最終更新日:2022/6/13
ものづくり補助金は個人事業主でも申請できる!申請方法や採択を受けるコツとは
ベンチャーサポート社労士法人 社会保険労務士。
大学を卒業後に、都内にある社会保険労務士事務所での勤務経験を経て、ベンチャーサポートに入社。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-nishi
この記事でわかること
- ものづくり補助金を個人事業主や小規模事業者も受け取ることができる
- ものづくり補助金を申請する際には条件を満たさなければならない
- 個人事業者がものづくり補助金を受け取るのは難しいがコツがある
「ものづくり補助金」という補助金制度があり、条件を満たした中小企業が利用することができます。
ただ、実際には個人事業主や小規模な事業者が補助金を受けるにはハードルが高いという実状があります。
しかし、個人事業主でも対象となっている以上、要点を抑えて申請をすれば補助金を受け取ることは可能です。
ここでは、個人事業主や小規模事業者でもものづくり補助金を受け取るための申請方法やコツについて解説します。
目次
ものづくり補助金は個人事業主でも申し込みできる
ものづくり補助金とは、正式名称を「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といいます。
中小企業庁が実施している補助金の1つであり、革新的な取り組みを行う事業者に対して支給されるものです。
具体的には新商品の開発、新サービスの開発、生産プロセスの開発や生産性の向上などを行う事業者が対象となります。
ものづくり補助金の対象となる経費の2分の1を補助してもらうことができます。
たとえば、対象となる1,000万円の機械を購入した場合は、500万円の補助金を受け取ることができるのです。
ただし、補助金には上限額があり、一般型は1,000万円、グローバル展開型は3,000万円、ビジネスモデル構築型は1億円となっています。
なお、小規模事業者が一般型・グローバル展開型で申請した場合は、補助率が3分の2に上昇します。
ものづくり補助金は中小企業を対象とした制度であり、大企業が申請して受け取ることはできません。
一方、個人事業主は大企業でないため、申請して受け取ることができるのです。
ものづくり補助金を申請する条件
ものづくり補助金は、申請した企業にとっては大きなメリットがありますが、どの企業でも利用できるわけではありません。
補助金を受け取るためには、多くの条件をクリアしなければならないのです。
どのような条件を満たさなければならないのか、確認していきましょう。
中小企業者であること
先ほども説明しましたが、ものづくり補助金は大企業は受け取ることができず、中小企業者だけが対象となっています。
中小企業者に該当するためには、資本金または従業員数で一定の基準以下でなければなりません。
業種によってその基準は異なるため、まずはその基準となる数値を確認しておきましょう。
中小企業者の定義(中小企業等経営強化法第2条第1項)
業種 | 資本金 | 常勤の従業員数 |
---|---|---|
製造業・建設業・運輸業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業(ソフトウェア業・情報処理サービス業・旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
ソフトウェア業又は情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人 |
資本金か従業員数のいずれかの基準を満たせば、中小企業者に該当します。
一方、大企業の子会社の場合は、資本金や従業員の基準を満たしても中小企業者に該当しない場合もあります。
なお、個人事業主の場合は資本金がありませんから、必ずこの要件に該当することとなります。
設備投資を行って革新的な開発や製造を行うこと
補助金の対象となるのは、設備投資を行った際の設備投資資金です。
機械装置を購入した際の費用や、システムを構築した際の費用などがメインとなります。
この他、システム構築に関して専門家に支払った経費や運搬費、外注費なども含まれます。
このような設備投資を行わなければ、ものづくり補助金を利用することはできません。
