最終更新日:2022/6/13
公的融資のメリットやデメリットとは?個人事業主が利用できるおすすめの資金調達方法まとめ
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
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YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
この記事でわかること
- 公的融資について理解できる
- 公的融資を利用するメリット・デメリットがわかる
- 個人事業主が利用できる公的融資がわかる
- 新型コロナの影響を受けている個人事業主におすすめの公的融資がわかる
融資というと、ある程度大きな会社向けの資金調達方法ではないかと考える人もいますが、個人事業を行っている人向けの融資商品は沢山あります。
その中でも、公的融資という公的機関からの融資を個人事業主が受けることも可能です。
ただ公的融資と聞いても、実際にどのような融資制度があるのか、どこに申し込めばよいのか、自身は融資条件に合致するのか、よく分からないという人も多いのではないでしょうか。
本記事では、公的融資とは何か、公的融資を利用するメリット・デメリット、個人事業主でも利用できる公的融資について解説していきます。
また、合わせて現在も新型コロナウイルスの影響によって業績不振に陥っている個人事業主に向けて、おすすめの公的融資もご紹介します。
公的融資とは
まず初めに公的融資とはどのようなものか、概要について説明していきます。
公的機関(国・自治体)からの融資
融資には大きく、公的融資と民間融資があります。
民間融資は、銀行や信用金庫、消費者金融といった民間企業からの融資を指します。
一方、公的融資は、国や地方自治体といった公的な機関が提供している融資制度を利用することを言います。
具体的に公的機関が提供している融資制度とは、政府100%出資の日本政策金融公庫や商工組合中央金庫といった機関が行うものです。
ではなぜ、国や自治体といった公的機関が企業や個人事業主に対して融資を行うのでしょうか。
公的機関は、国民の暮らしを豊かにし、安全を提供するために設けられています。
そして、暮らしを豊かにするという目的を達成するためには、雇用を創出する必要があり、雇用を増やすために事業や会社を大きくしていかなければなりません。
そして、ある程度の規模を持った企業や事業が増えることによって、経済も活性化し、国民の暮らしも豊かになっていきます。
もちろん、経済が活発になれば、国や自治体の税収入も増えますので、より社会全体が豊かになることにつながっていきます。
民間融資との違い
民間融資は、銀行や信用金庫といった民間企業の融資を指します。
融資を行っている民間企業は、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫といった公的機関よりも数が多く、全国各地に支店もありますので、融資を相談しやすいという特徴があります。
また、民間融資の場合、企業によって様々な融資商品を展開していますので、会社や事業の状況に応じて、融資商品を選ぶことができます。
しかし、利息負担が重いタイプの商品も少なくはありません。
一方で、公的融資は民間融資に比べて、利率が低く、利息負担が軽いというメリットがあります。
公的融資を利用するメリット
公的融資は、一般的に民間融資よりも利息負担が軽いというメリットを説明しましたが、ここで更に公的融資についての理解を深めるために、詳しく公的融資を利用するメリットとデメリットについて解説していきましょう。
まずは、メリットからです。
低金利などの好条件で融資を受けられる
公的融資は、利用する融資制度によって多少の違いはあるものの、全般的に民間融資よりも低金利で融資を受けることができます。
また、長期間にわたって借り入れを受けることも可能で、据置期間という返済をしなくてもよい期間が設定される融資制度もあります。
企業や事業の規模が小さくても大丈夫
公的融資は、企業の規模や信用度といった基準だけではなく、事業の新規性や事業再生計画など各融資制度に設定された条件を満たすかどうかという基準で判断されます。
ですから、信用度の高い大企業向けではなく、中小企業や小規模事業者(個人事業主を含む)に向けた融資制度が用意されています。
