

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

廃業する事業年度についても、消費税の納税義務は原則として発生します。
「廃業するから消費税は不要」と誤解されがちですが、事業用資産を個人用に転用する行為は消費税法上のみなし譲渡として課税対象になる場合があります。
また、インボイス登録の取消手続きを誤ると、廃業後も課税事業者としての義務が残る恐れがあります。
廃業時の消費税の取り扱いや税負担を軽減する方法、インボイスの手続きを自己判断で進めると、思わぬ追徴課税につながりかねません。
正しい手続きを確認したうえで、早めに弁護士への相談をおすすめします。
本記事では、廃業時の消費税の支払いについて解説します。
Contents
消費税の課税判定は、2年前もしくは特定期間(前年の1〜6月)の課税売上高が1,000万円を超えるかで決まります。
廃業する年の売上が0円でも納税義務は消えず、廃業日までの取引について翌年3月31日までに確定申告が必要です。
消費税の納税義務者は、原則として基準期間(個人事業主の場合は前々年)の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで判定されます(消費税法9条1項[注1])。
基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば免税事業者となり、取引で消費税を受け取っていても国への納税義務はありません。
一方、1,000万円を1円でも超えていれば、2年後には課税事業者へ切り替わります。
ただし、インボイス制度のもとで適格請求書発行事業者の登録を受けている場合は注意が必要です。
基準期間の売上にかかわらず課税事業者として消費税の申告・納税義務を負います。
基準期間の売上が1,000万円前後で推移している場合や、非課税売上が混在している場合は判断が難しいでしょう。
実際に課税義務が発生しているかの判断が複雑になるため、早めの確認が重要です。
消費税の納税義務者としての立場は、廃業日ではなく、廃業年分の申告・納税を終える翌年3月31日まで続きます。
例えば2021年6月30日に廃業した場合、事業廃止届出書を提出すれば、7月1日以降の取引には消費税は発生しません。
一方、6月30日までの売上については、翌年2022年2月16日から3月15日の所得税確定申告期間を経て、3月31日までに消費税の申告・納税を済ませる必要があります。
所得税と消費税とで申告期限が2週間程度ずれる点は見落としやすく、廃業に伴う最終申告では経費の計上漏れも生じがちです。
VSG弁護士法人では弁護士が提携税理士と連携し、経費の漏れを防ぎ、納税額を抑える申告をサポートします。
廃業時に見落とされがちなのがみなし譲渡(自家消費)です。
事業用資産を個人用に転用すると、消費税法上は時価で売却したとみなされ、実際の入金がなくても、時価に対する消費税を納める義務が生じます。
みなし譲渡(自家消費)のルールが設けられている理由は、消費税の課税逃れを防ぐためです(消費税法4条5項[注1])。
規定がなければ、事業者が廃業する直前で高額な社用車やパソコンなどの事業用資産を無償で個人名義に移し、個人として高く売却して消費税の負担を実質的に免れてしまいます。
事業用資産として仕入れた際には、消費税法30条等[注1]に基づく仕入税額控除(仕入時に支払った消費税の還付や控除)を受けているケースが多いです。
その資産を最後まで適正に課税対象とし、事業者間の公平性を保つ狙いがあります。
例えば、廃業時に社用車を個人用に転用した場合を考えてみましょう。
車の時価が50万円であれば、実際に現金の入金がなくても、50万円を売上とみなして消費税(10%であれば5万円)を納める義務が生じます。
個人転用にあたる資産の範囲や時価の算定は、廃業時の税務処理の中でも判断が難しい部分です。
不当な過少申告と疑われないよう、適正な時価計算書の作成が重要です。
廃業時の節税手段は、いずれも事前の届出期限を1日でも過ぎると効果を失います。