また、この設備投資により革新的な商品やサービスの開発、生産プロセスの改善が求められます。
製造業だけでなく、様々な業種の会社がこの要件を満たせば補助金を受けることができるのです。
その事業が生産性の向上に寄与するものであること
ものづくり補助金の申請は、事業単位で行います。
その事業でものづくり補助金を利用した設備投資を行い、事業単位で付加価値額が上昇することが求められます。
生産性の向上に関しては事業計画を作成し、事務局の審査を受けることとなります。
従業員の給料が上昇していること
従業員に対する給与支給総額が、年1.5%以上増加することが求められます。
また、事業場内の最低賃金がその地域の最低賃金より30円以上高いことも達成しなければなりません。
【2020年版】小規模事業者がものづくり補助金を受け取っている割合
2020年に実施されたものづくり補助金の中に、個人事業者を含めた小規模事業者はどれくらいの割合を占めるのでしょうか。
ものづくり補助金のホームページでは、従業員数による事業者の規模別に申請した割合と採択率を公表しています。
これによれば、ものづくり補助金の申請を行った事業者は従業員数5人以下の事業者が最も多く、37.6%となっています。
ついで、従業員数6人~20人の事業者が33.1%、21人~50人の事業者が16.8%となっています。
事業規模が大きくなるにつれこの割合が低下し、101人以上の事業者は全体の4.6%となっているのです。
一方、採択率が一番高いのは6人~20人の事業者で、63.4%となっています。
その他、5人以下の事業者が56.4%など、おおむね50%~60%程度となっていることがわかります。
規模による採択率にはそれほど大きな違いはありませんが、個人事業主がものづくり補助金を受けるには高いハードルがあります。
個人事業主の場合、どのような点で補助金を受けるのが難しくなるのでしょうか。
個人事業主がものづくり補助金を受け取るのが難しい理由
個人事業主であっても、ものづくり補助金を受け取ることはできますが現実には難しい点があります。
なぜ個人事業主の場合はものづくり補助金を受けるのが難しいのか、その理由を解説します。
事業計画書の作成が難しい
事業計画書は、ものづくり補助金の申請の際に必ず提出しなければならない書類です。
事業計画書をいかに作成するかが申請の成功のカギであり、外部の専門家に依頼して書類を作成することも珍しくありません。
ただ、個人事業主の場合、外部の専門家に依頼する余裕がない場合もあります。
また、外部の人に依頼したとしても、本人がまったく何もしなくていいというわけではありません。
時間的な余裕がない中で、ものづくり補助金の申請を十分に行えないということも考えられるのです。
人の配置など社内体制が不十分
ものづくり補助金を支給されるためには、単に設備投資を行えばそれでいいというわけではありません。
事業所内で事業化を行う人が必要とされ、そのような人がいないと審査に通らないことも考えられます。
個人事業主の場合、そのような人を配置するのは極めて難しいことが考えられます。
多くの場合、個人事業主本人やその家族だけで事業を行っているためです。
小規模な事業者ほど、事業者内の体制は十分とはいえず、審査に通らないケースが増えるのです。
最低限投資に必要な金額をクリアできない
ものづくり補助金には上限額があることは説明しましたが、これとは別に最低限の投資金額についての定めがあります。
補助金の額が100万円以上となるような投資が行われなければ、補助金を受けることはできないのです。
2分の1が補助金となる場合は、最低でも200万円の投資が必要です。
また、3分の2が補助金となる場合でも、150万円の投資が必要とされます。
業種によっては個人事業主でこれだけの設備投資を行うことはまれであり、そもそも対象にならないことも考えられます。
債務超過や赤字の状態である
債務超過や赤字であるからといって、補助金の対象から外れるというわけではありません。
ただ、補助金を受け取って運転資金にしてしまったのでは、補助金の意義が失われてしまいます。
そのため、資金的に余裕があり、事業の継続性がある事業者に支給が優先されます。
少しでも資金的に余裕のある状態で申請できるようにしておくのがいいでしょう。
ものづくり補助金の申請方法・必要書類
