会社設立の費用はいくら?株式会社と合同会社それぞれを解説
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
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この記事でわかること
- 株式会社の設立にかかる費用
- 合同会社の設立にかかる費用
- 自分で設立する場合と専門家に依頼する場合の違い
- 会社設立の費用を減らす方法
- 設立後にかかる費用
会社設立の費用を考える際には、設立時に一度だけかかる初期費用(イニシャルコスト)と、設立後にかかる維持費(ランニングコスト)の2つを考える必要があります。
会社設立時の初期費用は、株式会社か合同会社かなど設立する会社形態によって異なります。また、自分で設立手続きを行うか、専門家に依頼するかどうかでもかかる費用は変わってきます。ここでは、会社設立にかかる費用について、株式会社と合同会社それぞれのケースにわけて詳しく解説します。
設立後にかかる維持費は、事業内容によって千差万別ですが、「4つのカテゴリー」から考えると理解しやすいでしょう。
なお、ベンチャーサポートでは会社設立に関する無料相談を行っています。
会社設立・起業に関してお悩みの方は、下記から無料相談をご利用ください。
目次
株式会社の設立にかかる費用はおよそ23万円
株式会社の設立にかかる費用は、法的な手続きに必要な法定費用、実印をはじめとした必要経費を合わせておよそ23万円です。提出書類の作成や申請の代行を専門家に依頼する場合は、さらに5万~9万円がかかります。
株式会社を設立する際に必要な主な費用は以下のとおりです。
- 法定費用(定款の収入印紙代、認証手数料、謄本交付手数料、登録免許税)
- 会社の実印作成代
- 代表者個人の印鑑証明の取得費
- 資本金
上記のうち資本金は、事業の初期費用や運転資金として使うお金です。厳密には費用ではありませんが、会社設立時には資本金などある程度の金額が必要となります。
資本金は1円からでも設立が可能です。ただし、資本金が少なすぎるとデメリットも発生します。下記に資本金の決め方や業界別の相場をまとめていますので、ご参考にしてください。
法定費用
法定費用は、公証役場や法務局といった役所に支払う費用のことです。具体的には、定款の収入印紙代をはじめ、定款の認証手数料や謄本交付手数料、登録免許税のことで、定款の提出方法や資本金の金額などによって異なります。それぞれの金額の目安は以下のとおりです。
・定款の収入印紙代、公証役場での認証手数料や謄本交付手数料
株式会社の設立にあたっては、定款を公証人役場で認証してもらう必要があります。定款は紙か電子のいずれかで作成しますが、紙の場合は収入印紙代4万円が必要です。電子定款で作成する場合、印紙代はかかりません。
公証役場での認証手数料は、資本金が100万円未満なら3万円、資本金が100万円以上300万円未満なら4万円、その他の場合は5万円です。また、定款の謄本を作成してもらうには、1ページあたり250円の謄本交付手数料がかかり、定款のページ数分の費用がかかります。一般的な定款は8~10ページ程度ですので、謄本交付手数料として約2,000円がかかるとお考えください。
・登録免許税
登録免許税は法人登記の際にかかる税金です。株式会社の登録免許税は「資本金×0.7%、または15万円のどちらか高いほう」を納めます。
なお、各地における創業を促進するため、会社設立時の登録免許税が半額になる支援制度があります。具体的には、自治体の「特定創業支援等事業」が実施するセミナーを受け、法人登記の申請時に「特定創業支援等事業による支援を受けた証明書」を添付すると登録免許税が半額になります。産業競争力強化法にもとづいた支援策を活用することで設立時の費用を抑えられるでしょう。
実印の作成費、印鑑証明書や登記簿謄本の発行費といった必要経費
会社設立時の必要経費として、実印の作成代、印鑑証明書の発行手数料がかかります。
会社で使用する法的な文書や契約書には、会社の実印を押す必要があります。他にも社内文書や領収書、請求書に使用する角印、法人口座開設にあたって銀行に届け出る銀行印も併せて作りましょう。費用の目安は5,000円程度で、素材や依頼する店舗によって費用は異なります。
また、会社設立の手続きでは、発起人や取締役の実印が本物であることを証明する印鑑証明書が必要です。印鑑証明書は1枚あたり約300円で、それぞれ必要枚数分の費用がかかります。
資本金
