

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

会社を清算するとき、債務超過や多数の債権者との調整が必要な場合は、裁判所を介した特別清算が実施されるケースがあります。
特別清算は株式会社のみ認められ、有限会社が特別清算するときは商号変更によって株式会社へ形式を変更[注1]しなければなりません。
法務局への登記申請は、商号変更による「有限会社の解散」と「株式会社の設立」を同時に申請します。
特別清算は、債権者集会で「出席者の過半数」かつ「議決権総額の3分の2以上」の可決が必要であり、否認されると通常は破産に移行します。
完了までの期間は数カ月~1年ほどで、費用は事案により異なるため弁護士に相談しましょう。
この記事では、有限会社が特別清算を行うための手続きなどを解説します。
[注1]会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律/e-Gov
会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第四十五条
Contents
特別清算[注2]とは、裁判所の監督のもとで会社の法人格を消滅させる手続きであり、通常清算や破産との違いは以下の通りです。
| 特別清算 | 通常清算 | 破産 | |
|---|---|---|---|
| 開始原因 | 通常清算に著しい支障がある、または、債務超過の疑いがあるときなど | 株主総会の特別決議の他、定款で定めた存続期間の満了や解散事由の発生など | 支払不能または債務超過に陥ったとき |
| 可決 | 裁判所の終結決定 | 株主総会の決議 | 裁判所の終結決定 |
| 債権者の同意 | 必須 | 不要(債権者保護手続として1カ月以上の異議申立期間あり) | 不要(意見聴取や債権届出などで手続きに関与) |
| 主な特徴 | 破産より簡易迅速で柔軟な手続きが可能 | 原則として裁判所を介さない | 破産管財人が財産の処分や分配を実行 |
[注2]会社法
会社法510条

有限会社は、旧商法による会社形態です。
特別清算は、現行の株式会社の組織形態や運営を前提に作られた制度であるため、原則として有限会社は特別清算できません。
例外として、以下のように有限会社を株式会社に商号変更した上で特別清算を行う方法があります。
それぞれの内容について確認していきましょう。
登記申請をする前提として、以下のように商号変更[注1]の決議を行い、必要書類を準備します。
<商号変更の決議>
| 決議主体 | 社員総会(現行の会社法上、「株主総会」に読み替え) |
| 決議要件 | 特別決議(総株主の半数以上、かつ、議決権の4分の3以上の多数で可決) |
| 必要書類 | ・登記申請書 ・株主総会議事録 ・株主の一覧 ・委任状(司法書士に依頼する場合) ・定款変更の内容を記載した書面(変更前後の商号を明記) ・登録免許税納付用台紙 |
商号変更の決議後、「商号変更による株式会社設立」の登記を本店所在地を管轄している法務局へ申請します。
注意点として、登記申請では「商号変更による有限会社の解散」と「商号変更による株式会社の設立」を同時に申請しなければなりません。
登記申請した日が、商号変更の効力発生日です。
有限会社の解散後、別途の登記申請によって株式会社への変更はできないため注意しましょう。
株主総会で解散決議と清算人選任決議を行い、本店所在地を管轄する地方裁判所に特別清算を申立てます。
申立てができるのは清算人、債権者、株主、監査役であり、提出書類は主に以下の通りです。
提出書類は裁判所によって異なる可能性があるため、事前に確認しましょう。
特別清算が認められるためには、債権者集会で協定案が可決されなければなりません。
否決された場合、原則として破産へ移行します。
特別清算は、一般的に破産より簡易迅速な手続きとなるケースが多いですが、特別清算にかかる費用や期間は事案によって大きく変動します。
手続きの方法を誤った場合、期間が長くなり、経営者や債権者双方に不利益が生じる可能性があるため、事前に注意点を把握しておきましょう。
特別清算によって負債の減額や免除の協定を成立させるには、債権者集会で以下2つの要件を満たす賛成が必要です。
多数の債権者の同意を得ていても、議決権総額のうち3分の2以上を占める大口債権者1社からの反対があれば特別清算は成立しません。
債権者から同意を得られる見込みのないときは、破産を選択した方が円滑に清算できる可能性があります。
特別清算は裁判所の監督に基づいた手続きであり、事案によって異なりますが、申立てから完了まで数カ月~1年ほどかかるケースもあります。
完了までに発生する費用の相場は、おおよそ以下の通りです。
| 項目 | 費用相場 |
|---|---|
| 申立て費用 | 約2万円ほど |
| 予納金、官報公告費用 | 数万円~15万円ほど |
| 弁護士報酬(着手金や成功報酬など) | 約50万円~数百万円ほど |
| 諸経費(郵送や交通費の実費精算、日当など) | 数千円~数万円ほど |
特別清算を申し立てる場合、会社の資金繰りがすでに悪化しているケースは少なくありません。
具体的な費用は、申立てをする地方裁判所の案内や弁護士との面談で確認しておきましょう。
以下のようなケースでは、特別清算ではなく破産を選択した方が合理的な場合があります。
会社法574条[注3]では、上記のような事情で特別清算が困難な場合、裁判所の職権による破産への移行が定められています。
[注3]会社法/e-Gov
会社法574条
特別清算は、会社の財務状況や債権者との関係によって難易度が大きく変わります。
以下のように、清算方法に迷っている場合や債権者との交渉が難しい場合、手続きが長期化する場合などは、弁護士への依頼が望ましいでしょう。
VSG弁護士法人では、債権者との交渉や協定案の策定、申立書作成など、経験豊富な弁護士が手続きの完了までサポートします。
特別清算は、債権者の同意が得られる場合は比較的短期に終結しやすく、費用も破産よりかからないケースが多いです。
一方で、破産は債権者が多く和解交渉が現実的ではない場合に適しており、経営者が複雑な会社の財産管理から離れられるメリットもあります。
破産と特別清算のどちらを選択すればよいか迷うときは、弁護士に相談しましょう。
どちらが適切な手続きになるかは会社の財務状況や債権者の対応によるため、具体的な事案を検討して選択する必要があります。
弁護士に相談すると、それぞれの方法を選択した場合のメリットとデメリットを踏まえたアドバイスを受けられるでしょう。
債権者が非常に多い場合や、利害関係が複雑な場合は、交渉が難航して手続きが停滞する恐れがあります。
債権者との関係が悪化していると、債務の一部減免や弁済のスケジュールなどについて納得してもらえないケースが少なくありません。
弁護士に依頼すると、協定案の策定や提案なども含め債権者との交渉を代行してもらえます。
弁護士が第三者の立場から介入すると、一般的な事例や判例などを提示でき、債権者からの合意を得やすくなる可能性があるでしょう。
債権者との交渉は精神的に大きな負担がかかるケースが多いため、経営者の負担を軽減できるのも大きなメリットです。
債権額や債権の存否について争いがある場合、解決までに時間がかかり、清算手続き全体が長期化するケースがあります。
会社の財産状況が複雑であり、財産目録の作成や換金が難しい場合も手続きが滞る可能性があるでしょう。
特別清算は、裁判所を介するために債権調査や調停案の作成などに多くの調査や専門的な知見が求められます。
弁護士は財産調査において専門的な知見を有するため、債権者から財産調査についての信頼を得られやすくなるメリットがあります。
調査や財産目録などの作成には時間や労力がかかりますが、弁護士に一任すると経営者の負担を軽減できるでしょう。

