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【完全版】法人で廃業届の書き方とは? 必要なものや出さない場合のリスク

弁護士 石木貴治

この記事の執筆者 弁護士 石木貴治

東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、ビジネスの実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/ishiki/

法人の廃業手続きにおいて、廃業届以外にも多くの書類や登記が必要だと知り、頭を抱えている経営者のイラスト

  • 法人の廃業届を出さないとどうなるかがわかる
  • 法人の廃業手続き|必要書類・書き方・提出先・提出期限がわかる
  • 法人の廃業届を提出する際に注意すべきポイントがわかる

法人の事業を終了する際には、「廃業届」を提出すれば完了すると考えている方も少なくありません。

しかし実際には、法人の廃業は単なる届出ではなく、「解散」や「清算」といった法的手続きを含む一連のプロセスを経てはじめて完了します。そのため、個人事業の廃業とは異なり、必要書類や手続きの流れが複雑になりやすい点に注意が必要です。

本記事では、法人の廃業届の基本から、提出しない場合のリスク、必要書類や手続きの流れ、注意点までをわかりやすく解説します。

Contents

法人の廃業届を出さないとどうなる?

法人の事業を終了する際、「廃業届を出さなくても問題ないのでは?」と考える方もいます。しかし、廃業届の提出を怠ると、税務や手続き上のさまざまな不利益が生じるおそれがあります。

まずは、廃業届の基本的な意味と、提出しない場合のリスクを整理しておきましょう。

そもそも法人の廃業届とは?

法人の廃業届とは、事業活動を終了したことを税務署や自治体に届け出る書類を指します。一般的には、税務署へ提出する「異動届出書」や「事業廃止届出書」などがこれに該当します。

ただし、法人の場合は単に廃業届を提出するだけで手続きが完了するわけではありません。会社を正式に消滅させるためには、「解散」や「清算」といった手続きを経る必要があり、その過程で法務局への登記や各種届出も行います。

実務上は、こうした一連の手続きの中で税務署などに提出する届出をまとめて「法人の廃業届」と呼ぶケースが多く、あくまで事業終了の意思を行政に示すための書類と位置づけられます。

法人の廃業届を放置するとさまざまなリスクがある

法人の廃業届を提出しないまま放置すると、以下のようなリスクが生じる可能性があります。

  • 税務署から申告書の提出を求められ続ける
  • 無申告による加算税や延滞税が発生するおそれがある
  • 法人住民税の均等割が課され続ける可能性がある
  • 実態のない法人として信用面で不利益を受けることがある

たとえば、事業をすでに停止していても、届出がない場合は「事業継続中の法人」として扱われることがあります。その結果、本来不要であるはずの申告義務が残り、対応を怠るとペナルティが課されるおそれがあります。

また、利益が出ていない場合でも、法人住民税の均等割は課税されるケースがあるため、廃業届を出さないことで不要な負担が続いてしまうこともあります。

このようなリスクを避けるためにも、事業を終了した場合には速やかに必要な届出を行い、適切に手続きを進めることが重要です。

【一覧表】法人の廃業手続き|必要書類・書き方・提出先・提出期限

以下に、会社解散から清算結了までに必要となる主な手続きを一覧表でまとめました。

主な提出書類提出先提出期限その他
解散・清算人選任登記申請書
株主総会議事録 など
法務局解散日から2週間以内全ての会社で必須
清算結了登記申請書
株主総会議事録
決算報告書 など
法務局清算結了日から2週間以内全ての会社で必須
異動届出書
給与支払事務所等の廃止届出書
消費税の事業廃止届出書 など
税務署解散後、遅滞なく解散時・清算結了時の2回提出
異動届出書都道府県税事務所解散後、遅滞なく解散時・清算結了時の2回提出
異動届出書市区町村役場解散後、遅滞なく解散時・清算結了時の2回提出
健康保険・厚生年金保険の適用事業所全喪届
被保険者資格喪失届
年金事務所事実発生から5日以内従業員がいる場合のみ
労働保険確定保険料申告書労働基準監督署事業廃止から50日以内従業員がいる場合のみ
雇用保険適用事業所廃止届
雇用保険被保険者資格喪失届
ハローワーク廃止の翌日から10日以内従業員がいる場合のみ

※ 上記は主な手続きの一例です。会社の状況によっては、許認可の返納や個別の届出が必要になる場合があります。

このように、法人の廃業手続きは複数の機関にまたがるため、どこに何を提出するかを事前に整理しておくことが、スムーズに手続きを進めるポイントとなります。

法人の廃業にかかる費用はいくら?