資本金は事業の初期費用や運転資金に使うことができます。資本金1円から会社を設立できますが、1円での設立は実質的に事業を行うことができないだけでなく、社会的な信用面でも不利になる可能性があります。事業が軌道に乗るまで利益がでないことも見越して、ある程度の金額を用意しておきましょう。一般的には、初期費用に加えて、毎月かかる事業を行うために必要な運転資金6カ月分の金額が目安です。
合同会社の設立にかかる費用はおよそ7万円
合同会社の設立に必要な費用はおよそ7万円です。株式会社と項目はほぼ同じですが、合同会社の場合、定款の認証が不要なため、認証に伴う費用がかかりません。
- 法定費用(定款の収入印紙代、登録免許税)
- 実印や印鑑証明書
- 資本金
合同会社の登録免許税は、資本金×0.7%、または6万円のどちらか高いほうとなり、全体的に株式会社よりも費用を抑えられる特徴があります。合同会社も産業競争力強化法にもとづいた支援策を行うことで、登録免許税が半額になります。例えば、定款を電子で作成すると印紙代がかからないため、登録免許税も半額になれば、設立にかかる法定費用はおよそ3万円になるでしょう。
株式会社と合同会社の設立時の費用の違い
株式会社と合同会社の設立時にかかる費用の違いは、定款の認証手数料とそれに伴う必要経費、登録免許税です。合同会社のほうが16万円ほど安く会社を設立できるだけでなく、定款の認証が不要な分、手続きにかかる時間も短縮できます。
株式会社か合同会社かは、行う事業や今後の事業展開によっても異なりますが、「設立費用を抑えたい」「早く設立したい」といった場合は合同会社を選ぶと良いでしょう。
一方、知名度の面から株式会社という呼び方を使いたい場合をはじめ、将来的に株式上場を視野に入れて事業拡大を目指す場合や、多くの資金を必要とする事業を行う場合などは社会的な信用力も高い株式会社がおすすめといえます。
定款の作成方法や資本金によっても費用は異なるので、以下の表を参考にしてください。
■株式会社と合同会社の設立費用の違い
株式会社 | 合同会社 | |
---|---|---|
定款の収入印紙代 | 4万円(紙) ※電子定款なら0円 | 0円 |
定款の認証手数料 | 資本金100万円未満:3万円 資本金100万~300万円未満:4万円 資本金300万円以上:5万円 | 0円 |
定款の謄本交付手数料 | 2,000円 | 0円 |
登録免許税 | 15万円、または資本金×0.7% のどちらか高いほう | 6万円、または資本金×0.7% のどちらか高いほう |
実印の作成や各種証明書の発行手数料などの実費 | 約1万円 | 約1万円 |
合計 | 約23万2,000円 | 約7万円 |
合同会社の設立では、公証人による原始定款の認証は不要ですが、紙で定款を作成した場合は収入印紙代4万円が必要となります。
会社に保存する原始定款に印紙を貼付しなければ、印紙税法違反となるため、株式会社の設立と異なり、公証人による原始定款の認証が必要ない合同会社の設立では注意しましょう。
なお、電子で原始定款を作成する場合は、印紙の貼付が不要となるため、収入印紙代4万円はかかりません。
専門家に会社設立を依頼する場合の費用
会社設立に必要な手続きは、司法書士や行政書士などの士業に依頼することが可能です。ただし、士業によって対応できる領域が異なるので、依頼したい手続きごとに士業を変更する必要があります。例えば、書類作成や定款の認証手続きの代行は、司法書士や行政書士に依頼できますが、法人登記の申請は司法書士しか代行できません。また、税理士なら資本金や役員報酬の設定、節税対策を考えた資金繰りなどのアドバイスをもらえます。
士業へ依頼すると、手数料が約5万円ほどかかります。しかし、定款を電子で作成してもらえば、収入印紙代が0円となるだけでなく、電子署名に必要なICカードリーダライタや専用のソフトを用意する必要もありません。代行手数料が5万円なら、実質1万円の負担で定款作成を依頼できるともいえます。
一例ですが、資本金100万円の株式会社を自分で設立する場合と、専門家に依頼する場合の費用を比較すると以下のようになります。
■資本金100万円の株式会社を設立した場合の費用例
自分で会社設立を行う場合 | 専門家に依頼する場合 |
---|---|
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合計:232,000円 | 合計:242,000円 |
事業準備に集中したい、設立手続きの手間を減らしたいといった場合は専門家への依頼を検討してみましょう。