また、中小企業や小規模事業者が融資を申し込む際に代表者自身が連帯保証人となることを求められることはよくあることですが、踏み切るのには勇気が必要です。
しかし、公的融資の融資制度によっては無担保・無保証人で融資を受けられる制度がありますので、融資を受けやすいということもメリットです。
公的融資を利用するデメリット
続いてデメリットについて説明します。
審査が厳しい
公的融資は、民間融資よりも、ある意味審査が厳しいと言えます。
民間融資では、信用度や返済能力、担保物件の査定などその企業の状況を判断されますので、融資のために準備することは多くはありません。
ですが、公的融資を申し込む場合は準備する必要書類も多いですし、「事業の新規性」「長期の経営計画」といった各融資制度に必要な書類を用意しなければなりません。
通常の決算書類だけでなく、企業や事業の具体的な内容を審査されることになりますので、民間融資よりも厳しいと言えるでしょう。
融資までに時間がかかる
銀行や信用金庫といった民間融資の場合、様々な融資商品があらかじめ用意されていて、その基準に合えば、審査や手続きも早く、数日から1週間程度で融資がおりるケースもあります。
一方、公的融資の場合は、数週間から1ヵ月以上審査に時間がかかることも多く、申し込みから実際に融資が実行されるまでに時間がかかることが多くなっています。
これは、公的機関が金利目的で融資を行っているのではなく、国や地域の経済の発展、国民の豊かな暮らし、新規雇用創出につながるかといった視点で融資を行っているからです。
その分、個別の審査に時間がかかっているという実情もあります。
とはいえ、融資資金がないと事業が継続できなくなるという事態の場合は、民間でつなぎ融資を受ける必要が出ますので、融資までに時間がかかるということはデメリットとなります。
個人事業主でも利用できる公的融資5つ
ここまで公的融資全体の説明をしてきましたが、ここで個人事業主でも利用できる公的融資を具体的に紹介していきます。
特に個人事業主の方の場合、初めて融資を申し込むという方もいるでしょう。
それぞれの特徴や、利用要件、融資条件について解説します。
1.新創業融資制度
事業者向けの公的融資を行っている日本政策金融公庫は、政府100%出資となっています。
中小企業に加え、小規模事業者、個人事業主向けにも様々な融資を行っていますので、個人事業主が利用できる公的融資をいくつか紹介していきましょう。
まずは、新創業融資制度です。
その名の通り、新しく事業を始める方や始めて間もない方が対象となる融資制度です。
「創業」というと、会社を設立して事業を始めるようなイメージがありますが、こちらの融資制度は、個人事業主でも受けることができ、原則として無担保・無保証人で利用できる制度です。
融資の対象となる方
新創業融資制度を利用するためには、以下の(1)~(3)のすべての要件を満たす必要があります。
- (1) 創業の要件
新しく事業を始める者、または事業を開始して税務申告を2期終えていない者 - (2) 雇用創出の要件
「雇用を創出する事業を始める者」
「現在勤務する企業と同じ業種の事業を新たに始める者」
「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める者」
「民間の金融機関と日本政策金融公庫による協調融資を受けて事業を始める者」
等の一定の要件に該当する者
(既に事業を開始している場合は、事業開始時に要件のいずれかに該当していた者)
なお、新創業融資制度の貸付金残高が1,000万円以内(今回の申込分を含む)の者は、本要件を満たすものとします。 - (3) 自己資金の要件
新しく事業を始める者、または事業を開始して税務申告を1期終えていない者は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる者
自己資金とは、事業に使用される予定の資金を言います。
ただし、「現在勤務する企業と同じ業種の事業を新たに始める者」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める者」等に該当する場合は、本要件を満たすものとします。
融資条件
新創業融資制度の融資条件は、下記の表のようになっています。
資金使途 | 新しく事業を始めるため、または事業開始後に必要とする運転資金または設備資金 |
---|---|
担保・保証人 | 原則として無担保・無保証人 |
貸付期間 | 各種融資制度で定める返済期間内 |