法人の廃業には、登記費用や公告費用に加え、設備の処分費用や専門家報酬など、さまざまなコストが発生します。

法人の廃業にかかる主な費用の目安は、以下のとおりです。

項目費用目安
登記費用・解散登記:約30,000円
・清算人登記:約9,000円
・清算結了登記:約2,000円
官報公告費用約30,000~40,000円
設備・在庫の処分費用設備の種類・数量によって変動
事務所・店舗の原状回復費用坪あたり約30,000~100,000円程度
専門家報酬数万円~数十万円程度
株主総会開催費用約100,000~1,000,000円程度

会社に債務が残っている場合や、従業員の解雇・退職に伴う費用(未払賃金・退職金など)が発生するケースでは、さらに費用がかかる可能性があります。

このように、法人の廃業費用は一律ではなく、会社の状況によって大きく変動します。事前に必要な費用の内訳を把握し、無理のない計画を立てておくことが重要です。

法人の廃業手続きの流れ|廃業届提出のタイミング

法人の廃業は、解散から清算結了まで複数のステップを踏んで進めます。
法人の廃業は、解散から清算結了まで複数のステップを踏んで進めます。

解散の検討・株主総会での解散決議
まず、解散理由や解散日、清算人候補などを整理したうえで、株主総会(もしくは社員総会)で解散の特別決議を行います。議事録には解散日や清算人の氏名などを明記します。
清算人の選任
解散決議とあわせて清算人を選任します。通常は代表取締役が清算人となりますが、別の人を選ぶことも可能です。
解散登記・清算人選任登記
解散後は、原則として2週間以内に法務局で解散登記と清算人選任登記を行います。この登記により、会社は「清算会社」となります。
廃業届(異動届出書など)の提出
登記完了後、速やかに税務署・都道府県・市区町村へ異動届出書や事業廃止届出書を提出します。これが一般的に「法人の廃業届」と呼ばれる手続きであり、解散登記の後に行うのが基本です。
解散公告・債権者への催告
官報に解散公告を掲載し、債権者に対して一定期間(通常2カ月程度)内に債権の申出を求めます。既知の債権者には個別通知も必要です。
財産目録・貸借対照表の作成
会社の資産や負債を整理し、財産目録と貸借対照表を作成します。これらは株主総会で報告し、承認を受けます。
清算業務の実施
資産の売却や債権回収を行い、債務の弁済を進めます。契約関係の整理などもこの段階で行います。
残余財産の分配
すべての債務の支払いが完了した後、残った財産があれば株主に分配します。
清算事務報告書の作成・承認
清算の経過と結果をまとめた清算事務報告書を作成し、株主総会(もしくは社員総会)で承認を得ます。
清算結了登記
報告書の承認後、2週間以内に法務局で清算結了登記を行います。これにより法人格が消滅します。
清算確定申告
最後に、清算期間中の所得について税務署へ確定申告を行います。これで法人としての税務手続きは終了します。

このように、法人の廃業届は「解散登記の後、速やかに提出する」のが基本的なタイミングです。全体の流れの中で位置づけを理解しておくことで、手続きをスムーズに進めやすくなります。

法人の廃業届を提出する際に注意すべきポイント

法人の廃業届は、単に提出すればよいものではなく、内容や提出先、提出後の管理まで含めて適切に対応することが重要です。

ここでは、手続き時に押さえておきたい主な注意点を解説します。

記載内容に誤りや抜けがないか事前にしっかり確認する

廃業届に記載する内容に誤りや漏れがあると、再提出や修正対応が必要となり、手続きが遅れる原因となります。

特に、以下のような項目はミスが起こりやすいため注意が必要です。

  • 法人名や所在地、法人番号などの基本情報
  • 解散日や廃業日などの日付
  • 提出先ごとに求められる記載事項

たとえば、登記上の解散日と届出書に記載した日付が一致していない場合、税務処理にズレが生じるおそれがあります。提出前に、登記情報や関連書類と照らし合わせて確認しておくことが重要です。

