返済が苦しい。
資金繰りが苦しい。
しかし、現状はまだ会社を維持できている。
廃業する場合は、このタイミングで手続きを進める必要があります。
手続きが遅れると倒産せざるを得ない状況になるからです。
会社を廃業するためには手続きが必要です。
手続きのために準備していた資金を会社のために使ってしまう前が廃業のタイミングになります。
廃業の費用も使ってしまうと、廃業さえ難しくなってしまうため、廃業費用に手を出さなければなくなった段階で廃業の手続きに着手するのもひとつの方法です。
会社の維持のために生活資金に手を出す必要になった場合も、廃業を検討してはいかがでしょう。
生活資金に手を出さなければならない状況では、いずれにしろ会社の維持は難しくなります。
生活も難しくなることでしょう。
生活と会社の両方の維持が難しくなる前にタイミングを見て廃業するのです。
廃業のタイミングのひとつが人生の節目(ライフイベント)です。
たとえば、年金をもらうタイミングや配偶者の退職のタイミングなど、自分や家族の人生の節目に合わせて会社の廃業を計画し、手続きを進める方法があります。
社会情勢に合わせて会社の廃業を行う方法です。
たとえば、今回の新型コロナウイルスの感染拡大。
コロナにより多くの業種が影響を受けました。
新型コロナウイルス関連倒産は6月4日16時時点で全国218件。
うち、倒産の件数が最も多い業種はホテルや旅館などとなっています。
その次が飲食店で、他にアパレルや建設業界にも影響が出ていることがわかります。
新型コロナウイルスは、もともとの会社の資金繰りが問題ではありません。
経営者のライフイベントも無関係です。
社会的な状況になります。
新型コロナにより経営に打撃を受けた会社が影響の大きさや今後の経営回復の可能性などを総合的に考えた上で、これもひとつのタイミングであると廃業を検討する。
このように、社会の状況が廃業のタイミングになるのです。
廃業を決断したらどのような流れで廃業を進めればいいのでしょうか。
まず知っておきたいのは、廃業には大きくわけて2つのステップがあることです。
この2つのステップが終了することによってはじめて廃業が完結します。
解散とは「会社を廃業する」と決める手続きです。
清算とは、資産と債務の計算をして、プラスがあれば分配する手続きになります。
実際の手続きはもっと細かいので、廃業までの流れを解散と清算で2分割して見てみましょう。
会社の廃業を決めるステップです。
主な流れは以下のようになります。
経営者が廃業を決めたら、取引先や従業員などに廃業の連絡をします。
取引先や従業員にも廃業は大きな影響を及ぼす可能性があるため、実際の廃業の2、3カ月前など、時間に余裕を持って行う必要があるのです。
なお、廃業理由は特に伝える必要はありません。
次に行うのは株主総会の特別決議です。
廃業する際は株主総会の特別決議(発行済み株式数の過半数の株主が出席。
その上で3分の2以上が廃業に賛成)が必要だというルールがあるのです。
同時に、清算人を決める必要があります。
廃業のために資産や負債を整理が必要だからです。
特別決議と清算人の選任が終わったら、法務局で解散登記と清算人選任登記を行います。
会社が廃業のために清算に入ったことを登記上で確認できるようにするためです。
会社の資産と負債を清算するステップです。
流れは以下の通りになります。
清算人を決めて登記したら、今後は廃業のための清算に入ります。
税務署などの必要な窓口に届け出を行い、債権者に官報で公告を行う必要があります。
債権者が廃業を知らず、債権の回収ができなくなる可能性があるからです。
しかる後、決算書類の作成を行うのですが、ここで注意したいのが債務超過になります。
債務超過、要するにマイナスが多いと廃業できず、破産の手続きをする必要があるのです。
廃業の際には2回の確定申告が必要になります。
決算書類作成後の解散確定申告と、最後に行う清算決了申告です。
決算書類などの計算に従って残余財産の分配などを行い、株主総会で決算書類の承認を得る。
そして、清算が終わったことを法務局で登記し、税務署での手続き(清算確定申告など)を経れば廃業手続きは完了します。
会社の廃業までかかる時間は早くて2カ月ほどだといわれています。
ただし、廃業時の資産や負債の状況によってはさらに期間を要する可能性があります。
会社の廃業に必要な費用は、登記や官報公告、雇用保険や厚生年金などの手続きを合わせて10万円ほど。
この他に、弁護士や司法書士、税理士などに各種の手続きを依頼した場合は別途費用が必要になります。
また、関係の窓口などに足を運ぶための交通費なども必要になるため注意しましょう。
費用が気になる場合は、手続き着手前に専門家への確認を取っておくことをおすすめします。
費用が心もとない場合も、先に相談しておきましょう。
廃業手続きの際には各窓口に提出する書類を準備することになります。
必要になる書類は次のようなものです。
書類の提出先はそれぞれ異なる点に注意が必要です。
また、提出のタイミングも書類によって異なるため、手続きの進み具合に合わせて必要書類を準備しなければいけません。
必要書類については、弁護士や司法書士、税理士などの各専門家に依頼することで、準備してもらうことも可能です。
必要書類の準備が難しいと感じたら、専門家に相談してみるといいでしょう。
また、業種によっても必要書類が変わってくる場合や、追加で必要な場合があります。
たとえば建設業の場合は、建設業の廃業届も提出を要するのです。
地元の商工会などに加入している場合も注意が必要になります。
廃業するときは加入している商工会などに連絡し、退会などのしかるべき手続きをする必要があるのです。
商工会などのそれぞれの加入団体が指定する必要書類(退会届)などを準備する必要があります。
必要書類は官公庁などにまとめて提出するのではなく、手続きを管轄するそれぞれの窓口に提出する必要があります。
また、提出する際も、その窓口に提出するすべての書類を一気に提出するのではなく、手続きの進捗度や手続き内容に合わせて提出します。
手続きと必要書類、提出のタイミングなどについては、提出先や専門家に確認してください。
廃業とは「経営者が自主的に会社を畳むこと」です。
よく破産や倒産などと混同されますが、廃業については会社が継続できる状況でも任意で行える点が異なります。
人生の節目や後継者が見つからない場合、社会の状況など、会社の経営状況がマイナスではないケースでも廃業は行われるのです。
廃業は従業員や取引先にも影響を及ぼします。
廃業の際はまず「いつ廃業するか」の計画を立て、周囲への影響なども考慮した上で進めましょう。
必要書類や手続き、計画の立案で困ったことがあれば、税理士や弁護士、司法書士などの専門家を頼ることをおすすめします。