東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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ここでは、財団債権とは何かについて解説します。
財団債権とは破産手続によらずに随時、優先的に弁済を受けられる債権のことです。(破産法2条7項)
財団債権を有する債権者を「財団債権者」といい、他の債権者よりも先に、破産財団から弁済を受けられます。
破産に関する債権の中で、もっとも強力な債権だと言えるでしょう。
破産した法人の財産はまず処分され、金銭に換えられます。
もともと金銭として持っていた財産はそのままですが、不動産など分配が難しい財産については換価処分が行われます。
その場合、強制執行と同様の手続きによるのが原則です。
しかし、担保を有する債権者(金融機関)の同意を得て行う不動産の売却は注意してください。
強制執行よりも破産債権者に有利になる場合などには、裁判所の許可を得て任意売却の方法が取られることもあります。
こうして換価した金銭を集めたのが、破産財団です。
債権者への弁済だけでなく、破産手続きの費用など、破産に必要な費用のすべてを破産財団から出すことになります。
破産財団の財産の管理と処分は、破産管財人の一任です。
破産管財人は、破産手続開始とともに、通常は弁護士の中から裁判所が選任します。
破産財団の財産が確保できると、配当が開始されるという流れです。
なかでもその他の債権に先んじて弁済を受けられるのが、財団債権です。
財団債権とは、具体的に以下のような債権を指します。
① | 破産財団の管理、換価及び配当に関する費用の請求権 (破産管財人に対する報酬を含む) |
---|---|
② | 破産債権者の共同の利益のためにする裁判のための費用 |
③ | 破産財団に関し破産管財人の行為によって生じた請求権 |
④ | 事務管理や不当利得により破産手続開始後に破産財団に対して生じた請求権 破産開始前の原因に基づいて生じた租税等の請求権 (破産手続開始当時納期限が到来していないもの又は納期限から1年内のもの) |
⑤ | 破産手続き開始前3ヶ月間の破産者の使用人の給料の請求権 |
⑥ | 破産者の使用人が破産手続終了前に退職した場合の退職金のうち、退職3ヶ月間分の給料に相当する額 (3ヶ月間の給料の総額より少ない場合には、3ヶ月間の給料の総額) |
これらは、破産財団から随時弁済されます。
すべての財団債権が破産財団の財産で賄うことができれば問題はありませんが、財産が十分でないことも考えられます。
その場合には、債権額の割合に応じて弁済するのが原則ですが、
これら2つについては、他の財団債権に先立って弁済することになっています。
破産管財人の報酬は、他の財団債権に優先して弁済を受けられます。
破産管財人に対する報酬は裁判所に支払う最低20万円の引継予納金の他、破産財団の一部も管財人の報酬です。
基本的に破産財団が有する財産額が大きいほど、管財人の報酬も大きくなります。
これは、財産が多い方が手続きにかかる手間が大きくなるからです。
法人が破産手続を開始するには、予納金と呼ばれる最低限の手続き費用が必要です。
ただし、破産手続開始決定と同時に破産手続廃止となる同時廃止の場合を除きます。
予納金は申立てをした人が納めるため、債権者が法人に代わって破産申立てをするなど、第三者が予納した場合に予納金の還付が必要です。
予納金還付は、財団債権です。
破産手続には裁判所に支払う費用や財産管理の費用など、一定の費用が必要になります。
これらは破産するために不可欠なため、その他の財団債権に優先して支払われなければいけません。
これらは全てその他の財団債権に入るものです。
その他の財団債権には租税などに関連する債権の一部、労働債権の一部が含まれます。
これらは同列に扱われ、破産財団によって賄うことができない場合には、比例分配がなされます。
破産法では、破産債権者が持つ債権を「財団債権」と「破産債権」の2つに分けています。
債権の公益性その他の理由で分けられており、優先して弁済を受けるのが財団債権です。
破産債権とは、破産手続開始決定前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であって、財団債権に属さないもの(破産法2条第5項)です。
つまり、破産手続開始決定前の原因に基づいて生じた財産上の請求権のうち、財団債権以外は破産債権に含まれることになります。
財団債権が優先して弁済を受けるため、財団債権がない場合・弁済をしても財産に余裕がある場合に弁済されます。
また、財団債権と違い、破産債権はいつでも弁済を受けられるわけではありません。
破産債権者に対する分配は、破産法所定の手続きによってのみ行われます。
破産債権は、その重要度や内容によって4つに分類され、優先順位が付けられています。
破産債権の種類と優先順位は以下の通りです。
財団債権への弁済が終わってさらに余剰があれば、優先的破産債権に配当します。
その後、余剰がある場合に順次、一般的破産債権、劣後的破産債権、約定劣後破産債権に配当されます。
優先的破産債権とは、破産債権の中では優先的に弁済を受けられる債権です。
一般先取特権その他一般の優先権がある破産債権は、他の破産債権に優先することとされています。
労働債権や租税債権などがこれにあたります。
優先破産債権の間の優先順位は、民法、商法その他の法律の定めるところによるものです。
したがって、優先的破産債権となる租税債権は、優先的破産債権となる労働債権に優先します。
ただし、労働債権や租税債権の一部は財団債権となるので注意が必要です。
一般的破産債権は、優先的破産債権の次に配当されます。
破産債権のうち、優先的破産債権・劣後的破産債権・約定劣後破産債権に当たらない債権はすべて、一般的破産債権です。
具体的には、金融機関からの借入金や買掛金・売掛金などが該当します。
劣後的破産債権は、優先的破産債権と一般的破産債権に対する配当が終わったのちに弁済を受けることができます。
劣後的破産債権については、破産法99条1項各号を参考にしてください。
具体的には以下が含まれます。
① | 破産手続開始後の利息 |
---|---|
② | 破産手続開始後の不履行による損害賠償、違約金の請求権 |
③ | 破産手続開始後の延滞税、利子税若しくは延滞金の請求権又はこれらに類する共助対象外国租税の請求権 |
④ | 国税徴収または国税徴収の例によって徴収することのできる請求権であって、破産財団に関して破産手続開始後の原因に基づいて生ずるもの |
⑤ | 加算税若しくは加算金の請求権又はこれらに類する共助対象外国租税の請求権 |
⑥ | 罰金等の請求権 |
⑦ | 破産手続参加の費用の請求権 |
約定劣後破産債権とは、破産債権者と破産者との間において、破産手続が開始された場合、配当の順位が劣後的破産債権に後れることが合意された債権です。
財団債権は、いつでも支払うことができると規定されています。
つまり、配当まで待たずに支払いを受けられるということです。
また、配当のように債権額の大きさに比例した弁済ではなく、基本的に全額の支払いがなされます。
これは財団債権を持つ債権者にとっては、大きなメリットです。
とはいえ、同順位の債権が複数ある場合には、按分して配当されるので注意が必要です。
破産管財人による財団債権の承認には、裁判所の許可を得ることが規定されています。
ただし、100万円以下のものについては裁判所の許可を要しないため、破産管財人が財団債権を承認するだけで弁済ができます。
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配当の優先順位は、破産法人にとっても破産債権者にとっても重要です。
そのうえ、財団債権や破産債権の種類は複雑なので、それぞれの違いをしっかりと理解しておきましょう。
優先順位が後の破産債権者に先に弁済してしまうと、先の優先順位を持っていた破産債権者にとって不利益になってしまいます。
最悪の場合、損害賠償請求がされるなど、トラブルに発展することも考えられます。
基本的に債権者への弁済は自分で判断せず、弁護士などの専門家に任せる方が安心です。