税務署だけでなく、都道府県や市区町村など他の提出先も確認する

法人の廃業手続きは税務署だけで完結するものではなく、都道府県や市区町村への届出も必要となります。それぞれの提出先ごとに様式や提出期限が異なるため、一部だけ対応して安心してしまうと、後から課税や問い合わせが発生するおそれがあります。

たとえば、都道府県や市区町村に対する届出を行っていない場合、法人事業税や法人住民税といった税金の課税対象として扱われ続ける可能性があります。

そのため、提出先ごとに必要な書類と期限を整理し、漏れなく対応することが重要です。

提出後の控えや関係書類は紛失しないよう適切に保管する

廃業届を提出した後は、控えや関係書類を必ず保管しておくことが重要です。

税務署や自治体から後日確認を求められた場合や、清算手続き・税務申告を進める中で、提出済みであることを証明する資料が必要になることがあります。控えが手元にないと、再度手続き内容を確認する手間が生じたり、対応が遅れたりするおそれがあります。

解散登記や清算結了登記に関する書類、各種届出書の控え、受領記録などはまとめて整理し、紛失しないよう適切に管理しておきましょう。

法人の廃業届は自分で対応できる?

法人の廃業手続きは、自分で対応することも可能です。

たとえば、従業員がおらず社会保険や労務手続きが発生しない場合や、借入や未払い債務がなく債権者対応が不要な場合には、手続きの負担は比較的軽くなります。

また、事業規模が小さく資産や在庫の処分が容易であり、株主も少数で意思決定がスムーズに行えるようなケースでは、必要書類や手順を確認しながら自分で進めることも現実的です。

もっとも、法人の廃業は解散登記や清算手続き、各種申告など複数の手続きが関係し、提出先や期限もそれぞれ異なります。書類の記載ミスや提出漏れがあると、手続きのやり直しや追加対応が生じるおそれがあります。

特に、債務が残っている場合や契約関係が複雑な場合には、判断を誤ることでトラブルに発展する可能性もあります。

状況に応じて、自分で対応するか、専門家に相談するかを慎重に判断することが重要です。

法人の廃業手続きについて弁護士に相談するメリット

法人の廃業手続きは、登記・税務・契約関係など複数の分野にまたがるため、全体像を把握しながら進める必要があります。弁護士に相談することで、法的リスクを抑えつつ、手続きを円滑に進めやすくなります。

複雑な廃業手続きの全体像を整理できる

法人の廃業は、解散決議から登記、各種届出、清算、最終的な申告まで、複数の手続きを段階的に進める必要があります。それぞれに提出先や期限があり、順序を誤ると手続きが滞るおそれもあります。

弁護士に相談することで、こうした一連の流れを整理し、「いつ・何を・どこに提出するのか」を明確にできます。全体像を把握したうえで進めることができるため、無駄な手戻りを防ぎ、スムーズに廃業手続きを進めやすくなります。

税務署・法務局などへの届出漏れを防げる

法人の廃業では、法務局での登記手続きに加え、税務署や自治体への届出など、複数の機関への対応が必要となります。提出書類や期限もそれぞれ異なるため、自己判断で進めると、一部の手続きを失念してしまうおそれがあります。

弁護士に相談することで、必要な届出を一覧で整理し、どの手続きをどのタイミングで行うべきかを確認できます。結果として、届出漏れや提出遅れを防ぎ、後から追加対応が発生するリスクを抑えやすくなります。

債務や契約関係の整理について適切な判断ができる

法人を廃業する際には、借入金や未払金といった債務のほか、取引先との契約やリース契約、賃貸借契約など、さまざまな法的関係を整理する必要があります。これらを適切に処理しないまま廃業を進めると、後から請求や紛争が生じるおそれがあります。

弁護士に相談することで、契約の解除方法や債務の整理手順について法的観点から判断でき、リスクを抑えた対応を進めやすくなります。状況に応じた適切な進め方を選択できる点が大きなメリットです。