有限会社を特別清算するには、前述の通り、まず商号変更によって株式会社に形態を変更しなければなりません。
次に、以下の流れで株式会社の特別清算を実施します。
清算人は、株主総会の解散の決議と同時に選任され、裁判所からの特別清算開始命令をもって就任します。
清算人は裁判所の監督の下で清算手続きを行い、債権者の同意を得た後に裁判所の決定で特別清算は終結します。
それぞれの内容について確認していきましょう。
まずは株主総会で解散決議と清算人の選任を行います。
会社法309条[注4]により、株式会社が解散決議を行うには以下の要件を満たす必要があります。
清算人は、取締役や弁護士が選任されるケースが一般的ですが、決議によって他の方の選任も可能です。
[注4]会社法/e-Gov
会社法第309条2項
株主総会の決議後、会社の本店所在地を管轄する地方裁判所へ特別清算を申し立てます。
前述の通り、裁判所への提出書類を揃え、申立書とともに提出しましょう。
特別清算の申立ては、清算の手続き中であれば法定の申請期限などはありません。
特別清算を検討するときは会社の財産状況が悪化しているケースが珍しくないため、決議後に遅滞なく申し立てるのが一般的でしょう。
特別清算の申立て後、内容に問題がなければ特別清算開始決定が通知されます。
同時に、裁判所に代わって会社の財産や清算事務を監督する監督委員が選任されるケースがあります。
財産処分などの重要行為は原則として裁判所の許可が必要ですが、選任後は監督委員の同意で手続きが可能です。
会社が把握している債権者に届出の機会を与えるため、個別に債権届出の通知を送付します。
同時に、把握していない債権者への周知のため、官報公告によって会社の解散が告知されます。
債権届出ができる期間は、原則として2カ月以上必要です。
債権者は、通知を受け取った後は期間内の債権届出が求められます。
債権者集会では、会社の財産状況の報告や債権者からの意見聴取を行い、協定案について決議します。
協定案は、会社が作成した債務の減免や支払方法の案であり、原則として各債権者への平等な弁済が求められます。
協定案が可決される要件は以下の通りです。
協定案の内容に従って債権者への弁済などを行い、清算手続きが完了すると、裁判所は特別清算手続の終結を決定します。
終結決定が確定すると、裁判所書記官の職権により会社の本店及び支店所在地の法務局へ特別清算終結の登記が嘱託され、法人格は消滅します。
会社の債権債務や権利義務も消滅するため、経営者にとっては区切りとして再スタートを切れるでしょう。
特別清算に関するよくある質問は、以下の通りです。
それぞれの質問に回答します。
債権者集会で協定案が否決された場合、会社法574条[注3]により、原則として破産へ移行します。
協定案が否決されたとき、または、協定案が可決される見込みがないと判断されたときは、裁判所は職権で破産手続き開始の宣告を行います。
実務上は手続きが二度手間になるため、債権者の同意を得られる見込みがないときは最初から破産を選択する方が円滑に進められるでしょう。
清算手続きの申立てに必要な費用は、裁判所への申立てに必要な印紙、予納金・官報公告費、弁護士報酬、その他諸経費などです。
費用総額は、会社の財産状況や債権者の数によりますが、数十万円~数百万円以上かかるケースも珍しくありません。
提出書類は、申立書の他に財産目録や債権者と債務者の名簿、会社の財務諸表なども求められます。
裁判所によって異なる場合があるため、申立てをする裁判所へ事前に確認しておきましょう。
特別清算は株式会社のみ認められるため、有限会社が特別清算をするときは商号変更によって形式を株式会社に変更します。
このとき、商号変更による有限会社の解散と株式会社の設立は同時に登記申請しなければならないため注意しましょう。
特別清算の申立てが認められるには、債権者集会の可決が必要であり、否認されたときは破産に移行します。
VSG弁護士法人では初回無料相談を実施しているため、積極的に利用して詳細な手続き方法などを確認しましょう。