東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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法人が破産した場合、法人の財産を換価して、債権者に分配することとなります。
基本的に、すべての債権者は平等に取り扱われることとなりますが、中には債権を先に回収できる債権者もいます。
先取特権と呼ばれる権利を持つ債権者がいると、その債権者は他の債権者とは異なる取り扱いを受けることができます。
先取特権とはどのような権利かを確認した上で、先取特権の種類による違いについて解説していきます。
Contents
先取特権とは、債権者が何人もいる状況の中で、他の債権者より優先的に債務者から返済してもらうことのできる権利です。
先取特権は物的担保の1つであり、法律上の要件が満たされれば自動的に発生する権利であるとされます。
不動産を対象とする先取特権を有する場合、その権利を行使すると、不動産を競売にかけ、その代金から回収することができます。
また、一般の債権者が先取特権の目的物を競売にかけた場合にも、その売却額の中から優先的に返済してもらうことができます。
先取特権の例として、マンションの管理費を滞納している場合が挙げられます。
管理費を滞納している人に対して、そのマンションの管理組合が先取特権を有しており、優先的に管理費を回収できることとされています。
先取特権には、特別の先取特権と一般の先取特権があります。
この両者はそれぞれどのような効力を有しており、どのような違いがあるのかを確認していきましょう。
特別の先取特権とは、特定の財産から優先的に弁済を受けられる権利です。
特別の先取特権には、目的となる財産の種類によって、動産の先取特権と不動産の先取特権があります。
特別の先取特権は、一般の先取特権とは異なり、別除権になるとされています。
別除権とは、破産手続きを行わない場合でも、その権利を行使できることをいいます。
したがって、破産手続きによらずに特別の先取特権を行使して、その対象となる財産を競売にかけることができます。
競売にかけた後は、財産を売却した代金から債権の弁済に充当することができます。
なお、特別の先取特権を行使しても、債権の全額を回収できない場合があります。
この場合は、債権の金額に満たない部分の金額を、一般の債権者として弁済を受けられます。
一般の先取特権とは、特定の財産に対してではなく、債務者の財産に対して優先的に弁済を受けられる権利です。
一般の先取特権は、共益費用・雇用関係・葬式費用・日用品の供給を原因とした債権について認められます。
この4つの項目は、具体的には以下のような内容のことをいいます。
これらの取引は、債権者に優先されるべき理由があるため、他の債権者より先に弁済を受けられます。
また、葬式費用や日用品の供給については、債務者となった人が取引を途中で打ち切られないように配慮されています。
これらを除く取引では、一般の先取特権は生じません。
一般の先取特権は、特定の財産に対する優先弁済権ではありません。
そのため、特別の先取特権のように別除権にはならず、破産手続きを進める中でのみ行使することができます。
ただ、破産者の財産全体から、一般の債権者より優先的に弁済を受けられます。
先取特権にどのような効力があるのかを説明する時、以下の4つの効力をあげることができます。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
他の債権者より優先して債務の返済を受けられる効力です。
債権を回収することを「弁済」というため、優先弁済的効力があるといわれます。
担保となっているものが消失しても、その効力が形を変えて残ることをいいます。
たとえば、担保となっている家が火事で燃えた場合を考えてみます。
家がなくなると、担保となる財産がなくなってしまい、債権者としては手の施しようがない状態となってしまいます。
しかし、火災保険に加入していたために保険金が下りた場合、その保険金に対しても債権者の効力は及びます。
この場合は、担保である住宅が保険金に形を変えたことになります。
なお、物上代位性が認められるのは、特定の財産を対象とする特別の先取特権のみです。
一般の先取特権には、物上代位性は認められません。
一般の先取特権は、不動産の登記をしなくても,特別担保を有しない他の債権者や登記をしていない第三者に対抗できます。
特別担保とは,抵当権や不動産の先取特権などです。
担保物権の所有権が第三者に移ったとしても、その担保物権に関して第三者に権利を主張できることをいいます。
つまり、担保物件が移転しても、先取特権は消滅しないということになります。
ただし、動産に対する先取特権については、追及力は認められていません。
特別の先取特権を有する債権者は、債務者が破産手続きに入る前にその権利を行使して債権金額を回収することができます。
また、一般の先取特権を有する債権者は債務者が破産手続きに入ると、その権利を行使して債権金額を回収できるようになります。
しかし、先取特権を有する債権者の方が先に破産してしまうことも考えられます。
先取特権者が破産者となった場合、その破産者の破産管財人は、破産者が債権者として有する先取特権を実行することができます。
先取特権を実行して債権金額を回収した上で、その回収した財産を破産財団に組み入れます。
破産財団に組み入れられた後は、通常の財産として債権者に対する配当の原資となります。
先取特権はどのようなものなのかわかりにくいため、様々な疑問を持つ方もいることでしょう。
ここでは、先取特権に関してよくある質問とその回答をご紹介します。
先取特権は、法律で定められた債権を有する者が、他の債権者に優先して弁済を受ける権利であるとされます。
そして先取特権は、民法で定められている権利であるため、先取特権は契約により成立するものではありません。
一定の要件を満たせば必ず発生するものであり、契約書を取り交わす必要はありません。
破産手続きをする・しないに関係なく、実際に先取特権があると実感することはあまりないかもしれません。
しかし、先取特権は民法上の要件を満たせば必ず発生する権利であり、またその権利は非常に強いものです。
先取特権がある場合でも、特別の先取特権と一般の先取特権では中身が異なるので、その内容について確認しておきましょう。
また、先取特権者が破産した場合にも、他の破産のケースとは異なる点があるので、注意しましょう。