税理士は会社設立後の会計や決算でも長い付き合いになるため、設立後の顧問契約を条件として会社設立時の費用が無料になる場合があります。
会社設立の費用負担を減らす方法
会社設立にかかる費用を減らす方法がいくつかあります。そのなかで、起業家の方が広く活用できる方法を2つご紹介します。注意点も一緒にお伝えします。
また直接的に設立の費用が安くなる方法ではありませんが、設立後1年程度の間の費用負担を補助する「小規模事業者持続化補助金」についても、ご紹介します。
特定創業支援事業で登録免許税が半額
特定創業支援事業とは、産業競争力強化法という法律に則って各市区町村が起業を応援するために行っている公的なサポート事業です。各市町村が商工会議所や民間企業と連携をして起業に役立つセミナーなどを実施し、その受講者には会社設立時の登録免許税が半額になる特典があります。具体的には、株式会社の場合は登録免許税が15万円から7万5千円になります。合同会社の場合は、登録免許税が6万円から3万円になります。また日本政策金融公庫の融資に有利になる特典もあります。
- これから創業を行おうとする方や、創業後5年未満の方が対象。(既に経営している会社があり、新たに新会社を設立する場合は対象外。)
- セミナーや講習の受講に2~3ヶ月かかる。時期や場所によっては受講予約が混み合って困難なこともある。
- セミナー受講後に登録免許税を半額にする証明書が発行されるまで1ヶ月程度かかる。
- 本店所在地が変わるなどの設立要項の変更があると、不受理になることがある。
上記4点の注意点の中でも特に注意をしておくべきことが、「セミナーや講習に2~3ヶ月かかる」ことと「証明書が発行されるまで約1ヶ月かかる」ということです。つまり。4ヶ月程度の時間が必要になるのです。急ぎで会社設立をお考えの方が利用できないのはもちろんですが、4ヶ月設立を遅らせることでビジネスチャンスを逸してしまうのであれば、登録免許税が半額になって得をする金額以上に損をすることになります。
設立後の税理士顧問とセットで手数料無料
税理士事務所の中には、会社設立後の税務顧問を条件に会社設立の手数料を無料にしているところがあります。また、設立後に発生する費用の一部が無料になるケースもあります。
これは税理士事務所が顧客獲得施策の一環として、司法書士や行政書士への支払いを広告宣伝費と考えて肩代わりしているからです。ベンチャーサポート税理士法人も、税務契約とセットで設立手数料を0円にしております。契約期間の縛りもありませんので、お気軽にお問い合わせください。
- 税理士事務所によっては、契約期間に縛りがある。
- 設立後すぐに税理士を付ける予定の無い方には不向きである。
会社設立直後から税理士費用を避けたいという方は、無料相談で設立直後の税務手続きを確認しておきましょう。税理士は、税理士法で社会貢献を義務付けられていますので、無料相談だけでもお役に立つ情報を提供します。
※税理士法第一条抄訳「税理士は、税務に関する専門家として納税義務者の信頼にこたえ、納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」
(参考)小規模事業者持続化補助金の活用
補助金は、直接的に会社設立時の費用が安くなるわけではありませんが、運転資金や設備資金の一部が貰える制度です。ぜひ知っておいてください。
その中でも設立直後から申請ができて、使い勝手がよく、採択率も高めの補助金としては、「小規模事業者持続化補助金」がおすすめです。小規模事業者持続化補助金の特徴と注意点を記載は下記になります。ベンチャーサポートでも補助金サポートを行っておりますので、お気軽にご相談ください。
特徴
- 小規模事業者が経営計画を作成して販促に取り組むことを補助する目的です。
- 通常枠と特別枠があり、どちらで申し込むかで補助される金額が変わります。通常枠は使った費用の2/3が補助され、最大額は50万円。特別枠は使った費用の2/3が補助され、最大額は200万円。
- 年に数回申し込み期間が設定されており、その期間ごとに締切があります。
- 必ず補助金が貰えるわけではなく、採択を受ける必要があります。不採択になると、補助金は貰えません。
- 投資するタイミングは、補助金の交付が決定した後です。実施期限も設けられています。
- 申請書に記載した内容の投資にしか補助金は支払われません。
- 1年後に事業効果の報告をする義務があります。
会社設立後にかかる費用