融資限度枠 | 3,000万円(うち運転資金は1,500万円以内) |
金利 | 資金使途、返済期間、担保の有無などによって異なる利率が適用されます |
参考:日本政策金融公庫
金利は、各種条件によって異なりますが、無担保・無保証人で融資を受ける場合の基準利率は、2.41~2.80%となっています。(令和2年10月1日現在、年利%)
新創業融資制度の利率は、日本政策金融公庫の他の融資制度に比べてやや高くなっていますが、民間の金融機関の利率と比較すれば、非常に低い水準です。
これから新しく事業を始めようとする方にとっては、利用しやすい制度ではないでしょうか。
2.新規開業資金
新規開業資金は、新企業育成貸付とも呼ばれ、新しく事業を始める方、事業を始めておおむね7年以内の方に向けた融資制度です。
新規開業資金は、雇用を創出できる企業を増やして、国民の生活を豊かにすることに重点をおいた融資制度で、融資限度額が高く設定されていることが特徴です。
融資の対象となる方
新規開業資金を利用できる方は、下記の要件を満たす方です。
- ・「雇用を創出する事業を始める者」
- ・「現在勤務する企業と同じ業種の事業を新たに始める者」
- ・「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める者」
- ・「民間の金融機関と日本政策金融公庫による協調融資を受けて事業を始める者」
- 等の一定の要件に該当する者
なお、新規開業資金の貸付金残高が1,000万円以内(今回の申込分を含む)の者は、本要件を満たすものとします。
融資条件
新規開業資金の融資条件は、下記の表のようになっています。
資金使途 | 新しく事業を始めるため、または事業開始後に必要とする運転資金または設備資金 |
---|---|
担保・保証人 | 希望によって設定できます |
貸付期間 | 設備資金:20年以内(うち据置期間2年以内) 運転資金:7年以内(うち据置期間2年以内) |
融資限度枠 | 7,200万円(うち運転資金は4,800万円以内) |
金利 | 基準利率 例:無担保での融資の場合2.06~2.45%ただし特別利率が適用される場合もあります |
参考日本政策金融公庫
新規開業資金のひとつの特徴ですが、以下のような要件に該当する方は、特別利率が適用されます。
- ・地域おこし協力隊の任期を終了した後、活動した地域において新しく事業を始める方
- ・Uターン等によって地方で新しく事業を始める方
他にも特別利率が適用できる要件がありますが、詳しくは日本政策金融公庫のホームページでご確認ください。
参考:日本政策金融公庫
3.中小企業経営力強化資金
日本政策金融公庫の中小企業経営力強化資金は、認定経営革新等支援機関による指導や助言を受けて、異分野の中小企業と連携した新しい事業分野の創出を行うような方に向けた融資制度です。
中小企業とついていますが、国民生活事業でも融資していますので、個人事業主でも利用できる制度となっています。
融資の対象となる方
中小企業経営力強化資金は、利用できる方がかなり限定的ですので、ご注意ください。
利用できるのは、下記の(1)または(2)に該当する方です。
(1) 次のいずれにも該当する者
- ・経営革新または異なる分野の中小企業と連携し、新事業分野の開拓によって市場の創出を行おうとする者
- ・自ら事業計画の策定を行い、認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている者
(2) 次のいずれにも該当する者
- ・「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用している者
- ・事業計画書を策定する者
融資条件
中小企業経営力強化資金の融資条件は、下記の表のようになっています。
資金使途 | 事業計画の実施の為に必要とする運転資金または設備資金 |
---|---|
担保・保証人 | 希望によって設定できます。 |
貸付期間 | 設備資金:20年以内(うち据置期間2年以内) 運転資金:7年以内(うち据置期間2年以内) |
融資限度枠 | 7,200万円(うち運転資金は4,800万円以内) |
金利 | 基準利率 例:無担保での融資の場合2.06~2.45%ただし特別利率が適用される場合もあります |
参考:日本政策金融公庫
この他、策定した事業計画の期間内は、年1回以上の事業計画進捗報告が必要となります。