簡易課税制度(消費税法37条[注1])の適用を受けるには、原則としてその課税期間が始まる前年12月31日までに、税務署へ届出書を提出しておく必要があります。
免税事業者の状態で廃業できれば、消費税の負担を大きく抑えられます。
例えば、2021年6月30日に廃業する場合、基準期間にあたる2019年の課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として免税事業者として廃業手続きができます。
ただし、インボイス制度のもとで適格請求書発行事業者の登録を受けている場合は注意が必要です。
売上が1,000万円以下でも自動的に免税事業者へ戻らず、登録取消届出書を提出しない限り申告義務が残ります。
登録から2年間は取消が制限される場合もあるため、廃業のタイミングと届出のスケジュールをあわせて確認するのが重要です。
簡易課税制度(消費税法37条[注1])を活用すると、みなし譲渡の納税額を抑えられる場合があります。
廃業時に社用車を個人用に転用し、時価が50万円だった場合を考えます。
売上税額から実際の仕入にかかる消費税を差し引く方式では、廃業時に仕入の領収書が残っていないケースが多く、売上税額5万円をそのまま納めがちです。
一方、簡易課税制度の適用を受けていれば、業種区分に応じたみなし仕入率を用いて計算します。
例えば仕入れ率60%の場合、5万円から3万円を控除でき、納税額は2万円に圧縮されます。
ただし、この制度の適用を受けるには、原則として該当の課税期間が始まる前年12月31日までに届出書を提出しておく必要があります。
価値のない不良資産をそのまま残して廃業すると、みなし譲渡課税(消費税法4条5項[注1])の対象となり、実態は不要品であっても税負担が生じる恐れがあります。
廃業前に計画的に廃棄処分を行い、処分費用を事業用の必要経費(所得税法37条1項)として計上する方法が有効です。
廃業届を出さずにいれば、税務署に廃業はバレないだろうと考える経営者がいますが、この考えは間違っています。
税務署は、口座の動きや売上が途絶えた時期から、実質的に事業がいつ終了したのかを判断します。
意図的に廃業届の提出を先送りすれば申告漏れではなく、事実の隠蔽・仮装(国税通則法68条[注2])とみなされ、35%~40%の重加算税が課されます。
延滞税も加わり、本来の税額を大きく上回る負担になりかねません。
個人事業の廃業届は所得税法229条[注3]、消費税の事業廃止届出書は消費税法57条[注1]に基づき、廃業後速やかに提出する必要があります。
廃業時の手続きは、税理士に頼めばすべて完結すると誤解されがちですが、実はそうではありません。
税理士は消費税の確定申告やインボイス登録取消届出書の提出が可能です。
しかし弁護士法72条[注4]により、取引先や金融機関との債務交渉、テナントの明け渡し・敷金精算といった法律事務は行えません。
同様に税理士法52条[注5]により、税理士以外の税務代理も認められていません。
債権者対応の代理、取引先との交渉、代表者の個人保証リスクの軽減などの法務面は弁護士が、税務面は税理士が担当し、両者の連携が重要です。
VSG弁護士法人では、顧問税理士とも連携しながら法務面の窓口を一手に引き受け、廃業手続きをサポートしています。
[注1]消費税法/e-Gov
消費税法
[注2]国税通則法/e-Gov
国税通則法68条
[注3]所得税法/e-Gov
所得税法229条
[注4]弁護士法/e-Gov
弁護士法72条
[注5]税理士法/e-Gov
税理士法52条
廃業時の消費税は、基準期間の課税売上高やみなし譲渡(自家消費)、簡易課税制度の活用、届出のタイミングなど確認すべき点が多岐にわたります。
届出を怠ると重加算税などのペナルティにつながる恐れもあります。
税務面は税理士、法務面(債権者対応の代理、取引先との交渉、代表者の個人保証リスクの軽減)は弁護士が担当し、両者の連携が安全な廃業手続きの鍵です。
VSG弁護士法人では、事業清算や廃業手続きに実績を持つ専門チームが、法的な交渉から税理士・司法書士との連携までワンストップでサポートいたします。
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