ものづくり補助金は、毎年、中小企業庁から公募要領が公表され、その要領に定められた期日にしたがって手続きを進める必要があります。
そのおおまかな流れは変わることはありませんので、どのように進めていくのか、その流れを確認していきます。
1)申請受付
ものづくり補助金を受けるためには、まずは事業者が申請しなければなりません。
申請はすべて電子申請で行うこととされており、郵送や窓口での申請はできません。
申請を行う前に、電子申請の利用環境にあることを確認しておき、必要に応じて登録しておきます。
また、申請を行う前に公募要領をよく読んで、申請書類の作成に多くの時間をかける必要があることはいうまでもありません。
2)採択結果の通知
期日までにて申請を終えると、それから1~2か月後に採択結果が公表されます。
申請者に直接メールで通知される他、ものづくり補助金のホームページにも事業者の一覧が掲載されます。
3)交付申請
ものづくり補助金に採択された事業者は、続いて補助金の交付申請を行います。
この交付申請とは、必要となる経費の見積書を準備し、実際に支払う金額やその内容について確認を得ることです。
実際に設備の購入を行う前に、この確認を受けなければならないのです。
4)交付決定
交付申請を行った結果、その内容に問題がなければ、補助金の交付が決定します。
交付決定通知を受け取ることで、はじめて発注や契約が可能となるのです。
逆に、交付決定がなされるまでは、契約や支払などはできないため注意が必要です。
5)補助事業の実施
交付決定の通知を受けたら、実際の契約や発注を行い、設備の取得を行います。
このように、申請した事業に実際に着手することを補助事業の実施といいます。
6)実績報告
補助事業の実施の期間は、交付決定から10か月以内とされています。
そのため、10か月以内に投資設備に関するすべての手続きを終えて、実績報告を行う必要があります。
10か月以内に完了しなければ、補助金を受け取ることはできません。
補助事業が終了したら、実績報告書などの書類を事務局に提出します。
7)確定検査
実績報告書を提出したら、事務局内でその書類の確認を行い、交付される補助金の額が決定されます。
必要に応じて実地調査などの手続きが行われることもあるため、対応しなければなりません。
補助金の額が確定したら補助金の交付を申請し、補助金を受け取ることとなります。
なお、補助金を受け取ったら、その後5年間は事業化状況報告を行う義務があります。
個人事業主が補助金を受け取るための事業計画書を作るコツ
ものづくり補助金を受けるための申請では、事業計画書の作成が成否を大きく分けることとなります。
ここでは、個人事業主でも申請が採択される確率が高くなる事業計画書の作成方法について見ていきましょう。
審査基準を意識した事業計画書にする
事業計画書の審査では、いくつかのポイントとなる記載項目があるため、特に注意して記載するようにします。
中でも事業の革新性、事業の将来性、社内の体制、資金計画などは、審査結果に大きく影響するものです。
これらの内容が問題ないと思われるような事業計画書を作成することが必要となります。
事業実施体制を整備する
事業計画書に書かれた事業を実行できるかという点で、社内の体制が整備されているかどうかが重視されます。
ただ、個人事業主の場合は多くの人が社内にいるわけではないことから、どうしても評価が下がってしまいます。
そのような時は、外部の協力会社を活用したり、効率的な事業運営を行ったりするといった工夫をしましょう。
資金繰りに不安のない状態とする
補助事業を実施できるかどうか、そしてその事業を継続できるかどうかを最終的に分けるのは資金繰りです。
いくら将来性のある事業であっても、資金繰りがうまくいかなければ、その事業を続けることはできません。
自己資金を計画的にためておくだけでなく、金融機関からの借入なども利用するようにしましょう。
まとめ
ものづくり補助金は、製造業だけでなく幅広い業種で利用できるため、多くの事業者が対象となる可能性があります。
ただ、事業計画書など作成しなければならない書類は多く、要件をクリアするのは決して簡単ではありません。
個人事業主のような小規模事業者も対象となっていますが、審査に通るためには多くのポイントがあります。
確実に審査を通るためには、専門家の力を借りることも検討しておくといいでしょう。