4.商工会議所のマル経融資
マル経融資とは、正式名称「小規模事業者経営改善資金融資制度」といい、商工会議所等で原則6ヵ月以上の経営指導を受けた方が、無担保・無保証人で受けることができる融資制度です。
融資制度の利用にあたっては、商工会議所へ相談することになりますが、実際に融資を行うのは日本政策金融公庫となります。
融資の対象となる方
マル経融資を利用できる方は、下記の要件をすべて満たす必要があります。
- ・常時雇用する従業員が20人以下の個人事業主の方
(商業またはサービス業に属する事業がメインの方は従業員が5人以下の事業者) - ・直近1年以上、商工会議所地区内(もしくは商工会地区内)で事業を行っている者
- ・商工会議所の経営・金融に関する指導を6ヵ月以上受け、事業改善に取り組んでいる者
- ・税金(所得税、個人事業税、都道府県民税等)を完納している者
- ・営む事業の業種が日本政策金融公庫の非対象業種等に属していないこと
融資条件
マル経融資の融資条件は、下記の表のようになっています。
資金使途 | 運転資金または設備資金 |
---|---|
担保・保証人 | 無担保・無保証人 |
貸付期間 | 設備資金:10年以内(うち据置期間2年以内) 運転資金:7年以内(うち据置期間1年以内) |
融資限度枠 | 2,000万円 |
金利 | 1.21% 特別利率Fが適用されます |
参考:日本政策金融公庫
保証人、担保は不要ですが、商工会議所会頭または商工会会長等の推薦が必要となりますので、ご注意ください。
5.信用保証協会の保証付き融資
「信用保証協会」は、中小企業や小規模事業者が銀行などの金融機関から融資を受ける際に、保証人となって事業者が事業資金を調達しやすくなるようサポートする公的機関です。
また信用保証協会は全国各地にありますので、お近くの保証協会に相談することが可能となっています。
一般的に銀行などの金融機関では、直接融資の「プロパー融資」と、信用保証協会が保証する「保証付き融資」の2種類の融資を行っています。
プロパー融資では、企業のある程度の規模や信用度を求められますので、個人事業者は簡単には利用できません。
これは、小規模事業者や個人事業主への融資は貸し倒れのリスクがあるためです。
しかし、信用保証協会が保証する融資では、貸し倒れリスクがないため、銀行などの金融機関からも融資が受けやすくなります。
ただ、信用保証協会を利用するためには、保証料として金融機関からの借入金利に1%程度上乗せされます。
また、信用保証協会と金融機関の2つの機関が関与しますので、融資実行までに時間がかかる場合が多いので、注意が必要です。
コロナの影響を受けた個人事業主におすすめの公的融資
新型コロナウイルスの影響で大幅な売上減少となる事業者向けに、緊急経済対策として実施されている公的融資があります。
その公的融資は、日本政策金融公庫が実施しているもので、実質的に「無利子・無担保」となるものです。
「無利子・無担保」の融資は、日本政策金融公庫が新型コロナウイルス対応で実施している「新型コロナウイルス感染症特別貸付」と「特別利子補給制度」を併用することで実現します。
さらに「据置期間」を設定することで、最長3年間、利子の支払いもない無返済期間とすることができます。
未だ終息していない新型コロナウイルスの影響により資金繰りに追われている事業者にとっては、一息つくことができる非常にメリットの大きい融資制度といえるでしょう。
そこで、新型コロナウイルスの影響を受けている個人事業者に向けて、実質「無利子・無担保」となる融資制度を「新型コロナウイルス感染症特別貸付」「特別利子補給制度」と項目ごとに順に説明していきましょう。
新型コロナウイルス感染症特別貸付
日本政策金融公庫が、新型コロナウイルスの影響により売上減少、業績悪化した事業者に向けて実施している融資制度です。
「新型コロナウイルス感染症特別貸付」は、個人事業主(フリーランス含む)の場合、国民生活事業が窓口となり最大で8,000万円の融資を受けることができます。
通常、個人事業主や小規模事業者が利用する国民生活事業では、融資限度額4,000万円、平均の融資額は700万円程度となっていますので、かなり優遇された融資制度と言えるでしょう。
また、この融資は無担保、低金利で借り入れることができ、既に事業資金として上限金額まで融資を受けている場合でも、特別枠として追加で融資を受けられるという特徴があります。
