東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。
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会社を清算した後の残余財産は、会社の持ち主である株主に清算人によって分配されます。
会社法には、「株主平等の原則」が規定されており、各株主が保有する株式数に応じて残余財産も分配されます。
ただし、残余財産の分配について定められた「種類株式」が発行されている場合は、残余財産の分配をしない、残余財産を優先分配するといった取り決めがなされていることがあります。
そのような場合は、種類株式の内容に応じて、会社清算時に残余財産が分配されます。
また、原則として会社の負債をすべて返し終わった後でなければ、残余財産を分配することはできません。
例外として、負債の内容や金額の確定に時間を要するような場合は、対象となる債務を弁済するのに必要と認められる財産を残しておき、それ以外の残余財産を先に分配することも可能です。
原則として、会社清算時の残余財産はすべて現金化し金銭で株主に分配しますが、不動産などの現物で分配することも可能です。
現物で分配する際には、各株主に対して、現物ではなく金銭での分配を選択できる期間を設けることが必要です。
まず、清算人が金銭での分配請求権を行使できる期限を決めます。
また、設定した基準数未満の株式しか保有していない株主には残余財産の割り当てを行わない、という場合はその基準数も決めます。
そして、金銭分配請求権行使期限日の20日前までに、清算人が決定した行使期限日と残余財産の割り当てを行わない基準株式数を、すべての株主に通知します。
この金銭分配請求権の行使期限日内に請求権を行使された場合、その株主へ対しては金銭での分配を行わなければなりません。
また逆に、設定した基準数以下しか株式を保有していない株主に対しては現物分配を行わないとすることも可能で、現物分配の内容や規模によって、すべての株主に現物分配することが困難な場合は、このような方法も選択することができます。
株式会社は会社法の規定によって、内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができます。
このような株式を「種類株式」といい、種類株式には定められる事項がいくつか規定されていますが、残余財産の分配に関して定めた種類株式を発行することも可能です。
残余財産の分配に関して異なる内容としては、以下のようなケースが考えられます。
なぜこのような差をつけた内容の株式があるのかというと、会社の経営状態が悪化し、会社の解散・清算となった場合に、残余財産について有利な株式を発行することで、対象株主が少しでも投資した金額の回収を行えるようにするためです。
このような優先分配ができる種類株式を発行すると、メリットが高いため、株価が上昇し多くの出資を集めることが可能となります。
種類株式を発行する場合は、定款に記載する必要があります。
残余財産の分配についての種類株式の設定は任意ですので、定めのない場合は、株式数に応じて均等に分配されます。
それでは、ここで残余財産の分配に関して定めた種類株式をケース別に解説していきましょう。
残余財産の分配を受ける権利を与えない種類株式を発行することができます。
このような種類株式を発行することで、既存の株主や普通株式が優先されることになります。
定款の記載例
当会社は、甲種株式を有する株主に対し、残余財産の分配は行わない。
ただし、「残余財産の分配を受ける権利」と合わせて「剰余金の配当を受ける権利」の両方を与えない種類株式は、会社法によって禁止されています。
残余財産の分配を普通株式よりも優先して受けられる種類株式を発行することが可能です。
この種類株式を発行することで、株価の上昇につながります。
定款の記載例
当会社は、甲種株式を有する株主に対して、普通株式を有する株主に先立ち、甲種株式1株あたり金2千円を優先分配する。
さらに、優先分配方法として「参加型」と「非参加型」の2つの定め方があります。
この定めを行う場合は、定款に上記の記載例に加え2項に記載を追加します。
参加型と非参加型のそれぞれの違いと定款記載例を説明します。
参加型とは、会社が普通株式を有する株主に優先して、分配優先株式を有する株主へ残余財産を分配した後、まだ残余財産が残っている場合、普通株式を有する株主とともに、その残った財産の分配も受けることができる種類株式のことをいいます。
残余財産を定款で規定された金額で優先的に分配されることに加えて、さらに残った財産の分配にも参加できるということです。
定款の記載例
1.当会社は、甲種株式を有する株主に対して、普通株式を有する株主に先立ち、甲種株式1株あたり金2千円を優先分配する。
2.甲種株主に対して、前項の優先分配金が分配された後に普通株主へ残余財産を分配するときは、甲種株主に対し、甲種株式1株当たり、普通株式1株当たりの残余財産分配額と同額の残余財産の分配を行う。
参加型の優先種類株式は、このあと説明する非参加型よりも、種類株主にとって有利な条件ということになります。
非参加型とは、会社が普通株式を有する株主に優先して、分配優先株式を有する株主へ残余財産を分配した後、まだ残余財産が残っている場合、その残った財産に関しては分配を受けることができず、優先して受け取った分配金のみとなる種類株式のことをいいます。
残余財産を定款で規定された金額で優先的に分配されますが、さらに残った財産の分配には参加できないということです。
定款の記載例
1.当会社は、甲種株式を有する株主に対して、普通株式を有する株主に先立ち、甲種株式1株あたり金2千円を優先分配する。
2.甲種株主に対しては、前項の他に残余財産を分配しない。
残余財産の分配について、普通株式の方を優先させる種類株式を発行することも可能です。
これは、残余財産の分配を行わない種類株式の場合と同じく、既存の株主や普通株式が優先されるということになります。
定款の記載例
当会社は、普通株式を有する株主に対して、甲種株式を有する株主に先立ち、普通株式1株当たり金2千円を優先分配する。
株式会社が発行することができる株式の総数を発行可能株式総数といい、登記簿にも記載されています。
この発行可能株式総数を上回る株式の発行はできませんが、それぞれの発行可能種類株式総数の合計が発行可能株式総数より多く設定することも可能です。
例えば、以下のような設定をしている会社で考えてみましょう。
普通株式と甲種株式をすべて発行すると600株となり、発行可能株式総数500株を超えますのでNGですが、普通株式200株と甲種株式300株など、総数で500株を超えなければ大丈夫ですから、上記のような設定は可能です。
また、種類株式は新たに発行するだけではなく、既存の株主が所有している株式を種類株式に変更することも可能です。
会社を解散して、清算人が会社の資産を換価し負債を完済した後、残余財産を株主に分配すれば、会社の清算はほぼ終了となります。
残余財産の分配が完了した後、清算人は決算報告書を作成し、株主総会での承認を得る必要があります。
決算報告に必要な内容は以下の通りです。
これらを記載した決算報告を株主総会へ提出し承認されれば、清算結了となります。
そして最後に、清算結了となった株式総会の承認日から2週間以内に、法務局へ清算結了の登記を行います。
また、税務関係では、管轄の税務署等に清算結了の異動届出書を提出します。
株式会社の清算において、負債をすべて支払った後の残余財産は株主に分配されます。
基本的に、すべての株主に対して均等に分配されますが、種類株式を発行している場合は、異なった分配方法をとることが可能です。
残余財産を優先的に分配する種類株式、残余財産の分配を行わない種類株式などの発行が可能で、これらの種類株式を発行するためには、定款に記載する必要があります。
定款に記載されていない場合、新たに種類株式の発行を行いたいときは、定款の変更が必要となりますのでご注意ください。
また、残余財産を現物で分配することも可能ですが、株主は金銭で分配を受ける権利を有しますので、事前に株主へ通知を行って、金銭分配を希望する株主へは、現物ではなく金銭分配が必要となりますので、ご注意ください。