債権者対応やトラブルを未然に防げる

法人の廃業にあたっては、債権者への通知や支払い対応が必要となります。対応の方法や順序を誤ると、債権者とのトラブルに発展するおそれがあります。

弁護士に相談することで、債権者への適切な通知方法や対応の進め方を整理でき、公平性を保ちながら手続きを進めやすくなります。また、交渉や対応を任せることで、感情的な対立や不要な紛争を防ぐことにもつながります。

清算や解散手続きをスムーズに進められる

法人の廃業では、解散登記から清算手続き、清算結了登記まで、一定の順序に従って手続きを進める必要があります。各段階で必要な書類や対応が異なるため、進め方を誤ると手続きが滞るおそれがあります。

弁護士に相談することで、手続きの流れに沿って必要な対応を整理でき、適切なタイミングで手続きを進めやすくなります。結果として、無駄な手戻りを防ぎ、全体をスムーズに進行させることにつながります。

手続きの負担を軽減し、本業や生活への影響を抑えられる

法人の廃業手続きは、書類作成や各機関への届出、関係者との調整など、多くの時間と手間がかかります。これらをすべて自分で対応しようとすると、本業や日常生活に支障が出る可能性もあります。

弁護士に相談することで、煩雑な手続きや対応を任せることができ、負担を大きく軽減できます。重要な判断に集中しながら手続きを進めやすくなるため、本業や生活への影響を抑えつつ、効率的に廃業を進めることが可能です。

法人の廃業届に関してよくある質問(Q&A)

法人の廃業届は法務局にも提出が必要?

法人の廃業届は、法務局に提出するものではありません。廃業届は主に税務署や自治体に提出する書類です。

一方で、法人を正式に消滅させるためには、法務局で「解散登記」や「清算結了登記」を行う必要があります。これらは廃業届とは別の手続きであり、いずれも行うことで法人の廃業が完了します。

廃業届の提出と解散・清算手続きの違いは?

廃業届は、事業を終了した事実を税務署などに知らせるための届出です。これに対し、解散・清算手続きは、法人格を消滅させるための法的な手続きです。つまり、廃業届は「行政への届出」、解散・清算は「会社を正式に終了させるための手続き」という位置づけになります。

廃業届だけでは法人は消滅しないため、両方を適切に行う必要があります。

法人の廃業届はe-Taxでも提出できる?

法人の廃業届は、e-Taxを利用して提出することも可能です。電子申請を利用することで、税務署へ出向くことなく手続きを進められる点がメリットです。

ただし、すべての届出が電子申請に対応しているわけではないため、対象となる書類かどうか事前に確認しておくことが重要です。

廃業届を提出した後に取り消すことはできる?

廃業届を提出した後でも、直ちに法人が消滅するわけではありません。そのため、状況によっては再度事業を開始すること自体は可能です。

ただし、すでに解散登記や清算手続きを進めている場合には、単純に取り消すことは難しくなります。状況によって対応方法が異なるため、判断に迷う場合は専門家へ相談することが望ましいです。

廃業届の提出後にやるべき手続きはある?

廃業届を提出した後も、解散・清算に関する手続きや税務申告など、必要な対応が残っています。具体的には、清算業務の実施、清算結了登記、清算確定申告などが挙げられます。これらをすべて完了してはじめて、法人の廃業手続きが終了します。

そのため、廃業届の提出だけで安心せず、その後の手続きまで見据えて対応することが重要です。

まとめ 法人の廃業届について迷ったら弁護士に相談を

法人の廃業は、廃業届の提出だけで完了するものではなく、解散登記や清算手続き、各種届出・申告など、複数の手続きを順序に沿って進める必要があります。

提出先も法務局・税務署・自治体などに分かれており、全体像を把握しないまま進めると、届出漏れや手続きの遅れにつながるおそれがあります。

リスクを避け、スムーズに廃業手続きを進めるためには、状況に応じて専門家のサポートを活用することが重要です。手続きの進め方に不安がある場合や対応が複雑な場合には、早めに弁護士へ相談することを検討しましょう。

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