そして、この特別貸付では、個人事業主の信用力、担保の有無に関わらず、融資後3年間は基準金利から0.9%の金利が引き下げられます。
融資の対象となる方
この融資制度の対象となるのは、新型コロナウイルスの影響を受けて一時的に業績が悪化している事業者で、以下のいずれかに該当している必要があります。
- (1) 1年を超えて事業を行っていて、直近1ヵ月の売上が、前年もしくは前々年の同月比で5%以上減少している
(2) 事業歴が3ヵ月以上1年1ヵ月未満で、直近1ヵ月の売上が次のいずれかと比較して5%以上減少している
- ・過去3ヵ月(直近の1ヵ月を含む)の平均売上
- ・令和元年(2019年)12月の売上
- ・令和元年10月~12月の平均売上
個人事業主やフリーランスの方に対しては、帳簿書類による正確な数字だけで審査するのではなく、定性的な説明にも対応してくれるようです。
融資条件
新型コロナウイルス感染症特別貸付の融資条件を一覧にまとめましたので、ご確認ください。
こちらの融資条件は、個人事業主向けの融資を行っている国民生活事業のものとなります。
資金使途 | 運転資金または設備資金 |
---|---|
担保 | 無担保 |
貸付期間 | 運転資金:15年以内 設備資金:20年以内 |
据置期間 | 貸付期間内で5年以内 |
融資限度枠 | 8,000万円 |
金利 | 最初の3年:0.36%(基準金利-0.9%) 4年目以降:1.26% |
参考:日本政策金融公庫
国民生活事業の場合、基準金利が1.26%となりますが、融資後の3年間は-0.9%となりますので、実質金利は0.36%となります。(令和2年10月1日時点)
特別利子補給制度
利子補給というのは、行政などが融資を行った金融機関等に対して、事業者の利子負担を軽減するために、利子の一部または全額を給付するものです。
特別利子補給制度は、新型コロナウイルス感染症特別貸付により融資を受けた後、返済した利子について、中小企業基盤整備機構から利子補給を受けることで、事業者が負担する利子が実質的に無利子になるというものです。
この特別利子補給制度が適用されるには、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」と中小企業基盤整備機構が行う「特別利子補給制度」の各々の要件を満たしていなかればなりません。
「新型コロナウイルス感染症特別貸付」の要件はすでに説明済みですが、「特別利子補給制度」には、小規模事業者(法人事業者)で売上15%減少、中小企業者で売上20%減少という要件があります。
しかしながら個人事業主(フルーランスを含む)の場合は、要件がありませんので、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」の要件さえ満たしていれば、特別利子補給制度を利用することができます。
利子補給条件
補給限度額 | 新型コロナウイルス感染症特別貸付によって受けた融資額のうち、4,000万円以下の部分 |
---|---|
補給期間 | 当初3年間 |
補給率 | 融資を受けた額の4,000万円以下の部分にかかる「基準-0.9%」の利子(支払利息) |
参考:日本政策金融公庫
利子補給について、もう少し詳しく解説していきます。
たとえば、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」によって運転資金として1,500万円を5年返済で借り入れたとします。
融資額がすべて4,000万円以下の部分となりますので、当初3年間は利率0.36%、3年経過後は利率1.26%の利子となり、日本政策金融公庫へ返済します。
そして、別途、最長3年間分の利子相当額が中小企業基盤整備機構から補給されることになります。
利子補給されるのは、最初の3年間分ですから、利率0.36%の部分です。
一旦は日本政策金融公庫へ利息を支払う必要がありますが、当初3年間の利率0.36%分が利子補給されますので、実質的には無利子ということになります。
ちなみに、令和2年1月29日以降に既に利用しているセーフティネット貸付等の融資がある場合、要件に該当すれば遡及して適用が可能となっています。
据置期間
据置期間とは、融資を受ける際に設定できる元本返済の猶予期間のことです。
この期間は、元本を返済する必要がなく、利息のみの支払いとなります。