株式会社でも合同会社でも、会社を設立した後にかかる費用を知っておくことが重要です。ここでは、設立後にかかる費用を4つのカテゴリーに分けて考えることで、ご自身の設立後に必要となる費用を見積もれるようになってください。そのうえで、先行する費用が大きくなりすぎると思われる場合は、創業融資の活用も視野に入れましょう。
1.変動費
変動費とは簡単に言いますと、売上の金額に応じて変動していく経費のことです。つまり、売上が0であれば全く掛からない費用で、売上が増えればそれに応じて増加する費用のことです。たとえば、物販であれば仕入という費用は売上に連動します。製造業であれば、原材料費は売上に連動します。起業家が変動費について注意しなければいけないことは、支払いのタイミングです。つまり「支払いの時期は、売上金の入金より早いか遅いか」ということです。売上金が先に入金され、変動費の支払いがその後の場合は、変動費がいくらになっても問題ではありません。資金繰りが詰まることは無いからです。ですが、売上の入金より先に支払いが発生する場合は、その金額も会社設立に関係して発生する費用と認識をしておくことが必要です。
2.役員報酬+社会保険
会社を設立すると起業家自身の取り分は、「役員報酬」として自分自身で金額を決定し、会社から支給することになります。役員報酬には社会保険が掛かります。社会保険は役員だけの会社でも加入しなくてはなりません。社会保険の金額は額面金額のおおよそ15%弱です。この金額を会社と被保険者で半分ずつ負担することになります。例えば、役員報酬が月額30万円(40歳未満)の経営者の場合、本人負担は約4万3千円で同額を会社も負担しますので、会社が支払う金額は約8万6千円です。役員報酬は一度決定すると、事業年度の途中で変更することができないため、社会保険の金額もほぼ同じ金額になります。このように売上に関わらず一定の費用が発生するものを固定費と言います。
3.役員報酬以外の固定費
役員報酬は自分で決定することができる固定費でしたが、それ以外にも固定費は発生します。細かい固定費を全て見積もることは難しいですが、少なくとも下記の5つの固定費は金額も大きくなるため、シミュレーションをしておく必要があります。
- 従業員給与:従業員を雇う場合に発生。社会保険も掛かることを忘れない。
- 外注費:業務の一部を外部にアウトソーシングする場合に発生。
- 地代家賃:事務所や店舗を借りる場合に発生。
- 消耗品費:パソコンや名刺、文房具、書籍等消耗品全般の費用。
- 広告宣伝費:集客のために広告を利用する場合に発生。
その他、水道光熱費や旅費交通費、税理士費用なども発生しますので、月10万円程度を見積もっておく必要があります。
なお、税理士事務所の中には設立後の顧問契約を前提として、会社設立時の無料相談を行ったり、設立に関する手数料を負担して実質手数料0円で会社設立ができる場合があります。
ベンチャーサポート税理士法人では顧問契約にかかわらず、会社設立時の無料相談に対応しています。そのうえで、税理士顧問とセットであれば設立の代行手数料も0円になります。税理士以外のすべての士業も揃っていますので、ぜひお気軽にご相談ください。
4.税金
法人を作ると色々な税金が掛かってきます。その中で特に重要なものは、次の3つです。
- 法人税:年間利益が800万までであれば、年間利益の約25%。赤字でも最低約7万円が発生。1期目が終わってから2ヶ月以内に納税。
- 消費税:「税抜売上✕10%」の金額から、消費税が掛かる費用の10%の金額を差し引いた額。1期目が終わってから2ヶ月以内に納税。
- 源泉所得税:役員報酬の金額に応じて課税。原則、毎月10日に納税。特例を活用することで、年に2回(7月・1月)にまとめて後払いも可能。
まとめ
株式会社も合同会社も会社を設立する際に一度だけかかる費用として、法定費用や必要経費、資本金が必要です。ただし、会社形態や資本金の金額、定款の作成方法によって設立費用は異なります。また、専門家に依頼するか、自分で手続きするかでも費用は変動します。
設立後はランニングコストとして、「変動費」、「役員報酬+社会保険」「その他の固定費」、「税金」と言った費用が発生します。基本的には売上金の中から支払っていくことになりますが、売上金が入ってくるまでの間は、その分も会社設立時に用意をしておかなければいけません。
こういったシミュレーションを行い、必要に応じて融資の申込みをサポートする専門家は税理士になります。
弊社の場合は、無料相談でシミュレーションも行っていますので、お気軽に無料相談をご利用ください。
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