返済総額としては同じですが、据置期間を設定することで他の融資との調整が出来ますし、資金回収に時間がかかる事業の場合などで資金繰りの悪化を防ぐことができます。
以上のように、据置期間を設定できたとしても、通常の場合、利息の支払いは必要です。
ですが、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」と「特別利子補給制度」を併用している場合は、最長5年間の据置期間を設定することができ、そのうち3年間は利息の支払いもない完全な「無返済」とすることもできます。
新型コロナウイルス感染症特別貸付を利用するメリット
「新型コロナウイルス感染症特別貸付」は、日本政策金融公庫が行う公的融資です。
民間の金融機関の融資の場合は、通常営利目的となるため、理由が新型コロナの影響であったとしても、経営状態が悪い事業者が融資を受けることは非常に困難です。
ですが、公的融資の場合、政府が国民の生活を守るために実施するものですから、経営状態が悪化し、倒産の危機にあるような場合でも融資を受けることができます。
実際、融資を行っている日本政策金融公庫へも、政府から新型コロナにより影響を受けた事業者に対する積極的な融資が要請されています。
もちろん、利用要件を満たす必要はありますが、高い確率で融資を受けることが可能です。
また、既に高い金利の融資を利用してしまっている場合でも、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」へ借り換えることが可能です。
その場合でも、合わせて利子補給制度の適用を受けることができますので、3年間は実質無利子となります。
無担保で、3年間の実質無利子の融資を受けられれば、資金繰りを心配せず、経営回復に専念することが可能ではないでしょうか。
新型コロナウイルス感染症特別貸付を利用するデメリット
この特別貸付に限りませんが、日本政策金融公庫の融資制度は、民間の金融機関の融資と比較すると融資が実行されるまでに、どうしても時間がかかってしまいます。
一般的に、消費者金融で数日、銀行や信用金庫で1週間程度の時間が必要ですが、日本政策金融公庫の場合、少なくとも3週間から1ヵ月程度は時間を要します。
既に支払いが差し迫っている等、融資までの時間を待つ余裕がない場合は、つなぎ融資などを検討する必要があります。
融資の申込方法
「新型コロナウイルス感染症特別貸付」に申し込むためには、必要書類を準備した後、日本政策金融公庫の支店へ郵送します。
その後、郵送した支店において面談を行い、融資が決定します。
申し込みに必要となる書類は、個人事業主の場合、下記のものです。
- ・借入申込書
- ・新型コロナウイルスの影響による売上減少の申告書
- ・直近2期分の確定申告書(コピー)
また、日本政策金融公庫の融資を初めて受ける場合は、追加して下記の書類が必要です。
- ・事業の概要
- ・事業主の身分証明書(運転免許証のコピー等)
- ・許認可事業を営んでいる場合は、その許認可証のコピー
融資は、面談によって決定します。
その後、郵送される借用証書等の書類を提出すれば、正式に契約成立となり、指定の金融機関へ融資額が振り込まれます。
金利についての注意点
「新型コロナウイルス感染症特別貸付」と「特別利子補給制度」の併用は、実質無利子となるメリットの大きい融資制度ですが、特別に優遇を受けられる期間については、十分にご注意ください。
融資後、最初の3年間は基準金利が-0.9%となり、かつ下がった利息についても利子補給されますので、実質無利子です。
ですが、4年目以降は基本的に利子が基準金利通り1.26%となります。
据置期間を最長の5年間とした場合は、4年目5年目は利息の支払いのみで、元本返済は免除されます。
ですが、いずれにしても制度のメリットを最大限生かすのであれば、利子の負担がない3年以内で完済したいところでしょう。
まとめ
個人事業主でも公的融資を受けることは可能です。
政府100%出資の日本政策金融公庫では様々な融資制度がありますので、事業に合った融資制度を選ぶことができます。
公的融資の場合、民間融資よりも低金利、かつ無担保・無保証人で融資を受けることができますので、まず公的融資を受けられる要件を満たすかどうか確認することをおすすめします。
現在は、新型コロナウイルスで影響を受けた個人事業主向けに、無利子・無担保で受けられる「新型コロナウイルス感染症特別貸付」と「特別利子補給制度」の併用融資がありますので、資金繰りにお困りのときは、ご検討ください。